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SEED-IF_4-5氏_42

Last-modified: 2008-12-30 (火) 18:49:06

「お帰りなさいませ、代表!」
「「お帰りなさいませ」」
軍用機から降り立ったカガリを、マシマ・タツキらが出迎える。
「苦労を掛けたな、お前達にも」
「いえ、代表こそ」
「ところで」
カガリは声を小さくした。
「マルキオ導師は尋問したか?」
「は、一応、話を伺いましたが知らぬ存ぜぬ。まったくモビルスーツが格納されたシェルターの事など知らなかったと」
カガリは難しい顔をした。あれはアスハ家で作らせた物だ。マルキオも承知の上だった。
「なんにせよ、尋問しようにも導師は地球連合外交官の肩書きを持っておりまして……」
「こうなったら私が直々に事情を聞くか……」

 

だが、カガリがマルキオ邸に着いた時、マルキオは姿を晦ましていた。
キラの母親にも事情を聞いたが、本当に知らないようだった。
カガリはカリダ・ヤマトを収監し、子供達は他の養護施設へと送った。
「そう言えば、ハルマ・ヤマトの具合はどうだ?」
カガリは随員に尋ねた。
キラ・ヤマトの養父ハルマ・ヤマトは前戦役後、しばらくマルキオ導師の孤児院の手伝いなどをしていたが、精神に変調を来たし、病院に収容されていた。
「は、未だ回復しておりません。窓を異常に怖がります。相変わらず、変な視線を感じたり奇妙な羽音が聞こえると主張して…… 相変わらず『いあ! いあ!』とか不明な叫び声も上げますし」
「そうか。気の毒にな。さて、まだやる事があるな」
「は?」
「アークエンジェル、アークエンジェル乗員の国際指名手配をしておいてくれ」
カガリは随員にファイルを渡した。
「……このリストの中には、キラ・ヤマトの名も入っておりますが、よろしいのですか?」
「構わん」
その時のカガリの顔は、紛れもなく為政者の顔であった。

 
 

「猊下、ここに居られたので」
ベルットーネ枢機卿は、テラスに立っていた老魔法王ベネディクトに話しかけた。
「ああ、夜空はいい。神の実在を実感できる壮麗さだ。いつか……行って見たいものだ。はは。夢物語だがな。で、なにか?」
「……オーブに居住していたマルキオが、いずこともなく姿を消したそうです」
「――! まぁ、奴がどう姿を消そうと、どこに現れようと今更驚かぬが……。何を為そうとしているのか、引き続き奴の情報を集めよ」
「はっ」
「マルキオめ……」
ベネディクトは呟いた。
「もし神の道に沿わぬ背徳的な事を為そうとしているなら、再び矛を交わさねばならんかも知れん……」

 
 

誰もいなくなったマルキオの館。
そこに、三人の男女がまるで空中から飛び出るように、姿を現した。
「タイムパトロール、両澤千晶よ!」
「同じく、福田己津央だ! 時間犯罪を目論んだ罪によりおとなしく両手を上げて……」
「……誰もいないようだぞ」
「そのようだな、菁滋。ちっ。先を越されたか」
「だいぶこの世界の改変は進んでいる。早くしなければ……米帝に世界を支配させるなど! なんとしても防がねばならん!」
「菁滋は相変わらずアメリカ嫌いねー」
「それにしてもマルキオ導師とは何者だ?」
「さぁな。ミニスカトニック大学入学以前の経歴はわからん」
「ふん! あの下品な大学!」
両澤は罵った。
またか、と竹田菁滋は溜息をついた。
ミニスカトニック大学の女子学生の制服はミニスカだった。
両澤はもはや自分がミニスカが似合わない状態であるので女子大生に嫉妬しているのだった。
「ともかく、奴を捕まえれば全てがわかる。行くぞ」
福田が言った。
次の瞬間、現れた時と同じように3人の姿は消えた。

 
 

「カーペンタリアに合流せよ、か。簡単に言ってくれる」
マハムール基地指令、ヨアヒム・ラドルは呟いた。
この地域のザフトの戦力は低下していた。
地球連合によるガルナハン奪回も指を加えて見ているしかなかったのだ。
『――空襲警報発令! 空襲警報発令!』
サイレンが鳴り響く。
ヨアヒムは地下壕へと避難する。

 

「野郎ども! ザフトの連中もちったぁ骨のある奴らだろうが、どうにも放っちゃ置けねえ! 気張れよ!」
野中五郎少佐は侠客染みた言葉で部下に叱咤する。
「合点でさぁ!」
部下達も、侠客言葉で答える。
へへ。ここまで侠客としての演技を出来ているなら、心配する事はないな。
と野中は思った。
野中達が乗っているのはAー30対地攻撃機、通称サンダーボルト掘A軅10機。それを、20機のユークリッド隊が護衛する。
「わざわざ来てやったんだ。何かいい獲物はいねえか?」
「あれは、どうでやすか? でっかい陸上戦艦がありやすぜ!」
「ようし、第4と第5小隊は空港、地上施設を叩け! 後は陸上戦艦にでかいのぶち込もうぜ!」

 

野中達の爆撃隊を発見すると、マハムール基地のバビ隊は迎撃のために飛び立った。
その数約60機。全力出撃である。爆撃隊と比べ約2倍。バビが垂直離陸が可能なために出来た芸当だった。
マハムール基地の誰しもが迎撃の成功を確信した。

 

迎撃に出てきたバビが、機関砲を撃って来る。
「ふ……効かんよ」
爆撃隊の護衛隊隊長リチャード・ボング少佐はひとりごちた。
彼のユークリッドには操縦席の前に女性の絵が描いてある。リチャードの婚約者のマージの絵だった。
「マージ、君を傷付けさせなどしないさ!」
すでにビームシ−ルドは展開されている。
バビの機関砲弾はビームシールドに防がれる。
リチャードはバビがその機関砲弾を浴びせてくるのに構わず突撃すると、ユークリッドの52mm7連装ガトリング機関砲を叩き込む。バビは爆散した。
「ふ……バビごときにビーム砲を使うまでもないわ!」

 

「な、んだと!?」
バビのパイロットは驚愕した。
機関砲も、ミサイルも、効かない! 敵機の前面に膜があるかのように防がれている。
「こうなったら!」
一機のバビがモビルスーツ形態になり、バビの最も高い攻撃力を誇るアルドール複相ビーム砲を放つ。
だが、それも敵機の前面に膜があるかのように拡散してしまう。
そしてモビルスーツ形態になった事で表面積を拡大させたそのバビは、蜂の巣の様に敵機の機関砲弾を浴びると、墜落していった。
バビ隊は混乱し、一方的な狩の獲物となった。
後に、この空戦は『マハムールのターキーシュート』と呼ばれるようになる。

 

しばらくの後、警報は止んだ。地球軍の爆撃隊はようやく去ったのだ。
「被害報告です――」
部下が報告する。
「陸上戦艦『デズモンド』大破、『バグリィー』大破。もう使い物にはならんでしょう。敵の攻撃が陸上戦艦に集中したので、空港施設、地上施設の損害は、比較的軽微です」
ははは。陸上戦艦など。どうせ、もう使い道など無いのに……無駄な事を。
「はははは……」
ヨアヒムは屈折した喜びを胸に覚えた。
ここまでやられればいっそあきらめもつくと言う物だ。
「基地を撤収する! 詰めるだけボズゴロフ級と輸送機に積み込め。詰めない物は破壊しろ。ブービートラップも忘れるなよ!」

 
 

「ラクス、これを見つけた。見てくれ、とんでもない事が書いてあるぞ」
ここはメンデル。
バルトフェルドが、一冊の大学ノートを持ってきた。
「拝見しましょう」
ラクスとバルトフェルドは目で合図をし合った。
ラクスはそのノートを手に取った。何が書かれているか確認するようにパラパラとページをめくる。
「それではキラを、呼んでくださいな」
しばらく後、キラがやって来た。
「どうしたの? ラクス?」
「デュランダル議長が、何を考えているかわかりました」
「ええ?」
「このノートは、メンデルでデュランダル議長の同僚だった者の物です。これに、デュランダル議長が何を考えていたのか書かれていました」
「それで、なんと?」
「デュランダル議長は、遺伝子によって職業を割り振る事を考えていたようです。それをデスティニープランと名づけていました」
「……?」
「運命計画――それは、遺伝子によって人生を決めさせられるのも同じ事。キラ。あなたはコンピュータをいじるのが好きでしょう?」
「うん」
「でも、コンピュータとまったく縁の無い仕事を強制されたら? そして、それを決めるのは誰なのでしょう? デュランダル議長でしょうか? それは全人類を支配しようとする事です。それは人が神になろうとするのと同じ……」
「そんなのとんでもない! 働いたら負けじゃないか!」
「そう。とんでもない事です。なんとか阻止しなくてはなりません」
「うん、絶対に阻止しなくちゃ!」
意気込むキラを、バルトフェルドは少し離れた所からなんとも言えない光を目に湛えて見つめていた。

 
 

黒海を制圧した地球軍とオーブ海軍はイタリアのタラントに入港した。地中海西部は彼らの物だった。

 

「景色のいい所よね。さすが地中海って感じ」
ミューディーがはしゃぐ。
入港したばかりだが、艦の外へ出る事を許されたのだ。
「ああ。休暇、取れるらしいな。トマト料理でも食べに行こう」
シャムスも嬉しいらしい。声が弾んでいる。
「そして鋭気を養った後は! 一気にジブラルタルを取る!」
「はは。そう気張るな、原田」
スウェンが左之助の肩を叩く。
「簡単に考えるなよ。ザフトは黒海から無傷で撤退した。ジブラルタルに戦力を集中してると考えられる」
向こうから歩いて来た人がスウェン達に話しかける。
「あ、笹井少佐!」
スウェン達は敬礼する。ユークリッド隊の中隊長、笹井醇一少佐だった。
笹井も微笑んで答礼する。紅顔の美青年である。
「楽にしてくれ。ま、気を緩めず、楽しもうと言う事だな」
「はい!」

 
 

「うーん。デスティニーか……」
アスランは休憩室でコーヒーを飲みながら考え込んでいた。
「あらためてデータを詳しく見るとなぁ。試作品だけあってまだ練れていない様だが……。どう言った使い方をすればいいのか? 格闘、砲撃。いずれにせよどちらかの装備がデッドウェイトになる、か。機動力を生かしてすばやく射点に着き、遠距離射撃、と言うのがいいかもな。格闘は緊急事態と割り切って。どうせ俺は前線には出ずに指揮に集中したいし。よし。次は、インパルスとセイバーを誰に任せるか……」
「よっ!」
声がかけられた。
「あ。ハイネ」
「色々考えてるんだなぁ」
「ええ、まぁ。各自の特長を生かして新しいフォーメーションをと」
「そうか。俺は戦闘馬鹿だからそう言うの苦手でな。尊敬するぜ」
「いやぁ」
「お前、早く上に行った方がいいかもな。いつまでも最前線で切った張ったしてねぇでさ。もったいねぇよ」
「ありがとう、ハイネ」
「じゃ、あまり根詰めるなよ!」
ハイネは去って行った。入れ替わりのようにルナマリアが部屋に入って来た。
「あ、アスラン!」
「やぁ、ルナ」
「休憩中ですか? はい、差し入れ! 軽いものでもどうですか? エビとカニのグラタンです」
「ああ、ありがとう」
「エビとカニって言ってもこれ、MREじゃないんです。プラントの物とは大違い! 基地周辺で取れた物持ってきたんですよ? タバスコ使わなくても臭みが無いんです!」
「ああ、そうなんだ」
プラントでよく食べられる海産物、エビ・カニなどの甲殻類は下水で養殖されており臭みがある。それをごまかすために唐辛子が用いられていた。海鮮ジョンゴル鍋が流行ったのも頷ける。
だが、ルナマリアの感動は、プラントの上流階級だったアスランにはいまいち伝わらなかったようだった。
「何、してたんですか?」
「ああ。デスティニーの戦い方とか、インパルスとセイバーを誰に任せようとか、フォーメーションをどうしようとか、色々な」
「……それ、私も考えてたんですよ」
「うん?」
「宇宙と、地球上じゃ、フォーメーション変えた方がいいかもしれない。ほら、レジェンドって、一応空飛べるけど、地球上じゃ機動性はセイバー程じゃないんですよね。ドラグーンも使えないし。だから宇宙なら前衛から中衛までこなせると思うんだけど、地球上じゃ中衛から多数の砲を生かして砲撃支援するのがいいかな、とか。まぁ、ミネルバ、もうすぐ宇宙に帰れば必要なくなりますけどね」
「そっか。そうだよな。地球上と宇宙じゃ別けるべきだな。じゃあ、ルナは地球上でのフォーメーションはどう考える? ちなみに、俺の考えではデスティニーは遠距離からの砲撃がいいと思ってる」
「そうですね、じゃあ、グフに前衛やってもらって、レジェンドは中衛。バビ、セイバーが前〜中衛、ガナーザクとデスティニーが後衛、インパルスは状況によりシルエットを切り替える、でしょうか?」
「うん、なかなかよさそうだな。……でも、結構しゃべってくれるんだな。この間は機嫌でも悪かったのか?」
「え? この間って……あ!」
ルナマリアは思い出した。
マユと一緒に居た時だ。
「あの時は……その……」
言える訳無いじゃない! マユに遠慮してたなんて!
「あ……。その、女の子の日、とか、ああ、なんだ、俺、無神経な事聞いたかもしれない。ごめん!」
「へ?」
アスランは真っ赤になってルナマリアに謝った。果たして彼は何を想像したのであろうか?
「でもよかったよ。嫌われてるようじゃなくて」
「嫌いだなんて! むしろ私はアスランの事……あ……その……す……」
ルナマリアの顔も真っ赤になった。
「その……用事思い出したんで失礼します!」
「あ? ああ、またな」
どこまでもニブいアスランだった。

 
 
 

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