Top > SEED-IF_4-5氏_19
HTML convert time to 0.005 sec.


SEED-IF_4-5氏_19

Last-modified: 2008-07-17 (木) 18:01:10

「では、しっかりやって来い」
「はい、父上」
ユウナをある任務のためにシャトルに送り出すと、ウナトはジブリールに回線を繋いだ。
「どうしました? ウナトさん。我が国との同盟、決まりましたか?」
「いやあの、それがですね……」
ウナトはハンカチで汗を拭いた。無論、演技である。
「実は、いざと言う時、大西洋連邦への亡命の手はずをお願いしたいと……」
「……!? 一体なんなんです、急に」
「それが、その、オーブには未だウズミ派とでも呼ぶべき者達の勢力が強く……大西洋連邦と同盟の話が漏れますと、早速マスドライバー始め国内各所にテロの気配がありまして」
「せっかく再建したマスドライバーを? ウズミ派ってのは何を考えてるんです!」
「それでですね、名目だけでも中立にしてもらえない物かと……そうしないと私の身辺にも危険を感じまして、はい」
「名目だけ? 詳しく聞きましょうか」
……
数分後、回線が閉じた時、ウナトは満足そうに、笑みを浮かべていた。
その顔を引き締めると、別の回線を開く。
「私だ。ユーラシアの西部、中部と東部及び中東の独立派への資金と武器供与、いつでも開始できるようにしておけ。ああ、IRAや……」
ウナトはオーブを守るためのあらゆる方法に手をつけようとしていた。
誰もが忘れがちな事であるが、狸は立派な肉食獣である――。

 
 

宇宙――
ザフト軍事ステーション管制官では地球降下作戦の準備が始まっていた。
「しかし、なんとも篩った言い回しですな、積極的自衛権の行使とは」
「そう言ってくれるな。政治上の言葉だ、仕方ない」
ザフト司令官にリカルド国防委員長が答える。
「第一派で現在包囲されているジブラルタルとカーペンタリアから地球軍を追い払うと言うのはいいとしましても、その後は?」
「さあてどうなるかな。無論我々とて先の大戦のような戦争を再びやりたいわけではない。国民感情を納得させられるだけの上手い落としどころ見つけ、戦闘を終結させて後は政治上の駆け引き、と言う事になるのだろうが、またも核を撃ってきたナチュラルに対する憎しみは最早消えんだろうな」
「でしょうな」
「議長のお手並み拝見、と言う事になるか、その後は……」

 
 

呼び鈴が鳴ったので、アスランはドアを開けた。外出にプラントの者が付く手筈になっていたのだ。
外にいたのは……
「イザーク!」
「貴様ぁ!」
イザークはアスランの服の襟を掴み喉を締め上げ、部屋の奥へと連れ込む。
「あ……うわ……」
「一体これはどういう事だ!」
「ちょっ、ちょっと待ておい……」
アスランはやっとイザークを振りほどいた。
「何だって言うんだいきなり!」
「それはこっちのセリフだアスラン! 俺達は今無茶苦茶忙しいってのに、評議会に呼び出されて何かと思って来てみれば貴様の護衛監視だとぉ!?」
「ええ?」
「何でこの俺がそんな仕事の為に、前線から呼び戻されなきゃならん!」
「護衛監視?」
「外出を希望してんだろ? お前」
もう一人、外にいたディアッカも部屋の中に入ってくる。
「ディアッカ!」
「おひさし。けどまあこんな時期だから、いくら友好国の人間でも勝手にプラント内をウロウロは出来ないんだろ」
「ぁ……ああ……それは聞いている。誰か同行者が付くとは。でもそれが、お前!?」
「そうだ! ふん!」
「……」
「はぁ〜」
相変わらずつんけんしているイザークにディアッカはため息をついた。

 

「ま、事情を知ってる誰かが仕組んだってことだよな」
エレベーターを降りながらディアッカが言う。
「……ぁ! ……はぁ……」
アスランの脳裏にデュランダルの顔が思い浮かぶ。アスランは微笑んだ。
「それで何処行きたいんだよ」
「これで買い物とか言ったら俺は許さんからな」
「そんなんじゃないよ。ただちょっと……ニコル達の墓に」
「「……!」」
「あまり来られないからな、プラントには。だから行っておきたいと思っただけなんだ」

 

アスラン達は車を借り、ザフトの軍人墓地へ着いた。
ミゲル・アイマン、ラスティ・マッケンジー、そしてニコル・アマルフィ等、先の大戦で亡くなった仲間達の墓に花束を置く。
「積極的自衛権の行使…やはりザフトも動くのか」
アスランが二人に尋ねた。
「仕方なかろう。核まで撃たれてそれで何もしないと言うわけにはいかん」
「……」
「第一派攻撃の時も迎撃に出たけどな、俺達は。奴等間違いなくあれでプラントを壊滅させる気だったと思うぜ」
「で、貴様は」
「え?」
「何をやっているんだこんな所で」
「ぁ……」
「オーブは? どう動く!?」
「……まだ分からない」
「くっ……。戻ってこい、アスラン!」
「……!」
「事情は色々あるだろうが俺がなんとかしてやる。だからプラントへ戻ってこい。お前は」
「……いやしかし……」
「俺だって、こいつだって、本当ならとっくに死んだはずの身だ」
ディアッカが口を挟む。
「ぅ……」
「だが、デュランダル議長はこう言った。『大人達の都合で始めた戦争に若者を送って死なせ、そこで誤ったのを罪と言って今また彼等を処分してしまったら、一体誰がプラントの明日を担うと言うのです。辛い経験をした彼等達にこそ私は平和な未来を築いてもらいたい』とな。だから俺は今も軍服を着ている。それしか出来ることがないが、それでも何か出来るだろう。プラントや死んでいった仲間達の為に」
「イザーク……」
「だからお前も何かしろ」
「……」
「それほどの力、ただ無駄にする気か」
「ふ……」
「何がおかしい」
「俺は、ザフトのアスラン・ザラだ」
「そうだ、戻って来い!」
「いや、それがわかるのに時間がかかっちゃったな、とね。ははは」
上を向いて、アスランは笑った。

 
 

「はい、デュランダル議長にアポイントを」
アスランは、議長に連絡を取った。

 

「良く来てくれた、アスラン」
デュランダルが言った。
「議長。議長の言っていた事……インパルス、ありがたくお借りします」
「うむ。制服を用意しておいた。着てくれたまえ」
「はい。ありがとうございます
……」
「わぁぁ!
制服に着替えたアスランを見てミーアが歓声を上げる。
「これを」
デュランダルは何かの襟章を取り出した。
「これはフェイスの!」
「君を通常の指揮系統の中に組み込みたくはないし。君とて困るだろう。その為の便宜上の措置だよ。忠誠を誓うという意味の部隊、フェイスだがね。君は己の信念や信義に忠誠を誓ってくれればいい」
「……議長……」
「君は自分の信ずるところに従い、今に堕することなく、また必要な時には戦っていくことの出来る人間だろ?」
「そうでありたいと思ってはいますが」
「君になら出来るさ。だからその力をどうか必要な時には使ってくれたまえ。大仰な言い方だがザフト、プラントの為だけではなく、皆が平和に暮らせる世界の為に」
「はい!」
「オーブの情勢も気になるところだろうから、君はこのままミネルバに合流してくれたまえ。あの艦にも私は期待している。以前のアークエンジェルのような役割を果たしてくれるのではないかとね。君もそれに手を貸してやってくれたまえ」
「はい!」

 

アスランは格納庫へ向かった。
機動力強化用のシルエット「フォースシルエット」を装備する。
「アスラン・ザラ、インパルス、発進する!」
目指すは、地球――

 
 

「ん? あれ、誰?」
マユが言った。ルナマリアがマユの視線の方を見ると、恰幅のいい男性が歩いてきた。
「あれ……オーブの氏族長の服よ」
「あらら。いよいよ最後通告かなぁ」
「……」
「結構好きだったのにな、この国。あ、ごめん、ルナマリアには辛いね」
「いいわよ、別に……」
ルナマリアは横を向いた。

 

「わざわざすみません、ご足労頂いて」
「いや、大切な事ですので直に伝えないと」
応接室に通されたウナトは答えた。
「では……早速ですが。今後のオーブは、中立を貫きます」
「ええー!」
アーサーが驚く。
「アーサー! ……本当ですか?」
「本当ですとも。ただ、問題もある」
「なんでしょう?」
「わが国の法により、交戦国の艦船はわが国の領土に24時間しか留まれない」
「あ!」
――ウナトが宰相になってから、オーブは「他国の軍隊を領海に入らせない」と言う対応を取りやめていた。
それを唱えたウズミの時代に、すでにオーブの都合で恣意的に運用され、空文化していたと言う事もある。
「まぁ、修理などで出航できない場合、相手国……この場合はオーブですな……の承認があれば引き伸ばしも可能だ。そしてオーブはそちらから要請があった場合、承認する気でおります」
「ありがたくあります」
「もう一つ。オーブ自身は中立ですが、地球軍側に義勇兵を出す事になるでしょう。貴艦と戦う事になるやも知れん」
「それは……」
「気にせんで下さい。それが世の中です。そこで、話は元に戻るのです。……いっそ、戦争終結までオーブに留まりますか? 我々としてはそれでも構わない。ミネルバへの警戒を名目にオーブ義勇海軍は領海外に遊弋させておくだけで済むかも知れない。オーブの血は流れずに済むかも知れない」
「それは……しかし……」
「ま、無理でしょうな。では、善意の警告です。出航するなら早い方がいい。現在もカーペンタリアを包囲している地球軍海軍から、フリゲート艦がこちらに向かって来ています。数は8隻。ミネルバがこのままここに留まれば、包囲の網もきつくなるでしょう」
「……よろしいのですか? そのような情報?」
「あなたはこの話を誰にも言わない。私もこのような事があったなどと話さない。それでよろしい」
「ありがとうございます」
「修理させて頂いた者として、ミネルバならばその程度の相手、振り切れると思っていますが、もし、無理なようなら、思い切ってオーブへ引き返してもよろしいですよ」
「いいのですか?」
「ミネルバの出航の時、我が海軍も出航します。先頭艦の中身は無人です」
「無人……ですか?」
「もしオーブ海軍艦艇が、ミネルバに攻撃を受けたら、オーブは当然の権利として貴艦を攻撃する権利を得る。まず降伏を勧告する事になるでしょうな。受け入れられなければ攻撃です。いいですな。オーブの軍艦艇に攻撃を受ければ降伏を勧告する」
タリアはウナトの言外の意味を悟った。もしミネルバがオーブ軍に降伏すれば、ミネルバはオーブの物となる。乗員は拘束されるだろうが、安全は保障される。
タリアは自然と頭が下がる。
「何から何まで……ありがとうございます!」
「では、話はそんな所です。また、落ち着いたら会いたい物ですな」
「ええ、ぜひ!」

 
 
 

】【戻る】【