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SEED-IF_4-5氏_09

Last-modified: 2008-05-15 (木) 18:28:06

休憩室は静まり返る。
「地球、滅亡……」
「だな」
「そんな……」
「はぁー、でもま、それもしょうがないっちゃあしょうがないかぁ?」
「……!」
カガリは、通りがかった休憩室から聞こえて来る会話に、足を止めた。
「不可抗力だろう。けど変なゴタゴタも綺麗に無くなって、案外楽かも。俺達プラントには……」
「くっ!」
「カガリ!」
アレックスが止めたが、遅かった。
「よくそんなことが言えるな! お前達は!」
カガリは休憩室に飛び込んだ。
「しょうがないだと!? 案外楽だと!? これがどんな事態か、地球がどうなるか、どれだけの人間が死ぬこ事になるか、ほんとに解って言ってるのか!? お前達は!?」
「すいません……」
不適切な発言をした張本人、メカニックのヨウラン・ケントが謝る。
「くふっ……やはりそういう考えなのか、お前達ザフトは!? あれだけの戦争をして、あれだけの思いをして、やっとデュランダル議長の施政の下で変わったんじゃなかったのかっ!?」
「よせよカガリ!」
アレックスがたしなめる。

 

マユはカチンと来た。
なんなの? このお姫様は。
「失礼ながら、よろしいでしょうか?」
「なんだ!?」
「ヨウランの発言が不適切であった事は謝罪致します。しかし彼も場を和ませようとしての事です。それを考慮せず、いきなり仲間内の会話にしゃしゃり出て頭ごなしに怒鳴りつける、しかも他国の人間がされるのはどうかと思います」
「な!? だけど私は!!」
「それから、『やはりそういう考えなのか、お前達ザフトは!』と言われましたね。『やっと変わったんじゃなかったのか』とも! お言葉ですが、宣戦布告されたのも、プラントに核を撃たれて民間人を虐殺されたのもプラントが先ですが! ニュートロンジャマーキャンセラーの技術が漏洩してから、すぐさま、また核攻撃されましたが! 私こそ聞きたい! 『地球に住む人々は変わったのか?』と! ザフトが地球などどうでもよかったのなら、前大戦時に、部下の反乱にも合わずにザラ議長は地球を滅ぼしていたでしょう! ともかくあなたがザフトに対しどう言う考えを持っているかはよく分かりました。この事は是非議長にもお伝えしたく思います」

 

「なんだとっ!」
「カガリ!」
マユの皮肉に激昂するカガリをアレックスが止める。
「マユ、言葉に気を付けろ」
ザフトもレイがマユをたしなめる。だが……。
「そうよぉマユ。この人偉いんですもん。オーブの代表でしたもんねぇ」
ルナマリアが、恨みのこもった視線で、挑発的な言動をし、煽る。
「お前ぇっ……」
「いい加減にしろ! カガリ」
「くっ……」
「君はオーブがだいぶ嫌いなようだが、何故なんだ?」
アレックスが、ルナマリアに尋ねる。
「昔はオーブに居たという話しだが、下らない理由で関係ない代表にまで突っかかるというのなら、ただでは置かないぞ」
「下らない? ……下らないなんて言わせない! 関係ないってのも大間違いよ! 私の家族はアスハに殺されたのよ! 父さんも、母さんも、妹のメイリンも!」
「ぅ……」
「国を信じて、あんた達の理想とかってのを信じて、そして最後の最後に、ボロボロで殺された!」
「え……」
ああ、そうか。オーブ攻防戦の……。
ユウナは得心がいった。
先ほどの口調だけは丁寧な少女より、よほどオーブを責める資格があるな。うん。
「だから私はあんた達を信じない! オーブなんて国も信じない! そんなあんた達の言う綺麗事を信じない! この国の正義を貫くって……あんた達だってあの時、自分達のその言葉で誰が死ぬ事になるのかちゃんと考えたの!?」
「……」
カガリは唇を噛み締め、俯く。
「何も解ってないような奴が、解ってるような事、言わないで欲しいわね!」

 

「君ね……」
ユウナは、割って入るとパシっと軽くルナマリアの頬を叩いた。
「ぁ……」
ルナマリアはあっけに取られたように目を見開き口を開ける。
「じゃあ、言ってあげるよ。まず君だ。地球連合に攻められたオーブの僕がこんな事を言うのもおかしいがね。第三者から見ればこうも見えると知っておきたまえ」
ユウナはマユに指を突きつけた。
「確かに宣戦布告をしたのは地球連合が先だ。しかし、それ以前にプラントの数々の違法行為がある。そもそもプラントは理事国が作り、理事国が運営していた、その名の通り工場だ。そこに集まった君らは言わば唯の雇われ人に過ぎない。理事国が運営していたからには規則がある。しかし、自治権を認められ、コンピューターに政治の候補者を選ばせると言う僕には理解できないプラント独自の運営をしていたからには、それも緩やかな物のようだったがね。だが、プラントは、その些細な規則さえも破った。戦略物資である食料を独自に運び込もうとし、プラントを違法に農業実験プラント――ユニウス7に改装した。一体なんだ? 君達は? 雇われ条件が気に入らなければ、他へ行けばいいだけだろう。それを人様の工場を乗っ取る? 独立? テロリストじゃないか! ……まぁ、そこはここまでにしておこう。次はヤキン・ドゥーエ戦役だ。君も言ったように、宣戦布告をしたのは地球連合だ。その後の攻撃は当然だろう。油断していた方が悪い。それにはるかに強い宇宙放射線が飛び交っている宇宙では核爆弾は唯の威力の大きい爆弾と言うに過ぎない。核攻撃をコロニー一基、それも実験施設に絞ったのは警告の意味もあったとも思える。次に、君らの反撃――ニュートロンジャマーの投下についてだ。血のバレンタインからエイプリルフールクライシスまで二ヶ月も無い。そのため僕は開戦前から地上侵攻のためにニュートロンジャマーを量産してた疑惑を感じてしまうのだが、どうかな? 血のバレンタイン2月14日――約一週間で戦闘への試験投入が2月22日、エイプリルフールクライシスが4月1日だ。そうそう、地球上へのニュートロンジャマーの投下が決議された時の議長は『穏健派』とされるシーゲル・クラインだったね。何の皮肉かね? 冗談かね? これは? 更に! その投下は地球上に無差別にだ! オーブも小なりと言えど被害を被った! 中立国になんの恨みがある!? 君達こそが地球上すべての人類に悪意があったと思われてもしょうがなかろう!」
「もういい! ユウナ、もういいから!」
激したユウナを見て自身は冷静になったのか。カガリがユウナの服の裾を引っ張る。だがユウナは止まらない。
「ふぅ。本当はもっと言ってやりたいが、一応ユニウス条約でけりがついている事だ。ここまでにしよう。次は君だ」
ユウナはルナマリアに向き直った。
「国の運営をしているとね、いつも感じているよ、自分の身体のようにね。つねにぎりぎりの綱渡り気分さ。政治家が国の頭なら、通貨や人材は血液、常に血液をもっと、もっとと叫んでいる地方、部門は手足だ。……あの時何があったのか話してあげよう。国の理想? そんな物、あの時一顧だにされなかったさ! なにしろオーブの中立政策自体が、単にオーブを戦争から遠ざけようとする、単なる一方策に過ぎなかったのだからね!」
ルナマリアは驚いた顔で、頬に手を当てユウナを見ている。
ユウナは続けた。
「オーブ本土の人口に対する軍人比率は14%。経済に影響を与えないぎりぎりまで徴兵していた。それでも軍は現役5万人、予備役まで召集してもやっと28万人。対して大西洋連合は平時の軍人比率がなんとたったの0.5%だ。それでも現役だけで100万人を超える。まるで相手になるわけ無いだろ。降伏する事は決定してたんだよ」
「……じゃあ、どうして最初から降伏しなかったのよ!?」
「最初から降伏しようと言う者もいたよ。それが、国民に最も被害が少ないと言ってね」
「だったら!」
「……だが、それは当時の状況ではオーブのコーディネーターを切り捨てる事になっていたとわかっているかい?」
「――!」
「国民を守らない国になんの価値がある? 結局、あの時の閣僚達は、ウズミ様は決めたんだ。コーディネイターも、誰も切り捨てないと――敗北するとも戦う事でオーブは全国民を守ると言う意思を示すと――。さぁ、教えてくれ。もっといい方法があったのなら。どうすればよかったのか」
ユウナの顔はどこか懇願しているような、顔をしていた。
「な――それを考えるのが政治家の仕事でしょう!? なんで私が考えなくちゃいけないのよ!?」
「……は。はははは!」
ユウナは笑った。
「いや、失礼。プラントでは成人だと言っても、君は、まだ子供なんだねぇ。世の中は、誰か英雄が現れて全て良くしてくれなくてはいけないと思っている。白馬の王子様も信じてるかな? 幸せはきっと誰かが運んでくれると信じて疑わない――」
「……なんで、あんたなんかにそこまで言われなきゃいけないのよー!」
ユウナが意識を失う前に見たのは、怒ったルナマリアの顔と迫ってくる握られた拳だった――

 

「…………」
ユウナが意識を取り戻した時、目の前は白いもやがかかっていた。それに、冷たい?
「気がついたのか?」
カガリの声だ。
「ん……まぁね。僕は一体どうしたんだ?」
「ばーか」
白いもやが、消える。白いもやの正体は、どうやらカガリが手に持っている白いハンカチらしかった。
「後で鏡を見てみろ。痣になってる。まだ冷やしとけ」
額に、再び濡れたハンカチが押し当てられる。
「まったく、馬鹿だよ。コーディネーターに喧嘩売るからだ」
そう言いながら、カガリはどこか嬉しそうだった。
「なに……。話がカガリの事になったからさ。これでも姫のナイトを自任しているんでね」
「ばーか」
カガリは笑ったようだった。
「……しかし、私はまだ未熟だな。お父様があんな事を考えていたなんて……。私はお父様の言った事だからと、中立政策を金科玉条のように思いすぎていたかも知れない」
「未熟を自覚できれば、一人前さ」
ユウナは、先の大戦の事を思い出していた。
予備士官として招集され、逸った自分。拡大された過失。
ユウナのかつての上官は、ユウナのした失敗すべてをユウナの前で一つ一つ指摘し、叱責した。
だが、戦争が終わった時ユウナの犯したミスをすべて被ったのはその上官だった。確実だと目されていた将への昇進をあきらめる事態になっても、ミスは一人の予備士官のしでかした事だとは言わなかった。結局彼はユウナの失敗すべての責任を負って、将になる事無しに退役した。
あの時から自分は変わったのだと、ユウナは思っている。
「君には僕がいる。僕の父もいる。君にこき使われるためにね。思う存分、こき使ってもらっていいよ」
「ふふ」
白いもやの向こうでカガリが吹き出したようだった。

 
 

「さてと、とんでもない事態じゃの」
ジブリールは北アメリカに渡り。とある邸宅に向かった。そこでロゴスの面々と顔を合わせる。
ロゴス――イルミナーティと言った方がいいだろうか。古い組織である。中世の石工組合が起源であるとも言う。中世において、キリスト教の大聖堂、修道院、宮殿などの建築、増築、修復などのプロジェクトは数十年、あるいは数百年もの年月要することも珍しくなかった。職人達は自分達の仕事の権利を守るため、仕事の方法を秘密にし、詐欺師に欺かれないように仲間内で握手の方法や独自の用語などの暗号を考案していったと言う。また、城砦などを建設した際に城の秘密を守るため口封じされる事がないように団結したのだとも言う。。イルミナティのシンボルはピラミッドに目のシンボルである。このシンボルはエジプトに由来し、ホルスの目と呼ばれる。このシンボルは権力構造のヒエラルキーと全てを監視する支配者を表しているとされる。大西洋連邦の紙幣にこのシンボルがある事は良く知られている。
「まさに未曾有の危機。地球滅亡のシナリオですな」
そう言いながら、のんきにビリヤードをやっている者も、いたりする。
「ふ。書いた者がいるのかね」
「それはファントム・ペインに調査を命じて戻らせました。一応。ちょうどユニウス7に近かった部隊がいるもので」
ジブリールは答えた。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。彼らの能力なら」
「なんぞ役に立つのかなそんなものを調べて」
「それを調べるのじゃないか!」
老ブルーノ・アズラエルが吼える。この館の主だ。
「しかしこの招集はなんだ、アズラエル。まあ、大西洋連邦を始めとする各国政府が、よもやあれをあのまま落とすとも思ってはおらんが。一応避難や対策に忙しいのだぞ、みんな」
「……この事態には、私も大変ショックを受けている。ユニウス7が、まさかそんな、一体何故とな?」
「前置きはいいよ、アズラエル」
「いいや! ここからがが肝心なのだ!」
「ん?」
「やがてこの事態は世界中の誰もがそう思う事となるだろう」
「んん……」
「ならば我々はそれに答えを与えてやらねば」
「んん」
「プラントのデュランダルは既に地球各国に警告を発し、回避、対応に自分達も全力を挙げるとメッセージを送ってきた」
「早い対応だったな」
「奴等も慌てていた」
「ならばこれは本当に自然現象という事かな? だがそれでは……」
「いや、そんな事も、もうどうでもよいのだ!」
「ほぉ」
「重要なのはこの災難の後、何故こんな事に、と嘆く民衆に我々が与えてやる答えの方だろう」
「やれやれ、もうそんな先の算段だか」
「無論、原因が何であれ、あの無様で馬鹿な塊が間もなく地球、我等の頭上に落ちて来る事だけは確かなのだ。どういう事だ、これは! あんなものの為に、この私達までもが顔色を変えて逃げ回らねばならないとは!」
「それは……」
「この屈辱はどうあっても晴らさねばなるまい。誰に!? 当然あんな物を解体もせずに後生大事にほおって置いたコーディネーターどもにだ。違うか? そもそも今回の事で奴らにユニウス7を管理する能力もなかったのは明らかだ!」
「いやぁそれは……」
「それは構わんがな」
まぁ、アズラエル老は前大戦で息子を亡くされたからな。ザフトに殺されて。
怒る気持ちも、ジブリールにはわかる。
「だがこれでは被る被害によっては戦争をするだけの体力すら残らんぞ」
「だから今日お集まりいただいたのだ。避難も脱出もよろしいがその後には我々は一気に打って出ねばなるまい。例のプランで。そのことだけは皆様にも御承知おき頂きたくてな」
「なるほど」
「強気だな」
「コーディネーター憎しでかえって力が湧きますかな、民衆は」
「残っていればね」
「残りを纏めるんでしょ?憎しみという名の愛で」
「ジブリール。先程から黙ってばかりじゃな。どう考える」
ジブリールに話が向けられる。
「んん……」
例のプラン――「武装解除、現政権の解体、連合理事国の最高評議会監視員派遣」などをプラントに、要求。要するに、理事国にとって真っ当な工場に戻すという事だ。だが……。おそらく受け入れられまい。その場合は、核ミサイルによるプラントの撃滅を図る計画だ。
まあ、いいけどな。プラントの奴らなど。
江戸時代の日本では、10両盗めば死刑だった。時代によっては、慎ましく暮らせば人一人が一年食べられただろうか?
それを考えると、理事国がプラントに注ぎ込んだ資金を考えると、プラント皆殺しでも、到底足りない。
……プラントとその同調者を、人類を滅ぼせないよう『確実に』無力化する。事を起こすに当たってこれは大前提だ。
どっちがいいのかな?
まともに戦って勝って、生き残ったプラント住人を二度と地球に被害を及ぼせぬようにするか?
……死体と同じくらい無力な生者を作るのは、結構大変な気がする。感情とか人道を忘れたら結局皆殺しが最適解になってしまうのではないだろうか。後はプラントというハードウエアの損失を我慢するかどうか……。
ジブリールは熟慮して、プランに賛成する。同時に、プラント以外のコーディネーターはむしろ積極的に保護する事を提案する。
強硬派にも穏健派にも配慮したその意見は受け入れられ、ちょっぴりジブリールの発言力が高まったりする。
セトナは悲しい顔をするだろうな。優しい娘だから。
ジブリールの胸が少し、痛んだ。

 
 
 

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