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SEED-クレしん_16-035

Last-modified: 2009-04-04 (土) 13:11:29
 

 もう桜も見頃な今日この頃。いつものようにシンとしんのすけはシロをお散歩していた。

 

シロ 「きゃん!きゃん!」
しん 「もう〜!シロ勝手に行っちゃダメだってば〜〜」
シン 「うん……? 待ってくれよ、シロが吠えてるあの土手の下の草原のあたりになにか……」

 

 よく見ると人が倒れている。

 

シン 「う、うわッ大変だあッ! だ、大丈夫ですか?」
しん 「え〜また〜〜? なんか最近、妙に行き倒れが多くない?」

 

 シンが倒れている人物に近寄って、様子を調べる。
 どうやら気を失ってるらしいが……

 

シン 「……どうやら女の人みたいだな」
しん 「おお〜〜これまた綺麗なおねいさんですなあ〜〜♪」
シン 「もしもーし、生きてますかー? 死んでるなら死んでると言えー」
しん 「シン兄ちゃん、何その人の体アレコレ触ってんの………ラッキースケベ?」
シン 「外傷がないか、なんか身元を証明するもんがないか調べてンだよッ!」
しん 「で、そういうのなんかあった?」
シン 「……ないな。とりあえずどこか安静にできる場所に運ばないと。
    この近くでなんか知り合いの家とかあったっけ?」
しん 「うちまでは遠いしね〜 この近く………というと」

 

Wしん「「『デュナメス』……かな?」」

 

   ※   ※   ※

 

 ―ビューティーサロン『デュナメス』―

 

ニール 「……で、うちに担ぎ込んできたと。そういうわけかい」
シン  「どうせこの人も『ロックオンさんの世界』の人でしょ? いいじゃないスか」
ニール 「俺達のっ……て、そんなのわかんないだろうが」
シン  「でもほら、この人の絵柄はクレしんとも種とも違うし。やっぱ00の人っぽいじゃん」
ニール 「『絵柄』ってなぁ……見も蓋もない事言うなよ、お前……」
しん  「でさ、みんなこの女の人に見覚えない?」

 

リヒティ「う〜〜〜ん………見覚えないなあ……」
クリス 「ソレスタル・ビーイングの関係者かしら? なんとなく……そんな気がするんだけど」
ニール 「どのみち俺達じゃわからんな。
     仕方ない……今の時点で一番の情報通であるお嬢に来てもらうしかないか」

 

シン  「じゃあ俺としんちゃんで呼んできます」
しん  「オラたちにおまかせー♪」
クリス 「じゃあ私とリヒティは食べ物とか薬とか、とにかく色々買ってくるわ」
リヒティ「店長は留守番よろしくっス!」

 

 そして……みんな足早に『デュナメス』を飛び出していった。
 残ったのはべッドで眠る身元不明の行き倒れ女とロックオンひとり。

 

ニール 「……で、俺はどうしたらいいんだよ?
     ……ふう、仕方ないな。とりあえずお粥さんでも作っとくか」

 

   ※   ※   ※

 

 ……私、『イノベイター』でよかったと思ってる。
 そうじゃなかったら、あなたに会えなかった……この世界のどこかですれ違ったままになってた。
 ねえ……私たち分かり合えてたよね?
 あなたは頷いてくれた。
 私はもうそれだけで満足……充分に幸せだったわ。

 

 ……でも、私には悔いがある。
 イノベイターの使命を優先して自分の気持ちに正直になれなかったこと、あなたに銃を向けたこと、そして……
 できるなら私……あなたにもう一度……もう一度だけ会いたい、そして謝りたい。
 でもそれは。もう決して果たされぬことのない私のささやかな願いにすぎない……

 

 ・・・・・・・・・
 ・・・・・・
 ・・・

 

 トントントントン……

 

 ……なんの音だろう? なんかひどく懐かしいような音のような気がする。
 ああ包丁でまな板の上のなにかを切っている音ね……誰かが料理でもしているのかしら?
 次にいい匂いが私の鼻を刺激した。
 その時になってようやくお腹が空いてる事に気付く。死んでも食欲ってあるものなのかしら?

 

 ゆっくり目を開く……見慣れぬ天井が目に飛び込んできた。
 次に思考をめぐらす……私は生きているのかしら? あの状況で無事生還できたとはとても思えないけど……
 首を動かしてゆっくりまわりを見る……どこかしらここは?
 そして気付く……この音と匂いはこの部屋のすぐ外からきている事を。
 耳を澄ますと……かすかに鼻歌が聞こえた。私ははっとする。

 

 ありったけの力を込めて、私はベッドから転がり落ちた。
 確かめなきゃいけない……その一心で。思い通りに動かない体を引きずって、部屋を出る。
 そこに……その人は、いた。

 

 はじめに見えたのは後姿だった。でもそれだけで私にはこの人が誰なのかわかる。
 いつのまにか私の目から涙が溢れて。止まらなかった……
 会えた、あの人に再び……!
 あの人は私に気付いて振り返った。私は……よろける足を懸命に前に出し……

 
 

 愛しいライルの胸に飛び込んだ。

 
 

   ※   ※   ※

 

ニール 「な、なんだなんだッ!?」
??? 「ああ会えた……! もう一度ライル……あなたに!」
ニール 「ライルだって!? あんた一体……」

 

シン  「ただいま!超特急でリューミンさん連れて…………お、おっとこりゃ失礼」
しん  「おお〜〜ふたりガッチリ抱きあってアツアツですなあ〜〜ひゅーひゅー♪」
ニール 「ぬあ! ち、違……」
リヒティ「うわ、いくら美人だからってもう手を出してるなんて。店長あんたって人は……」
クリス 「………サイテー」
ニール 「ち、違う違う! 違うんだあああああ!!!」

 

??? 「あ、あなたは……ワン・リューミンさん?」
留美  「……しんちゃん達の話で見当は付いてたけど……やっぱり貴女だったのね……
     アニュー・リターナー」

 

 で、いつものかくかくしかじかタイムが終わり……

 

アニュー「……そうだったんですか……すいません、ライルのお兄さんだったなんて……」
ニール 「い、いや、わかってくれればそれでいいんだが」
留美  「私がプトレマイオスのクルーとして紹介した子よ。こう見えてもかなりの才女なんだから」
しん  「へえ〜〜」
クリス 「つまり、私達の後輩ってことか」
シン  「『イノベイター』って言われても、こうして見ると普通の人間と変わらないな。
     ま、ナチュラルとコーディネイターの違いみたいなもんか」
アニュー「それは……」
ニール 「深く考えない方がいい。ここはこういうノリなんだ」
アニュー「はあ……」

 

クリス 「で、あなたこれからどうするつもり?」
アニュー「え……そ、そう言われても。いきなり色々聞かされて、私自身どうしたらいいか……」
クリス 「まあ無理ないわよね。ならしばらくうちに居たら?」
アニュー「……いいんですか?」
リヒティ「全然おkですよ! むしろ美人が増えて嬉しいかぎり」
クリス 「リヒティ。ちょっとこっちにきなさい?」
リヒティ「ひっ! も、もしかして……ゲンコツぐりぐりの刑ですか!?」

 

アニュー「……ならしばらくの間、よろしくお願いします」
しん  「ほーい、春日部に一名様ごあんな〜い♪」

 

 こうして春日部にまた新しい住人が増えたのであった。

 

   ※   ※   ※

 

 ……その日の夜。
 『デュナメス』2階のベランダでひとり物思いにふけるアニューの姿があった。

 

ニール 「……どうした? 暗い顔してりゃ、せっかくの美人が台無しだぜ?」
アニュー「私………生きてるんですね」
ニール 「ま、一応はな」
アニュー「でも私、生き永らえても張りがないんです。だって……あの人がいないから……」
ニール 「……ライルのことか?」
アニュー「はい」
ニール 「ふう……まったく、我が弟ながら罪な奴だなあいつは。これほどの美人にここまで想われるなんて」
アニュー「私は生きている……でもこの世界にはライルがいない……
     離れ離れが運命ならばいっそ……あのまま死んでた方がよかった」

 

ニール 「…………たぶん、さ。俺もあんたも充分に自分の役目を果たしたんだろうな」
アニュー「え?」
ニール 「前にデュランダルっておっさんに聞いたんだけどな。この春日部って所は何故かそういう人間がよく流れ着くんだとさ。
     俺やあんた、クリスにリヒティに留美、紅龍……(注:ロックオンが知らないだけでネーナもいます)
     みんな精一杯生きて、戦って、なにかを成したんだろう。後の人間に託す何かを……だから生きてここに来た」

 

アニュー「私が……何かを?」
ニール 「ああ。しかしライルはここにはいない。
     たぶんあいつには、まだ向こうの世界でやらなきゃならない仕事があるんだろう」
アニュー「……」
ニール 「アニュー・リターナー。あんたがあいつに成した事を心の支えにして、な」
アニュー「あ……」
ニール 「そしてライルもやるべき事が終わったら、ここに来るだろうさ」
アニュー「そうでしょうか?」
ニール 「そうさ。こんなにいい女をあいつがいつまでもほっとくはずがないだろ? 俺達の流儀はひとつ。欲しいモノは」
アニュー「奪う。それがあの人……ライル・ディランディ……ふふっ」

 

ニール 「お、やっと笑ったな」
アニュー「ふっきれました。私、この街でライルを待つことにします。彼が来るまで一年か二年かわからないけれど……」
ニール 「可能性は高いと思うぞ。がんばれ」
アニュー「はい。それにしても……」
ニール 「うん?」
アニュー「お兄さんって本当にライルに似てますね」
ニール 「そうか? まああいつがジュニアスクールに入って以降、会ったことがほとんどないからよく分からんが……」
アニュー「ライルは言ってましたよ。出来のいい兄貴と比べられるのが嫌だから距離を置いたって」
ニール 「あいつ、そんな事言ってやがったか……」
アニュー「ん〜〜〜? どのへんが出来いいのかしら?」
ニール 「俺に聞かれても困るな〜」

 
 

 ……ライル。私はもう少しここで頑張ってみようと思う。
 そして、いつもあなたの無事を願ってるわ……
 いつかまた会える日を信じて……ね。

 
 

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