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SEED DESTINY “M”_第5話

Last-modified: 2009-02-26 (木) 16:05:19

「我々は誓ったはずだ! もう悲劇は繰り返さないと! 互いに手を取って歩む道を選ぶと!」
「誓っていません!」

 
 

機動戦士ガンダムSEED DESTINY “M”
 PHASE-05

 
 
 

「な……?」
 キャットウォークでデュランダルに詰め寄っていたカガリは、言葉を詰まらせ、手すり越しに、ガイアの胸に立つマユを見る。
 その傍らに控えていたアレックスも、軽く驚いたような表情をする。
「どういう意味だ!」
 カガリが表情を険しくして、マユに問いただす。
 だが、マユは年長者のカガリに睨み返されて怯むどころか、むしろ憎悪の色を寄り強めて、カガリを睨む。
 タリアが慌てて、割って入ろうとする。だが、それをデュランダルが手で制した。口元で薄く笑み、タリアに視線を走らせる。
「ユニウス条約は悲劇的な戦争行為の禁止……戦争そのものを終結させる講和条約ではありません! 来るべき再戦に備えて軍備を揃えるのは当事国の政府として当然の事です!」
「だから、過ぎる力はその悲劇を呼び起こすだろう!!」
 カガリは激情を伴った表情と口調で、言い返す。
「今回、ZAFTの兵器はユニウス条約をまったく逸脱していません! プラントは条約を遵守しています」
 マユは険しい表情を崩さずに、その声は大きくも淡々と、言った。
「しかし」
「むしろ! あの襲撃者達こそ、どこから来たのですか、禁止されているミラージュコロイドを使って!」
 カガリが言い返そうとしたのを遮って、マユは畳み掛けた。
「それは……」
 カガリは言いよどむ。視線が定まらなくなり、泳ぎ始めた。
「あのような存在に備える為にも、力が必要なんです。その為にオーブだって軍備を増強しているのでしょう!?」
 マユは容赦なく、カガリを睨みつけたまま言う。
「オーブの軍備は、専守防衛のためだ!」
 カガリは勢いを取り戻し、マユに視線を向けて言い返す。
「プラントの軍備も防衛の為です。まさか侵略の為とでも仰ると!?」
「その為にあれほどの力が必要なのか!?」
「それはプラントの政府と国民が決めることです、オーブが決めることではない!」
「ユニウス条約の趣旨に反していると言っているのだ!!」
「また条約ですか? プラントがユニウス条約を締結した相手は地球連合各国です。オーブはこの時点では主権国家ではない! ユニウス条約においてオーブは第三国に過ぎない!!」
「なっ……」
 自らの理論の根底を崩すマユの反論に、カガリは絶句し、目を真ん円くして、軽く身を退いた。
 それまで、傍観者を決め込んでいたデュランダルだったが、マユのその発言に、軽く驚いたような表情になった。
「そもそも! オーブが主権を回復できたのは、アイリーン・カナーバ暫定議長らプラント側代表団の手腕です、オーブはその恩も忘れて、大西洋連邦の走狗になる事を選ぶと言うのですか! オーブの理念と言うのはそんな薄っぺらなものだったんですか、あの戦争で犠牲になったオーブの市民は一体なんだったんですか!!」
 マユの言葉に激情が混じり始める。
 ルナマリアやヴィーノは、ただ絶句して、マユを見上げている。
「そ、それは……しかし……いや……」
 マユが冷静を欠き始めるより劇的に、カガリはうろたえた。自らの理論を支えてい根底をことごとく覆されたのである。専門のネゴシェーターでもないカガリにそれ以上の理論を組み立てるのは無理だった。
『目標接近、距離8000。コンディションレッドに移行。全パイロットは出撃待機に移れ。艦長、艦橋にお戻りください』
 マユに対し反論が無いまま、その放送がこの場を遮った。
「ご歓談のところ、割り込みまして申し訳ありません! 然るべき処分は後ほど甘んじてお受けいたします。それでは!」
 マユはデュランダル達に敬礼すると、ガイアの胴を蹴って、ブリーフィングルームへと移動して行った。
「申し訳ありません、代表」
 愕然としていたカガリに、背後からデュランダルが穏やかな口調で声をかけた。
「彼女はオーブ出身だと聞いていたのですが……」
 困惑の混じった薄い苦笑で、デュランダルは言う。
 一方。
「どうしちゃったの? マユちゃん……」
 ルナマリアが、どこか心配そうな表情をしながら、後ろからマユに声をかける。
「別に……なんでも」
 マユはルナマリアを振り返りもせず、むすっとした表情のまま、そっけなくそう言った。

 
 

「やはり、追いつかれたか……」
 ガーティー・ルー艦橋。
 忌々しそうに、ネオはディスプレィの表示を見る。
「連中もそうそう寝ぼけてるわけではないということですな。いかがいたしますか?」
 リーは難儀そうな顔でため息をつきつつ、ネオに指示を促す。
「デブリ帯でやり過ごす。……可能か?」
「問題ありません」
 ネオの問いかけに、リーはこともなげに言ってのけた。
「大き目の……そうだ、採掘済みの資源衛星に接近して紛れろ。デコイとすり替われ」
「了解しました」
 リーは言い、ブリッジクルーに指示を出していく。
「目標マーク。接近して一気にナックルをかける」
 ガーティー・ルーは、前方にあるデブリ帯の中でも、ひときわ大きな採掘済み資源天体に艦首を向けた。
「デブリ帯進入と同時にメインスラスター停止、惰性で進行! デコイ射出準備!」
「リー、私も出る。しばらく頼むぞ」
 矢継ぎ早に指示を出すリーに、ネオはそう言って、立ち上がった。
 先程までの、症状は既に出ていない。
「了解しました。お任せください」
 リーの返事を聞いてから、ネオはブリッジを後にした。

 
 

 同、パイロット・ブリーフィングルーム。
「例の新型艦だって?」
 既に待機しているアウルは、同じように出撃を待っているスティングに、問いかけるように言った。
「ああ。出てくるのはあの犬っコロかな?」
 スティングは答え、そう言って、薄く笑った。
「なら、今度こそ生け捕るか、バラバラか」
 アウルもニヤリと笑う。
「バラバラ……だな」
 笑んだまま、スティングはそう言った。
「なぁ……、…………?」
 スティングは誰かに声をかけるように言った。だが、彼の視線の先には誰もいなかった。
「………………」
「………………」
 アウルとスティングの間に、微妙な沈黙が流れる。
「ど、うしたんだ、よ」
 ジトリと汗を浮かべて、アウルはスティングに問いただした。
「いや……」
 スティングは、曖昧に答えた。
「2人とも、準備は良いか?」
 そこへ、ネオが入ってきた。既にノーマルスーツに着替えている。
「ネオ」
 縋るように、2人はネオに視線を向けた。
 それに気付いてか気付かずか、ネオは言葉を続ける。
「敵の先制部隊を2人で引き付けろ。その間に母艦を叩く」
「OK、解りました」
「けどよ、ネオ」
 スティングは返事をしたが、アウルは含むところがあるように、ニヤニヤと笑いながらネオに問いかける。
「別に、潰しちまってもかまわねぇんだろ?」
「可能ならな。だが、そちらに新型が行く可能性もある。陽動を最優先とすること。無理は避けろ」
 ネオは厳しい口調でそう言った。
「なんだよ、俺達が負けるとでも思ってんのかよ」
「アウル。命令だ」
 拗ねたような態度をとるアウルを、スティングが嗜めた。
「わぁってるよ。ネオに逆らいやしねーって」
 言いつつも、アウルはそのまま不機嫌そうに、そっぽを向いてしまった。
 ネオは、仮面から露わになっている口元だけでも見てとれるほど、憂い気に表情をゆがめた。

 
 

「ボギー01(ワン)、変針、本艦からアップ60、右15。前方のデブリ帯に侵入します」
 男性オペレーターが告げる。
「デブリ帯に進入して撒こうって言うのか!?」
 アーサーは素っ頓狂な声を出し、戸惑ったように言う。
「副長のあなたがそれでどうするの!?」
 背後から、ちょうど入ってきたタリアがそう言った。
「あ、艦長、それに……えぇ?」
 振り返り、続いて入ってきた数人を見て、アーサーは驚いて声を出した。
 デュランダルの後ろに、カガリとアレックスがいた。
「議長の提案よ」
 タリアがため息混じりに言う。
「オーブの皆さんにも、我々の戦いを見ていただこうと思ってね」
 デュランダルは、目を細めながら言った。
 タリアは艦長席に、デュランダルとカガリ達は指揮官用のスツールに座る。アーサーも慌てて、自分の席に着いた。
「ボギー01か」
 デュランダルはディスプレィの表示を見て、呟くように言う。
「あの艦の本当の名前はなんと言うのだろうね」
「はぁ……」
 デュランダルの隣に腰掛けたアレックスは、返事に迷い、そうあいまいに言った。
「名はその存在を示すものだ。もしそれが偽りだったとしたら……その存在はどう定義すべきなのだろうね、アレックス、いや、アスラン・ザラ君」
「!」
 デュランダルは穏やかな口調で言ったが、その瞬間、アレックスの身が凍りつくように硬直した。
「議長、それは!」
 カガリは、反射的にスツールから立ち上がり、声を上げる。
「ご心配には及びません。私は何も彼を咎めようと言うわけではない」
 カガリを落ち着かせるように、デュランダルは言う。そして、再度アスランに視線を向けた。
「ただ、話をするなら本当の君と話がしたい。それだけのことだ」

 
 

「カタパルトリンゲージアップ。システム正常。マユ・アスカ、ガイア、行きます」
 既に扉の開かれた左舷発艦デッキで、射出待機位置についたガイアから前方に向かってガイドLEDが順次点灯する。リニアカタパルトが作動し、ガイアは宇宙空間に躍り出た。
「…………八つ当たり、だよ」
 マユは憂い気な表情で、呟いた。
 ────あの時私が我が侭を言わなければ、あんな状況で携帯を無くすのが嫌だなんて言わなければ……
「っく」
 目頭が熱くなってくるのを、堪える。
『……っと、マユちゃん、聞いてるの!?』
 レシーバー越しに、怒声が聞こえてきた。
「はっ……あ、れ? ミレッタお姉ちゃん?」
 マユは我に返り、通信用ディスプレィに映し出された相手の顔を見た。
 今はヘルメットで覆われていて見えないが、短めのボブカットにした、赤みがかった黒髪に、前髪の一部だけ金髪のメッシュが入っている、その姿をマユは知っている。
 緑服の彼女だが、マユと彼女には別の因縁があった。
 マユ同様、ミレッタも先の大戦で焼け出され、オーブからプラントに移住した人間だった。ただ、彼女の場合はマユの様に天涯孤独ではなく、両親は健在である。
 もっとも彼女にも、マユとは別の苦労があった。彼女はナチュラルの父親と第1世代のコーディネィターの母親の間に生まれた、所謂ハーフコーディネィターだった。前髪の、メッシュはその為に発現した、天然のものだと言う。
 また、先の大戦では、親交のあった再従姉(はとこ)を亡くしていると言う。ただ、どのような最期だったのかは、マユが聞いても、あまり語りたがらなかった。

 

 ──閑話休題。ともあれその為に、2人の間には以前から親交があった。
『ちょっと、ちょっと、しっかりしてくださいよFAITH様〜』
 ミレッタは呆れたような表情で言う。
「ごめん……それで、何?」
 気まずそうに苦笑して、マユは聞き返す。
『気にするな、マユ。たいしたことじゃない』
 別の機体から、通信が割り込んできた。レイの声。
 ガイアの傍らを、灰白色のゲイツDが並び、行く。
『ちょっと、たいしたこと無いってのは無いんじゃないですか!?』
 おどけ混じりに憤ったような表情で、ミレッタは言う。
『ただ、デブリ戦得意だし、それならボクもD型が欲しかったな、って』
 拗ねたような表情で、ミレッタが言う。
 ガイアとレイのゲイツDのやや後方、緑のZAFT標準塗装のゲイツF、2機が続く。ミレッタ機と、もう1人の先発隊、ショーン・ドー機。
 カタログスペック上は大差ないとされていても、新規生産されたゲイツDと、ゲイツRの改造機であるゲイツFでは、特に格闘戦に置いては前者に明らかな優位性があった。
『そうじゃなかったら、あの余ってるって言う新型機。あれを使わせてもらえないのかな』
『無茶を言うな。あの機体は試験要素が強すぎる上にまだ試験運用のデータもそろっていない。適性のあるパイロットでなければ使いこなすのは難しい』
 レイが言う。そしてその適正のあるパイロットを見つけることが出来なかった為に、その機体はその運用を前提としたミネルバに搭載されながら、いまだ格納庫で埃をかぶっていた。
『ちぇーっ』
 自分を挟んでのミレッタとレイの言い争い、というか、ミレッタのぼやきにレイがツッ込むやり取りを聞き、マユは軽くため息をついてから、サブコンソールのディスプレイに目を移した。
 そして、はっと目を見開く。
「追尾中の目標まで1500!? レイお兄ちゃん!!」
 顔を上げて、通信用ディスプレィを見る。
『ああ、気付いた。ここまで迎撃もなければ、増速した様子もない。嵌められたかもしれないぞ』
 レイも険しい表情で言ったとき。

 

『うわぁぁぁぁぁっ』

 

 音声レシーバーに、ショーンの叫び声が聞こえてきた。
 フルバーストの奔流がゲイツFを掠める。ショーンは辛くもそれを避けたが、遺棄された公転軌道ステーションの太陽電池パネルに突っ込み、破片を散らばせた。
『アビスとカオス!』
 ミレッタの、緊迫した声。
 アビスが、ショーン機に向かってさらに掃射をかけようとしたところへ、ミレッタ機のタックルがアビスを弾き飛ばした。
「ぐぉ!」
 コクピットの中で、アウルが声を漏らす。
「一気に行きたいところだけど!!」
 ビームライフルを抜き、ショーン機に近付きながら、アビスを射撃で牽制する。
「アウル!! 」
 弾き飛ばされたアビスに、カオスのコクピットのスティングは一瞬そちらに気を採られたが、
「!?」
 脳裏に閃きのようなものが走り、急機動でカオスをその一体分ずらす。
 一瞬前までいた空間を、ビームの閃光が薙いだ。
「やはりデコイか!!」
 レイは静かな口調ながらも、忌々しそうに言った。ゲイツDに対装甲アキナスを抜かせ、パルチザン形態にして、カオスめがけて突っ込んでくる。
「こいつ……!!」
 一気に間合いを詰めてきた灰白色のゲイツDに、スティングもまた、忌々しそうに言う。
 一方。
「こぉのぉっ!」
「おっと!」
 バチバチバチバチッ
 ゲイツFを射撃で追い詰めようとしていたアビスに、マユのガイアがビームサーベルで斬りかかる。アウルはそれを、シールドで受け止めた。バチバチと火花が散る。
「色は違ってるけど、てめぇ犬っコロ野郎だな!!」
 アウルが毒つくように言う。
「甘い!」
 アウルが間合いを取ろうとした瞬間、マユは、ガイアのビームブレイドを展開させて、タックルによる追撃を入れた。アビスは辛うじて避ける。
「何だこいつ、前より動きが良く、べっ!?」
 目を円くして呟きかけた瞬間、アビスを複数のビームが掠めた。
 太陽電池パネルに踏ん張るように、ミレッタ機がビームライフルでアビスを狙う。
「ミネルバ、応答してください、ミネルバ! 先の目標はデコイ! ミネルバ!」
 ミレッタ機に寄り添いながら、ショーンはミネルバを呼び出す。
 だが、応答はなく、代わりにデジタル変調が妨害されるピーガー音が返って来た。
「くそっ、ダメだ、妨害されてやがる!!」
 他の3人にも聞こえるように通信機のPTTを入れたまま、ショーンは毒ついた。

 
 

 その頃ミネルバは、資源天体の至近を通過していた。その地平線を感じられるような、ギリギリの距離である。
「追っ手を撒く為とはいえ、こんなところを通るかね……正気の沙汰じゃないよ」
 アーサーが、呆れたように呟いた。
 その時、アスランははっ、と閃いた。
「それだけ向こうも必死って事よ。よほど捕まってはまずい事情があるんでしょう」
 タリアがそう言った、その直後、
「デコイだ!」
 と、アスランは叫んでいた。
「えっ!?」
 デュランダルとカガリを含めた、ブリッジの主要なメンバーが、アスランに視線を向ける。
「罠ですよ! 艦を衛星から離して! 早く!!」
「タリア!」
 アスランが言うと、その傍らに座っていたデュランダルが、険しい顔で声を出した。
「アップ45、いえ60! 離脱ー!!」
 タリアがそう叫び、ぐぐっと乗員に激しいGを与えながら、ミネルバは方向を変えた。
 その直後。
 無数のミサイルが資源天体に降り注いだ。変針していなければ、ミネルバがそこを通ったであろう位置だった。
「距離800。熱源反応あり!!」
「なんですって!?」
 男性オペレーターの声に、タリアが反射的に絶叫する。
「MSもいます! 複数、最低でも4機!」
「艦長ぉ!」
 タリアを振り返って情けない声を上げたのは、アーサーだった。
「しっかりしなさいアーサー!!」
 タリアは、アーサーを叱咤してから、
「ミサイル発射管、全門ディスパール装填!! ルナマリア機とゲイル機は直ちに発艦!」
「了解!」
 メイリンがはきはきと答える。
「さすがに避けたか。そうそうラッキーヒットはないだろうな」
 3機のダガーLを引き連れ、資源天体の地表高度を、ミネルバを側面から捉えようとしていたネオは、ミサイルが外れたのを見た瞬間、一気に進路を上げ、ミネルバに迫る。
 ウィンダムの背中には、改良型対装甲装備、キャリバーンストライカーが備えられていた。
「さて、それならば直接沈めるだけのことだ!!」