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SEED-IF_30years_15

Last-modified: 2009-07-18 (土) 02:56:48

アーサー・トラインは悩んでいた。
先次大戦中、勤務していた新型戦艦を沈めた男が、裏切り者が、《英雄》として、《政治》の世界に帰ってきたことを。
しばらく部屋を歩き回っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
返事をすると副官が何やら見慣れない男を連れてきた。
年恰好からすると熟練の下士官であろうか。
敬礼をし、男を立たせたままにすると副官から書類を預かった。
さっと目を通すと、ジュール隊勤務のアイザック・マウと書いてあった。
若い頃に火星人の世話をしたと経歴にあったが特には気にはならなかった。
「ようこそ、オセアニアへ。アイザック・マウ君」
アイザック・マウを席に着かせるとコーヒーを三人分用意し、テーブルに並べた。
副官がコーヒーを手に取ってアーサーに軽く会釈すると、緊張した様子のアイザック・マウに語りかけ始めた
「君も、なんだね。火星人の相手の次は、裏切り者の世話役かい……
外務委員会辺りでロシア人の思想的鍛え直しをしていたほうがよっぽどマシだろう」
アイザックは、コーヒーを砂糖を山盛りにして入れると一気に飲み干した。
そして口を開いた
「閣下、お言葉ですが、彼はパトリック・ザラの息子ですよ。年齢も年齢ですし、オーブとの柵も十数年ありません
自分の立場は分かってると思います。
裏切り者と呼ばれる一連の政治的間違いについては、その辺は自覚してると思いますが……
一言、私見を言わせて頂ければ、あの《種無しの男》の政治の悪さで彼はそうせざるを得なかったと私は思いますが」

―《種無しの男》とはギルバート・デュランダルの不名誉な二つ名であった……―

「君はね、彼を知らないんだよ。まあ、この際、その《種無しの男》の話は置いておくとしまして
軍を裏切る以前に家族すら裏切るような男ですよ。ザラ議長はともかく、聞くところによりますと、妻のね、メイリン君だって葬式すら出してやらなかったそうですよ。
彼女は私の教え子だからね、多少知ってますが、なんでもオーブに亡命してからもずっとザフトへの復職の手配をしてたそうではありませんか」
「でもジュール隊長、いや失礼、ジュール議員殿が……」
黙っていたアーサーが口を開く
「戦友だから特別な感情をお持ちなんでしょうな、ジュール議員は!」
しばらく黙りこんだ後、こう続けた
「任務を忘れないでほしい。あなたの任務はアスラン・ザラの監視・護衛。
裏切る素振があったら通報しろ。戦場で逃げるような真似をしたら構わず後ろから撃って欲しい
軍法会議の際は私が責任者の一人として弁護する覚悟はある」
そういうとアーサーは目の前で不安そうにする男を返した。
男が退室して行くのを見ながら、ふと呟いた。
「議員様も、もう少しマシなのを送って欲しいもんだ」
副官が囁く様に言った
「軍隊というものは巨大な官僚組織ではなく、お友達ゴッコなのでしょう。彼らにとっては」
「しかし私らが面倒見なくて良いんだから助かるよ」
「ま、外務省のチュウスケには頑張ってもらいましょうか」

 

 

アスランは気がつくと、狭い部屋の中に居て、ベッドの上で毛布に包まっていた。
着ていた筈の軍服は綺麗に畳んで机の上に乗っている……
窓の外を見ると、動いているようだ……そう思ってみると海の上を移動している
海が橙色に染まりつつある……黄昏時の様だ
(船に乗せられたのか)
起き上がり、軍服を着ようとすると書置きのようなものが置いてあった。
ピンク色の線が入った便覧に、オーブで使われている日本語で、しかも丁寧な字で書かれている。
アスランがどうして船に乗り、ここで寝ているのかという経緯について書いてあった。
最後の一文を見ると風花・アージャーと読める。
誰だか忘れていたが、しばらくして、マルキオが遣した、あの黒人の合いの子かと思い出した。
トランクと旅行かばんが複数置いてあるのを発見すると中から書類を探そうとカバンのものをとにかく取り出した。
その時、近くで打ち上げ花火のような大きな音が聞こえた。
2分もしないうちにもう一回その音が聞こえた。今度は随分近い。
廊下をかける音がする。人が寝てるかもしれないのに駆けだすとは、どんな馬鹿者だろう
ドアを開けてきたのはバンダナをした男。上は上半身裸で、下はステテコ姿だった。
「おい、お前何をしてる!」
「旦那!話は後だ!オーブ軍がこの船に臨検しようとしてる」
ステテコの男はロウ・ギュールだった。
「お前なんて恰好してるんだ」
「ちょっち、まあ、その話は後だ」
汗と混ざり合った不思議な臭いが鼻につく。
「アンタ、この船は何船籍だ?」
「え、あ、東アジア共和国船籍じゃなかったか?」
「どっちにしろ、ヤバいんだよ。オーブは東アジアとは断交中だ」
「判った。俺が何とかする。MSを出してくれ」
ロウが、ぎょろっと睨んできた
「本当か。ヤバいんじゃねえの。アンタザフトだろ。
まあいいや。前、話した通り、頭と腕はゲイツRに替えておいた。
変形は出来なくはないが、しないほうが良いな」
そのまま格納庫のような広いスペースに連れて行かれるとこう言われた
「この船、大型タンカーを改造したものだから、射出装置(カタパルト)はない。
格納庫の天井が開いたら、そこの搬出装置に乗っかってくれ。そのまま立ったまま上には出れるようにはなってる」
「武器は」
唐突に叫び声を出し
「いけねぇ。まだ完成してねえ
そこにあるザク用のマシンガン使ってくれ」
さっそく用意されたMSに乗り込み、起動するとザフト製を示す英語の文章が出てきた。

―ZGMF−KWM5632 SCREAM―
(スクリームか。嫌な名前だ)
搬出装置で上にあげられると、英語とオーブの公用語である日本語で停船を呼びかける放送が聞こえる。
アスランは放送装置を探した……
見つけた無線装置で、国際救難チャンネルにコードを合わせて準備した。
オーブの警備艇と思しき船もそう遠くはない距離にある。
(Nジャマーの電波妨害も少なそうだな……)
警備艇の単装砲が火を噴き、タンカーの周りに水柱が立った。
「こちら、オーブ海軍、そこの船籍不明の船に次ぐ。ただちに停船し所属国を明らかにしろ。さもなくば実力行使に出る」
放送が終わると同時に、M1アストレイとムラサメが数機寄ってくる。
甲板に出ると、オンラインにして呼びかけを行った
「私は、オーブ連合首長国のアスハ代表の元護衛官、アレックス・ディノ二佐だ。貴官らはただちに敵対行動を止められたい」
アスランはあえてオーブ時代の名前を使った。

―二佐とは主権喪失時代の日本の軍階級制度の呼称を真似たオーブ軍特有の呼称で、軍隊に於ける中佐に相当する―

返答の代わりに榴弾が飛び、直撃、炸裂した。
PS装甲の展開したコックピット周辺は問題なかったが、左腕が使い物にならなくなった。
メインカメラもいまいちだ……
「貴官たちは、オーブ軍の中佐に攻撃をするのか」
機器を見ると無線の返答ボタンが点滅している。ボタンを押す。
20代後半と思しき若者の声が入ってきた
「アンタ、死人の名前を使っておれたちを欺けると思ったか!」
「死人とはどういうことだ。俺は現にここにいる。映像を転送するから確認しろ」
モニターに顔を写した。相手の顔が映る。
オーブ軍のノーマルスーツにヘルメット。バイザーのせいで顔がわからない……
「おい、嘘はいい加減にしろ、クソ爺」
「なんだと」
「俺はアレックス・ディノ二佐の葬式で、ディノ二佐の土葬を手伝った男だ。
奥さんのメイリンさんとな、今オノゴロ島の土の中で寝てる人の名前を騙るな」
(俺が土葬された?どういうことだ?ありえない。
メイリンと墓に入ってる男は何者なんだ?)
「小僧、嘘は言うな。俺はぴんぴんしてる。写真を確認したろう」
「おい爺さん、アレックス・ディノ二佐はな、アンタみたいにマルハゲじゃなくて、その上ガリガリに痩せてもいなかったんだよ!
人をガキだと思って馬鹿にするのはよせ。今度は本当に発砲するぞ」
メイリンと結婚した後、体重が50キロ近く増えたが、言われるほど太ってた覚えもない。
たしかに若いころより30キロ近く痩せたが、その言い草はないだろう、と思った。
(俺はそんなに太ってたんだろうか……)
「銃を捨てろ」
別のパイロットが投降を呼びかけてきた。
(船の周りを囲まれている……)
後ろのハッチからMSの出る音がした
赤と白の混ざったボディーのアストレイシリーズのMSが立っていた。
そして腰にさした棒のようなものに手を当てて引き抜いた。
ギラリと光るその刀はジンシリーズの重斬刀とは違った形で様々な装飾が施してある。
そして両手で構えた。
その機体はアストレイレッドフレーム。ロウ・ギュールの専用機である
レッドフレームに一筋のビームが飛ぶ。
(駄目か!)
次の瞬間、太刀が光り輝き、仁王立ちするレッドフレームがあった。
その太刀は、様々な伝説を作ってきた宝剣ガーベラストレートであった
そしてしばらくの沈黙の後、オーブ軍は急に撤退していった。
アスランは久しぶりのMSの運転に疲れてしまい、ハンドルを放した。
機体はゆっくりと膝をつく様な形で甲板に跪いた
(何があったんだろう)
ともかく危機は去ったのだ。
「なにがあったんだ」
そうロウが訪ねてきた。
「こっちのセリフだ。それより俺が聞きたいのはアンタ、なんでステテコだけなんだ」
しばらく黙ると、一転して大笑いが聞こえてきた
「何がおかしい」
「アンタの、その能天気振りさ」
「え?」
アスランは増々ロウ・ギュールという男が解らなくなって来た感じがした

 

 

「どうゆうことですか!納得出来ません」
警備艇の艦橋に呶鳴り声が響き渡った
若い士官と思しき青年は制帽を床に投げつけた。
「納得いきません。あの船は船籍も偽ってる。乗組員は武器の不法所持、書類の偽造、詐称までやってます。ワッパかけて引っ張れるのになぜですか」
艦長が口を開いた
「あの日本刀を持った赤いMSが見えたろう。あれはロンド・ミナ・サハク様の食客で、ロウ・ギュールの物だ。
ミナ様から直々に連絡があり、これ以上は我々では手が出せない。後は内務府の仕事だ」
「上の命令だけ聞いていて、安全な仕事しかしなくて警備艇の船長?それでも警備隊員かよ!」
そこに立っていた軍人の一人が艦長に殴りかかろうとしたが、取り押さえられた
「俺は納得できません。ロンドの婆の食客だろうが、ジャンク屋だろうが、アレックスおじさんの名前を勝手に名乗る匪賊が許せません。
このまま野郎とっ捕まえなきゃ、インドで惨殺されたおじさんが浮かばれませんよ。畜生!」
彼の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
「ヤマト二尉、落ち着きなさい。私からキラ様には話しておくからここは耐えなさい。警備隊員なら。
軍曹、ヤマト二尉を営倉に連れて行きなさい」
「判りました、艦長」
軍曹は敬礼をすると、ヤマト二尉を連れて行こうとした
「親父に話したって変わるわけねぇだろう。今度会ったら絶対捕まえてやる」
そう捨て台詞をはいてヤマト二尉は連れて行かれた

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