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SEED-IF_4-5氏_21

Last-modified: 2008-07-31 (木) 18:15:09

「駄目ですね。地球軍側の警戒レベルが上がっているのか、通信妨害が激しくレーザーでもカーペンタリアにコンタクト出来ません」
バートはタリアに報告した。
タリアはため息をついた。
出航に当たってカーペンタリアの了承を取りたかったのだけど……。
「いいわ。命令無きままだけど、ミネルバ明朝出港します」
「艦長……」
「全艦に通達。出れば遠からず戦闘になるわ。気を引き締めるようにね」
「はっ!」

 

『……今回の地球連合とプラントとの開戦について、ウナト・エマ・セイラン宰相はオーブは中立を維持するとの方針を表明……』
「へぇ、以外だったな」
休憩室でテレビを見ていたマユは言う。
「ん……」
ルナマリアはなんとも言えない顔をしていた。
「でも良かったじゃない。祖国と戦わなくて。知り合い、いるんでしょ?」
「まーね」
「でも、心配か」
その時、廊下から話し声が聞こえてきた。
「うふふ、シンったらもう」
「えへへ」
タリアとシンの声だ。
マユの顔が険しくなった。
「あ、お姉ちゃん!」
シンがマユを見つけた。
「じゃあ、またね、シン」
「はい、艦長」
タリアはシンに手を振ると去っていった。
「このっ」
「いったー! なに頭叩くんだよ、お姉ちゃん」
「ふん、おばさん相手に鼻の下伸ばしてんじゃないわよ」
「なに? お姉ちゃん、艦長の大人の魅力って奴に嫉妬してるの?」
……シンはまた叩かれた。

 
 

「どうやら、オーブは中立を保つか……。我々の予想とは違ってしまったな」
バルトフェルドはつぶやいた。
「ええ、ですが、とりあえず、ですわ」
ラクスが答える。
「『とりあえず』かねぇ?」
「……」
ラクスは右手の親指を噛み厳しい顔をして俯く。
「ラクス、探しちゃった」
その時、部屋に入ってきたキラが声をかける。
「ああ、キラ! 調子はどうですの?」
顔を上げたラクスの顔は一瞬にして笑顔に変わっていた。
「うん、大丈夫だよ。オーブは中立を守るって」
「ええ、見てましたわ。良かったですわ、本当に」
「さすがカガリだよ!」
「ええ、そうね……。さぁ、そろそろ食事にしましょうか」
ラクスはキラの手を握るとキッチンへ向かう。
残されたバルトフェルドは目を閉じてむっつり黙り込んでいた。
「どうしたの? 食事よ?」
「ああ、ラミアス艦長、今行くよ」
バルトフェルドは目を開けるとキッチンの方へ歩いていった。

 
 

「ふぅ、なんとか無事に済みましたね?」
「……」
アキダリアの前で、ナーエの言葉にアグニスは無言だった。
「これでわかりましたね? 短慮はいけないと?」
「……ああ」
「ベースマテリアル。どちらかと言えば不足しているのはプラントの方でしょうが、プラントにも供給、と言うわけにもいかなくなりますね? ジブリール氏は、二度目の利敵行為を決して許さないでしょうからね?」
「ああ……。俺は、俺が殺した人達の遺族に謝罪に回りたいが」
「それは止めた方がいいですね。ジブリール氏がわざわざ、テラナーとマーシャンの関係を考えて、無かった事にしてくれたのですからね? ディアゴ、あなたはこれからどうします?」
「決まってるじゃねぇか。セトナ様の手伝いだ!」
「ふふ、ありがとう、ディアゴ。心配かけましたね」
セトナはディアゴに微笑んだ。
「……うう、感激っす!」
「そうですか。くれぐれもマーシャンの評判を落とさないようにしてくださいよ?」
「当ったり前よ!」
「セトナ様、ジブリール様はお見えにならないのでしょうか? もしやまだ……?」
ナーエは心配そうにセトナに尋ねる。
マーシャンがジブリールの怒りを買ってしまった事を心配しているのだ。
「お兄様はそんな方じゃないわ」
セトナは答える。
その時、ジブリールが一人の兵士を連れてやってきた。
「やぁ、積もり話も一杯出来たかな」
「はい。おかげさまで!」
「そうか。セトナはこれからどうする?」
「被災地での活動を続けます」
「そうか。……マーシャンの諸君、君らにはプラントのオブザーバーがいるそうだな」
「ええ、そうですが?」
「では、地球軍からもオブザーバーを出そう」
ジブリールが連れて来た女性兵士が前に進み出て、敬礼する。
「イサワ少尉であります」
「このイサワ少尉はエイプリルフール・クライシスで家族を失っている。プラントにも言い分はあろうが、アースノイドの言い分にも耳を傾けてくれたまえ」
「はい」
……
アキダリアが発進する。
「どう見る、ジブリールを」
「悪人ではないが、善人とも言いがたいですね」
アグニスの問いにナーエが答える。
「はぁ? 政治は善悪じゃないでしょう? マーシャンってばそんな事もわからないほど初心ですか?」
イサワ少尉が口を挟んだ。
「いや……あー。イサワ少尉、名前はなんでしたっけ?」
「マホ・イサワです。まほりんって呼んでもいいですよ?」
「いやぁ……。とりあえずオーブに向かいましょうか、アグニス?」
「……そうだな。では、行くぞ、オーブヘ」
「了解。目標オーブ!」

 
 

アグニス達が去り、セトナ達も去った。
ジブリールには次の予定が待っていた。
「まったく忙しいな……」
ジブリールは飛行機に乗り込んだ。
……
「やあ、良く来てくれた」
飛行機から降り、自動車である邸宅に駆け込んだジブリールは急いで衣服を整え、ネオ・ロアノークを出迎えた。
「これはわざわざ盟主、ありがたくあります」
「さあ、ファントムペインの諸君もご苦労だった! 良く任務をやり遂げてくれた。バヤン中尉、コーザー中尉、ホルクロフト少尉、それから……」
「ジョン・デイカー少尉です」
「ナイトハルト・ミラー少尉です」
「ほう。卿の噂は聞いている。鉄壁ミラーとは卿の事か」
「いえ、それほどでも」
「それで最後の君は……」
「サノキチ・ハラダ少尉です」
「ああ、そうだった。奇襲を見事成功してくれた。さあ、入ってくれたまえ。軽く食事でもしようじゃないか」
……
「ははは。実にうまい。イサワの奴に悪いな。我らばかりうまいものを食べて」
ハラダが笑う。他のメンバーもうまそうに食事を食べている。
「では、オーブに言っておこうかな。マーシャン達が着いたらうまい物を食わせてやってくれと」
ジブリールが受けて冗談を飛ばす。
テーブルが笑い声に包まれる。
「ところで、新型機、ウィンダムはどうだった? プラント攻略戦では手荒くやられてしまったが」
ジブリールが話を振る。
「基本的には機動性が高く、悪くはない機体です」
とりあえずネオは褒めた。
「ですが、新兵には向かないでしょう。防御装甲が薄すぎる。訓練の様子を見ていましたが、新兵はウィンダムの機動力に振り回されていましたね。あれでは航空戦力としても中途半端です」
「んー。そうか。では、どうする?」
「空はレイダー制式仕様機を量産。ザフトにはあまり数はいないでしょうがPS装甲対策にアフラマズダとダガー用のMX703G ビームライフルを装備する後期型を量産すればいいでしょう。後、105ダガーとの連携を考えて、グラスパー系も量産したらよいでしょう。これなら戦闘機からモビルスーツへの転換がうまくいかなかった者達も拾い上げられます」
「ふ……む。現在開発が進められている大型モビルアーマーはどうだ?」
「……小官の考えですが……。モビルスーツは元来コーディネーター特有の反応速度や判断能力の速さを有効に活用するための兵器です。物量が圧倒的に劣るザフトが、コーディネーターの優位な『質』を生かすため、攻撃力が高く小回りが効く兵器を作ったのがモビルスーツです。そういう兵器であるモビルスーツをナチュラルパイロットに大量に配備するのがそもそもの間違いです。先の大戦では、ほとんどのパイロットは、シールドの後ろに隠れて銃を撃つ、事しかできませんでした。これは、オーブ軍も同じです」
ネオはここで言葉を切った。
「興味深いよ、続けてくれ」
「では、どうするか。一つは、連合の圧倒的優位である『数』を利用する事です。先の大戦でのザフトの戦い方は、『質を生かして敵の中心に飛び込みフォーメーションを撹乱した上で、混乱状態にある敵を撃破もしくは、突破して艦を狙う』事です。その戦法は変わっちゃいないでしょう。それがわかっているなら打つ手はあります。数を生かして敵が飛び込めないほどの弾幕を張る、敵が飛び込んできたときに対応するフォーメーションを用意する、など。事前に訓練しておけばなお効果は上がるでしょう」
「うん」
ジブリールは頷く。
「もう一つは兵器にモビルスーツが突破できないほどの防御力を持たせる事です。機動力では、コーディネーターにかなわないとあきらめて防御力に重点を置けばモビルスーツを足止め・倒すことは充分可能です。その意味で、ザムザザーのようなモビルアーマーは開発を進めてもよいかと思います。ですが、ザムザザーは機体が大きすぎます。しかもそのでかい機体をバーニアで強引に浮かして移動しています。このような方式では殆どスピードがでません。しかも機体を支えるために大出力バーニアを複数装備しているので燃費が最悪です。このような機体は到底モビルスーツ戦はできません。艦船攻撃に使うくらいしかないですが、武装が貧弱。使い物にするにはもっと大型化して防御火器を充実、艦船攻撃用の大口径砲を積んで、護衛にモビルスーツを随伴させて……。いっそ陽電子砲リフレクターは艦船に載せた方がいいのでは? いや、モビルアーマーに積んでいてもいいですが、速度と機動性のいい奴を開発して欲しいですね。グラスパーやエグザスを強力にしたような。いや、私の好みも入ってますが。はは」
「やれやれ、ザムザザーも駄目出し食らったか」
ジブリールは面白そうに笑った。
「陽電子砲リフレクターか。宇宙艦に載せる計画は確かに上がっていたが。……ちょっと見てくれ」
ジブリールはネオにファイルを渡した。
「ほう、『プリンス・オブ・ウェールズ』ですか。新型ですね。月基地で建造中の」
「ああ、2年前の戦ではモビルスーツに戦艦を落とされまくったのでね、対空火器を充実させてある」
「……全部ビームになっていますな」
「ああ、何か?」
「こちらで発明された技術は早晩プラントでも発明されると考えた方がいいでしょう。ビームシールド対策が必要です」
「では、どうする?」
「んー。アンチビームコーティングされた銃弾をイーゲルシュテルンで撃ち出す、と言うのはどうです?」
「わかった。検討させよう。話は戻るが地上戦力はどうする? 地球軍はまず地球からザフトを叩き出す方針だが。モビルスーツが頼りにならないとなると……」
「まったく頼りにならない訳ではありません。やはりモビルスーツには汎用性と言う利点がありますから。それに、もうフォルタレザ市テロはご存知でしょう?」
「ああ」
「先の戦でのスエズ攻防戦の事もあります。やはり、もうリニアガンタンクでは力不足です。……しかし、装甲が薄いウィンダムは止めた方がいいでしょう。それよりも兵が扱いに慣れたダガー系列を……それも、ラミネート装甲を廃し、装甲を削減したダガーLより、装甲を強化した、PS装甲かTP装甲を使った105ダガーをお願いします。これが現場の声です」
「……そうは言っても、君も直接に確認したろう。現在ザフトの武装はビームが主になっている。意味無いのでは? それにコストがな」
「無いよりましです。全くビームを防げないということでは無く、ビームマシンガンレベルのダメージなら耐えられます。それに、ザフトは全てをビーム兵器に切り替えた訳ではありません。すべて105ダガーにすれば量産効果もあるでしょう。もしだめでも、モビルスーツに向いていない者を既存の兵器に振り分ける事で、数を絞る事もできます。盟主は、ザフトとの戦を長く続けるつもりはないのでしょう? ここはすべての力を集中し、一点突破を図るべきです」
「結局ウィンダムはだめだと言う事か」
ジブリールは苦笑した。
「……わかった。国防省に話を通しておこう。後で直接開発部に話してくれ」
「ありがたくあります」
「君達の奪ってきた機体はさっそく役に立っているぞ。ガイアを参考にしてバクゥ等に対抗すべく新しいダガーが開発中だ。歓迎されるだろう……」

 

彼らが去った後、ジブリールは古いアルバムを開いていた。
二人の子供が写っている写真がある。
「くっ」
ジブリールは呻いた。
「幼い頃の友すら偽りの記憶で縛らねばならんとは……なさけないっ……」

 
 

「やあ、ギナ。お出迎えご苦労さん!」
ユウナが到着したのはアメノミハシラ――オーブの宇宙ステーションである。先の大戦以来、半ばオーブの支配下から外れ、サハク家の姉弟――ロンド・ミナ・サハクとロンド・ギナ・サハクが支配している。
「ふん」
ギナは鼻息を立てる。
「ありがたく思え」
「相変わらずモビルスーツで一人でふらついているかい?」
「くっ……」
「ん? なんだ?」
「なんでもない! さっさと姉上の所へ行くぞ」

 

「やぁ、ミナ! お久しぶり!」
「久しぶりだな、ユウナ……。テレビは見た。オーブは大西洋連邦と同盟する物と思っていたが」
「さすが僕の父って所だね」
「ふ……意外とやる。もし同盟していたらオーブとは距離を置くつもりだったが」
「おっと、僕は別に同盟を忌避しちゃいない。国益になるなら同盟もまたよしさ」
「わかっているよ。で、用事は何だ?」
「うん。これを見てくれ」
ユウナはミナに書類を手渡した。
「書類は概要だけだ。残りはチップにある」
「ほう……特殊な装甲……ビームを跳ね返す? 『ヤタノカガミ』? もう一つあるな。ビーム兵器に対する耐性、物理的な衝撃に対する耐性共に非常に強い、か」
「それを、実際に出来るかどうか追試をして欲しいんだ。無重力でしか出来ない物もあるらしい」
「……『ヤタノカガミ』はともかく、もう一つの装甲のデータ、地球にいるお前がどうやって手に入れた?」
「さぁ? 父上から預かっただけだからね」
「子供の使いか、お前は。やってもいいが、代金は払ってもらうぞ。希少鉱物が必要だ」
「ああ。僕と一緒に運ばれてきたろう。現物で払うよ。はい、これがリスト」
「……希少鉱物などか……多すぎるな。国家予算並みだぞ」
「実は、話はここからでね。オーブ宇宙軍を再建するのに力を貸して欲しい。君達は本国から距離を取っているが、そこをなんとか。月に置いてあるイズモ級2隻も指揮下に置いてくれ」
「大盤振る舞いだな」
「あ、その際には、『ヤタノカガミ』を艦船の装甲に使ってくれとの話だよ」
「もう一つの装甲の方は使わんのか?」
「あー、あれは、どうやら『ヤタノカガミ』と違って量産効果が認められないらしい。艦船に使うと金がかかりすぎる。エース用のモビルスーツにでも使ってくれ。……オーブ本土を制圧できるような奴を作ってくれ。雛形はいくつかつけて置いた。ブラックボックスになってる部分もあるがね。それはまぁ必要なだけ持ってきた」
「……話が物騒になってきたな。裏に何がある。はっきり言え!」
「んー。父の言う事には、クーデターの危険があるそうだ」
「クーデター!? 一体どこの派閥だ? ウナト宰相は現実と理念とうまく合わせたと思うぞ。大西洋連邦派ではないとすると、アスハ派か? いや……」
「ああ、カガリと父上の間もうまく言っている。なんと言うか、不気味だそうだ」
「不気味?」
「ああ、はっきりとはしないが、知らずに真綿で首を絞められているように浸透しているような、そんな感じだそうだ。特にやっぱり軍があぶない。義勇兵として国の外に出すのもその対策を兼ねてさ。で、はい、これ」
ユウナはミナに封筒を渡した。
「なんだ?」
「カガリの委任状さ」
ミナは封筒からそれを取り出した。
『全責任は私が取る。危急の際にはオーブのために最善と信ずる行動を取られたし。――オーブ連合首長国代表首長カガリ・ユラ・アスハ』
ミナは一瞬顔をほころばせた。が、すぐに顔をしかめる。
「余計な苦労をさせる」
「それがノブレス・オブリージュって奴だろう? 僕も本国に帰れば義勇兵に加わる。国の上層部が参加していないのは士気に関わるからね」
「まぁ、いいだろう」

 

『――この時こそが、オーブ宇宙軍第一期黄金時代の始まりだったのだ――』
CE300年代の歴史家ヨッシー・アラマッキー著『オーブ宇宙軍史』より。

 
 
 

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