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SDガンダム大外伝 伝説の再臨・第二章_01話

Last-modified: 2014-03-10 (月) 15:50:06
 

SDガンダム大外伝 伝説の再臨
第二章 〜ラクロア城防衛戦〜

 

1.

 

 森林に覆われたムンゾ地方、アルガス王国。
 その王城の門番二人はほぼ同時に、正面からやってくるMS族と人間族の二人組に気付いた。

 

「何者か?」

 

 ある程度距離が近づき、相手の目的が城であると判断された地点で誰何を声をかける。

 

「こちらの方はラクロアの王女、フレイ姫様だ。私はその護衛を務めているラクロアの騎士ストライク」

 

 MS族の方が一歩前に出て、名乗った。

 

「ラクロアのフレイ姫!? しょ、少々お待ちを!」

 

 門番は驚き、うち一人が慌てて城内へと入っていく。

 

「やっとここまで辿りついた……できるだけ早くラクロアに戻らないと」

 

 フレイが疲れの混ざったぼやく。できるだけ急ぎはしたものの、ジオン族の隠れ里を出てから4日、ラクロアを出てからは合計で7日かかっていた。

 

「援軍要請が断られる事はまず無いと思いますが、準備にどれだけ時間がかかるかが問題ですね」

 

 ストライクにも流石に疲れが見えた。

 

「とにかく急いでもらわないと……あッ!」

 

 城の中から一人の少年が走って出てきた。

 

「フレイ姫! 久しぶり!」
「サイ王子!」

 

 フレイがそう呼んだ通り、ここアルガスの王子であるサイだ。フレイとは婚約者の関係にあった。

 

「ラクロアが危急に陥ってるって噂を聞いていたけど、こちらに来ていたなんて……とにかく中に入って。すぐに客間を用意させるから」

 

 サイがそう言うと、門番がストライク達を招き入れるように一歩下がった。

 

「それが、のんびりしていられないの。すぐにハルバートン王への謁見をお願いします」

 

 フレイは背筋を伸ばし、そう告げた。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 謁見の間にストライクとフレイは案内された。
 アルガス国王、ハルバートンが座る玉座の隣に、他国の王族を迎え入れた時のための玉座が設えられ、フレイはそこに腰を降ろす。

 

「それで、用件は何かな?」
「今、ラクロアはザフト帝国との戦いにおいて危機に陥っています。同盟国として、アルガスに援軍を要請したいのです」

 

 単刀直入に切り出す。

 

「なるほど、やはりか」

 

 ハルバートンはその返答を、ある程度予想していたようだ。

 

「ラクロア王国がザフト帝国に押されているという話はこちらにも届いている。故に――」
「援軍を送る準備は進めていました。そちらから要請が来ないようならば、こちらから必要かどうか伺いに行くつもりでしたよ」

 

 謁見の間に居並ぶ重鎮の中に上座から、特の方にいた男がハルバートンの言葉を引き継ぎながら進み出た。

 

「あなたは……?」
「お会いするのは初めてでしたか。私はムンゾ公国の領主、アズラエルと言います。以後、お見知り置きを」

 

 どこか慇懃無礼な態度でその男――ムンゾ公アズラエルは名乗った。

 

(あの男がアズラエル公……アルガスで対ジオン族の権限を持ち、シーゲル村長を追い落とした者か)

 

 騎士達の列の末席の位置からストライクはアズラエルの姿を見た。

 

「準備は進めている? それでは……」
「ええ、明後日には出陣が可能でしょう」

 

 フレイに言葉に、自信満々に答える。聞いていた話も相俟って胡散臭げではあるが、今はありがたかった。

 

「どれ位の戦力を出すかが問題ですが、現在のラクロアの状況はどうですか?」
「それについては私からお話しましょう」

 

 ストライクは答えながら進み出た。

 

「我が国の軍は現在、敵の姦計により騎士団の主力を欠き、アルダ王は暗殺されてしまいました。このままでは敗北は必至でしょう……」

 

 悔しげに状況を述べる。実際にあの日、何もできなかった事は今でも悔やまれる。デュエルとバスターを投降させられた事だけが救いだった。

 

「かなり拙い状況という事か……これは、こちらの騎士団の主力を動かす事も考えねばならんか」

 

 ハルバートンは難しい顔でうなる。

 

「思い切ってそうした方がいいでしょう。現在、我が国は隣国との関係は悪くはなく、国内の不穏分子も危険なものはありません。最低限の守りがあれば十分かと」

 

 アズラエルが進言する。さらに続く彼の言葉に、その場に会する一同は驚愕した。

 

「各隊の隊長はもちろん、私自身も同伴してラクロアまで遠征したしましょう」
「ムンゾ公自身が!?」

 

 自ら進んで戦場に出るようなタイプだとは思わなかった。

 

「私はこの国でジオン族への対処を担当していますので、ザフト帝国の実態というものをこの目で直に見ておきたいもので。それに、ジオン族の知識もそれなりのものだと自負しています。きっとお役に立てれると思いますよ」

 

 そう言うと、不敵な笑みを浮かべる。
 この男がラクロアまでついてきた場合、ザフト帝国と話し合いをする事が難しくなるかもしれない。
 だが、他国での軍である上に援軍を送ってもらう立場である以上、編成をどのようにするかに口を出す事はできない。

 

「ううむ。自ら戦場に出ると言うのか。危険ではあるが、大丈夫か?」
「夜盗などの鎮圧に自ら出向いた事もあるので、問題はありませんよ。最前線まで出るつもりはないですしね。公国の内政は現在安定しておりますので、文官に任せておけば大丈夫です」

 

 国王の忠告にもやんわりと返す。

 

「……分かりました。それでは救援、よろしくお願いします」

 

 仕方ない。今は一刻も早くラクロアに戻ることを優先せねばならないから、無駄な問答をする時間も惜しかった。

 

「ええ、お任せ下さい。なんなら、お二方は長旅で疲れてらっしゃるでしょうし、後は我々に任せて、こちらで待っていてもよろしいのですよ?」
「いえ。今回、こちらは士気を高める事も大事ですから、私が援軍を引き連れて戻る事に重要な意味があるんです。だから一緒にアクロアに戻ります」

 

 含みのあるアズラエルの言葉に、フレイが首を横に振りながら答える。

 

「そうですか。では、援軍の準備が整い出発するまでの間に、十分な休養をとるといいでしょう」
「うむ。疲れているだろう。とりあえずは客間に案内するので、じっくりと休むとよい。また何か話す事があれば、こちらから部屋まで伺おう」

 

 ハルバートン王が合図をすると、案内をするべく侍女が謁見の間に入って来た。

 

「ありがとうございます。それでは」

 

 ストライクとフレイはその場にいるアルガス王国の人達に礼をし、侍女の後について謁見の間を出た。
 廊下を進みながら、これはアズラエル公の人柄をよく見極めるチャンスと考えられるかも知れない、と二人は侍女に聞こえぬよう小声で話しあった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ノア地方に広がる森の奥、シーゲルの村。
 キラは食事を手に、傭兵ブルーアストレイと共にサーペントテールが使っている小屋の奥の部屋へ入る。
 隠し部屋になっているそこには、闘士デュエルと戦士バスターが縄で縛られた状態で座っていた。

 

「これ、食事です」

 

 キラが二人の前に食事を置き、縄を解く。降伏しているとはいえ、術がかけられたままである以上、自由にすることはできない。食事の時などはブルーアストレイが同行し、常に警戒していた。

 

「やれやれ……この時間が一番の楽しみだぜ」

 

 バスターは一度大きく伸びをしてから、食事に手をつける。デュエルは既に無言で食べ始めていた。

 

「この状況、いつになったら変わるんだよ?」

 

 食事を食べながら尋ねる。

 

「おそらく、明日にはサーペントテールの仲間がこの村に到着する。そうしたら、まずはうちで魔術の心得がある奴に見てもらう」

 

 ブルーアストレイが答える。

 

「それで術が解ければそれで良し、解けなければとりあえず解除できそうな所へ連れて行く。つまり、どちらにせよ明日にはこの村を出る事になるだろう」
「おお、そいつはよかった。いつまでもこのままじゃ流石に辛いからな〜」

 

 どこかのんきな口調で言うと、食事の残りをたいらげた。

 
 

「この村の護衛も明日までなんですか?」

 

 小屋を出た所でキラがブルーアストレイに尋ねる。

 

「ああ。ラクロアの件から結構な日数が経ったし、この村の近くではもう何もないだろう。それに、フレイ姫達がそろそろアルガスに着く頃だろう。
 アルガス軍が動き出せばザフト帝国の連中はこの近辺にはいられないし、アルガスも残りの兵力で防備を固めるため、ジオン族狩りをする余力が大きく減る」

 

 返答として、冷静な分析を下す。
 しかし、アルガスの兵力が減る事は誰にでも分かるが、騎士団の主力がアズラエルと共に動き、国内のジオン族狩りが全面的に停止するとは、この時のブルーアストレイには流石に予測できなかった。

 

「明日、あの二人が治れば僕達もそこからラクロアに駆けつける事ができるんですけどね……」

 

 キラはそんな事をつぶやく。

 

「確かにな。そちらに雇う意志があるならば、我らサーペントテールも依頼として救援に行こう。少なくとも、二人の件の報酬は貰いに行きたいしな」

 

 サーペントテールが力になってくれれば心強い。が――

 

「え、えっと。それはラクロアに着いたらムウ王子と交渉してみてください」

 

 金はほとんど持ってないし、無責任な契約は流石にできない。デュエル達の件はフレイ姫が了解している事だから問題無いのだが。

 

「何にせよ、明日で解決するかどうかだ。上手く行かなければ長引くことになる。その時は、一応キラも我々と一緒に来てもらう」
「はい、分かっています」

 

 二人の事を任せっ放しというわけにはいかない。
 しばらくはラクロアへは帰れないような気がする、とキラは思った。
 そして、その予想はすぐに当たることになった。それも、思いもよらなかった方向から。

 
 

「あの、少々よろしいですか?」

 

 キラ達の元に村長の娘のラクスがやって来た。

 

「あ、ラクスさん。何の御用でしょうか?」

 

 尋ねた所で、ラクスの後ろからガンダム族らしきMS族が一人ついてきているのに気づいた。

 

「こちらの方は父の知り合いで、術法の心得があるんです。デュエルさん達のお話をした所、診てみたいと」
「占星術師スターゲイザーです。よろしく」

 

 白いボディの輝きを持つそのMS族は、名乗りながら頭を下げた。

 

「占星術師……ですか?」
「はい。普段は占いで生計を立てていますが、かつては法術士としての修行もしておりました」

 

 スターゲイザーはそう言うと、掌の中に光球を作り出し、宙に浮かべて見せた。

 

「あの二人にかけられた術を解けそうなんですか?」

 

 尋ねると、首を縦に振る。

 

「ええ、大丈夫でしょう。その御二人からは、この先の戦いでその力が必要になるという星の巡りを感じます」
「この先の戦い? 星の巡り?」
「そう。まだ詳しくお話しする事はできませんが、その時に備えて私は星の導きに従い、必要となる力を集めているのです……」

 

 静かに、厳かに、スターゲイザーは告げた。

 
 

 翌日、ブルーアストレイは村の入り口で仲間が来るのを待っていた。
 それほど待たないうちに、二人の男がやって来た。

 

「よっ、待たせたな」

 

 二人のうちの片方、美しい顔立ちをした男が軽く手を上げながら挨拶をかけてくる。

 

「イライジャ、よく来てくれた」

 

 ブルーアストレイはその男――戦士イライジャに挨拶を返す。

 

「色々大変だったみたいだな」

 

 もう一人の太り気味の男も声をかけてくる。その口から漂ってくる匂いにすぐに気付いた。

 

「リード、ここに来るまでに酒を飲んだのか?」
「ははは。まあ、そう固い事言うなよ」

 

 そう言いながら、腰に下げていた皮袋の中身を更に一口飲んだ。

 

「さて、早速だが、話にあった二人の所に案内してくれ」

 

 口元を拭いながら、話を切り出すリード。彼は魔術の心得があった。

 

「ああ……その話なんだが、昨日村に来た術士によってかけられていた術は解除されたんだ」

 

 ブルーアストレイに伝えられ、イライジャとリードは驚く。

 

「俺達以外にそんな奴が訪れたのか?」
「そうだ。占星術師スターゲイザーと名乗っていたが……」
「占星術師スターゲイザー? 聞いた事のない名前だな?」

 

 リードはしきりに首をひねる。

 

「只者ではなさそうだったが、情報通であるリードが知らないとはな……」

 

 術士としても、占い師としてもかなりの腕前を持っていそうだった。リードなら聞いた事あるかと思ったのだが。

 

「で、そいつらは結局どうなったんだよ?」

 

 イライジャが話を戻す。

 

「この先の戦いに必要な力だと、そんな予言を受けて皆で村を発った」
「なんか、胡散臭い話だな……」

 

 あきれ顔でそう言われるが、ブルーアストレイはそうは思わなかった。

 

「いや、直接見ていなければ分からないが、あのスターゲイザーという占星術師、信ずるに値する何かがあった」

 

 信頼・信用は傭兵にとって大事なものだ。スターゲイザーには不思議とそれを感じさせてくれた。

 

「ふむ。お前さんがそう言うなら、結構な奴のようだな。後で情報を集めてみるか」

 

 リードは顎の髭に手を当てながら唸る。

 

「まあ、もう終ってしまった話だ。来たばかりで悪いが、この後どうするかを決めよう」

 

 この村での用件は大体済んだ。後は村を出る前に村長に挨拶をする程度だが、その前に今後の行動を決めなければならない。

 

「とりあえずは、ガイ達と合流だな。あっちは今、発注していた武器の受け取りのため、ちょいと遠出しているんだ」

 

 その話を聞いて、ブルーアストレイは冷静を装ってた顔を輝かせた。

 

「おお、ついにできたのか! そうだな、次の仕事の前にそいつを受けとっておきたいな」
「更にその後はガイ達と相談してからって事になるだろうけど、やっぱりラクロアとザフトの戦いの方に行ってみるか?」

 

 イライジャはそう提案した。傭兵が仕事に困る事のない場所だ。

 

「そうだな。俺としては、あの占星術師が行っていたこの先の戦いというのも気になる。ラクロアとザフトの戦いに決着がついたその先に何が起こるのかとか……」

 

「ラクロア対ザフトの先の戦いか。そういや今朝、森に入る前に聞いた話なんだがよ、明日にはアルガスからラクロアへと援軍が派遣されるんだそうだ」
「明日? 思ったよりも随分と早いな」

 

 フレイ姫とストライクがかなり急いだという事だろうか。向こうに到着するのは今日か、明日位だと思っていた。

 

「で、どうやら各部隊長が率いる、相当に大規模な援軍になりそうだ。しかも、ムンゾ公アズラエルが直々に最高指揮官として出向くんだとか」
「アズラエル公が? わざわざ他国の前線まで行くとは、何か企んでいるのか?」
「さあな。そこまではまだつかめてねえ。だが、大分キナ臭い臭いがするのは確かだ」

 

 あるいは、この先の戦いというのを起こすのが、アズラエルなのだろうか。

 

「やはり、ガイ達と合流したらラクロア行きを提案してみるべきか」

 

「あんまり関わらない方がいい気もしてきたけどな。んじゃ、とりあえず今の所は村を出てガイ達と合流する事にしようぜ」

 

 イライジャの言葉にブルーアストレイとリードは頷くと、去る前の挨拶のため、村長の家の方へと向かった。

 

 ◇ ◇ ◇

 

 ストライクとフレイはアルガスに着いたその日の内はじっくりと休息を取り、翌日はラクロアに戻る準備を進めた。そして更に翌日――

 

「ごめんね、サイ王子。ゆっくり話す時間ももてなくて」

 

 見送りに来たサイにフレイは謝る。

 

「いや、今は急いでるみたいだし、別にいいよ。また戦いが終わった時にでも」
「ええ。また次の時に」

 

 フレイは一度頭を下げ、手を振りながらサイの元から離れると、アルガスが用意してくれた馬車に乗り込んだ。

 
 

 馬を借りたストライクの元へ、4人のMS族がやって来た。全員、ガンダム族だ。

 

「貴公がラクロアの騎士ストライク殿か」

 

 先頭に立つ、黒と金の鎧を着た騎士が訪ねてきた。

 

「あなた方は、確かアルガスの……」
「私はこのアルガスの騎士団長を務めている、騎士ゴールドアストレイだ」
「なるほど、あなたが……確かに、ブルーアストレイ殿に似ている」
「フレイ姫から、ここに来る途中で少し弟に会ったと聞いた。商隊の護衛の仕事をしていたとか」
「ええ、まあ……」

 

 あの村の事は話せない。フレイはそう言う理由で知り合ったという事にしておいたのだろう。

 

「傭兵の弟ほど実戦を重ねているわけではないが、戦いの技で劣るつもりは全く無い。私以外の騎士団の者達もな」

 

 そう言うと半身をずらすように下がる。同時に、後ろにいた残る3人が前へと進み出た。
 赤い鎧の剣士、空色の鎧の闘士、青いローブの法術士の3人組だ。

 

「俺は騎馬隊隊長、剣士カラミティ。よろしく」
「僕は戦士隊隊長、闘士レイダー。力任せだけではない我が戦士隊の勇姿、戦場で見せよう」
「私は法術隊隊長、法術士フォビドゥン。法術による援護は任せてもらいましょう」

 

 隊長の座は伊達では無いようで、見ただけで全員がかなりの実力者であると窺う事ができる。かなり頼もしい味方となってくれそうだ。
 ゴールドアストレイが再び前へと進み出ると、左手を差し出してきた。

 

「しばらくは共に戦うことになる。よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

 ストライクも手を差し出し、握手を交わす。
 これで戦力は整った。後はラクロアが陥落してしまうまでに間に合うかどうかだ。
 ゴールドアストレイ達が出発のために自分達の持ち場へと戻った後、ストライクは遠く祖国のあるはずの方へと視線を向けた。

 
 

「どうか、我々が戻るまで持ち堪えてくれ、ラクロアよ……!」

 
 

 <続く>

 
 

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