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Last-modified: 2010-03-09 (火) 20:49:29
 

”もしストライクが女の子と二人乗りだったら” 嘘ダイジェスト(?)
 もとい正式名称「キラ君がツンデレで怖いおねーさんに導かれていたら」

 
 

――C.E.71年、中立コロニーヘリオポリス。

 

地球連合軍とプラント軍ザフトの戦争が始まって数ヶ月、ついに永世中立を謳ったオーブ首長国のコロニーは戦渦に巻き込まれた。
燃え落ちる――ゴゥン、ゴゥン、と崩れるのは平和の鐘の音で、日常の終焉を意味する音だった。
燃え盛る戦場と化したコロニー・ヘリオポリス内部は、逃げ惑う住人たちと銃撃戦を繰り広げる両軍兵士によて惨状を成していた。
連合軍の新型強襲揚陸艦に運び込まれる予定だった地球側のMS――五機存在した<G兵器>――は、
ザフトの歳若い精鋭部隊によってそのうち四機が奪われ、残るはただ一機のみという有様。
描くべき物語は、ザフトの襲撃から生き残った連合軍パイロットとコーディネイターの少年の出会いから始まる。
パイロット――ヘルメットを被っているため顔は見えない――甲高いがシャープな声。

 

「おい、そこの少年。“こいつ”を見たな?」
「え、あ――はい! あの、この人が撃たれてて」
「っ! えいくそ、その人をこのMSまで運べ」

 

言われるがまま、キラ・ヤマト少年は撃たれた女性を背負い鋼鉄の巨人の腹へ移動。
一刻も早くアスランを問い詰めたい気持ち、早く避難用のシェルターに逃げたい気持ちを抑えてコクピットハッチまで歩んだ。
GAT−X105ストライク。X102デュエルと並んで、主力量産機のベース機として選ばれた機体だ。
高い汎用性とバランスの良さが特徴の機体だが、その最大の特徴とは――

 

「複座? どうして、MSなのに!」
「そういう乗り物なんだよ、少年」

 

ヘリオポリスの民間人、キラ・ヤマトは絶句する。
複座で動かす兵器に、パイロットが一人きり……どういう状況か理解したのだ。
どういうわけか遅れて到着した連合兵に指示されるまま、銃でアスランに撃たれた女性を抱えてコクピットに導かれていたが……!
気づけば負傷した女性と一緒に、後部のシートに押し込まれていた。

 

「ちょ、なんで僕が!」
「つべこべやかましいぞ……大尉殿が危険だ。
機体のドライバーは私がする、君はガンナーシートで大人しくしてろ!」

 

主電源の起動――戦闘用の装備をバックパックで換装するストライクは、他のGに比べパワーセルに余裕を持たせてある。
ストライカーパックのパワーセルと併せれば稼働時間自体はかなり伸びるのだが――今は装着する余裕がない。
上手く切り抜けられるといいが……と内心で冷や汗を流しつつ、連合のパイロットは鋭い目つきで計器を弄った。
OSの起動画面がモニターに映り、次々と機体の構成要素がグリーンであることが確認されていく。

 

―――――――

 

G eneral
U nilateral
N euro - link
D ispersive
A utonomic
M aneuver
___Synthesis System

 

―――――――

 

「GUNDAM……ガンダム?」

 

やむなくG兵器に乗せた民間人がOSの頭文字を見て呟いたが、パイロットの耳には届かなかった。
面倒な承認手続きをショートカットすると同時に、機体の駆動部が唸りを上げ、太い二脚が大地を踏みしめた。
刹那、爆発炎上する工場――業火の洗礼を浴びながら、GAT−Xシリーズ最後の一機『ストライク』は立ち上がった。

 
 

 
 

「君はコーディネイターなのか?」

 

――戦闘中に行われた非常識なOSの書き換え――
――操縦者(ドライバー)と武装管制(ガンナー)の連携――
――ただの素人とは思えないヤマト少年の働き――

 

その後、コロニー内部に侵入したザフトのMS『ジン』を辛くも撃破したストライクだったが、
意識を取り戻したラミアス大尉の指示でキラは拘束されることとなった。
戦闘の一部始終を目撃したうえ<G兵器>たるストライクに近づいた、彼の友人たちも同様の措置だ。
その最中である。連合のパイロットはキラに向け、そのような質問をした。
キラ・ヤマトは普段感じることのない負い目を感じ、そのパイロットから目を逸らした。
人形じみた端正な顔や工業カレッジに不似合いなまでに高い身体能力、そして圧倒的な演算能力……ほぼ、間違いあるまい。
そう思いながら連合のパイロットは遮蔽ヘルメット越しに少年を見つめた。
視線――キラの友人たちが声をあげる前に、彼自身が答えた。

 

「はい。でも、僕は、ザフトのやり方も嫌です……エイプリフールクライシスで、人が大勢死んだ」
「……すまん、職業軍人の悪癖だな」

 

エイプリフール・クライス……農業コロニーへの核攻撃に端を発した、プラント在住コーディネイターの核兵器への恐怖から、
地球圏の全土に核分裂抑制装置『ニュートロンジャマー』を撃ち込み、向こう三十年は核分裂反応を行えなくした蛮行。
エネルギーを核に頼っていた地球全体での死者数は億を軽く越えており、人口全体の5パーセント以上とも言われる。
溜息をついた後、ストライクのパイロットはヘルメットを脱いだ。

 

「え……?」

 

そこにいたのは――美しいと言って差し支えない女性だった。
漆黒の髪をショートヘアで切り揃え、鋭い目つきの瞳にアーモンド色を忍ばせた“女性兵士”。
キラたち工業カレッジの学生たちよりも年長ではあるが、それでも二十歳を超えたどうかといったところだろう。
“彼女”――パイロットスーツのせいか体の起伏が見られず、今の今まで男性と勘違いされていた――が己が名を告げる。

 

「地球連合軍G兵器パイロット、セレン・ハーミット少尉だ。先の助力に感謝する、ええと……」
「あ、キラ・ヤマトって言います……その、僕らは……」
「ヤマト少年。君たちが不用意にコレに近づいたのは、我々軍人としては見過ごせないことだ」

 

叱るような声音に、キラを含めたカレッジの学生が萎縮する。
それに構わずセレンは話を続けた。

 

「……が、ヤマト少年の協力もあって勝てた相手でもある。だから――」

 

――君たちは巻き込むまい。
彼女のそういう決意が叶えられることを、残酷な現実は拒絶する。
ストライクのレーダーが捉えた敵機――白銀に塗装されたMS『シグー』は、ヘリオポリス内部に侵攻した。

 
 

 
 

爆音。高推力偏向スラスターの生み出す圧倒的機動性――ずっしりとした装甲の分厚いジンに比べ、幾分スマートな機影。
MSシグーのバックパック、翼かマントのような推進器の詰まったエンジンノズルより、爆発的に炎が吐かれ加速した。
速い。ジンの発展型とは聞いていたが、ここまで速いとは。まだ互いに砲戦距離でないのが救いか。
敵の姿を確認したストライクの機内――ラミアス大尉の命令により、図らずもキラ・ヤマトと再び協働することとなったセレンは、
ガンナーシートに座る少年に詫びた。

 

「すまない……」
「今は、今だけは! ヘリオポリスを守りたいんです、だから!」

 

キラの言葉に沈黙すると、彼女は現在のストライクに装備されている武装に関する注意事項を思い出した。
なんとしてもコロニー内で使ってはならない武装だ。それほどの破壊力がアレにはある。

 

「現在の装備はランチャー、砲戦型だ。機動性では無重力区画を飛ぶ向こうが上、火力と防御はこちらが上。
だがこいつのメインアーム《アグニ》は、間違ってもコロニーで撃つな、いいな?」
「は、はい……!」

 

320ミリ超高インパルス砲《アグニ》……インドの火神の名を持つ超長距離狙撃砲。
動力をパワーセルに頼り推進剤も有限なMSにとっての弱点たる、MS母艦の砲狙撃を目的とした大火力の大型エネルギー砲だ。
砲身長20メートルを超すストライク最強の武装であり、その直撃はコロニー外壁すら穿ちかねない。

 

「頼んだぞ」

 

PS――フェイズシフト――装甲起動。
絶対実弾防御を誇る装甲がトリコンロールに色づき、アクティブモードに移行。
バーニアからの炎で廃墟と化したビルを盾に機動すると、上空のシグーが放った76ミリ機銃の砲火が、ビルを瞬時に砕いた。
砕け散ったビル街の合間を縫い、這い寄る炎。76ミリという常識外れの大口径機銃が次々に市街地をぶち抜いていく。
直撃はない。ただでさえ電力を食うPS装甲のことを考えると、直撃を避けるべきなのは明らかだったからこれでいい。

 

「調子に乗るなよ、ザフトの人形」

 

底冷えがするような声で呻くセレン。敵の一方的猛攻が気に食わないらしい。
ドライバーたる彼女の回避は妥当といえたものの、反撃しなければジリ貧なのは誰の目にも明らかだった。

 

「あたれ!」

 

ガンナーであるキラは肩に装着されたガンランチャーをロックオン、そこから対MS誘導弾を発射させる。
無線誘導であり電波妨害効果もあるニュートロンジャマーのため、射程が短くなっているのが難点だが、
高速で飛来するミサイルは有効打になり得る。無視するわけにもいかず、シグーが銃撃でそれを叩き落した瞬間。
もう片方の肩部ハードポイントに装着された120ミリ対艦バルカン砲が、恐るべき猛火を放った。
なにせジンやシグーのメインアームであるMS用突撃銃でさえ76ミリなのだ。
それを上回る120ミリ砲の威力はMSであろうとボロ雑巾のように砕きうる。
あるいはこの<G兵器>の力を侮ったか、慌てて回避に移ったシグーの右足を、120ミリ砲弾が毟り取った。
ガクン、と衝撃。被弾メッセージにシグーのパイロットである“ラウ・ル・クルーゼ”は舌打ちした。

 

「……どうしてなかなか、連合のパイロットもやるな。覚えておこう、青いMS」

 

コロニーに開いた穴よりオレンジ色のMAメビウス・ゼロが侵入してくるのを確認すると、
被弾のダメージから立ち直ったシグーは撤退を開始した。彼のMSがメビウスと擦れ違い撤退した刹那、
新型強襲揚陸艦アークエンジェルが岩盤を吹き飛ばして現れたことを考えるに、その引き際は見事なものだった。
アークエンジェルは対MS戦を意識した重武装の船である。その防御、機動、火力は従来艦の比ではない。
もしクルーゼが戦闘を続けていたならば、その武装の前に撃墜されていただろう。

 
 

 
 

その後、ザフト軍の苛烈な攻撃にヘリオポリスを巻き込むことを良しとしなかった連合軍は、
連合宇宙軍第八艦隊の待つポイントまで真っ直ぐに撤退を開始する。
幸いにもコロニーが崩壊しなかったため大量の避難民を乗せる必要もなく、
物資は事足りていたから胡散臭いユーラシア連邦の無敵要塞に近寄ることもなかった。
アークエンジェルはキラ・ヤマトとその仲間たちをなし崩し的に戦争に巻き込みながら、だが。
少数精鋭――奪われた<G兵器>すら投入――の敵軍が仕掛けてくる追撃をかわしながら、
連合に残された<G兵器>ストライクのセレン・ハーミットとキラ・ヤマトは激戦を潜り抜けた。
一人はナチュラルの大人、一人はコーディネイターの少年……かの歌姫との出会いもなく、少年は戦士として覚醒する。

 

地球衛星軌道での戦い。

 

「アスラン! 戦争をやめさせたいなら、君は銃を取るべきではなかった!」
《ならどうしろというんだ、母の死を引き起こした奴らを放っておけばよかったか!」

 

コクピットで青春してる会話を繰り広げる少年たち。

 

「そのくらい自分で考えろ――男だろ貴様ら!」

 

複座のガンダムのコクピットで、敵と会話する少年らにキレる女パイロット。
運命が違えば父の死を発端とし戦争に翻弄された少女、フレイ・アルスターの悲劇が防がれたのが救いか。
その後、コーディネイターを<G兵器>に乗せた咎で激戦区に送られながらも彼らは奇跡的に生還し続け、
いつしか連合の不沈戦艦と呼ばれることになった。
常に改良を続けられたストライクは戦場にあり続け、そして――。

 

再び宇宙に上がったアークエンジェルを待ち構えていたのは、ザフト最新鋭MS部隊。
核動力MS『プロヴィデンス』、GAT−Xシリーズの技術を応用した決戦機と、ビーム兵器を積んだ量産型機『ゲイツ』。
さらにストライク――今では改良され『ストライクG3』と呼称される――に撃墜されたGAT−Xの残存機。
パイロットの技量も高い、この大戦でのザフト軍精鋭の群れだった。
当初は連合の雑兵と生き残りの<G兵器>程度、と息巻いていたザフト側は、しかし圧倒的な怪物を前に壊滅する。

 

《な、なんだよこれ!》
《嘘だろ……っぎぎゃあああああああああああ》

 

ストライカーパックを強襲パッケージと位置づけ、MSの戦闘能力向上を目指したシステム――アサルトストライカー。
小型MAほどのサイズまで肥大化したバックパックは高性能推進器にパワーセルとミサイルユニットが装着され、
大型のビームキャノンモジュールが戦艦さえ真っ二つに引き裂いた。逃げ惑うMSはあっという間に撃墜され星の屑だ。
すなわち、スーパーコーディネイターとしての素質を戦闘方面で覚醒させたキラの対複数同時砲撃と、
敵の攻撃を先読みでかわすセレンの息のあったコンビネーション。
複座型MS最大の利点たる、ドライバーとガンナーの役割分担による効率的戦闘行動。
それは高機動で戦場を飛び回り、マルチロックオンによる死の雨を降らせる怪物を戦場に生み出した。
されど、対抗できる機体も存在した。すなわち無線端末兵器と重ビーム砲を備えたプロヴィデンスである。
圧倒的悪意――全方位から飛び交うビームのシャワー――量子通信によって操られる砲台の群れ。

 

《スーパーコーディネイター……知れば誰もが君を妬む――そういう存在なのだよ、君は!》
「たとえそうであっても、人はそれを乗り越えられる!」
《根拠のない妄言を! 君の存在こそ、犠牲を省みない人類の業そのものだ!》

 

小型攻撃端末ドラグーンの数十門のビーム砲、アサルトストライクの弾幕が飛び交い、互いの攻撃が相殺されていく。
ビームはミサイルと砲弾の嵐に遮られ、恐ろしいGの掛かる戦闘機動によって両者の距離が詰まった。
先程からセレンは一言も喋っていない。それが彼女なりのキラへの気遣いだ。
だから、少年は声を発した。

 

「それでも、人は人を愛することができる! やり直すことができるんだ!
クルーゼ、貴方の限界に他人を巻き込むなぁぁぁ!!」
《キラ・ヤマトォォォォ!!》

 

もはや距離が二〇〇メートルを切った。攻撃が当たらないのが奇跡に思えるほど。
否、被弾。機体本体はともかく、空のミサイルコンテナに次々と着弾していく。
モジュール化の進んだ攻撃ユニットを切り離し、加速・加速・加速――!
クルーゼのプロヴィデンスの砲撃によってストライカーパックが砕け散り、右肩をビームサーベルが抉る。
それでもなお、巨大な慣性質量の塊がプロヴィデンスに突撃した。
衝撃――閃光。ゼロ距離から発生した極短のビームランスは、見事にプロヴィデンスのコクピットだけを融かし潰していた。
ほとんど神業である。核動力の炉心を避け、コクピットのみを潰して機能停止に追い込むなど。

 

「……終わった。ありがとうございます、その――僕に付き合ってもらって」
「パートナーとの信頼を守っただけさ。工業カレッジの学生がここまでなるんだ、世の中わからないものだ」

 

敵軍は切り札を潰され慌てて撤退して行く。
時間が止まったようなストライクのコクピットで、少年は静かに呟いた。

 
 

「……あれ、ここってラブシーンじゃ」

 
 

そういうわけで、キラ・ヤマト少年に年上好き属性が付いたのは偶然に違いあるまい。

 
 

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