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SEED-IF_30years_14

Last-modified: 2009-08-03 (月) 22:17:35

観音開きのドアが開く。

 

地球連合軍大将の階級章を飾付けた軍服を着こみ、金モールの装飾が施された将官用軍帽を脇に抱え、禿頭の男が、入室して来た。
軍服姿だがベルトはしておらず、礼装用の剣を帯びてもいなかった。
「掛けたまえ」
そう云われるとジェラード・ガルシアは席に着いた。
目の前にグレープフルーツジュースが差し出されたが、邪魔だったので脇に退かした。
ガルシアは帽子を机に置いて、薄笑いを浮かべながら
「では、いったい今日はどの様な向きの話なんですかな、アズラエル翁」
「本題に入る前に、君は知っているかね、あの話を」
この中で最も年老いた人物であろう、ブルーノ・アズラエルは謎掛けの様な質問をして来た。
「なんのことですかな」
「知らんとは言わせんよ」
椅子に凭れ掛かりながら、質問に答えなかった。
業を煮やした会合の出席者の一人が呟いた。
「あのパトリック・ザラの息子ですよ」
それでも黙って、その喋っている男の方を見ていた。
「で、彼がどうしたんです」
ただ薄笑いを浮かべて椅子にもたれ掛かっている禿頭の男に我慢が出来なかったのだろう。
「貴方は知っているんでしょう!彼がどこで何を行おうとしているのかを」
ガルシアは氷の解け始めたジュースのグラスに手をやり、一口飲む仕草をした。
それでも焦らない。
「情報というものは只では得られません。其れなりの物、それに相当する条件、例えば貴方がたの知ってる重大情報、取引に値する対価というものが必要です」
「で、何が欲しい」
アズラエルは葉巻に火をつけながら囁いた
目の前の薄笑いを浮かべる禿の将軍に根負けしたように見えた。
禿の将軍は徐に右手を揚げて、天に食指を向けて、こう言い放った。
「いいですか。まず、現在認められているユーラシアの権益を西シベリアまでではなく黒竜江省まで広げて頂くことです。東アジアまでとは言いません。
次に貴方がたの持っている《特殊部隊》の兵士をお借りしたいのです。
100人とか、連隊規模とは申しません。一人、二人で十分です」
アズラエルは立ち上がり、部屋を歩き回った。
先の大戦で息子を失い、自信も政治犯として苦汁を舐めた老人には時間がなかった。
寝る間を割いても足りない時間、多すぎる仕事
若くて経験不足の政治家を支えるもどかしさ
身体が何個あっても足りないだろう……
(あの化け物どもをどうにかせねば……、しかし、まず、目の前の妖怪をどう扱うかだ…)
葉巻を2・3本吹かし、10分ほど経った頃、突然
「ユーラシアの権益はこの場で決めることではないので、今回は保留してもらうが善処する。特殊部隊は準備できるだけ用立てよう」
その返答に思わず渋い顔をしたが、それとて芝居。
この禿頭の軍人には大勝利だった。
歴代大西洋連邦大統領のアドバイザー的存在からユーラシアの権益に関する言質を取ったのだから。
―あの忌々しい爺もあと少しの辛抱だ―
そう思うと思わず笑みが零れそうになるが、俯いて誤魔化すことにした。

 

「では、本題に入りましょう」
そういってガルシアは立ち上がり話を始めた
「先日、パトリック・ザラの息子、アスラン・ザラですが……死んではいませんでした。
オーブ大使館でテロに会った後、引退して、インドあたりで仏教の僧侶をやっていたそうですが……
……その後の経緯は皆さん、ご存じでしょうが……
彼の目的は北京です」
声が上がり騒がしくなった。
オレンジの色眼鏡をかけた50前後の若い男が質問をしてきた。
大学教授風の印象を受ける。
話す言葉のなまりから東洋人かと思ったが、容姿を見ると東洋人ではなさそうだ
(この男、どこかで見かけたことがあるぞ……まさか)
「私達に解るように説明していただけませんか、ガルシア少将」
その男はアルテミス要塞時代の階級で彼に呼びかけてきた。
男の方に目が行った。
(まさか……)
ふと、記憶が蘇るような感じがした。

一呼吸、置いて尋ねた。
「君は第8艦隊のハルバートン大佐を知っているかね」
今、一番嫌いな国の《知将》の名前を出している
おそらく顔は歪んでるだろう……
男は呆気に捕られた表情をした
どうやら、この人物の秘密の糸口を得たようだ。
「ハルバートン大佐の部下にね、ある優秀な女性士官が居てね、名前はラミレスとか、ラミアスといったかね。特務大尉とも技術大尉だったとも聞いている」
額から汗を流している。
焦ってるようだ。あと一息だ…
メガネを直しながら、ふと呟いた
「マリュー・ラミアス大尉ですか」
その名前を聞いて、ふと思い出した。
―戦艦アークエンジェルの女艦長―
軍隊には似合わない美人大尉のことを
タイピストと思っていた女少尉を引き連れていたが……
(あの乳牛女か。副長もただの甘ちゃんだったな)
薄笑いを浮かべて振り向き、大げさに反応した
わざと話を逸らすために
「そうだ」
周りが騒がしくなった
「アークエンジェルの女艦長!」
何処からともなくそんな言葉が飛び出した。
わざと大声で、返した
「君はアークエンジェルの少年志願兵だったろう!裏切り者がどう言う具合で潜り込めたんだね」
立っている男はまだ黙ったままだ。
手元が震えている。
沈黙が続く。

不意に誰かが叫んだ。
「サイ・アーガイル君」

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