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SEED-IF_4-5氏_58

Last-modified: 2009-04-14 (火) 18:24:47

「ううむ。ここまで追い詰められてしまうとは」
デュランダルは唸った。
「軍事ステーションは所詮器です。ザフトの軍は致命的な損害を受ける事無く撤退できたのですから」
「しかし……これでは本国を守る要塞はメサイアしか無くなったな……」
「残存艦隊は、メサイアに向かう様に指示を出しましょうか?」
「そうしてくれ。私もメサイアへ向かう!」

 

「なんとか無事に本国に戻れそうだなシリー」
「ええ、カン、すごかったわ。カン」
「君こそいい攻撃だった」
休養室で、二人がいちゃいちゃしている。
「ルナ」
「あ」
休養室の入り口に居たルナマリアに後ろから声をかけたのはマユだった。
「どうしたの?」
「ん? 彼らって、私の部下だったチアキとミツオに似てるじゃない? ちょっと、話すの辛くてね。思い出しちゃって」
「そっか」
ルナマリアの肩をぽんと叩いてマユは休養室の中へ入っていった。
「よくやったわねー! あんた達!」
そう言ってマユはカンとシリーを抱きしめた。

 

「私も、ああ出来ればいいのにな」
「ルナ、慣れん方がいい、人の死になど」
「え、あ、アスラン!」
「お前はお前らしくやれよ。前に言われたな」
ぽんとルナマリアの頭を叩いてアスランは去って行った。

 
 

「まさか軍事ステーションを落としてしまうとはなぁ」
「それほどザフトが弱体化していると言う事でしょう」
「第9から第12艦隊にも軍事ステーションに向かうように指示を出しました」
「この機を逃さず! ザフトを敗北させましょう!」
「うむ!」

 
 

「軍事ステーションは取られたか……」
アスランは嘆息した。
「ああ。残念だ。しかし、貴様の考えたフォーメーションは効果があったな」
イザークは言った。
「そうか」
「この際全軍に通達するべきかも知れん」
「ああ、やってくれ。俺からもデュランダル議長に進言しよう」
アスランの考えたフォーメーションはこの後の戦いで意外と地球軍を苦しめる事となる。

 
 

アメノミハシラでは、降下作戦の準備が行われていた。
「どうだ、サース?」
ガルドが尋ねる。
「はい、いい機体です!」
サースの機体はパイマラソだ。
「ああ。しかし、俺はこのシャペリンの様なオーブらしいほうが好きだな。」
ガルドの機体はシャペリンだった。
「サース、無理はするなよ!」
「はい!」
『各員降下準備開始』
アナウンスが入る。
オーブ本土奪還作戦が始まった。

 
 

月面アルザッヘル基地から第9艦隊、第10、第11、第12艦隊が攻略した軍事ステーション目指して進発していく。
「できれば我らも行きたかったがな」
第1艦隊司令長官のラザーノレ・ロポス中将が呟いた。
「我々はいざと言う時のために残っていなければ」
第2艦隊司令長官のバエシタ中将がたしなめる。
「ああ、わかっているとも。だが、どうにも心が逸る……」

 
 

「……と言う事で、まだ経験の少ない者達はガナーザク装備で後方から狙撃すると言う事だ。前面はベテランに任せる」
デュランダルは軍部の首脳に言った。
アスランの考えたフォーメーションの案はクルーゼからもその利点を進言されていた。
「うむ」
「もっともな話だな」
「後方に置くと言う事で、戦場、新兵特有の恐慌状態にも陥りにくいでしょう」
「で、ここで言いにくい事を言わなければならないのだが……」
デュランダルは口ごもった。
「なんでしょう?」
「徴兵年齢を引き下げたい。13歳に。まだ学生の身分の者を徴兵する事になるが、後方から狙いをつけて撃つだけならさほど難しい事でもないだろう」
後ろめたそうにデュランダルは言った。
「……それは!」
「そこまで。厳しいのですか?」
「元々プラントの人口は2千万だ。地球連合と戦うにしても限界が出始めていると言う事だよ」
デュランダルの言うとおりだった。既に物資の配給制は実施され、先の戦役による消耗、それを補うための更なる徴兵によりプラントの社会システムは限界に近づいていた。
少々暗い雰囲気の中で、その案は決定された。

 
 

「第9艦隊、アノレ・サレム少将だ」
「第10艦隊、ウラソフ少将です」
「第11艦隊、ムーマ少将だ」
「第12艦隊、ポロティソ中将だ」
軍事ステーションに集まった面々が自己紹介する。
軍事ステーション攻略を成功させた第3、5,6,8艦隊は補給及び軍事ステーションの周囲を警戒に当たっている。

 

「我々の情報では、もはやザフトに軍事的要衝は無い。一気にプラントを攻略し、城下の盟をさせるべきだと思うが」
「ふう」
ウラソフは溜息をついた。
「長かったですな。ここまで」
「まさか人口2000万人の集団があれほどに地球に被害を与えるとは思わなかった」
もはや、プラント攻略に区々たる戦術は必要ない。軍勢の多寡を利用して押して行けばよいだけである。しかも、ザフトはプラントと言う民間人の居住する施設を抱えているのだ。プラント攻略作戦会議は自然と雑談になっていった。
「地球連合は、プラント住人を全て地球に移住させる計画らしいですな」
「2千万か……なんとかなるかね?」
「しかし、差別が起こるかも知れんな」
「当然の報いだよ。私の祖父母もエイプリルフール・クライシスで死んでいる。田舎で静かに暮らしていただけだったのに」
会議は、3日後の出陣を決定して、解散した。

 
 

「こんな要塞が作られていたとはな」
アスランはイザークに言った。
「ああ、こんな時だ。心強い」
「絶対に成功させようぜ、この作戦」
「ああ、ディアッカ!」
「ジュール隊長!」
その時、部下の一人が声をかけてきた。
「あん? なんだ?」
「お母様が、おいでになられております」
「なんだと!?」

 
 

「ギル。今度の作戦、自分の案が受け入れられたようでありがたい」
クルーゼがデュランダルに話しかける。
「ああ」
「もう一つ、ある」
「なんだ?」
「今度の作戦、ナスカ級とローラシア級に完全に運用を別けたいのだ。そして迎撃作戦は……」
クルーゼは手元のコンソールを操作した。
画面上の敵味方が動いていく。
「どうだ?」
「いいだろう」
デュランダルはクルーゼの出した案に承認を与えた。

 
 

同日――
宇宙軌道上から超巨大円盤機『ヴリル・オーディン』がオーブ上空に舞い降り、オーブ本土奪還軍は一斉に降下した!
まずは高野一佐率いる『紺碧隊』を中心とした部隊がカプノレを主力とした水中用モビルスーツでオーブ近海に着水、そのままオーブ本土上陸作戦へと繋げていく。
救国軍事会議側が配置した軍艦は軒並みグラプロとカプノレにやられていた。
救国軍事会議側があわててその方面に兵力を集中した時だった。
大高一佐率いる『青風会』を中心とした部隊が降下し、首都オロファト――行政府、内閣府官邸、国防総省。オノゴロ島――国防本部、モルゲンレーテ社。カグヤ島――マスドライバー施設の制圧を目指す。
オーブ本土奪還軍の装備するモビルスーツは、灰田氏による設計図の調整により、この時代のモビルスーツとしては最高の性能を誇っていた。
各地で救国軍事会議側の軍を包囲するようにいくつもの輪が閉じ、潰れていった。

 

「これで! 家を復興するんだ!」
サースの気迫はいつもの雰囲気とはまるで違い、凄まじかった。敵の攻撃をビームシールドで防ぎ、お返しとばかりに大型ビーム砲をぶちまかし、敵モビルスーツを消滅させる。
「熱くなるな」
そうサースに助言をしながら、さりげなくガルドはサースを狙ったモビルスーツをビールライフルで撃破した。

 

「ちくしょう! 上の奴らもだらしない!」
タキト・ハヤ・オシダリは悪態をついた。
「どうします?」
部下が焦った声で指示を求めてくる。
「ようし、敵の奴らが見逃している所がある。そこを狙う!」
「一体どこで?」
「オーブ中央銀行さ」
タキトはにやりと笑った。
「救国軍事会議はもうだめだ。銀行を襲って金を手に入れ、モビルスーツは乗り捨てて逃げる!」
「いいですな」
「そりゃあいい!」
タキトの提案に驚くどころか、部下達は賛成の声を上げる。
「では、行くぞ! ヤマダ、ワダ、スズキ、タナカ!」

 
 

「イザーク……元気な姿を見られてほっとしたわ」
イザークの私室に通されたエザリア・ジュールは、安心したような笑みを浮かべた。
「どうしたというのです、母上?」
「いえね、プラントも追い詰められているわ。プラント本国がいつ攻撃にあってもおかしくない。そう思ったら、あなたに無性に会いたくなったのよ。でも安心した。これでもう思い残す事は……」
「母上……プラントは、俺が守ります!」
「ふ……そうね。頼りにしてるわ」
「ええ、頼ってください!」
「でもね、もし、もし私が死んでも、あなたはひとりぼっちじゃないのよ」
「何の事です?」
「あなたには、弟がいるの」
「なんですって!?」
「ふふ……驚いた?」
「驚きましたよ!」
「まぁ、残念ながら私の生んだ子供じゃないけどね。この際教えておこうと思って。ほら、この子よ」
「これは……!」
エザリアから渡された写真を見たイザークは言葉を失った。

 
 

軍事ステーションを根拠地とした、地球軍のプラント攻略部隊は順調に歩みを進めていた。
「ザフト軍はプラント本国前に陣を敷いているようです」
「そうか。布陣は?」
「中央部が厚く、周辺部が薄い。まぁ、順当な陣形ですな」
「中央部が厚いと言っても、今のザフトの戦力だ。我々の兵力と比べればたいした事は無いだろう?」
「それは確かに」
「では、我が軍は鋒矢の陣形を取る! もはやザフトに我が軍を包囲する戦力は無い!」

 
 

「はっはっは! 大金持ちだぜ!」
銀行強盗を首尾良く果たしたタキトは、元恋人のリンナ・セラ・イヤサカの元へと混乱した町中を車を走らせた。

 

「あ? タキト? 何よ今更?」
家の扉を開いたリンナはそっけなく言った。
「おいおい、そんな口聞いてると後悔しちゃうぜ?」
「なによ。いい? 今のあんたがあたしと釣り合うとでもおもってんの? あたしは二尉に降格されたあんたなんかいらないの! 愛想が尽きたの!」
「お、俺と一緒に来たら、贅沢できるぜ!」
「ばーか。気持ち悪いのよ! もう来るな! もう私には彼がいるの! あんたよりずっと素敵なね!」
リンナは扉を閉めようとした。が、タキトは怒りの表情でそれを阻んだ。
「何よ! きゃ、うぐぅ……」
「貴様、貴様、貴様、この売女!」
タキトはリンナにのしかかり、その細い首を締め上げた。リンナは必死に抵抗したが、やがて動きが止まった。
「はっ……俺は……何を……」
タキトは我に返り、その場を逃げ出した。駆け出した。
その時、タキトはいきなり周囲が暗くなったのに気づいた。
子供のような素直さで上を見上げたタキトの上に、撃墜されたM1アストレイが落下してくる! その真下には幼児が危険に気づきもせずふらふら歩いていた!
タキトはダッシュして子供を、横の方へ、悲鳴を上げている幼児の母らしい女性の方へと投げ出した!
――瞬間、M1アストレイがタキトの下半身を押しつぶした。
へへ、こんな俺の最後としちゃ、まぁまぁかな……
満足そうな笑みを浮かべながら、タキトの意識は薄らいでいった――

 

オーブでの戦闘は急速に収束へと向かっていった。
一時間後、救国軍事会議の首班であるプロソズ将軍、ストークズ将軍始めノレクランシュ一佐、エペソス一佐、と言った首魁が自決。オーブのクーデターは鎮圧されたのである。

 
 

「とうとう、地球軍がプラント本国を攻めるようだ、ラクス」
バルトフェルドが言った。
「そう。でも、地球軍にはメサイアの情報は漏れてはいないのでしょう?」
「そのようだな。でなければあんな陣形を取るはずがない」
「地球軍は、痛い目に遭いそうですね。その時が、わが軍の動く時となりましょう。準備を怠らないように」
「わかった」

 

自室に戻ったバルトフェルドは、亡くなった恋人、アイシャの写真に語りかけた。
「もうすぐだよ、もうすぐ……」

 
 

3日後、地球軍はプラント攻略を目指して出撃した。
プラント前面に陣を張るザフトと砲火が交わされる。
だが、ザフトの砲火は地球軍のそれと比べて弱々しく感じられた。
「今だ、突撃して奴らの陣を食い破ってやれ!」
先鋒を任された第9艦隊、アノレ・サレム少将は吼えた。
ユークリッド隊が敵陣を食い破っていく。
ザフトの陣を突破できる……そう感じた時だった。アノレ・サレムは何か違和感を感じた。如何にしても、弱すぎる。

 

――その時、ザフト軍は中央部を破られるのではなく、自ら中央部から撤退していた。高速なナスカ級のみで構成された周辺部艦隊が、急速に地球軍の側面を逆進して行く。
「急げ! 急がんとネオ・ジェネシスに巻き込まれるぞ!」
ザフトの陣形はまるでチューブの様に中央部がぽっかり開いた。
そして……最後方に、ミラージュコロイドを解いたメサイアが姿を現す!

 

「あれは……急げ! 急いで中央部から撤退するんだ!」
そのアノレ・サレムの命令は全てに遅すぎた。
光が、アノレ・サレムを包んでいった――

 

いつの間にか、地球軍はコップの内部に入ったかのような形になっていた。
コップの底は要塞砲、コップを形作るのは地球軍を包み込むように急激に前進してきたナスカ級を中心としたザフト艦隊だ。
補充された新兵も、艦に乗って狙いをつけて撃つだけならできる。
ミネルバも当然先端にいる。マユが、カンが、シリーが、デューサーが撃ちまくる!
「マユさん! 私……撃沈しちゃいました!」
「よくやった! さぁ、撃ち続けるのよ!」
「撃て、撃て! 撃ちまくれ!」
ザフト軍の司令官が吠える。そして、ネオ・ジェネシスの第2射――
地球軍第10艦隊司令長官ウラソフ少将の意識はネオ・ジェネシスの光の中へ消えた。

 
 
 

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