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SCA-Seed_SeedD After◆ライオン 氏_第01.5話

Last-modified: 2008-11-18 (火) 00:19:53

ガンダムSEED DESTENIY AFTER 〜ライオン少女は星を目指す〜
        第一話TIPS「ホーク家の日常」

 
 

――『前略。久しぶりだな、ルナ。数年ぶりの連絡がこんな形になって本当にすまない。
   お前に預けたいものがある。俺は今ディオキアで修理屋を開いているから来てくれないか?
   託したい物とは、もうすぐ一歳になる俺の娘だ。写真を同封する。
   こんな形で送ったのにも理由がある。俺たちは『ヤツら』に命を狙われているからだ。
   頼む、急いでくれ。

 

   親愛なるルナマリア・ホークへ
                      シン・アスカより

 

   追伸:ところでこの同封した娘の写真を見てくれ。どう思う?
      俺を見つめるこのクリっとした眼がもう本当にかわいくてなぁ。
      なんか今にも「おとうさ〜ん」ってしゃべっ(以下、裏側までびっしりのノロケなので省略)』

 
 
 

――コロニー『ヘリオポリス2』 ホーク家 

 

 「あれから、もう15年か……」
 リビングにかけてあるカレンダーを見て、一家の主である私――ルナマリア・ホークは軽く吐息をついた。

 

――大変だったわ。実際。

 

 それまで軍人一筋だったから、赤ん坊の育て方なんか知らず四苦八苦した。
 粉ミルク作るのに失敗し続けて、ついには空腹であの子を泣かせてしまったり、
 ただの汗疹(あせも)を皮膚の病気と勘違いしてしまい、深夜の診療所に駆けこんで大恥をかいたり……
 昼の勤務時間の間、ずっと面倒を見てくれた軍食堂のおばさんや、
 同じ時期に子供を出産したというメイリンの助言には、今でも心から感謝している。
 赤ん坊を手渡された時は一時どうなるかと思ったが、なんとか今日まで育ててこれた。

 

 ふと、懐かしくなってリビングの引き出しを開けてみた。一番右の、上から三段目。
 そこには15年前のあの時送られた、シンの手紙が入っている。
 くじけそうになった時、何度も読み返したせいでボロボロになったその手紙は、自分とシンをつなぐ大切なものだ。
 手紙を胸に抱き、思いをはせる。
 ――シン。天国で元気にしてる? まぁ天国で元気ってのも変かしら。
   あなたのステラは元気に育ってるわ。
   ……元気すぎるのが問題だけど、ね。

 
 

「たっだいまー! あ、あれ? 母さん今日仕事は!?」

 

 玄関から元気な声が聞こえた。――あの子だ。
 私は微笑んで、その元気な声に応じた。

 

「おかえりー。今日は非番って、朝言わなかったっけ?」  
「え、え〜っと……聞いてなかった……かな? アハハ……」

 

我が娘は、何かに脅えるように数歩後ずさる。
この子の首筋に、タラリと冷汗が一筋流れるのを私は見逃さなかった。

 

「そ、そうだ母さん! 今日新しい友達ができたの! その子隣のクラスの委員長で――」
「――テストの点が悪かったのね?」

 

ビクッ! 感電したようにステラはすくみ上がった。

 

いつもそうだ。
花瓶を割ったり、何か悪いことをすると急に料理を手伝ったり、話題を変えようとまくしたてたりするのだ。この子は。
視線をあさっての方向に向け、冷汗を流しながらシラを切るその態度は、
まるで裁判所の証人台に立たされた被告人のようでもある。

 

帰った時の動揺から察するに、どうせ私がいないと思って、
埃だらけの勉強机にプリントを隠す算段でもしていたのだろう。

 

つい、ため息が漏れた。

 

「ハァ……。何年アンタの母親やってきたと思ってるの? ほら、さっさと見せる!」
観念したように差し出されたそれは、散々なものだった。

 

歴史:38点

 

「…………あの……、母さん?」

 

小動物のように縮こまっている被告人が、恐る恐る口を開く。

 

「――若いからって、あんまり遊びすぎるなよ、コイツめ。えいっ!」

 

判決は――凸チョップだ。

 

「あいたっ!」

 

目の前の受刑者がキツネにつままれたようにキョトン、と
おでこを押さえながらこちらを見ているのを見て、思わず噴き出しそうになった。
私は知っている。
この子が家計を助けるために、遊ぶ時間、勉強時間を削ってまで宇宙港で必死にバイトに励んでいるのを。
そう考えると、怒鳴りつけるのはあんまりだな、と気が引けた。

 

「それで許してあげるから。もうバイトの時間でしょ? 早く夕飯すましちゃいなさい。
 若いんだからしっかり食べるのよ? 」

 

するとステラは、急にパァっと明るい顔になった。

 

「うん、わかった! ていうか、若いで思い出したけど」

 

「え? 何?」

 

「母さんももう若くないんだからさ〜、昨日みたいにお酒で酔っぱらっていきなり
『どう? あたしもまだまだ捨てたもんじゃないでしょ?』
 ってミニスカートとニーソックスの若い時の軍服見せびらかすのやめてくんない? 恥ずかしいから」

 

「…………」

 

「それに小ジワが増えた〜! って朝大騒ぎするのも迷惑だし、この前だって――

 

――よし、『天罰』決定。

 

「……どうやらアンタにはやっぱり飴よりきっつ〜いお灸が必要のようね?」

 

「母さんが必死に風呂場で体操を……って母さん? ちょっ……その構えはまさか……の、のぉぉぉ!!」

 
 

――ちょっと生意気で調子に乗った小娘に『天罰』を下しながらわたしは、ふと思った。

 
 

(ちなみに『天罰』とは、両サイドのこめかみをグリグリしながら、
逃げないよう頭を私のあごで押さえつけるという、まさに必殺技だ。)

 

(グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ)

 

元気でバカで人望があるのはあの人譲り、
以外に努力家でお人好しで不良のケがあるのはシン譲りだとしても、
すぐ調子に乗るわ、
射的ゲームでは絶対に的に当たらないわで、
そしてハッキリと物を言う性格はいったい誰に似たのかしら……

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! グリグリはやめて〜! バカになる〜!」
「いい機会だわ! そのおバカな頭、母さんが粉々にしてあげる!」

 

本当に……誰に似たんだか……

 

(グリグリグリグリグリグリグリグリグリグリ……メキョッ……グリグリ)

 

「い、今『メキョッ』っていった! 母さん! 頭が『メキョッ』って……のぉぉぉぉ!?」

 
 

――数分後――

 
 

「……脳が痛いよぉぉ……ひどいよ母さん……い、行ってきま〜す……」

 

フラフラと蛇行しながら玄関から出て行った娘を見送ったその直後だった。
あの子が出て行き急に静かになったリビングに、電話機特有のかん高い電子音が鳴り響く。

 

私は慌てて受話器を取る。

 

「もしもし? どちら様?」

 

「よう、ルナ。俺だ、ヴィーノだ。
 休んでいるとこ悪いな。どうしても伝えなきゃいけないことがあってよ」

 

「ヴィーノ? いったいどうしたの?」

 

「あぁ、俺たち『ミネルバ組』にまた急な任務だ。
 なんでも最近採用が決まった量産機のテストも兼ねた最終チェックをするんだとさ。
 しかもその新型を狙うテロリストがこの宙域に潜伏してるらしくて、俺たちはその新型の護衛とテスト相手」

 

「それまた……急ね?」

 

「しかたがないさ、俺たちってばお偉いさんから嫌われてるしな。
 新米テストパイロットのための的になるなんて、
プライドが高いので有名なザフト軍ならどこの隊も嫌だろう。
 そんで結局俺たちがその尻拭いって訳だ。ハハハ……」

 

乾いた笑いが受話器の向こうから聞こえた。

 

そう、私たち通称『ミネルバ組』は世界を壊すデスティニー・プランの賛同者の集まりだとか、
世界的なテロリスト、シン・アスカが所属していた部隊だとか好き勝手言われ、軍内では目の敵にされている。
しかも除隊しようにも他の就職先に議会による圧力をかけられ、
企業などは私たちを断固採用したりしないような仕組みとなっている。
装備は旧式のMSを回され、新しい人材なんて論外。
艦なんて、未だに補修を数か所施しただけの旧式『ミネルバ』だ。
与えられる任務も周囲の哨戒任務と新型のテストの相手などで、給料も薄給。
結局は真綿で締め付けるように、私たちはジワジワと飼殺しにされているというのが現実だ。
もしメイリンが『ザラ』の権力でいろいろと手を回してくれなかったら、どうなっていたか……。

 

「任務の内容はわかったわ。それで? 今度はどんな機体とパイロットが来るの?」

 

「ちょっと待て。資料が引き出しに――っとテスト機体は『グロリアス』って名前で、
『あらゆる戦場での戦闘に耐えられる、全く新しい機体』とかいうフレーズのインパルスの発展形で、
なおかつ低コスト化した機体だ。
 そんでもって、パイロットは……お前の甥っ子だ。ほら、アスランとメイリンの……」

 

――そのとき、女のカンがこう言っていた。「嵐が来るな」と。