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SEED-クレしん_06-601_03

Last-modified: 2009-06-25 (木) 20:48:37
 

嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 異聞
その参 「シンと又兵衛、2人のいくさ」

 
 

 シンとレイが春日城に到着したときには、既に城中が臨戦体制になっていた。
 2人は城から支給された鎧兜を身に着けると、又兵衛の姿を探したのだが……

 

シン   「どこだ?井尻のおっさんは」
レイ   「む……いた。出撃準備の指揮をとっているようだ」

 

又兵衛  「ん?……おお、信にれい左衛門、お主たちも来たか。その鎧姿、なかなか似合っておるぞ?」
シン   「そんな事は別にいいんだけどよ、何なんだこの騒ぎは! あんた等また戦争がしたいのかよ!?」
又兵衛  「わしにそんな事を言っても仕方あるまい。
      こちらが戦いたくなくても、向こうの方から攻めてくるんだからの」
仁右衛門 「相手はまた岩月じゃ。あやつらめ、昔っからこの春日の国がよほど欲しいとみえる。
      殿も何度か和議を結ぼうと使者を送ったりもしたが、やつら一向に槍を収めようとはせん」
レイ   「それで双方、毎回たいした戦略も立てずに定期的に戦争を繰り返すのか……なんと不毛な」

 

又兵衛  「いいか!この度も前回と同じ野戦となる!
      信と仁右衛門はわしの槍隊に、れい左衛門は吉兵衛の鉄砲衆に加われ!
      敵の軍勢はすぐそこまで迫っておる!半刻後には出陣するぞ!」
仁右衛門 「うむ。了解じゃ若!」

 
 

シン   「こんな……こんな理由ごときで人は容易く殺し合いが出来るもんなのか?
      俺は何を信じて戦えばいいんだ……俺は……」
レイ   「俺もすぐに行かなくてはならんようだな……だがその前に、これを受け取れシン」
シン   「え?これって……ザフトの制式拳銃!? レイお前、どこでこんな物を?」
レイ   「なに、あの時訓練で使用したこいつを保管庫に返しに行く途中で俺はお前に声をかけたんだ。
      銃は2丁、25発入りのマガジンが4つある。お前に半分渡す……いざという時に使え」
シン   「すまん。ありがたく使わせてもらう……レイも死ぬなよ」
レイ   「ああ。じゃあな!」

 

 まあ……そんなこんなで、又兵衛に率いられたシンとレイはいざ出陣したのではあるが。

 

又兵衛  「ほらほらどうした信!遅れておるぞ! もっとしゃきっとせい!」
シン   「ぜえー、ぜえー……よ、よく言うぜ!自分だけ馬に乗りやがって……あんたも歩けーー!」
又兵衛  「はっはっはっ! その意気!その意気!」

 

シン   (く、くそ……鎧を着込んでの行軍がこんなにキツいもんだとは思わなかった……
      こんな調子で戦場に着いても満足に戦えるのかよ俺?)

 

   ※   ※   ※

 

 又兵衛に率いられた春日勢は、丸一日の行軍で戦場に到達した。
 半日で陣を築き、岩月勢と対峙する。そしていくさが……始まった。

 

ターン!ターーーーン!

 

シン  (まずは双方、射程が長い火縄銃と弓矢で応戦、その後に俺達槍隊と騎馬隊が突撃する……
     これがこの時代の基本的な戦い方か。
     原始的な武器を使うこの世界の戦争にしては、意外に合理的と言うかなんというか……あっ!)

 

シン  「おいおっさん! 味方がやられてるぞ!早く助けにいかないと!」
又兵衛 「落ち着け。全体的に見ればむしろこちらが押しておる。
     もう少しじゃ……もう少しで鉄砲衆と弓隊が活路を開いてくれる。
     それまでしばしのあいだ、待て、信」
シン  「しばし待てって……すぐ目の前で味方がバタバタやられてるじゃねえか!
     もういい!おっさんが臆病風に吹かれて動かねえんなら、俺1人でも味方を助けにいく!」
又兵衛 「ッ!動くな信! 動かばお前といえど容赦せん! 命令を聞かん者はこのわしが斬り捨てるぞッ!」
シン  「う……!(な、なんだ?おっさんのこの異常な迫力は……お、鬼?)」

 

又兵衛 「いいか信、いくさは1人で出来るものではない。
     どんなに1人が優れた能力を持っていようと、それだけでは決していくさには勝てんのだ。
     みんなで一致団結して力を合わせる……それでこそ勝てる。どんな強大な敵が相手であろうと、な」
シン  「みんなで……力を?」
又兵衛 「倒れていった者達も後に続くわしらを信頼し、命を賭けて敵の侵攻を防いでくれてたのだ。
     信よ……もうちょっと味方を、仲間を信頼せい。
     わしらの願い、わしらがいくさを戦う理由はみんな一諸なんじゃぞ?」

 

シン  (信頼……俺は、味方を信頼していなかったのか?
     たとえ目の前で味方が撃たれてもあえて助けない、そんな信頼関係が戦場にはあるってのか……?)

 

又兵衛 「ともかく、今はわしの命令あるまでその場所にて待機せよ。その時が来るまで微動だにするな」

 

 又兵衛がシンに声をかけたその直後、竹盾の隙間を通り抜けた無数の銃弾がシン達を襲った!

 

シン   「うわ!」
仁右衛門 「落ち着け!ただのまぐれ当たりじゃ!
      敵の鉄砲は未だ射的の外におる!動揺するのは敵の思う壺じゃぞー!」
シン   「ふう。俺に当たったりはしなかったか……ん?
      おい隣のヤツどうした……? わあ! し、死んでいるッ!」
仁右衛門 「ん? ふむ。敵の鉛玉を喰らってしまったようじゃな……運の悪い奴じゃて」
シン   「う、運が悪かったって……う、嘘だろ?
      ひ、人ってこんな、こんなに簡単に死ぬもんなのかよ?ほんの数センチ俺が左の位置に居たら……お、俺は……
      俺は今頃し、し、死んで……」
仁右衛門 「何を当たり前な事をいまさら言っておる?それがいくさであろうに?」

 

又兵衛  「よし……敵の前線が崩れ始めたぞ! 皆の者、突撃準備!岩月のやつらに目にモノ見せてくれようぞ!」
春日勢  「おおーーーーーー!!」

 

シン   (こ、恐い……!
      お、俺は死ぬのが!殺されるのが!戦争をするのが!今程恐いと思ったことは、ない!
      逃げたい……出来る事なら今すぐ逃げ出したい……!)

 

   ※   ※   ※

 

又兵衛 「騎馬隊、槍隊、全軍突撃ィ! 岩月の軍勢を蹴散らすぞ!」
春日勢 「おおーーーーーー!!」

 

 井尻又兵衛の号令の元、春日勢の主力が一勢に動き出した。
 多数の鎧がひしめき、旗指物が風になびく。それはまさに合戦の桧舞台ともいうべき壮烈な光景であった。

 

シン  「はあー、はあー、くそ!くそ!
     俺は将来ザフトの軍人になるんだぞ! こんな、こんな事ぐらいでビビっていられるか!」
レイ  「シン、ここにいたか」
シン  「レイ? お前、鉄砲隊にいたんじゃあ?」
レイ  「お前が心配になってな。とりあえず鉄砲衆の方はしばらく後方援護に徹するようなので、
     吉兵衛殿に頼んでこっちにまぜてもらったのだ」
シン  「そうか!レイが一諸なら心強い……い、行くぜ!」
レイ  「うむ。お互いまだこんな所で死ねん! 生き抜くぞ、シン!」

 

 シンとレイは槍を手に戦闘に突入した。
 いざ戦闘に入るとシンの耳には又兵衛の声も、レイの言葉も、何も聞こえなくなっていた。何故なら……目の前に迫りくる槍や刀を跳ね除けるだけで頭の中がいっぱいだから。そしてシンは今、いくさの中で2つの相手と懸命に戦っていた。
 シンの戦うべき相手。それは第一に敵の軍勢。それと第二に……シンの心に芽生えた、恐怖というやっかいな感情であった。

 
 

シン  (俺が……俺が恐怖に支配されている、だって? ならその恐怖を怒りと憎悪で塗り潰してしまえ!
     敵は憎むべき存在だ! 恐れを感じるべき存在じゃない!
     そうさ、殺しあうのに他に何を考える必要がある?
     殺せ! 殺せ! 殺せ! 
     敵は憎んで、怒りの炎で焼き尽くしてしまえ! でないと……でないと俺は!)

 
 

又兵衛 (己を支えるものがなくなってしまう、か?)

 
 

シン  「なっ!」
レイ  「……シン、シン!……ふう、やっと俺の声に反応したようだな。
     敵の軍勢は後退を開始したぞ。俺達の勝ち、だ」

 

シン  「……え? 勝った?俺達が? いつの間に……」
レイ  「いつの間にって、突撃してからもう1時間は戦い続けたんだぞ?
     まあ……シンはよほど集中して戦っていたようだから事態を把握していなかったようだがな。
     凄い戦いっぷりだったぞ? まさに鬼神の如き戦いぶり、だったな」
シン  「そう、か。生き残ったんだな俺達……そうだ。又兵衛のおっさんは? おっさんも無事なんだろうな」
レイ  「あのな……侍大将がやられたら、今頃俺達の方が敗走しているだろうが。
     大丈夫だ。かすり傷1つ負ってない。相当運が強いようだな……あの人も」
シン  「なら会いに行こうぜ?今から、又兵衛のおっさんにさ」
レイ  「ん?今から? 後の方がよくないか? あの人も戦後処理でいろいろ忙しいだろうし……」
シン  「いや、今だ。今すぐおっさんに会わなくちゃ。何故か……何故かそう感じるんだ。
     今おっさんに会っとかないと取り返しのつかない事になる。そんな予感がなぜか猛烈にするんだ……」

 

   ※   ※   ※

 

シン  「おっさん!おっさんは居るか!?」
レイ  「おいシン。
     仮にも又兵衛殿は俺達の総指揮官なんだから、そうおっさんおっさんと連呼するのはちょっと」
シン  「別にいいだろ……居た!あんな目立つ場所に1人だけでいるなんて。大将の自覚あんのか?あの人は」

 

又兵衛 「おお……信にれい左衛門。お主達大活躍だったそうだな? 話は聞いておるぞ」
シン  「そんな事はどうでもいいんだよ。それより……ん?」

 

 シンは又兵衛の背後に、多数の影を見た。
 それは岩月の放った刺客の集団だった。春日の国一の武勇を誇る、鬼井尻こと井尻又兵衛をを亡き者にせんとする為の……

 

シン  「危ねえおっさん!」

 

ターーーーーンッ!

 

又兵衛 「なに? む!曲者!」

 

 シンはとっさにレイから貰った拳銃で刺客の1人を撃った。
 仲間が撃たれた事に呼応して刺客達がその姿を現す。刺客の一団は人数にして十数人は居ようだ。3人ではとても太刀打ち出来ない……

 

シン  「イヤな予感がしたと思ったらこういうことかよ!
     おっさん!ヤツ等の狙いはおっさんだ!
     ここは俺達が食い止めるから、おっさんは近くの味方に助けを呼びにいけ!」
又兵衛 「し、しかし! それではお主達が……!」
レイ  「銃を持てばこの程度、俺達でも何とかなります!
     それより早く助けを呼んできて下さい! 刺客はこいつ等だけではないのかもしれません!」
又兵衛 「……分かった。すぐ戻る! 死ぬなよ……2人共!」

 

・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・

 

 ……わしは急いで仁右衛門たちに兵を集めさせ、信とれい左衛門を救うべく元の場所に戻った。だが……
 不思議な事に、そこに2人の姿は無かったのだ。あるのは信たちに撃ち殺されたと思われる刺客の遺体だけ。
 わしは懸命に2人を探したが、遂に信とれい左衛門に再会することは無かった。

 

 過ぎていく日々の中で、わしは時々考えてみる。彼等は何者であったのだろうか?……だが結論はいつも出ない。
 ただ1つ確かな事はわしがあの2人に命を救われた、という事だろう。あのとき信たちが居なければわしは確実に刺客達の手によって亡き者にされていたはずだ。

 

 飛鳥 信とれい左衛門……彼等は天がわしを生かす為に使わされた使者ではないのだろうか。
 わしは熟慮の末、そう考える事にした。

 
 

 ………後日、姫にそう話したら笑われたが。

 
 

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