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SEED-IF_4-5氏_50

Last-modified: 2009-02-25 (水) 17:54:42

「おお! マーシャンの諸君!」
オーブに着いたアキダリア。
マーシャンを出迎えたのは、カガリ自身だった。
「いや、ご無事でなりよりだ」
「心配していたのですが……良く・・・・・・」
「確かに本人だな」
「ですね?」
アグニスとナーエはすばやく視線を交わす。
「その様子だと、拉致されていたのは知っているようだな。はは、なんとか自分で抜け出してきたよ」
「ところで……」
ナーエは言った。
「キラ・ヤマト達を指名手配したと?」
「うっ」
カガリは辛そうになる。
「彼らに、私は拉致されたんだ。そう、彼らに拉致されていた。彼らは、精神を病んでいた。まともに見えた周囲の人達も。まるで精神病者のキラを指導者のように扱って……引きずり込まれた、いや、元凶はラクスかな。薬まで使ってラミアス艦長を洗脳していた。狂ってる。誰も彼も。こんな事ならもっと早く、医者に診せるべきだった」
「それで……アークエンジェルは今は?」
「ニュースで見たろう。今は、前の戦役のような事をやっている、本当にそれが平和に繋がると信じて。彼らが哀れでたまらない。あんな事で戦争が終わると思っているのだから」
「……」
「では、我々の任務は終わったと言う事でよろしいですな」
ここまで口を開かなかったガルトが言った。
「お前達、氏族のガルド・デル・ホクハにサース・セム・イーリアだったな」
「はい」
「今度作る、近衛部隊に入ってくれ。私はユウナの人を見る目は信頼している。そのユウナが私を探すように頼んだお前達だ。頼む……! 私には信頼できる人材が一人でも必要なんだ!」
「頭を、お上げください」
優しい声でガルドがカガリに手を差し伸べた。
「代表がそうおっしゃられるならぜひ、我ら、加わらせていただきましょう!」

 
 

「まさか!」
部屋にいるのは3人のみ。レイとタリア、そして……ラウ・ル・クルーゼ。
「本当だよ。私はラウ・ル・クルーゼだ。しかし、色々と覚えも無い罪も付け加えられているものだ。どうせシーゲルの腰ぎんちゃくの女、アイリーン・カナーバがやった事だろうがな。ふん。フリーダムの強奪? ジェネシス自爆? 馬鹿らしい。地球が滅びればプラントも滅びると言うのにわざわざ自爆など」
「成原成行博士でもあるまいしね」
成原成行博士は『自爆は男のロマンだ!』と公言してはばからない人物である。
「残念ながら、彼には完璧なアリバイがある」
「それは残念ね、学会から追放するチャンスだったのに」
タリアはちっと舌打ちした。
タリアと成原成行博士の間には何かあったようだ。
「で、これから、どうするおつもりで?」
「……フランスの、とある町で静かに余生を送っていく予定だった。しかしまた戦争が起こり。だが……最近のザフトはなんだ。ここまで疲弊していたとは。助力をする気になった」
「しかし、助力と言っても、あなたは一応罪人ですよ?」
「ふ……ギルバート・デュランダル議長本人に連絡を取ってみてくれ。私の無実の罪など、あっさり覆るさ」
「私も、添え書きしましょう! 彼が確かに本人であると!」
レイが意気込んで言う。
「わかりました。最優先で本国に連絡を取ります!」

 

タリアが本国に送ったその情報は、プラント上層部にちょっとした騒ぎを引き起こした。フリーダムー強奪などの事件があらためて洗い出され、その過程で、フリーダムの格納庫の前でカメラ目線を取るラクス・クラインが写っている画像が見つかったのである。しかして、それは後に評議会議長であった時のアイリーン・カナーバに握りつぶされていた事も明らかになる。
もっとも、クライン派の基盤を壊すという事でそれがプラント市民に公表される事はなかった。
だが即日、アイリーン・カナーバは拘束された。
ジェネシス自爆についてはラウ・ル・クルーゼ本人の弁明書から転載するのがよいだろう。
『――確かに自分の生まれに絶望して全人類の滅亡を図っていた事もあった。地球を撃たせるようにザラ議長を志操したのも事実である。だが、それで人類滅亡には十分である! わざわざジェネシスを自爆させるなど無意味極まりない!』

 

結局旬日を経ずして、クルーゼにはデュランダル議長直々の命令で、ザフト復帰とミネルバ配属が決められた。仮のフェイス任命と共に……。

 

「どうしましょう?」
ルナマリアはアスランに尋ねた。
「ん?」
アスランはジェネシス自爆の事を考えていた。その犯人はクルーゼでもなかった。ではそいつは、今でものうのうと、この世界に生きているのだ。
「ほら、モビルスーツですよ。レジェンドは、クルーゼさんに渡した方がいいような気がする」
「そうかもな。で、ルナはどうする?」
「ほら、インパルスが2機になったでしょう? 一機をマユにして、私は慣れたセイバーに戻ろうかと。マユもブラストインパルスからなら、ガナーザクから機種転換もスムーズに行くと思うんですよねぇ」
「……これは俺がいわれた言葉だが」
「え?」
「上に行けよ上に、いつまでも切った張ったやってんじゃねぇぞ」
アスランはルナマリアの顎を掴んだ。
「ぁ……、む……」
アスランは、隣に座ったルナマリアに口づけた。
それは、衝動に突き動かされたと言うような物ではなく、もっと温かい物であった。

 
 

「アイリーン・カナーバが拘束されたそうじゃ」
「ああ」
ロゴスの会議である。アイリーン・カナーバが拘束された事は、すぐに彼らに伝わった。
「西ユーラシアの奪回も順調だ」
「ジブラルタルもじきに落とせよう」
「プラントの奴らは、馬鹿だな」
一人が嘲笑する。
「ザフト全軍恐れるにたらないが、彼女の舌先は恐ろしい」
「なにしろ、プラントの独立を認めなければコロニーを落としてやるとまで言われたからな」
ブルーノ・アズラエルが苦々しい声で言った。
「まったく! ユニウス7が落下するとは思わなかったよ! その被害と言ったら! プラントの建設費なんてもんじゃない! やはり奴らはプラントごとでもいい、絶滅させるべきだったのだ!」
「後知恵だよ、後知恵」
「我々が譲歩しなければ本気でやりかねん勢いだったのだよ」
「しかし、彼女が失脚したと聞いた時は実に嬉しかった」
「いっそ地球軍に引き抜きたいほどの手腕だのに、それをまぁ拘束とは」
「「ははは」」
「しかし……」
ブルーノ・アズラエルは気がかりそうに言った。
「先の戦役時、警備が雑なプラントとはいえ拘束されてたのにもかかわらず、ほとんど自力で脱出して仲間を集めてクーデターを短時間で成功させた手腕も恐ろしい。もしかすると、もう一度同じような形で彼女に会うかもしれんな……」
「そうですね。気を引き締めていきましょう、皆さん。『百里の道を行く時は、九十九里を半分と心得よ』ですからね」
アズラエルの言葉を引き取ってジブリ―ルが言った。
「うむ、これからだな」
「ああ」
「……もし、もしだが彼らが地球に質量攻撃をかけたらどうする?」
「ダイダロス基地のあれは進んでおるのか」
「本体はほぼ完成だ。だが弱点がある。第一次中継点に不備が生じれば、事実上、目標への照準合わせが不可能になってしまう」
「ならば、デブリ帯から廃棄コロニーをもっと移動させ第一次中継点を増やすのだ」
「では……」
彼らは実務的な話に入っていった。

 
 

カガリ近衛部隊はカガリが通常寝起きしている内閣府官邸を取り巻くように配備されていた。
モビルスーツも、最新鋭の物が貸与されている。
「近衛部隊か、お前の家の家格も元に戻るかも知れんな?」
ガルドはサースに言った。
サースは没落した家を元に戻すため、幼い身でモビルスーツに乗っているのであった。
「そうでしょうか?」
「そうとも」
「……それを抜きにしても、僕は好きだな。カガリ様も。ユウナ様も」
「ああ、俺もだ」
「近衛部隊か! やりがいがありそうですね。頑張りましょう!」
「ええ!」

 
 

――オーブ艦隊某所――
「同士の集まり具合はどうだ?」
その男は声をひそめて言った。
「上々だ」
相手も声をひそめながら答える。
「トダカ一佐は引き入れるのは無理か?」
「トダカ一佐か!」
その男は苦々しげに答える。
「最初はあの人を旗頭にとさえ思ったのだがな。ユウナ・ロマ・セイランに取り込まれている。ユウナ・ロマの評価を聞いたらなかなか評価している、だとさ。無理だ」
「オーブの中立を破りここまで艦隊を率いているユウナ・ロマ・セイランを評価するなど!」
「しかし、残念だな。有能な彼のような者が上に立ってくれれば我らの大願も……」
「人間的には、もちろん信頼できる。私も彼が好きだよ。しかし、計画に邪魔になるならなんとしても排除する!」
その男の目は夜の暗さにもわかるほど爛々と輝いていた。兵士達はそれを、忠君愛国の念に燃えていると取った事だろう。しかし、実際は何の事はない。狂っているだけだった。

 
 

――ジブラルタル――
タリアがプラントにクルーゼの事について報告を送って旬日を待たず、デュランダル議長は再びジブラルタルを訪れた。
「わざわざ議長がお出でになるなんて」
「この危険な時に?」
「そもそも放棄されるんだろうここ?」
兵士のうわさ話に耳をかたむけながらデュランダルは真っすぐミネルバへと向かった。
ミネルバの前にはタリアをはじめ副官、フェイスの面々が並んだ。しかし、デュランダルは迷わず金髪の青年の所へと向かった。
「ラウ!」
「ギル」
二人はひしと抱き合った。
周囲の女性兵士がきゃーと黄色い声を上げる。
そしてそれは諍いの声に変わる。
周囲の者達は何事かと思ったが何の事はない、どちらが攻めか受けかで争っているだけだった。

 

「マユとあんな風に抱き合えたらなー」
ハイネが軽口を叩く。
「なーに、言ってんですか!」
マユは赤くなりながらハイネを軽く叩く。
「いてて。意外と本気よ? 俺?」

 

「報告書を読んだ時は嘘かと思った」
デュランダルは言った。
「……命が助かった時、もう以前の知り人とは二度と会う事は無い、と思っていたのだがね」
クルーゼが苦笑する。
「積もる話がいっぱいあるが……」
「ああ、今は余裕が無い。お前は本国でおとなしくしていろ。後は……俺がお前の盾になってやる」
「わかった」
ほんの、2・3言の会話。しかし、二人にとってはそれで十分だった。
デュランダルは振り向くと言った。
「この男がラウ・ル・クルーゼである事は私が確認した。正式にフェイスに任ずる。以後、そう扱うように!」
周囲で話を聞いていた兵士達が一斉に立ち上がり、敬礼する。
「ではな」
「ああ」
「ああ、アスラン」
デュランダルがアスランに声をかけた。
「はい、なんでしょう?」
デュランダルはアスランに一枚のメモリーカードを渡した。
「ミーアの……形見だ。たぶん、君に見てほしかったと思う」
「ミーアの……」
「ではな」
デュランダルは、再び本国へ戻るためにシャトルへ乗り込み、出発していった。

 
 

「とうとうオランか」
スウェン達はアルジェリアのオランに到着した。
「さすがに今回は撮影時間が少ないね」
「最初はまったくなくなる予定だったらしいぞ」
「それを、イタリア人のカメラマンがごねたってさ」
「ミューディー様様」
ススェンはミューディーに両手を合わせた。みんなも続く。
あのイタリア人カメラマン――ガウデンツィオ・マルコーニがミューディーをお気に入りなのは公然の秘密だった。
「やめてよ! もう」
ミューディーは赤くなる。
「じゃ、行ってきますか! 最後の撮影!」

 

撮影自体はすんなり進んだ。最後に、みんなで集合写真を撮る時だった。カメラをセットして、ガウデンツィオが席の真ん中に座り、3回シャッターが焚かれる。
「おい、お前ら」
ガウデンツィオは両脇に座っていたミューディーとスウェンの肩を抱くと言った。
「ぜってえ、死ぬんじゃねえぞ。いいか、おい、死ぬなよ、死んだらぶっ飛ばす!」
ガウデンツィオの声は涙声になっていた」
シャムスがガウデンツィオの正面に回り、まっすぐな視線で言った。
「ああ、絶対に死にやしないさ。またあんたに写真を撮ってもらうまではな!」
遠くから、ライ音楽の調べが風に乗って流れてきた。

 
 

『10月11日、今日やっと包帯が取れた。なんだか不思議な感じ。鏡を見たらそこには本当にラクス・クラインの顔が映ってた』
「これ……」
アスランはつぶやいた。デュランダルから受け取ったメモリーカードをパソコンで読み込んだのだ。
「ミーアの、日記……」
『不思議ー、不思議ー、だってこれはもうどこからどう見たってラクス・クラインだわ。大ファンのあたしが言うんだもの間違いない! その代行、身代わりなんて仕事ほんとに大変だろうけど、あたし頑張る!絶対バッチリやってみせるんだから! 声は大丈夫。元々似てるって言われてたんだし。問題は喋り方とか仕草よねぇ。ラクス様は歌われる他はほとんどメディアに出ないから普段が全く分からない。演説の時みたいにいつも凛々しいのかなぁ?うーん、そんなことないよね。ラクス様だって女の子なんだし。化粧品とかどこの使ってるんだろ。出来ればそこまでちゃんと調べておいて欲しいんだけどなぁ』
『お仕事はほんとにある日突然やってきて、夢だったデビューとはちょっと違ったけど。でも考えてみればこれってそれより凄い事よね。あたしラクス様みたいになりたいってずっと思ってたんだし。ほんとにあたしなんかに出来んのかなって心配は心配だけど。でもここでずっと夢見てるよりいいじゃない?先の事なんて分かんないんだもの、なんでもまずはやってみなくっちゃね。よし、頑張るぞ!』
『ラクス様のお仕事はまずは歌うこと。じゃなくてプラントや世界の平和のためにいろいろな活動をすること。大変なんだろうなとは思ってたけど、やっぱり大変! 昨日は遂にギルバート・デュランダル最高評議会議長! わおっ! に呼ばれて、少しお話を聞いたけど、なんだか地球にユニウスセブンが落ちちゃったとかで大変なんだって。本物のラクス様は今プラントにいらっしゃらないっていうし、もしかしてマジ私の出番なわけ!? こんなに早く!? うわ〜だったらどうしよう!』
「ミーア……」
『今日は今日はもうたいへ〜ん! やっぱりいよいよやんなきゃなんなかったし! アスランよ! アスラン! アスラン・ザラ! 議長はそのうち会えるよって言ってたけどすご〜〜い! ほんとに会えるなんて! やっぱり真面目そうで格好良くて素敵な人〜! 戦争のせいか今日はずっとブスっとしてたけど、でもお父さん裏切ってもラクス様のとこへ行っちゃった人だもんね〜。ラクス様には優しくてラブラブなんだろうなぁ。う〜!ミーアも仲良くなりた〜い!』
『お仕事の方は本格的に始まって、ちょっと緊張、たいへ〜ん。戦争の中でお仕事するのって本当はとっても大変なのね。でもみんなほんとにラクス様のことが大好きなのね。凄く大事にしてくれる。あたし嘘だからちょっと気が引けるけど。でも、みんなを励ましたいって気持ちは嘘じゃない。頑張らなくちゃ! ラクス様の様に。ラクス様の様に。あたしの声もみんなに届きますように。早く戦争が終わるようにみんな、頑張ろうね!』
『アスランと会うのも久しぶり〜! ちょうどミネルバが入港してラッキー! でもアスランてけっこう照れ屋さんでおかしい。婚約者なんだからぁもうちょっとそれらしくとも思うんだけど。や〜っぱラクス様一筋なのね〜。でも、こんな人とマジラブラブだったらいいよね〜』
「ミーア……」
アスランの拳がぎゅっと握られる。
『慰問のコンサートはどこへ行っても凄い人。地球の人もみんな待っててくれて、声かけてくれて、ほんとに嬉しい!あたし用のピンクのザク、初めて見たときはもう感動しちゃったよ〜! あたしももっと頑張らなくっちゃ! でも戦争はなかなか終わらないし、結構大変よね。議長の言ってることは正しいんだからみんなちゃんとそれを聞けばいいのに。そ・し・て。すごいすごいすごーい! アスランにキスされちゃった! まさかやってくれるとは思わなかったからすごい嬉しい! これって……あたしにもラクス様と同じ位の魅力感じてくれたって事だよね? 嬉しい。やばい。本気で好きになっちゃいそうだよ。好きになっちゃだめなのに。だってアスランにはラクス様が……。でも、好き。辛いよぅ』
「ミー……アぁ……」
アスランの拳に涙が零れ落ちた。
あの明るい表情をした娘がもういないなど信じられなかった。
思い出される、触れ合った身体、感じた体温。唇の感触。
「ラクス様のために、か……」
皮肉な物だ。ラクスのあの最後の意味深な言葉。もしやあれがキーワードだったのでは?
なぜプラントの住人はラクスの言葉に価値を見出す? あんな、あんな……
アスランはミーアに言ってやりたかった。俺はラクスなんかよりミーアの方が好きだったと。

 
 
 

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