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Last-modified: 2009-06-08 (月) 01:51:12

SEED 戦後30年目の愛 序章

 

 

CE103年、秋 オーブ

あの大戦から30年が過ぎた。

「フレイ、もう僕は超えてしまったよ。父の年齢を」
「もし君との子供が生きていたら32歳になってたかな」
墓の前にたたずむ紺のスーツを着崩した男がそうつぶやいた。

「君の墓に来るのは久しぶりだね。ヒビキ家の墓はなれたかい」
帽子を脱いで、花を供えた隣の軍人風の男が
「閣下、そろそろよろしいですかな」
「ああ。」
「午後から代表質疑がありますので」
軍服姿の男が時計を気にしながらいった。
「さあお乗りください」
黒塗りの車が横付けされて、男は乗りこんでいく。

質素な服の男の名は、キラ・ヤマト

オーブ首長国連邦の准将閣下であり、摂政殿下であり、カガリ・ユラ・アスハの実の双子である。
ラクス・クラインの夫であり、大戦を和平に導いたフリーダムのパイロット。
スーパーコーディネーターで、ユーレン・ヒビキ博士の息子ということは公然の秘密であった。

「閣下、3ヶ月後の日本国の紀元2800年祝賀行事には摂政殿下として参加されるのですか」
「ああ。あれは僕の役目だからね。カガリにばかり負担はかけられない」

オーブの首長であるカガリには後継ぎはなかった。かといって養子も取らなかった。
カガリ自身はキラに全権を譲るつもりでいた。いや、正確にいえばアスハ家から英雄キラ・ヤマトのヤマト家に《禅譲》するつもりだった。
キラには幸い妻と三人の息子たちがいた。
その妻とは、かのプラントにおいて黄道政治同盟を立てたシーゲル・クラインの愛娘、ラクス・クラインであった。
ラクスは評議会の政治よりキラを選んだ。その結婚は愛ばかりではなくプラント・オーブ間の友好の懸け橋という極めて政治的な結婚だった。

フレイ、時間の流れは残酷だ。
何もかも変えてしまったよ。あの戦争さえなければ。
でもあの戦争があったからこそ学ぶものもあったし、僕は素晴らしい人を得たよ

30年、キラは政治の世界に身を投じた。
それは自身の平和への思いの表現だった。
プラントに白服待遇で迎え入れるという話もあったが、カガリのために、いや故国のために蹴った。
改めてオーブの国防大学校に入りなおし、参謀本部に入り、事務畑を歩いた後、国防次官を経て上院議員になった。
そして五大氏族の推薦を得て摂政殿下の地位に就いた。

 

 

ボロボロの僧衣を着た男に、背の高い男が二人、話し掛けて居た。
姿恰好からすると、ザフト軍人であろうか
一人は浅黒い肌に金髪、肌と同じように黒い服を着ている。もう一人は切り揃えた銀髪の髪を肩まで伸ばし、白い服を着ている。
ただ違うのは白い服の男は胸に紫色のバッジを着けて居る所だ。
銀髪の男が、不意に僧衣を着た男に声を掛けた
「おまえは何をしてるんだ、こんなところで!」
「イザーク、ディアッカ」
「アスラン、坊主の真似事なんかやめてザフトに戻って来い」
ボロボロの僧衣を着た男……
それは、ザフトの赤い騎士、アスラン・ザラであった。
この男が、自らの意思で去った軍に再び呼び戻されそうになっていたのだった……
「俺は、俺は、戻る資格なんてない」
前髪の殆どを失い、禿げ上がった頭部と額に深い皺が寄る。
その両目には涙が溢れている……
目尻を袖で抑えながら、ゆっくり話を始めた。
「俺は、俺自身の優柔不断さで、ニコルを、ミーアを、メイリンを失ってしまった。
それだけじゃない。この手は汚れてるんだ。おれには戻る資格もない」
「メイリンはあれは不幸な事件だ。おまえは悪くない」
「あれは俺がオーブの駐在武官じゃ、なきゃ起こらなかった。メイリンには、あいつには、腹に……」
アスランはイザークへと首を振り、復隊を固辞した。
「この、腰ぬけが!しっかりしろ」
「よせ、イザーク。妻と二人の子供を喪ったやつに言う言葉じゃない」
そっとディアッカが、助け船を出した
「煩い!お前は黙ってろ、ディアッカ
なんで貴様のような屑坊主のために、インドくんだりまで俺たちが来るしかなかったんだ?おれは評議会がある、ディアッカは士官学校の校長だぞ
お前がこんなところでくすぶってるから悪い
それになんだその頭と恰好は?そんなぼろきれはさっさと脱ぎ棄ててこれを着ろ!
お前には似合わん」
そういうと、鞄から真新しい黒い制服を出した。
アスランはなおも首を横に振った。

黄昏のなかで、男たちは立ち尽くしていた。

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