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SEED-IF_30years_07

Last-modified: 2009-07-19 (日) 05:52:48

―CE104年 2月9日―
深夜。
廃工場のようなガランドウの建物に男たちが数百人集まっていた。
集まった者たちにワインの小瓶が配られていく。
リーダーらしき人物が
「全員に回ったか」
と声をかけた。
そうすると強い返事が返ってきた。
男たちはワインを片手に乾杯の音頭を取った。
「ザフトよ、永遠なれ」
「プラントに栄光あれ!」
掛け声が続いたと、ワインの瓶を投げ捨てると声がかかった。
「列組め、行進」
隊列を組み、十数台並んだコンテナトレーラーに歩いて行く
鉄の箱を積み込みながら、男たちは真新しい軍服に身を包んだ。
ザフト正規軍の制服を着た兵士たちが次々にトラックに乗り込んでいく。
トラックのドアが閉まり、トラックが発信していく。

 

 

―翌朝―
―日本 千代田区―

朝、6時過ぎ
日比谷公園の辺りを年代物のスポーツカーが走っている。
車種はC5コルベット。エンジンこそ違えども、他は凡てオリジナル。
車は官庁街へ入り、外務省の方に道を変えた。
唐突に車が止まると、ドアが開き、男が降りてくる。
剃り上げた頭に黒い袈裟。履物は草履ではなくローファー。
その造りから見るとセメントではなくマッケイ式であろうか。
赤いサングラスをした男は庁舎の方へ歩いて行くと警官たちが遠巻きによって来った。
外務省の施設の前までくると、中に入ろうとしたところを警官に制止された。
警官が誰何してきた
「ご用件と御身分は」
「オーブ連合首長国、国家代表カガリ・ユラ・アスハ特別警備隊所属、アスハ家使用人、アレックス・ディノ」
そういうと男は制止を振り切って施設内へ入って行った。
何名かの警官は遠巻きにしながら後を追いかけ、警官の一人は無線で連絡し、指示を仰いだ。

そして施設内に入ると、受付の方に行き、こう叫んだ。
「オーブ連合首長国摂政殿下、キラ・ヤマト御夫妻は今、どちらにいらっしゃられるか、ご存じか。
お答え願いたい!」
受付にスーツを着た男が来て
「職務上、そのような事はお答えできません」
「私はオーブ連合首長国、元国家代表カガリ・ユラ・アスハ特別警備隊所属、アスハ家使用人、アレックス・ディノだ。
いわば殿下のご家族同様の人物です。
それに知らないとはどう言うことですか!!
責任者を出して頂きたい!!」
そこに防弾ベストを着こんだ略帽の制服警官数名が入ってきて
「アレックス・ディノさん、あちらでお話を伺いたいのですが……」
と、外に停まったパトカーを指した。
「私は2階のオーブ特別対策支援室に用があるだけだ。
何でもない!」
と言うと足早に外へ行った。

その騒ぎから10分もたたない間であろうか。
外務省前で人だかりができていると、数名の者が庁舎へ向かって入って来た。
警官ともみ合ってる僧衣の男に向かって怒鳴った。
その男はプラント評議会の議員、イザーク・ジュールであった。
「アスラン!こんなところで、貴様何をしているんだ」
「イザーク!!」
なんであいつがここに?)
一緒にいる男共はプラントの官僚達のようだ。
ニヤニヤ笑ってる奴もいる
俺は無様なんだろうなあ
そうこうしてると警官が話し始めた
「プラントのイザーク・ジュール議員のご知り合いですか」
偶然イザークとディアッカが数人のザフト高官らと共に非公式に外務省へ来ていたのだった。
「知り合いも何も、使節団の正式職員だ」
イザークは外交部のバッチをつけた男から書類を受け取ると警官に渡した。
警官はその書類を確認し、車載電話から連絡を取った。

10分ほどしてアスランは解放され、人だかりは消えて行った。
ディアッカは外務省入省許可のバッチをいじりながら
「何しに来たんだ?」
「キラの、キラに会いたかった。
あって本当の所を聞きたい」
イザークは
「馬鹿!
お前と違ってキラ・ヤマトは事実上の国家元首だ。
そんな人物に暇があるか、場所を考えろ。
日本に来てるのも遊び出来てるわけじゃないんだぞ。
お前というやつは……」
「あいつに確かめたかったんだ。
ただ……」
「駄目だディアッカ。
こんなバカは放って置こう」
イザークは捨て台詞を言うとそっぽを向いた
濃紺の外衣を纏った男が言った
「ジュール代議員、間もなく外務次官との折衝の時間です。参りましょう」
イザーク達は奥の部屋へと消えて行った。
一人その場に残されたアスランは、外へ歩いて行った。

 

 

―駐日オーブ大使館
東京、六本木。
同じの日の正午前ごろオーブ大使館はいつになく騒がしかった。
玄関に車が横付けされる。
車に乗り込もうとする一人の男
「キラ様!」
そう呼ばれてキラは後ろを振り向いた。
杖を突いた若い男と腰の曲がった老人が付いて来る。
タツキ・マシマとその息子、エイジ・マシマであった。
「マシマ、どうかしたのかい」
エイジ・マシマは
「お伝えして良いか判りませんが、ターミナルの情報に寄りますと明後日か、明々後日に何か騒ぎが起きるという不確定情報が入ってます」
「本当なの?」
タツキ・マシマは口を開き
「心配事もございましょうが、まず首脳会談で極東のザフト問題を解決するのが先かと……」
「わかったよ、ありがとう。タツキ・マシマ
もしもの為にパイロットと30機ほどMSを確保しておいて」
「わかりました」

 

―タツキ・マシマ―
ザフトのオーブ侵攻作戦の際に防空壕ごと死んだかと思われた男は偶然にも生き永らえた。
そして傷痍軍人として復員してきた息子エイジ・マシマと共に事実上の新国家代表となったキラ・ヤマトを老体ながら支えている数少ないオーブ良識派の生き残りであった。
セイラン家なきオーブは国際社会から孤立するかと思われたが、カガリの《御心労》によって政治は再び元老達の手に戻った。
そして元老達は、政治の民主化と国家経済の立て直しのため、その準備期間として制限君主制を選び、政治の安定化を図った。
カガリを引き続き名目上の君主として置きながら、キラ・ヤマトを摂政の地位につけさせた。
キラを外交の場に出したのは、他でもないタツキ・マシマであった。

 

エイジ・マシマは
「で、如何致しますか、その、ヘリオポリスの傭兵風情の件は……」
叢雲劾って人だよね、でも彼は最終的に連合にいて、東アジア共和国軍に引き渡された際に自分は日本人だと言ったんでしょ。
僕だってそう云う事を云う人を面倒見切れないな」
「恩赦要求は?」
「ウズミ様がしたことはよくは知らないけど、彼が日本人と自己主張して、日本政府が死刑判決を出してる以上、オーブの問題ではないし
それにカガリが何かしたそうだけど、今はそれどころじゃないし。
僕は、雇った人の手を噛むような人は信用できないなぁ」
「キラ様はなぜそのような態度を?」
「今回の極東の兵乱だって、ザフトも悪いけど、この粗悪な傭兵集団とジャンク屋が遠因じゃない……
ザフトと連合の間に入って掻き回してきた人達を何で助けてあげる必要があるのかな……
彼等にだって、ちゃんと咎は受けてもらうよ。僕達みたいに」
タツキ・マシマは纏めるつもりで
「たしかにあのイナゴ共のせいで、極東は痩せこけました。
害虫駆除をしなくてはなりません。
我等が日本に対して恩返しできるとすれば、汚れ仕事をせねばなりますまい」
タツキ・マシマは一言付け加えたかったが、彼はあえて言わなかった

 

自分で蒔いた種は自分で刈るべきです―と

 

 

CE104年2月11日
コズミック・イラという時代を生きる人々にとって忘れがたいあの忌まわしき開戦の日。
しかしながらこの3000年の歴史を持つ極東の帝国においては寿ぐ日。
日本建国の天皇である神武天皇が即位した日
国中において人々はこの即位を祝った。

夕刻、プラント評議会からの約1300人の大使節団が車列を組んで空港からプラントの臨時大使館になっていたザフト対日通商部の建物へ向かう
その岐路において人々が提灯を持って歩く姿に出くわした。
提灯行列というものを初めて見たイザークとディアッカは不思議な感覚に襲われた。
ザフトによる一党独裁の強権政治の中で育った二人にとって君主制とは悪という考えしかなく、有徳の君主の下での民族の団結というものを理解できなかった。
同乗してるザフト外務高官が言った
「こんな封建制の残滓に縋り付くなんって……」
後ろから声が聞こえ、彼は思わず振り返る。
そこには銀髪の中年の男が座っていた。
髪型は肩までで綺麗に切り揃えられている。
(議員のイザーク・ジュールか)
「羨ましいよ。民族を纏める存在があるのは……、俺達には錆びついた思想しかない……」
そう云いながら冷笑した。
「この天皇という存在への忠誠は些か宗教じみてます。
マルクスはこう書き記しています。宗教とは国家にとっての私事と。
そう考えるとこの問題は歴史が解決するのかと」
そういうイデオロギーじみた答えが前から聞こえた。
よもや運転手から帰って来ようとは……
「かもしれんな」
その場はそう答えて逃げることにした……

 
 

その夜、宮中で行われた晩餐会。
参加した数十カ国の親善大使、首脳達
大西洋連邦大統領夫妻、ユーラシア連邦議長、赤道連合首相など各国の要人が集まっていた
その中には近年表舞台から姿を消したブルーノ・アズラエルの姿もあった。
そういった列強や大人物の間にあってキラ達の扱いはその中で格別であった。
人口500万の小国オーブは約5億の人口を持つ大西洋連邦と同等の扱いを受けた。
それはキラ達が日本の主権回復の際に果たした役割に比例するものであった。
「あの時の小僧がこんなに偉くなるとはな」
キラは唐突に声をかけられ、振り向いた。
「あ、あなたは」
禿頭のガッチリとした体つきの老年の男が立っていた
「ガルシア司令!」
禿頭の男は
「今は司令官より上でな。連邦議会議長だよ。
キラ・ヤマト君」
隣のラクスを一瞥して
「ほう、ザフトの歌姫がこうなるとは。
世の中も狭いものだ」
そう云うと笑いながらその場を去った。

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