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SEED-IF_30years_19

Last-modified: 2009-09-06 (日) 03:38:27

朝早くからキラは格納庫へ行っていた。
着古した地球連合の作業服に工具箱を台車に乗せて歩いて向かった
ZGMF-X20A Strike Freedom……
ラクスから貰った機体を整備するためである
嘗ての愛機であるストライクと違って少なくとも、この機体に関しては燃料補給の必要が無いが規格や生産基盤も異なる
特にレールガンと31mm機関砲は面倒なものだ……
地球連合に、この規格品は無い
面倒な機体を貰ったものだと思った時もあったが、何度も分解整備して見ると愛着が湧いた
ZAFT系特有のゴテゴテした背負い物も、助けを求める仲間にとっては神々しく映るとの話も聞いた
若い頃、シンに聞いた話だと羽を広げた悪鬼の様だと言っていた……
そんな物思いに耽りながら整備をしていたらレールガンの弾を詰めすぎてることに気がついた
《何してるんだ……僕は》

 

最終点検をしていた所、若い兵士が声をかけてきた
何でもストライクダガーを直してほしいとかという話だった
《僕を整備兵と勘違いしたのだろうか》
イーゲルシュテルンぐらいならという軽い気持ちで直してみたが、ストライクとまるで違う……
直し終わって、機体を振り返ると、まるで反応するかのように目が光った
《気のせいだろう……疲れているんだ》
この地域のザフトを倒せば戦争が終わると考えてる兵士達……
まるで若いころの自分を見ているようだ……

 

「ここに居ましたか、ヤマト准将!」
ふと兵士の呼びかけで現実に引き戻された
「どうした」
「ザフト兵がトンでもない物を持ってきました」

 

 

会議室に行くと金属製の樽が五つと親書を持参した兵士が数名来ていた
兵士の背格好からすると東アジアの兵士と最近ユーラシア連邦から離脱を表明したロシア人の姿も見える
手紙を渡されて封を切って読んだ手紙は、内包した彼の怒りを放出させるには十分な内容だった。
全身から湯気が立ち上るような、感じがした
そして又、その贈物は―その時はまだ知らなかったが―侮辱させるも同然の物だった
「アマギさん、これを回して」
キラはそう言って手紙をその場にいた数名の高官達に読ませた
親書を持参した兵士がこう投げかけて来た
「でも、こんな状況を作ったのは貴方ですよ、閣下」
《僕を馬鹿にして、士気を削ぐつもりか》
「それは貴方方に熨斗を付けてお返しします……
あと、あの樽の中身を説明してもらえませんか……
部屋に入った時から気になったんだけど、やけにお香の匂いがキツイ……」

 

「あれは私達の警告に従わなかった場合の貴方方の姿ですよ、キラ・ヤマト閣下」
「開けさせて、良いから開けさせて!」
恐る恐る樽を開けると塩で固められた西瓜大の物が姿を現した……
「醢(ししびしお)では」
醢とは……古代から行われてる支那の処刑の一つである……
「良いから早く!」
《そんな物、現代でやる訳あるまい》
塩を奇麗に払うと……それは数日前に送り出した交渉役の首であった
「!」「なんと!」
《提督!マサカ!》
気がつくと―部屋に飾ってあったのか、誰かが差していたのか判らない―刀で、交渉役の一人の首を切りつけていた
もし、キラが冷静であれば、その場で処罰を受けさせていただろう……
怒髪天を突くという様な状況では、総てが遅かった。
「これが私達の答えだ」

 

 

「キラ様、お手紙の内容はどの様なもので」
アマギは恐る恐る摂政の機嫌を伺った
「こんな恥知らずな文章が、まさか、アスランから来るとは思わなかったよ」
そういって准将は手紙を渡すと立ち去って行った

キラの話からすると

 

フリーダムとジャスティスを伴って、キラがザフト軍に投降すれば、キラの安全は保障する
ただしブルーコスモスと完全に縁を切ったことを証明すること
東アジアへの軍事介入を直ちに止めれば、オーブ攻めは当分延期する
連合から離脱すれば、オーブ近海での潜水艦での活動を停止する
戦艦エターナルは、総ての武装を原状に恢復した状態で返還しろ
ラクス・クラインとその一派については死罪一等を減ずる覚悟がある
マス・ドライバーはザフトに租借させる様、交渉の準備をしろ
ヤタノカガミの技術を供与しろ
上記の約束を守れば、キラの家族には一切手を出さない
ただし、モルゲン・レーテ等のアスハ家の財産に関しては、この通りではなく政治情勢によっては変化する
この約款は2年間ごとに更新・確認を含む

 

という到底呑めない内容だった。
手紙は日本語で、アスラン・ザラの直筆、英語とフランス語の写しが入っていたという……
アマギは、その話を聞いた瞬間、思わず背筋が寒くなるような感覚に陥った
ザフトの持ちかけてくる講和条件が余りにも厳しすぎることにショックを受けた
これでは戦わずして負けるようなものだ……

 

 

アマギは一頻悩んだが、仕方がないことだと割り切り、別なことが心配になった
今のキラ様がいなければ、だれがカガリ様をお支えするというのだ……》
キラが又、ヤキンから帰って来た時のように神経衰弱になったら……そんな心配が頭をよぎる
あれほどの戦士がいなければ士気は維持出来ないだろう
いても立っても居られずキラを探しに行ったが、偶然声がした
「自制しろと言って我々は何年自制してきたのですか、閣下!今が起つ時です」
「こっちは5人も殺されたんです、それに今まで何百人、いや何千人も殺されてます。この際、地球からザフトを駆除すべきです」
部屋のドアを開けると、すごい剣幕でガルシアや他の高級将校を言い合っているのが見えた
32年前の《アラスカ》より厳しいのか?
ガルシアと目が合ったアマギは部屋から出ていくよう目配せされた
これは間違いなく……闘いになる

 

《戦争だ》
三度、自分達の代でオーブを焼くような真似になろうとしてる……
大人しいキラですら怒りを隠そうとしない
あの時、自分がキラの友人をザフトへの使者に送らねば……
キラとの関係のある彼等なら、アスランと、ザフトと和解できたのではないかという期待感を持っていた
遠回しな策を立てた自分が浅はかだったか……
心に湧きあがる不安を押し殺して、その場を後にした

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