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SEED-IF_4-5氏_13

Last-modified: 2008-06-05 (木) 18:01:26

「やれやれ、やはりだいぶやられたな」
ジブリール邸のシェルターのモニターの並ぶ部屋。
この間、アズラエル邸で顔を合わせたロゴスの面々の顔が映る。いわゆるテレビ会議と言う奴である。
「パルテノンが吹っ飛んでしまったわ」
「あんな古くさい建物、なくなったところで何も変わりはしませんよ」
「バチカンは、なぜ無事だったのだ? 大きな破片が直撃のはずが……」
「暗黒の雷が地上から天空に放たれたと言うぞ」
「老魔法王の魔力か……」
「恐るべしヨーゼフ・ラッツィンガー」
「桑原桑原」
彼らは、この世に触れてはならない物事があるのを知っているのだ。
「で、どうするのだ、これから」
「デュランダルの動きは早いぞ。奴め、もう甘い言葉を吐きながら、なんだかんだと手を出してきておる」
「ジブリール、ファントムペインが面白い物を掴んだそうだな」
ブルーノ・アズラエルが言う。
「はい、皆さんのお手元にも、もう届くと思いますが。ファントムペインがたいそう面白いものを送ってきてくれました」
「ん?」
「これは?」
「おいおいなんだ?」
ロゴスの面々に送られた動画には、ユニウス7で行われた戦闘の記録が映されていた。
「フレアモーター?」
「やれやれ結局そう言う事か」
「思いもかけぬ最高のカードだな。これは。これを許せる人間などこの世の何処にも居はしない。そしてそれは、この上なく強き我等の絆となるだろう。今度こそ奴等の全てに死を。青き清浄なる世界の為に!」
ブルーノ・アズラエルは嬉しそうに言った。

 
 

「やはり駄目です。粉塵濃度が高すぎて今はレーザー通信も」
「そうか、すまない」
カガリはオーブ本土と連絡を取ろうとしていた。
「いえ」
「艦のチェックと各部の応急処置が済み次第オーブへは向かわせて頂きますわ」
タリアは言った。
「ああ、解っている。今更こんな所から話しをしたって、もうあまり意味はない事もわかってはいるんだがな」
「島国ですものね、オーブは。御心配も当然ですわ」
「到着したら、その勇気と功績に感謝してミネルバには出来るだけの便宜を図るつもりでいたが、これでは軽く約束も出来ないな。許してくれ艦長」
「いえ、そのような事は」

 

「ん?」
アスランがデッキのそばを通りがかると、外で何人か射撃の訓練をしていた。
「っあー……」
マユとか言ったか。集弾がばらけるので残念そうな顔をする。
「ん? あら!」
マユが、アスランに気づいた。
「訓練規定か」
「ええ、どうせなら外の方が気持ちいいって。でも調子悪いんですよー」
「ん……」
「あ、一緒にやります?」
「え……いやぁ俺は……」
「ん……。ほんとは私達みんな、貴方の事よく知ってるわ」
マユは突然アスランの話題を振る。
「え?」
「元ザフトレッド、クルーゼ隊。戦争中盤では最強と言われたストライクを討ち、その後、国防委員会直属特務隊フェイス所属。ZGMF-X09A、ジャスティスのパイロットの、アスラン・ザラでしょ?」
「……」
アスランはちょっと面映い表情をする。
「お父上のことは知りませんけど、その人は私達の間じゃ英雄だわ。ヤキン・ドゥーエ戦でのことも含めてね」
「えぇ……ああいやぁ……」
「射撃の腕もかなりものと聞いてますけど?」
そう言うと、マユはアスランに銃を差し出した。
「お手本! 実は私あんまり上手くないんです」
「ふふ」
アスランは銃を受け取る。そして射撃訓練装置のモードを調節し、標的が次々に出てくるモードにする。
訓練がスタートする。次々に出てくる標的を、アスランは、撃つ。撃つ。
全て、急所近くに当たっている。
周囲で見ている皆が、溜息をもらす。
「あぁ……」
「うわー、同じ銃撃ってるのになんで!?」
「銃のせいじゃない。君はトリガーを引く瞬間に手首を捻る癖がある。だから着弾が散ってしまうんだ」
「そうなんだ。ありがとうございます!」
「こんなことばかり得意でもどうしようもないけどな」
アスランは苦笑する。
「そんな事ありませんよ。敵から自分や仲間を守るためには必要です」
「……。敵って……誰だよ……」
「ぁ……」
いきなりの棘の入った言葉に、マユは言葉が出なくなる。
アスランは艦内に入ろうとする。そこにルナマリアが声をかける。
「ミネルバはオーブに向かうそうですね。貴方もまた戻るんですか? オーブへ」
「ああ」
「なんでです?」
「……」
「そこで何をしてるんです? 貴方は? 英雄とも呼ばれた貴方が、お姫様の護衛だなんて、似合いませんよ」
「……」
アスランは無言で艦内へ入っていった。
「ルナ」
マユは、ルナマリアに声をかけた。
「なぁに?」
「ルナ、アスランの事好きなの?」
「……ば……馬鹿言わないでよ!」
「そう? そうならいいけど……。あたしの方が先に好きになったんだからね」
「だから私はなんでもないって!」
「じゃあ、応援してくれるよね?」
マユの目がきらりと光った。

 
 

キラは、目を覚ました。
どれくらいの時間が経ったのだろうか。少し、眠ってしまったらしい。
窓の外を見ると、もうすっかり暗くなっている。水でも飲もうと階下に下りていくと、話し声が聞こえてきた。
キッチンの方だろうか。
「今まで、本当にありがとう……ラクスさん」
父が、自分の子供のような年齢の相手に、頭を下げた。キラはそんな父の姿を見るのは、初めてだった。
「あれも、感謝していると思います」
「……」
「しかしラクスさん」
「はい」
「私達は、もう疲れてしまった……」
「え……?」
「あれは、大切な物があると、それ以外を切り捨ててしまうような……そんな子でした。しかし、それもまた美徳ではないかと思っていた……。だが……」
父は顔を上げた。
「しかし、これからはあなたの幸せを追ってください……」
「え?」
「縛られてはいけない。それでは、あれと同じです、ラクスさん」
「キラはいつか回復します! もしかしたら……明日にでも」
「しかし、それは十年後かも知れない」
「……」
「だから……」
「……嫌です……私、嫌です!」
ラクスは烈しくかぶりを振る。
「私、キラの事……絶対に見捨てたく……絶対に……」
「ラクスさん、あなたは若いんだから、こんな風に時間を浪費してたら……」
それまで黙っていた母が、ためらいがちに声をかける。
「浪費だなんて……思ってません!」
「ありがとう……本当に……。しかし、キラはもう病院に引き取ってもらうことにしました」
「え……」
病院?
キラは不思議に思った。
僕はどこも悪くないのに。おかしな話だ。きっと勘違いだな。
「ですから……」
「そんな……」
訂正しないと。
キラはキッチンに足を踏み入れた。
「あのさ……僕、どこも悪くないけど……」
「キラ!」
三人の視線が俺に集まる。瞬間的に空気が変わる。ざらりとして、触れてはいけない空気に触れたような感覚。
「僕、病気なんかしてないから」
「あ、ああ……そうだな……」
「だから、病院に入る必要なんてない」
「わかった……わかったから、もう部屋に戻りなさい」
「おやすみ」
キラは、そのいたたまれない空気から逃げるように部屋に戻った……。

 
 

「面舵2度、減速更に20%」
アーサーが、オノゴロ島の港に入るための躁艦指揮を執る。
そう。ミネルバはとうとうオーブに着いたのだった。
「アイ。面舵2度、減速更に20%」
『オノゴロ、オートコントロール1より全ステーションに伝達。ズールアルファ、アライバルを確認。以後ズールアルファは誘導チャンネル、イオタブラボーにてナブコムとリンクする。入港シークエンス、ゴー』
「ザフトの最新鋭艦ミネルバか。姫もまた面倒なもので帰国される」
オーブ連合首長国宰相ウナト・エマ・セイランが誰ともなしにつぶやく。
「仕方ありませんよ宰相。代表だってよもやこんなことになるとは思ってもいなかったでしょうし、国家元首を送り届けてくれた艦を冷たくあしらうわけにもいきますまい。今は」
五大氏族マシマ家の族長、タツキ・マシマが答える。
「ああ、今はな」

 

「あ、ウナト・エマ」
出迎えの人々の中にウナト宰相を見つけると、カガリは声をかけた。
「お帰りなさいませ代表。ようやく無事なお姿を拝見する事ができ、我等も安堵致しました」
「大事の時に不在ですまなかった。留守の間の采配、有り難く思う。被害の状況などどうなっているか?」
「沿岸部などはだいぶ高波にやられましたが幸いオーブに直撃はなく。……詳しくは後ほど行政府にて」
「ザフト軍ミネルバ艦長、タリア・グラディスであります」
「同じく副長のアーサー・トラインであります」
タリアとアーサーがウナトに敬礼する。
「オーブ連合首長国宰相、ウナト・エマ・セイランだ。この度は代表の帰国に尽力いただき感謝する」
「いえ、我々こそ不測の事態とはいえアスハ代表にまで多大なご迷惑をおかけし、大変遺憾に思っております。また、この度の災害につきましても、お見舞い申し上げます」
「お心遣い痛み入る。ともあれ、まずはゆっくりと休まれよ。事情は承知しておる。クルーの方々もさぞお疲れであろう」
「ありがとうございます」
「では、代表。まずは行政府の方へ。ご帰国そうそう申し訳ありませんがご報告せねばならぬ事も多々ございますので」
「ああ、解っている」
「ユウナ。お前も来い」
「了解しました。あー、君も本当にご苦労だったねぇアレックス」
「いえ……」
「報告書などは後でいいから、君も休んでくれ」
「は……」
「じゃあ、カガリ。行こうか」
そう言うとユウナはカガリの背中に手をやる。
「あいや……あの……」
「はぁ……」
アスランは溜息をついた。

 

「でも、ほんとのところはどうするつもりなのかしらね」
その様子を眺めている男女がいた。
「ん?」
「セイランは元々大西洋連邦よりだわ。カガリさんが戻ったところで今のこの情勢では……」
「だろうな。とにかく、とんでもないことになったもんだよ。まったく……」
彼らは、先の大戦で活躍したアークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスと、エターナル艦長、そして、「砂漠の虎」と呼ばれたアンドリュー・バルトフェルド。
彼らは戦後、オーブに身を隠していた。

 
 

「なんだと!? 大西洋連邦との新たなる同盟条約の締結!? 一体何を言ってるんだこんな時に! 今は被災地への救援、救助こそが急務のはずだろ!」
行政府に戻ったカガリを、思わぬ案件が待っていた。
「こんな時だからこそですよ代表」
五大氏族長のタツキ・マシマは言った。
「うぅ……」
「それにこれは大西洋連邦とのではありません。呼びかけは確かに大西洋連邦から行われておりますが、それは地球上のあらゆる国家に対してです」
「……」
「約定の中には無論、被災地への救助、救援も盛り込まれておりますし。これはむしろそういった活動を効率よく行えるよう結ぼうという物です」
「いやしかし……!」
「はぁ……。ずっとザフトの艦に乗って居られた代表には、今一つ御理解頂けてないのかもしれませんが」
「ぁ!」
「地球が被った被害はそれは酷い物です。そしてこれだ」
「あぁ……」
モニターに映し出された物――それはユニウス7での戦闘。そしてフレアモーターだった。
「我等、つまり地球に住む者達は皆、既にこれを知っております」
「こんな……こんなものが一体何故……」
カガリはユウナの方を見た。
ユウナは、自分は知らないよ、と言うように肩をすくめて見せた。
「大西洋連邦から出た情報です。だが、プラントも既にこれは真実と大筋で認めている。代表も御存知だったようですね」
「ぅ……だが……でもあれはほんの一部のテロリストの仕業でプラントは……。現に事態を知ったデュランダル議長やミネルバのクルーはその破砕作業に全力を挙げてくれたんだぞ! だから、だからこそ地球は……!」
「それもわかってはいます。だが実際に被災した何千万という人々にそれが言えますか?」
「ぅっ……」
「あなた方は酷い目に遭ったが地球は無事だったんだからそれで許せ、と」
「ぅぅ……」
「今これを見せられ、怒らぬ者などこの地上に居るはずもありません。幸いにしてオーブの被害は少ないが、だからこそ尚、我等はより慎重であらねばならんのです」
「……」
カガリは黙ってしまった。
「理念も大事ですが我等は今誰と痛みを分かち合わねばならぬ物なのか、代表にもその事を充分お考えいただかねば。……ウナト宰相? 先程から黙っておりますが、いかがなされた?」
ウナトは閣議の間、じっと黙って腕を組んで目を瞑っていた。
「……代表が戻られて時間もない。考える時間が必要だろう。我々もまた、な。情報もまだまだ集めたい。話はまた、明日にしよう」
そのウナトの一言で、閣議はお開きとなった。

 
 
 

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