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SEED-IF_4-5氏_44

Last-modified: 2009-01-14 (水) 17:21:19

「ずいぶんと、地上は大騒ぎのようだな」
デュランダルは嗤った。
「さすがです、議長!」
ミーアがはしゃぐ。
「現場が勝手に黒海から撤退した時には驚いたが……。黒海制圧を命じたのは、私とてそれなりの目算あっての事だ。今回の事で現場もわかっただろう」
「ええ! 西ユーラシアが親ザフトになるなんて!」
「しかし、ちょっと引っかかるな」
「え?」
「中部ユーラシアや東アジアには工作をしていなかったのだが……ふうむ」
デュランダルは考え込んだ。
「誰か、別の組織が動いているのか? しかしこの一斉のタイミング。奴らの手も西ユーラシアに伸びていたという事か? ……まぁ、いい。では、ラクス。これから少し君の力を借りねばならん」
「はい!」
執務室の、扉が開いた。

 
 

「どうするのかね、ジブリール」
「まったくだ。せっかくザフトを追い詰められるか、と思ったら、これだ」
西ユーラシア政変より数日後。ロゴスの会合が開かれる。
「ふ……ん」
ジブリールは黙ったまま微かに眉をひそめる。
「ユーラシアにこの短い期間で何度動乱が起こったと言うのだね? 君らのコントロールに何か問題があるのじゃないかね?」
ブルーノ・アズラエルが、ジブリールを庇う様に発言する。
「……」
ユーラシアのロゴス幹部は痛い所を突かれた、と言うように押し黙る。
皆が沈黙した所でジブリールは話し出した。
「配布した資料をご覧ください。各地に成立した親ザフト政権の評価です」
「……脆弱だな」
「政権と言えるのか?」
「ああ」
「ごたごたの中でユーラシア中央部はプーチンが台頭してきたか……味方にすれば心強い」
「その通り。彼らの政権基盤は非常に弱い物です。親地球連合派が抑えている地域も数多く、新政権が成立したと言うより、半ば内乱状態。地球連合が実力で介入すれば簡単に引っくり返る程度の物です」
「……だが、その戦力をどこから調達すると言うのだね?」
「ジブラルタル攻略部隊からかね? 中東を押さえている部隊からかね? カーペンタリア攻略部隊からかね?」
「いずれから引き抜いても、ザフトが息を吹き返してしまうぞ」
「ええ。それで……」
ジブリールは言葉を切った。
「スカンジナビア王国に、西ユーラシアに進攻してもらいます」
「スカンジナビアだと!? しかし、あの国はユーラシアへ攻め入ったのだぞ? 現地民から治安維持を要請されたなどと理屈を付けてはいるが」
「しかし、事あるごとに自分達は地球連合の一員だと宣伝しておるな。完全に敵とも割り切れんよ」
「私もここしばらくスカンジナビア王国の代理人と腹の探りあいをしまして。彼らの真意がようやくわかりました」
ジブリールは言った。
「それは?」
「彼らの望む物は、『冬戦争』で失った領土の奪還です」
「『冬戦争』と来たか!」
「大昔の話ではないか。西暦1930年代か」
「執念深い物だな」
「いやいや、領土を失った恨みと言う物は……」
「と、言う訳で。中部ユーラシアは、スカンジナビア王国と共同して、速やかに親地球連合の政権を復活させます。……ユーラシア地区のロゴス幹部の皆さん、新政権には因果を含めて、スカンジナビア王国へ領土の返還をさせるようにお願いします」
「まったく厄介な事を……」
「因果堂の最新作を贈ればいいのかのう?」
「いや、それは違うだろう」
「では因果応報氏自身を……」
「アッー!」
「貴様、軍事板住人だな! そうに違いあるまい!」
「そこから離れろ!」
コホン。
ジブリールは咳払いをした。
「そして、中部ユーラシアが収まれば、中部ユーラシアの軍を西ユーラシアへ、と言う訳にはいきません。まずは治安維持に忙殺されるでしょうから、代わりにスカンジナビアの軍をそのままドイツ、フランス、スペインへと進攻させます。幸い、西ユーラシア各地へ大規模なザフトの増援が送られたと言う情報も入っておりません。味方が苦しい時は敵も苦しいのです! 最初に負けた、と思った方が負けます」
まったく。早く西ユーラシアの親ザフト勢力を鎮圧しなければイタリアに居るセトナに会えないじゃないか。
とジブリールは思った。
「ジブラルタル攻略はどうするね?」
「予定通り、行います。ただしゆっくりと進軍させます。ザフトは、対応する戦力を張り続けなければならないでしょう。西ユーラシアを支援する余力を無くしてしまうのです」
その時、一人のロゴス幹部が慌てた声で叫んだ。
「大変だ! みんな、DS放送のch.747、プラントチャンネルを見てみろ! デュランダルの野郎だ!」
「ch.747? アニマルプラネットだが……。海亀の産卵がなにか?」
ブルーノ・アズラエルが訝しげに言う。
「「それはCS放送だ!」」
彼は思いっきり突っ込まれた。

 
 

「では議長、よろしいですか?」
テレビ局員が言った。
「ああ頼む。始めよう」
「3・2・1……キュー!」
「皆さん、私はプラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルです。我等プラントと地球の方々との戦争状態が解決しておらぬ中、突然このようなメッセージをお送りすることをお許しください。ですがお願いです。どうか聞いていただきたいのです」
デュランダルは話し出した。
「私は今こそ皆さんに知っていただきたい」

 

「艦内に流して。各員可能な限り聞くようにと」
タリアはアーサーに言った。
「はい」

 

『こうして未だ戦火の収まらぬ訳。そもそも、またもこのような戦争状態に陥ってしまった本当の訳を』
「なにこれ?」
「議長の緊急メッセージだと」
「「え?」」

 

「各国の政策に基づく情報の有無により、未だご存知ない方も多くいらっしゃるでしょう。現在、世界各地で、大きな動きが起こっています。プラントと地球、コーディネーターとナチュラルが手を取り合おうと言う!」

 

「ラクス……これ……」
キラは眉をひそめてラクスに話しかけた。
「ええ、では、私達もまいりましょう」

 

『我々の軍は連合のやり方に異を唱え、その同盟国であるユーラシアからの分離、独立を果たそうとする人々を人道的な立場からも支援してきました。こんな得る物の無いただ戦うばかりの日々に終わりを告げ自分たちの平和な暮らしを取り戻したいと。戦場になど行かず、ただ愛する者達とありたいと。そう願う人々を我々は支援しました。なのに和平を望む我々の手をはねのけ、我々と手を取り合い、憎しみで討ち合う世界よりも対話による平和への道を選ぼうとしたユーラシア西側の人々を連合は裏切りとして有無を言わさず弾圧しようとしているのです!』
ここで、画面は地球軍によるガルナハンの住人への弾圧、そしてガルナハンの破壊の光景が映し出される。
更に、地球軍のプラントへの核攻撃シーンへと移る。

 

「ジブリール! どう言う事だねこれは!」
「何をしようと言うのかねデュランダルは」
その時、ジブリールを心配するように黒猫のスキピオがペロリとジブリールの手を舐めた。
「ふ……」
ジブリールはスキピオに微笑んだ。
「落ち着きましょう、皆さん。彼が何を話そうとするのか? 私も興味があります」

 

『何故ですか? 何故こんなことをするのです! 平和など許さぬと! 戦わねばならないと! 誰が! 何故言うのです! 何故我々は手を取り合ってはいけないのですか!?』
その時、一人の女性が、画面の横から現れ、デュランダルを指示する事を行為で示すかのように彼の肩に手を置いた。

 

『このたびの戦争は確かにわたくしどもコーディネイターの一部の者達が起こした、大きな惨劇から始まりました』

 

「ラクス様だ!」
「ラクス様!」
その放送を見ていたプラントのコーディネーター達から声が上がった。

 

『それを止め得なかった事、それによって生まれてしまった数多の悲劇を、わたくしどもも忘れはしません。被災された方々の悲しみ、苦しみは今も尚、深く果てない事でしょう。それもまた新たなる戦いへの引き金を引いてしまったのも、仕方のない事だったのかもしれません。ですが! このままではいけません! こんな討ち合うばかりの世界に、安らぎはないのです! 果てしなく続く憎しみの連鎖も苦しさを、わたくし達はもう十分に知ったはずではありませんか? どうか目を覆う涙を拭ったら前を見てください! その悲しみを叫んだら今度は相手の言葉を聞いてください! そうしてわたく達は優しさと光の溢れる世界へ帰ろうではありませんか! それがわたくし達全ての人の、真の願いでもあるはずです!』
再び、ここでデュランダルが話し出す。
『なのにどうあってもそれを邪魔しようとする者がいるのです。それも古の昔から。自分たちの利益のために戦えと、戦えと! 戦わない者は臆病だ、従わない者は裏切りだ、そう叫んで常に我等に武器を持たせ敵を創り上げて、討てと指し示してきた者達。平和な世界にだけはさせまいとする者達。このユーラシア西側の平和を求める人達への弾圧も彼等の仕業であることは明らかです! 間違った危険な存在とコーディネイター忌み嫌うあのブルーコスモスも、彼等の創り上げた物に過ぎないことを皆さんは御存じでしょうか?』

 

「ん……?」
「ニャー」
再び、スキピオがジブリールの手を舐めた。

 

『その背後にいる彼等、そうして常に敵を創り上げ、常に世界に戦争をもたらそうとする軍需産業複合体、死の商人、ロゴス!彼等こそが平和を望む私達全ての、真の敵です!』

 

「なんだと!?」
ジブリールは叫んだ。
画面には、ロゴス所属の財閥の情報が流され始めていた。

 

『私が心から願うのはもう二度と戦争など起きない平和な世界です。よってそれを阻害せんとする者、世界の真の敵、ロゴスこそを滅ぼさんと戦うことを私はここに宣言します!』
再び、デュランダルの後ろの女性、ミーアが話し出す。
『わたくし達の世界に、誘惑は数多くあります。より良き物、多くの物をと。望む事は無論悪い事ではありません。ですがロゴスは別です。あれはあってはならない物。この人の世に不要で邪悪な物です。わたくし達はそれを……』

 

その時、画面が乱れ、回復する。そこには一人の女性が映っていた。
『その方の姿に惑わされないでください』

 

「あ!」
「ん?」
「え?」

 

その女性の顔は……

 

『わたくしはラクス・クラインです。わたくしと同じ顔、同じ声、同じなの方がデュランダル議長と共にいらっしゃることは知っています。ですが、わたくし、シーゲル・クラインの娘であり、先の大戦ではアークエンジェルと共に戦いましたわたくしは、彼女とわたくしは違う者であり、その想いも違うと言う事をまずは申し上げたいと思います』

 

「おい! 何だよこれは!」
突然、画面が二分割され、ミーアとラクスが並べて映し出される。

 

『わ、わたくしは……!』
ミーアは必死に言葉を繋ごうとするが、言葉が出てこない。
『わたくしはデュランダル議長の言葉と行動を支持しておりません』
対してラクスは毅然と宣言した。

 

「こちらの放送を止めろ!」
うろたえるミーアを見て、デュランダルカメラの前から走り去り、スタッフに叫んだ。
「は! いやしかし……」
「いいから止めるんだ! 奴等の思惑に乗せられているぞ!」
「は!」
だが、なぜか画面からうろたえるミーアの姿は消えなかった。
「ぇぇぃ!」
デュランダルは罵った。

 

『戦う者は悪くない、戦わない者も悪くない、悪いのは全て戦わせようとする者。死の商人ロゴス。議長のおっしゃるそれは本当でしょうか?』
ジブリールは、ただ画面を見つめていた。
『それが真実なのでしょうか? ナチュラルでもない、コーディネイターでもない、悪いのは彼等、世界、貴方ではないのだと語られる言葉の罠にどうか陥らないでください!』
「何が目的だ?」
いぶかしげにジブリールは呟いた。
『無論わたくしはロゴスを庇う者ではありません。ですがデュランダル議長を信じる者でもありません。我々はもっとよく知らねばなりません。デュランダル議長の真の目的を……!」
「――ふざけんじゃないわよ!」
その時、ラクスの声をかき消すように叫び声が響いた。
「「……!?」」
叫んだのは、うろたえる事をやめたミーアだった。
ミーアは腰に手を当てて叫び続ける。
「今頃のこのこ出てきて自分は本物ですとか言ってるんじゃないわよ! 先の戦役後、プラントも地球もガタガタしてるの放置してたくせに!! 自分だけどっかに引っ込んで、プラントを見捨てていたくせに! あんたがいないからあたしがプラントを鎮めるしかなかったんじゃない! 勇気づけるしかなかったんじゃない! 今のプラントの『ラクス』はあたしよ!」
す……と一瞬ラクスの表情が消える。ミーアの台詞を放置し、言葉を紡ぐ。
「……『皆、己の良心に従い、為すべき事を為してください!』』

 

一人の男――ミーアのマネージャーがすごい勢いで突進してくるのがカメラに映る。
彼はナイフを持っている。
「あのナイフはどこから出てきたんだ!」
「そこの警備員が渡した!」
「取り押さえろ!」
その指摘された警備員は抵抗する事も無く、ただ虚ろな目をしていた。
「いや! やめて!」
ミーアは抵抗するが男の力にはかなわない。マネージャーはミーアの腕をしっかりとつかみ、そして口を開いた。
「なぁ。もう良心がうずいて限界や。こいつ、ラクス・クラインの偽者やでー。今まで騙しててごめんなー」
どこか棒読みのようにマネージャーは虚ろな目をしてカメラに向かって言うと、抵抗するミーアの首筋目掛けてナイフを滑らせる!
鮮血が飛び散り、ミーアは崩れ落ちる。マネージャーも、次に自らの頚動脈に深々とそのナイフを突き刺し、崩れ落ちる。
……誰もが、硬直していた。
「は、早く放送を止めろ!」
誰かが叫ぶ。だが、係りの者は放心した様に、惨劇の起こった方を向こうともせず、動かない。カメラマンも、どこか魂の入っていない様子で惨劇の後を映し続ける。
いつの間にかラクスを映していた画面は消え、ただミーアが血だまりに倒れている画面だけがただ映る。
……しばらく後、プラントチャンネルはようやく、河を客船が航行している環境画面に切り替わった。

 
 
 

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