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SEED-IF_4-5氏_41

Last-modified: 2008-12-24 (水) 19:40:13

「じゃあ、坂井。頼むぞ。列機を失った事の無いお前の強運に期待する」
小園航空隊司令は、ネオの列機を務める事になった坂井三郎中尉に言った。
「任せといてください。司令官は俺が絶対守ります」
坂井は胸を叩いた。

 

ネオの率いるユークリッド隊は、敵を撃滅すべく勇躍して出撃した。
「……何も見えませんね」
坂井が、それでも注意深く目を皿のようにして辺りを見回しながら言う。
「西沢、お前はどうだ?」
ネオは少し離れて飛行している西沢にも尋ねる。
西沢広義中尉――彼も坂井と同様に敵の発見が非常に早い事で知られている。
「こちらも、敵機発見できず」
「そうか。では、第一から第四小隊、引き続き上空の警戒に当たれ。残りは地上部隊の支援に当たる」

 

『ポートエリア3、制圧完了』
ディオキア上空を旋回し、指揮を取るネオの元に報告が上がってくる。
「よーし。いいぞ。ザフトの置き土産があるかもしれん。注意しながら制圧を続けろ」
地雷を警戒し、まずモビルスーツが先行、続いて歩兵が機敏な動きで要所を確保していく。
『港湾エリア14、制圧完了』
『市政庁に突入開始、抵抗無し……』
「ふーん」
ネオは呻った。
「もぬけの殻か」
『司令官! 市政庁にてディオキア市長と接触。抵抗はしないとの事、司令官との会談を求めております』
「わかった。俺も事情が知りたい。市政庁前の広場に着陸する。警戒に当たれ」
『了解!』

 

「一体どうしちゃったんだろうね、まったく。せっかく新型のダガーで乗り込んできたってのにさ」
ミューディーがぼやいた。
彼らはモビルスーツに乗り、市政庁の警護に当たっている。
「戦いがないなら、その方が楽でいい」
スウェンが答える。
「何、ザフトが逃げたって、どこまでも追ってやる。追って行けばいつかは戦うさ」
シャムスが言う。
「ま、そうだけどね」
「気を抜くな。司令官に何かあってみろ」
スウェンは油断無く辺りを見渡した。

 

「ようこそ、ディオキアへ! いやぁ、ザフトがこの町に居た期間、生きた心地もしませんでしたよ。地球軍が戻って来てくれて、まことに安心しました」
ディオキア市長は手を広げた。
ネオは苦笑した。この市長は、ザフトがディオキアに進出した時もこの調子で出迎えたのに違いない。
「ザフトとは結構うまくいっていたと聞いていますが? ほら、先日のラクス・クラインのコンサートの時など、ディオキア市民も盛り上がっていたようですな」
ネオはさりげなくディオキアの情報は知っているのだと漏らす。
「おお! それはもう、市民の安全を守るために必死でしたからな。しかし、本心からではありませんで。いや、まったく。ザフトの連中は来た時はうまい事を言っておきながら、逃げる時は後に残される市民の事なんぞ考えませんでね、まったく」
「ザフトは、逃げたと?」
「ええ、ええ。先日ザフトの艦艇が出航したのを皮切りに、シャトル、輸送機、詰めるだけ積み込んで町から去ってしまいまして」
「ふ……む。いや、そうですか。まぁ、再び彼らがこの町に来る事はないでしょう。今度こそ、我ら地球軍がザフトを本国まで追い詰めますからね」
「そう願いたい物です。ところで……ザフトがこの町に居た間、地球軍より礼儀正しいと言う者もおりまして。いや、まことに怪しからん事ですが、今後の地球軍との友好関係のためにも軍の規律の維持にはぜひご配慮を……」
下手に出ながら、言う事は言う男だった。ネオはこう言う男を嫌いではなかった。
「もちろんですとも。規律はしっかり守らせますよ。ウォッカ飲んで酔っ払っている連中と我々大西洋連邦は違います」
ネオはにこやかに微笑んだ。

 
 

「じゃあ、ルナ。邪魔しないでよね」
マユがきつい口調で言った。
「だーれが! 勝手にやりなさいよ」
ルナマリアも刺々しい口調になる。
「じゃあ、そう言う事で」
マユは去って行った。
「……ふん、だ。私も誰か誘って外出しようかなぁ」
ルナマリアは少し肩を落として呟く。
「やぁ、ルナマリア。久しぶりだね」
その時、ルナマリアは後ろから声をかけられた。
「あ、貴方は!」

 

「さすがにいい基地ですね! 景色もいいし」
「うん」
マユに引っ張られるようにして外出したアスランは、生返事を返した。
「後で、海岸に行ってみません?」
「ああ」
「アスラン・ザラ君だね?」
その時、アスランは、声をかけられた。
「あ、はい。そうですが」
「カーペンタリアのジェフリーから君がザフトに復帰したと聞いてね、待っていたよ」
「あ、元司令官の!」
「そうそう」
その男は嬉しそうに頷いた。
「あ、私、外そうか?」
マユは言った。
「あ、ああ、すまない」
マユは二人から離れて距離を取った。
「私は、この基地の警備隊隊長のケビン・ラッドだ。ザラ派さ」
「ザラ派……」
「おっと」
アスランの目に走った陰りを見て取ったか、ケビンは言葉をつないだ。
「ユニウス7を落とした連中とは一緒にしないでくれよ」
「はぁ」
「確かに、ザラ議長は最後の方はやる事がおかしかったかも知れん。だが、君は人が人生にした最後の行動でその人全てを評価してしまうかい?」
「……いえ」
「うん。我々プラントは人口が少ない。圧倒的な兵器を作って、それで地球連合に妥協を迫ろうと言うやり方は、今でも正しかったと思っている」
「そう言って頂くと、父も救われます」
「……君は、いつまで軍にいる?」
「はい?」
「ただの軍人で終わるなよ。上に行け、上に。……俺の目からすりゃあ、今のデュランダル議長も現場を知らん。黒海を制圧しろだのなんだの。ディオキアからの護衛、多いとは思わなかったか?」
「あ、はい。カーペンタリアを出発した時とは大違いで」
「黒海のボズゴロフ級、根こそぎ持ってきたのさ。撤退も兼ねてな」
「え?」
「今頃、ディオキアはカラだ。ディオキアだけじゃない。黒海の基地は全てな。現場の判断で、撤退させてる。先の大戦で消耗した我々にとっては黒海に手を広げるなんぞ過ぎた事なんだ。……ジブラルタルも、放棄される予定だ」
「ええ?」
「ジブラルタルを維持していても、意味は無いからな。地上戦力はカーペンタリアに集中する。カーペンタリアを防衛して、大洋州と連絡さえ出来ていれば、ザフトはまだ戦える」
「そこまで……戦況は悪いのですか?」
「まだ、現実にはなっていないがね。今の内に退く所は退いて固めようって事だ。アスラン……助言だ。君は機会を見つけて軍を辞めろ。政治家になれ。ザラ派は、迫害されているが、今でも繋がりを取っている。何かあれば力になるぞ。じゃ、またな」
そう言ってケビンは去って行った。
アスランは、ただ立ち尽くしていた。

 
 

「マリュー、あなたが愛しているのは、アーノルド・ノイマン……だんだん彼が気になります」
知らずに飲まされた幻覚剤でせん妄状態に陥っているマリューにノイマンはささやいた。
「いや、いやぁ! あの人は、私が愛したあの人は、陽電子砲で……いやぁー! マモル!」
「違う! ちょっと気に入っていただけだった。そんなにショックじゃなかった。そうなんです。たいした事ではなかった」
「違う……違う……」
「くそっ。ラクスのようにはうまく行かんか! さぁ、これからあなたにキスする人は、あなたをとても愛している人です」
そう言うと、ノイマンはマリューにキスをする。
「……ムゥ? マモル?」
「くっ」
マリューの呟いた男の名を耳にすると、ノイマンははっと身を起こした。
「くそう、今はまだ。だが、今にこの女如き……」
ノイマンは目を血走らせて言った。
「たかが恋人を殺されたくらいで、恨むように、復讐のように反撃しておきながら、憎しみは戦いを生む、だと? はっ!」
ふと思う。ナタル・バジルールは最後に何を思っていたのだろう。
あれだけ男がブリッジにいて、一人ぐらい男気のある奴はいなかったのか?
少なくとも自分が同じブリッジにいたなら、身を捨ててでも助けに入ったはずだ……
偶然宇宙服を着て生き残りその情報――ナタルの最後を伝えたドミニオン乗員は、即座にノイマンに射殺されていた。「お前は何をしていた」との台詞とともに……
ノイマンは状況に流され、アラスカ戦後、地球軍に出頭しなかった事を死ぬほど悔やんだ。
あの時マリューが言った台詞――『ザフト軍を誘い込むのが、この戦闘の目的だと言うのなら、本艦は既に、その任を果たしたものと判断致します』――の通り、命令は果たしていたのだ。脱走せずに出頭していれば、もしかしたら、と。もし自分がバジルール中尉と一緒の艦に配属されたかもしれない。そうすれば。俺だったら。
空しい後悔がノイマンの頭を巡る。

 

『マリュー・ラミアスがあなたを愛するようにしてあげましょう。後はどうするも自由』
ラクスの甘い囁き。
ノイマンがマリューにもそれなりに魅力を感じていた事をも見抜くような。
悪魔の囁きだったろうか。だがノイマンはその囁きに乗ってしまった。感情は妄執へと変わり……
「あなたはアーノルド・ノイマンが気になる。とても気になる。男性として気になる……」
ノイマンはマリューに向かって呪文のように、台詞をいつ終わるとも知らず繰り返す。
「いや、いや……」
うまくいかない事に、ノイマンは不意に乱暴な気分になった。そうだ。どうせこんな女。
マリューの拘束を少し結びなおす。
そしてノイマンはマリューに強引に身体を重ねた。
「いや、いやあぁぁぁぁ!」
「ふふふ、もっと叫べ! もっと悲鳴を上げろ!」
どうせお前がいくら苦しんでも、ナタルは帰ってこないのだ……
小刻みに動き続けるノイマンの頬に涙が流れた。

 
 

「アスランさーん!」
「ん? シンか? どうした?」
アスランにシンが駆け寄ってきた。
「お姉ちゃんとデート中すみません」
「い、いや、デートとか……」
「驚かないでくださいよ? デュランダル議長が、ジブラルタルに来てるんです!」
「なんだって!?」
「それで、アスランさんを呼んで来いって!」
「わかった! すまんが、マユに謝っておいてくれ」
「はい!」

 

「遅くなりました」
アスランはデュランダルの前に出ると敬礼した。
「何、構わんよ。私も急に来たのだ。君達の活躍を聞いているよ。色々あったがよく頑張ってくれた。
「ありがとうございます!」
「アスラーン!」
「ぁ……」
アスランにミーアが飛びついた。
「お元気でした?」
「ぁぁ……」
「会いたかったですわ」
「ぅぅ……お久しぶりですラクス」
アスランは、なぜか横側から冷たい視線を感じた。
「さて、話したい事も色々あるが、まずは見てくれたまえ。もう先ほどから目もそちらにばかり行ってしまっているだろう?」
「「あ!」」
格納庫に、明かりが灯される。
「ぁぁ…」
そこには2機のモビルスーツが通電していないPS装甲特有の鈍い色を湛えて立っていた――

 

「ZGMF-X42S、デスティニー。ZGMF-X666S、サイタマ。どちらも従来の物を遙かに上回る性能を持った最新鋭の機体だ。詳細は後ほど見てもらうが、おそらくはこれがこれからの戦いの主役になるだろう」
「ああ……」
アスランは溜息をついた。
「君達の新しい機体だよ」
「私の新しい、機体?」
アスランは問いかけた。
「うん」
デュランダルは説明を続けた。
「右の物がデスティニー。デスティニーは火力、防御力、機動力、信頼性、その全ての点においてインパルスを凌ぐ最強のモビルスーツだ」
「ぁぁ…」
アスランは再びため息を付いた。
インパルスの強化型と言う事はあれが、きっと自分の機体になるのだろう。
「一方のサイタマは量子インターフェイスの改良により、誰でも操作出来るようになった新世代のドラグーンシステムを搭載する実に野心的な機体でね。どちらも工廠が不休で作り上げた自信作だよ。どうかな? 気に入ったかね?」
「はい! 凄いです!」
アスランは嬉しそうに言った。
「……」
対して、ルナマリアは何を思っているのか無言のままだった。
「アスラン、デスティニーには特に君を想定した調整を加えてある」
「え? 私をですか?」
「最新のインパルスの戦闘データを参考にしてね。いや、フリーダムとの戦いなどは、私も見たが感動した! すばらしい瞬間的判断、操縦だったよ」
「はぁ。いやぁ」
アスランは少し頬を赤らめて、照れた。
「君の操作の癖、特にスピードはどうやら通常を遙かに越えて来始めているようだね」
「えぇ……」
「いや凄いものだな君の力は。このところますます」
「いえ、そんな」
「インパルスでは機体の限界にイラつくことも多かったと思うが、これならそんな事はない。私が保証するよ」
「はい! ありがとうございます!」
「ルナマリア。君の機体はこのサイタマと言う事になるが、どうかな? ドラグーンシステムは」
「……」
ルナマリアは無言だった。
「私は君なら十分に使いこなせると思うな」
「……」
「どうした? ルナ?」
暗い顔をしてうつむき無言のままのルナマリアを気にして、アスランも声をかける。
「ルナマリア? どうかしたかね? 具合でも?」
デュランダルも気遣うような声をかける。
「……な……」
ようやく、腹の底から搾り出すかのような声をルナマリアは上げる。
「うん?」
「なんで……なんで!?」
「うん?」
「なんで! サイタマなんて名前なんですか!?」
「うん、命名者に言わせると、これは全く新しい簡単で印象的で独創的な名前なんだそうだ。私にはあまり専門的な事は解らんがね」
「か、改名! 改名してください! どうか! お願い!」
ルナマリアはデュランダルに縋った。
「うん? 別に私はかまわんが……なんと変えるのかね?」
「ええと……レジェンド、とかどうですか?」
照れくさそうにルナマリアは答えた。
「いいとも」
デュランダルは鷹揚に微笑んだ。
「複雑な名前がいいんだね? ボウモア・レジェンド。マッカラン・レジェンド。タカラ純レジェンド。シーガスリーバル・レジェンド・スペシャルリザーヴ、と言うのもいいね」
「ぎ、ぎちょ〜〜〜! やめてください! 頼みますぅ!」
デュランダルの服の裾を掴み、ルナマリアの目尻には涙が浮かんでいた。

 
 
 

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