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SEED-IF_4-5氏_05

Last-modified: 2008-05-02 (金) 20:35:47

応接室でカガリ達とデュランダルはあらためて顔をあわせた。
カガリはスーツに着替えて身軽になっている。
「本当にお詫びの言葉もない。姫までこのような事態に巻き込んでしまうとは。ですがどうか御理解いただきたい」
デュランダルは軽くカガリに会釈する。
「あの部隊についてはまだ全く何も解っていないのか?」
「ええまぁ、そうですね。艦(ふね)などにもはっきりと何かを示すようなものは何も。しかし、だからこそ我々は一刻も早く、この事態を収拾しなくてはならないのです。取り返しのつかない事になる前に」
「ああ、解ってる。それは当然だ、議長。今は何であれ世界を刺激するような事はあってはならないんだ。絶対に!」
「ありがとうございます。姫ならばそう仰って下さると信じておりました」
デュランダルはにこやかな微笑を浮かべる。
「よろしければ、まだ時間のあるうちに少し艦内を御覧になって下さい」
「議長……」
同席しているタリアが驚いた声を上げる。
「一時的とは言え、いわば命をお預けいただく事になるのです。それが盟友としての我が国の相応の誠意かと」
タリアの反論を封じるように、デュランダルは立ち上がった。




「オーブのアスハ!?」
マユから、カガリがミネルバに乗って来た事を知らされてルナマリアが驚きの声を上げる。
「ええ、私もびっくりした。こんなところで先の大戦の英雄に会うなんてね。でも何? あのザクがどうかしたの?」
アレックス達が乗ってきたザクを、ルナマリアは気になるようだった。
「ああ……ミネルバ配備の機体じゃないから、誰が乗ってたのかなって」
「操縦してたのは護衛の人らしかったわよ。アレックスって言ってたけど、でも、もしかしたら、『あの』アスランかも!?」
「え?」
「アスハ代表がそう呼んだのよ、咄嗟に。その人の事をアスランって。そしたら、お付の人に彼はアレックス・ディノだって念を押されてー。怪しいでしょ? アスラン・ザラ、今はオーブに居るらしいって噂だし」
「アスラン……ザラ……」
そうつぶやくと、ルナマリアは何かを考えるかのように無言になった。




「しかし、この艦もとんだ事になったものですよ。進水式の前日にいきなりの実戦を経験せねばならない事態になるとはね」
デュランダルはカガリ達を連れて艦内を案内する。
「ここからモビルスーツデッキへ上がります」
「えぇ!?」
通常は新型艦の機密に当たる物。それをあっさりと案内されてアレックスは小さく驚きの声を上げる。
「艦のほぼ中心に位置するとお考え下さい。搭載可能数は無論申し上げられませんし、現在その数量が乗っているわけでもありません」
扉が開く。
「ぁ……」
「ぁぁ……」
カガリ達は目の前に広がる光景に息を呑む。
モビルスーツが並んでいる光景はさすがに壮観だ。
「ZGMF-1000。ザクはもう既に御存知でしょう。現在のザフト軍の主力の機体です。そして可変戦闘機型モビルスーツのセイバー。モビルスーツではどうしても戦闘機に負ける部分がありますからね。それを補完しました。モビルスーツ形態時の敏捷性と戦闘機形態時の加速性と言う特性の異なる高い機動力を使い分けた空戦能力は他の機体を凌駕しています。工廠で御覧になったそうですが」
「……」
「ええ。なかなか良いパイロットだと思いましたよ」
黙ってばかりのカガリに代わってユウナが答えた。
「そう評価していただけるとは嬉しいですね。後でパイロットに伝えてやりましょう」
「ところで、強奪された3機、この艦と一緒にお披露目するおつもりでした?」
「えぇまぁ、そうですが……」
ユウナの発言の意図がわからず、デュランダルは語尾を濁す。
「では、よろしければ、どのような特徴を持っているのかお聞かせ願えませんか?」
「まぁ、いいでしょう。カオスは宇宙での高機動戦闘を主眼に置いておいたモビルスーツです。分離可能な機動兵装ポッドを利用した立体的な攻撃が特徴でしょうか。アビスは水中用の潜水艇型モビルアーマーへの可変機能を有しています。今までの純粋な水中用モビルスーツよりも汎用性が高まっています。ガイアは陸戦型モビルスーツバクゥを参考にした4足獣型のモビルアーマー形態への可変機構を備えています。陸戦における機動力は純人型であるモビルスーツを凌駕するでしょう」
「ほうほう、どれも素晴らしい」
ユウナはにこやかに微笑んだ。
「ところで、先程アーモリーワンでも代表が話されましたが、先来からの我が国からの要求、『先のオーブ戦の折に流出した我が国の技術と人的資源の、プラントでの軍事利用の停止』、受け入れてもらえるのでしょうか?」
ユウナは笑顔を崩さず尋ねた。
「え? はぁ、ちょっと……それは前にも言いました通り、個人の自由意志でしている物を国の力で強制など……」
「では、その代わりにオーブに技術を提供して頂くと言うのは、どうです?」
「ほう? どのような?」
「例えば水中用モビルスーツの技術などはいかがです? ご存知の通り、先の大戦の後我が国も水中戦力を整えています。しかしそのモビルスーツは大西洋連合から購入した物ばかりでして。我が国が水中用モビルスーツの配備を自国で行えるようになるのは、プラントにとっても益ある物と思いますが? それから、我が軍でも可変戦闘機型モビルスーツを導入しましたが、セイバーですか、先程のあの戦闘機型になるモビルスーツも面白いですね」
「ほう……」
デュランダルのユウナを見る目に鋭い物が混じる。
「じっくり話したいですね、その事は。……しかし、やはり姫にはお気に召しませんか? こう言う話は?」
デュランダルは黙ったままのカガリに話を振る。
「議長は嬉しそうだな」
カガリはむっつりと答えた。
「嬉しい、と言う訳ではありませんがね。あの混乱の中からみんなで懸命に頑張り、ようやくここまでの力を持つことが出来たと言うのは、やはり……」
「力か。争いが無くならぬから力が必要だと仰ったな、議長は」
「ええ」
「だが! ではこの度の事はどうお考えになる!」
「ぁぁ……」
「あのたった3機の新型モビルスーツのために、貴国が被ったあの被害の事は!?」
「だから、力など持つべきではないのだと?」
「代表……」
アレックスがたしなめるが、カガリはすっかり熱くなっていた。
「そもそも何故必要なのだ! そんなものが今更!」


ほんとにねぇ。
ユウナは思った。
オーブも軍拡なんかより民生に資金を回したいのに……。
あのタケミカヅチもだ。一体何に使うのだ。
苦々しく最近就航したオーブの空母を思う。
オーブは空母なんか欲しくなかったのだ。すっかり高価になった化石燃料を使い、わざわざパトロールする場所など、ソロモン諸島の小国のオーブに在りはしない。
空母の建設費用の捻出に苦慮していた父、ウナトを思い出す。
オーブが空母を建設した理由は大西洋連邦の圧力だった。――お前の所も作れ、との。
大西洋連邦の目的は、軍事予算の確保。
どうやら最近またぞろ軍事拡張路線に入っている東アジア共和国の空母で仮想敵は十分だろう、とユウナは思うのだが、空母の建設技術が途絶していた東アジア共和国の作った空母などでは性能が違いすぎて予算確保のネタとしては今ひとつ、と言う事らしかった。
その点、大西洋連邦の技術が導入されたタケミカヅチは、なかなかの性能だった。
だが、その裏で支払ったパテント料を思うとまたむかっ腹も立ってくる。
タケミカヅチは一応艦載機も配備された物の、燃料がもったいないのでオノゴロ島近海で訓練に明け暮れるばかりである。
いっそ使い道がないのなら、大西洋連邦との付き合いでよそに売れは出来ないだろうが、レンタルにでも出せないもんかな……。
ユウナの思考が妙な方向へ向かい始めた頃、カガリは相変わらず熱弁を振るっていた。
「我々は誓ったはずだ! もう悲劇は繰り返さない! 互いに手を取って歩む道を選ぶと!」
「それは……しかし姫……」
デュランダルは困ったように苦笑いを浮かべる。
その時、デッキの下から声が聞こえてきた。
「さすが綺麗事はアスハの御家芸よね!」
「「ぁ?」」
カガリ達が下を見ると、そこには憎しみの篭った瞳でカガリを見つめる赤毛の少女がいた――


「ルナマリア!」
レイはルナマリア目掛けてデッキから飛び降りた。
その時警報が響いた。
『敵艦捕捉、距離8000、コンディションレッド発令。パイロットは搭乗機にて待機せよ』
「ぁぁ……」
カガリ達は息を呑む。
「最終チェック急げ! 始まるぞ!」
「だぁやべぇッ!」
「……っ」
ルナマリアはレイの手を逃れると、自分の乗機へと飛んでいってしまう。
「ルナマリア! 申し訳ありません議長! この処分は後ほど必ず!」
レイもお辞儀をすると自分の乗機へと向かう。
「……」
「本当に申し訳ない姫」
立て続けの事に言葉を失っているカガリに、デュランダルは謝罪する。
「ん?」
「彼女はオーブからの移住者なので」
「えぇ……!?」
「よもやあんなことを言うとは思いもしなかったのですが」
「ぁ……」
思いもよらない事にカガリは絶句した。




ミネルバがガーティー・ルーを捕捉した時、ガーティー・ルーでもミネルバを確認していた。
「やはり来ましたか」
イアンがネオに話しかける。
「ああ。まっザフトもそう寝ぼけてはいないという事だ。ここで一気に叩くぞ!」
ネオはいたずらを仕掛ける子供のように唇を歪めた。
「総員戦闘配備。パイロットはブリーフィングルームへ!」
そう告げるとネオはさっと席を立ちブリッジを出て行った。




「向こうも、よもやデブリの中に入ろうとはしないでしょうけど。危険な宙域での先頭になるわ。操艦頼むわよ」
「はっ!」
ここはすでに航行に危険なデブリ帯の近傍。タリアは何としてもここで相手の足を止める気だった。
「ルナマリアとマユで先制します。終わってるわね?」
「はい!」
「目標まで6500」
シンが緊張した声で告げる。
着々と、敵艦との距離が縮まっていく。
その時、ブリッジの扉が開く。現れたのはデュランダルだった。後ろにカガリ達3人を従えている。
「議長……」
「いいかな? 艦長。私はオーブの方々にもブリッジに入っていただきたいと思うのだが」
「え!? ぁ……いえそれは……」
さすがにブリッジに部外者を入れるのを、タリアは躊躇う。
「君も知っての通り、代表は先の大戦で艦の指揮も執り、数多くの戦闘を経験されてきた方だ。そうした視点からこの艦の戦いを見ていただこうと思ってね」
「解りました。議長がそうお望みなのでしたら」
「ありがとう、タリア」
「目標まで6000」
会話をしている間にも、敵艦との距離が近づく。
「ブリッジ遮蔽! 対艦対モビルスーツ戦闘用意!」
戦闘に備えて、ブリッジが沈みこんでいく!


「あの新型艦だって?」
出撃の準備をしながらシャムスが聞く。
「ああ。さすが最新鋭艦と言う所か」
スウェンが答える。
「ねえ、あの赤いの、来るかな?」
ミューディーが尋ねる。
「ああ、かなりの腕利きだったな。俺ならそうする。精鋭で一気に叩く」
「生け捕りにできるかな? できなきゃやっつけちゃってもいいけどぉ」
「ザフトを侮るな、ミューディー。俺達の任務は出てくる、おそらく精鋭の足止めだ」
「ああ、敵艦をやっつけるのは他の奴らに任せればいい。母艦さえ落とせばいくら腕利きだろうとバッテリー切れさ!」
力強くシャムスは断言した。


「アンカー撃て! 同時に機関停止。デコイ発射! タイミングを誤るなよ」
ブリッジでネオが矢継ぎ早に指示を飛ばす。
ミネルバを仕留める作戦の開始だった。




「マユ・アスカ、ザクウォーリア発進スタンバイ。全システムオンライン。発進シークエンスを開始します。お姉ちゃん、頑張って! ルナマリア・ホーク、セイバー発進スタンバイ」
シンがモビルスーツの出撃準備を進めていく。
「目標、針路そのまま、距離4700」
「ザク、セイバー発進!」
タリアが発進命令を下す。
「ガナーザクウォーリア、カタパルトエンゲージ」
マユのザクはガナーウィザードを装備する。
ウィザードシステム――ザクウォーリア、そして上位機種であるザクファントムの最大の特長であるバックパック換装システムである。用途の異なるウィザードを戦況や作戦目的に応じて交換する事で、ザクという単一の機種に複数の機能を持たせる事に成功している。
今回装備されるガナーウィザードは遠距離砲撃用であり、大型ビーム砲『M1500 オルトロス高エネルギー長射程ビーム砲』と専用エネルギータンクで構成される。
『マユ・アスカ、ザク、行きます!』
「続いてセイバー、どうぞ!」
『ルナマリア・ホーク、セイバー、出るわよ!』
セイバーに続いて、2機のザクが発進していく。


「ボギーワンか。本当の名前は何というのだろうね。あの艦の?」
ふいに、デュランダルがアレックスに話しかける。
「はあ?」
「名はその存在を示す物だ。ならばもし、それが偽りだったとしたら……。それが偽りだとしたら、それはその存在そのものも偽り、と言う事になるのかな? アレックス、いや、アスラン・ザラ君」
「……」
果たしてデュランダルは何を意図した物か……。わからないまま、アレックスは沈黙で持って答える。
「議長! それは……!」
カガリが焦った様に立ち上がりかける。
「御心配には及びませんよ、アスハ代表。私は何も彼を咎めようと言うのじゃない。全ては私も承知済みです。カナーバ前議長が彼等に執った措置の事もね」
「ならば、それを無にするような発言はしないで頂きたい。彼はもう、オーブ人アレックス・ディノとして生きているのですから」
ユウナが横合いから口を出す。
「いや、他意はないのだ、セイラン宰相補佐官」
デュランダルは慌てる様子も無くユウナに手を振ると、アレックスの顔を覗き込む。
「ただどうせ話すなら、本当の君と話しがしたいのだよ、アスラン君」
「……」
「それだけの事だ。ふふ」
アレックスは、無言だった。






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