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SEED-IF_4-5氏_46

Last-modified: 2009-01-28 (水) 18:30:18

――ザールブリュッケン
「もぬけの殻か」
「親ザフト軍は、既にフランス国内に脱出したとの事です。メス(metz)にかなりの規模の部隊を確認」
「ようし、メスへ進出する!」

 

メス前方にはドイツとフランスの親ザフト軍が共同で陣を張っていた。
戦いはスカンジナビアのサープ50グリペン多目的戦闘機が突撃する事で始まった。
グリペンは親ザフト軍のウィンダムらとまともに戦おうとせず、その高速を生かして突破、地上部隊を爆撃した。
その攻撃は5波にも及んだ。祖国防衛のため、シェルターの様に整備が十分にできない場所でも整備ができるように、高い整備性を実現した、いいグリペンならではの成せる技、である。

 

ウィンダムが補給のために地上に降りた所に、スカンジナビア王国がオーブからライセンス生産をしていたムラサメが襲来、更に親ザフト軍は損害を受けた。
親ザフト軍バゼーヌ司令官は、メスに撤退し、救援を待つ。
スカンジナビア軍は第1軍及び第2軍でこれを包囲。

 

「元帥! シャロンの地にて敵軍が集結中との情報が入りました!」
「うむ。第1軍及び第2軍はメスの包囲を続けろ! ワシは第3軍を率いて敵軍の終結が完了しない内に、叩く!」
マンネルヘイムは第3軍を以ってシャロンの地の親ザフト軍を急襲した。損害を受けた親ザフト軍はセダンに撤退、補給と兵士の休息をさせた。
スカンジナビア軍第3軍は後を追いセダンに到着。親ザフト軍はこれを確認するも、軍の消耗のために直ちに撤退することはできなかった。
翌日、Strv222リニアガンタンクを主力とするスカンジナビア軍3個装甲師団が到着。セダンでムーズ川渡河作戦を開始、グリペン、ムラサメによる激しい支援爆撃の下に橋頭堡を確保し、1個装甲師団が渡河に成功した。以後、ムーズ川各所で残りの装甲師団も渡河に成功し、マンネルヘイムはセダンを包囲する事に成功する。
親ザフト軍は包囲を突破する努力を続けたが、司令官のマクマオン将軍が負傷し、兵員も多数負傷したため、ついに降伏するに至った――

 
 

フランス国内の親ザフト軍は壊滅したかに思えた。だが、パリの親ザフト政権軍はなおも抵抗を続ける。

 

「なんだと? パリで奴らに捕まったロゴスの幹部と……」
「ええ、親地球連合派のクレマン・トマ将軍と、ルコント将軍も共に銃殺されたそうです」
「何考えてやがる」
「自棄になったか」
「パリ第19区や20区の奴らが蜂起しました! サンテ刑務所を襲撃! フルーランスやアンベールと言った札付きの政治犯を釈放、いや、開放しています」
翌日、パリ市庁舎に赤旗が立つ。親ザフト政権と共産主義者の醜悪な合体であった。

 
 

「姉さん……」
セトナのテレビ放映を見てアグニスは呟いた。
あんな必死な姉は、はじめて見る。
地球で、大切な人が、守りたい人がたくさん出来たんだな……
アグニスは少し寂しさを覚えた。
スカンジナビア王国、アレクサンドラ王妃はアグニスに話しかけた。
「あなたのお姉さまは立派ね。しっかりしていらっしゃる」
「ありがとうございます。そう言われると私も嬉しくなります」
「ほんとに、こう二人の演説を並べてみると、プラントのデュランダル議長の主張が無茶苦茶だと言う事がわかってしまうわねぇ」
アレクサンドラは溜息をついた。
「どうして、デュランダル議長はあんな事を言ったのかしら?」
「……しかし、スカンジナビア王国まで戦争に介入するとは思いませんでした。これで仲裁する者がいなくなってしまった」
「ほほほ」
アレクサンドラは笑った。
「頭に剣を突きつけられて、気にせず眠れる者が居りますか? そうした場合、対処は二つだけ。お分かり?」
「いえ……」
「こちらも相手に剣を突きつけて、いざと言う時は道連れだと宣言する。……残念ながらこれはユニウス7落下で無意味になってしまったわ。残るは、力づくで自分に突きつけられた剣を振り払うだけよ」
「残念です」
「私も残念。まぁ、大西洋連邦は最低でもプラント住民を地上に移住させるつもりらしいわ。わが国もそれに協力してプラント住民の受け入れの用意はしているわ。それより……」
アレクサンドラは言った。
「オーブのアスハ代表も、デュランダル議長に反対する声明を出したわ」
「……! それは、文章だけではなく、実際に姿を現して、ですか?」
ナーエが驚きの声を出した。
「ええ、後で見るといいわ。録画してあるから」
「お前達、どうする?」
アグニスはガルト・デル・ホクハ達に尋ねた。
「そうですな。アスハ代表が見つかったとなると、いったん、我らはオーブに帰るべきかもしれません」
「そうですね。いったん、帰りましょうか?」
サース・セム・イーリアも答えた。
「そうそう、アグニス、あなた、キラ・ヤマトの事を話していたわね。先日オーブからこんな手配書が回ってきたのよ」
アレクサンドラは、アグニスに書類を手渡した。
「……これは! アークエンジェルとキラ・ヤマトの手配書!? 署名はアスハ代表!」
「アスハ代表は、まっすぐで、それでいて統治者としての伸びしろを感じさせる、いい子だったわ。一体キラ・ヤマトは何をしたのかしらねぇ?」
アレクサンドラはため息をついた。
「ええ。アスハ代表については私もそう思いました。……状況を知るべきです、アグニス。オーブに向かいましょうか?」
「そうだな、ナーエ」
「そう言う事なら、私はワシントンに連絡を取ってパナマ運河使用許可を取っておきましょう」
「ああ、頼む。まほりん」
「はいっ!」
井沢真秀はすっかりアキダリアの皆と打ち解けていた。

 
 

――バチカン
「課長殿! フランスで独・仏連合親ザフト軍が大敗したそうです」
法王庁特務局第13課、バチカンの表に出ない荒事を取り仕切るそれ――通称『特務機関イスカリオテ』の課員がアンデルセン神父に駆け寄ってきた。
「結構なコトじゃないですか? 独逸のプロテスタント共がたくさん死んだんでしょう」
「あ、はぁ」
「もし主を愛さない者があれば、呪われよ。マラナ・タ。エイメン! さぁ、フランスに巣食う、神を否定する背徳者共に神罰を喰らわすのです!」
「それから、各地の騎士団が参集してきています。……彼らの前では司教と呼んだ方がいいですかね?」
そう、実はアンデルセン神父は『特務機関イスカリオテ』を率いる司教だったのだ!
「いいですよ、いつもどおりで」
アンデルセン神父は課員に笑った。

 

「「エイメン! エイメン!」」
「クールランテ剣の友修道騎士会総勢340名参陣!」
「聖ステパノ騎士団トスカナ軍団総勢257名参陣!」
「マルタ騎士団総勢2457名参陣!」
「ジェダイ騎士団総勢108名参陣!」
カラトラバ・ラ・ヌエバ騎士団はスペインが内戦状態のため来ていない。
集った騎士団はアンデルセン神父に膝まづいた。
「教皇聖下の御命により我ら参陣致しました。我らの参陣と共にアンデルセン司教はアンデルセン大司教となられます」
「我ら軍団は第9次十字軍を編成。総指揮権をアンデルセン大司教猊下に委ねます!」
「AMEN(たしかに)。全身全霊でお受けする」
アンデルセンは答えた。
「目標はフランス、死都パリ! 熱狂的再征服(レコンキスタ)を発動する! コミーどもを滅ぼせ!」
「エイメン!」
「エイメン!」
「全軍進撃! 神罰の地上代行の時来たれり!!」
バチカンは動き出した。

 
 

「ええぃ! 何者だ! あのセトナ・ウィンタースと言う娘は!」
デュランダル議長は怒鳴った。
「幸いにして、地球向け放送であるので。プラントで見る者は少ないでしょう」
評議会議員が言った。
「しかし、先の議長のテレビ会見の時の事件について、市民からの問い合わせが殺到しております。如何致しますか?」
「む……」
デュランダルはしばらく黙り込んだ。そして、晴れ晴れとした顔になって言った。
「私が自ら説明しよう。会見の準備をしてくれ」

 

しばらく後、デュランダルはカメラの前で全てを語った。
ラクスの偽者を立てた事について総ての事実を包み隠さず語った
自身の影響力の不足を補うために、ミーアと言う少女をラクス・クラインとして登場させ、プラントの統治のため、政治的に利用したと……
それをよく思わない勢力のために、ミーアが狙われた事、周囲の者に、正体不明の薬物の使用の痕跡が見られる事、精神操作の形跡が見られる事、下手人のミーアのマネージャーは死亡した事、ミーアは未だ生死の狭間にある事。
今回の事態を招いてしまった自身の愚かさをいっそ清清しいと感じるほど率直に語り、その非を詫びた。

 

プラントを統べる評議会議長が、プラント全市民に対し、己の非を認め、その頭を深く下げて許しを請うた……

 

この衝撃的な映像は数えきれないほど繰り返し報道され、今までプラント一般市民からは天才肌の、完全無欠の政治家とも錯覚されていたデュランダルが過ちも犯す等身大の人間であると、広く民衆に伝えることとなる。

 

こうなると、不思議なものでデュランダルを批判していた者達からも
『政治家は清濁併せ呑まなければならない』
『清廉潔白のみによって国は治まらぬ』
などとデュランダル擁護の意見が沸き起こる。
また、ミーアに対しては一日も早い回復をと圧倒的な同情が寄せられた。

 

「ははは……」
「議長?」
秘書が訝しそうにデュランダルを見る。
「いや、自嘲していたのだよ。結局、自分の力を一番信じていなかったのは自分だったと言う訳だ。なんともはや」
「調子に乗ると、また失敗しますよ?」
「はっきり言う。気に入らんな」
「どうも。気休めかもしれませんが、私は議長は補佐のし甲斐があると思ってますよ」
「ありがとう。しかし、サイオキシン麻薬か! どこの誰が?」
「サイオキシン麻薬ともなれば、地球連合も撲滅に躍起になるはず。刑罰も重い。個人ではなかなかできますまい。裏にそれなりの組織がいるものと」
「大洋州に使用している分が流出したのではないか?」
「可能性はあります」
「大洋州の警戒を厳にしろ、一層な。裏にザフトがいる事を悟られてはならん」
「はっ」
「……しかし、ミーアには気の毒な事をしたな」
「未だICUだそうですね」
「ああ……。なんとか助かってくれればいいが……」
部屋の通話機のベルが鳴った。秘書が出た。
……秘書は、デュランダルを見ると、首を振った。
ミーア・キャンベル死亡の知らせだった。

 
 

「なんだと!?」
「馬鹿な!」
「ありえん!?」
宇宙――アメノミハシラ近辺ではある実験が行われていた。
試作されたある新装甲に対する実験である。
イズモ級の主砲225cm2連装高エネルギー収束火線砲「ゴットフリートMK.71」が確かに直撃したはずなのだが……
その装甲は、原型を留めて其処に在った。
「物理的な力に対する耐性もPS装甲をはるかに凌駕する。おまけに電磁波に対してのステルス能力もある、か……」
ロンド・ギナ・サハクが呟いた。
「弟よ。ゴールドフレームだが。PS装甲&ミラージュコロイドと、あの新装甲どちらを取る?」
「決まっている! あの装甲だ!」
「ふふ。そう言うと思った。生産した装甲は優先的に廻そう。とは言え、まぁ、せいぜい作れるのは2・3機分か。……にしても」
ミナは考え込んだ。
「こんな研究が行われていた形跡など、宇宙のどこにも、プラントにも宇宙樹にも、DSSDにもなかった。まるで突然この世界に現れたかのようだ。あの数多くのモビルアーマー、モビルスーツの設計図もだ。ウナト、お前は一体どこからこんなデータを手に入れたと言うのだ? ウナト、お前は一体何者だったのだ?」

 
 

「援軍、出さざるを得ないか?」
ジブラルタルでは深刻な会議が開かれていた。空気が重々しい。
「ああ、各地の親ザフト政権が悲鳴を上げてザフトに泣き付いてくる」
「計画的に敗退するにしてもだ。このままでは一気に壊走になりかねん」
「ミネルバに行って貰うか?」
「あの艦にはさっさと宇宙に行ってもらいたいのだがな。本国を固めてもらわねば」
「やむを得ん。ジブラルタルに余裕は無い」
こうして、ミネルバにユーラシア西部への派遣が命じられた。まず目指すはパリ。
だが、ミネルバがパリに着く事は永遠になかった――

 
 
 

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