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SEED-IF_CROSS POINT_第20話

Last-modified: 2010-04-09 (金) 00:03:51
 

「アスカさん……しっかり……」
「無理だ」

 

各方面への連絡の合間に両手を合わせて祈るオペレーターの少女。
しかしデスティニーとフリーダム、画面の中の2機の戦いは素人目でも分かるくらいに一方的だった。
彼女の祈りを断つように、艦長は声を絞り出す。

 

「よもや、これほどまでの力の差があるとはな。これは既に 『人の手で倒す』 というレベルではない……」

 

シンの実力は期待以上だったと言って良いだろう。
ブランクなども考えられたがそのようなものは微塵も感じられず、
先日映像で見た現在のアスラン=ザラに勝るとも劣らない。
だが相手がこれでは少々の実力など関係が無かった。
今のキラ=ヤマトの動きは、神の領域にまで近付いていると言っても過言ではなかったから。

 

「エターナル攻略はどうなっている」
「敵守備隊は未だ健在。エターナルに損傷、ありません」
「………」

 

彼が落ちれば全てが終わりだ。何か策は無いのか、何か。
他のパイロットに援護させても無駄な被害が出るだけ。いや、シンの足を引っ張るのが関の山だ。
当初の目論見通りエターナルを落とせばいくらか動揺を誘えるかもしれないが、
敵の守備の堅さにミサイル1発打ち込めていない。
現在ミネルバに乗っている、彼らの戦いに唯一介入できそうなアスラン=ザラは
この宙域に来るまでまだ時間が掛かるだろう。

 

「私の責任だな、これは」

 

打つ手が無い。これは指揮官たる自分のミスだ。
こんな事なら兵の士気など考えずに一旦退いて、ミネルバと合流の後に決戦を挑めば良かった。
いやそれ以前に基地から出撃しなければ良かったのだ。あの時点ではキラの情報など無かったのだから。
自分では最良な手を選んでいたつもりだったが、神を相手に最良を選んだところで勝てるわけが無い。
……今になって言い出しても仕方の無い事か。

 

「でもアスカさん、まだ頑張ってます。必死に喰らいついてますよ!!」
「どうにかしのいでいるだけだ。―――多分、次で終わる」

 
 

距離を取ってフルバーストを放つフリーダム。
それに対し両掌のビームを連射して反撃するシンだったが、既にその動きには精彩が欠けている。
しばらく火線が交錯していたものの、ついに接近戦の際にデスティニーが右足を撃ち抜かれた。
爆炎に包まれる運命。オペレーターの少女が悲鳴を上げる。
あの爆発の規模なら機体に誘爆する事はないだろうが、勝負あった。
もしあの機体に戦う力が残っていたとしても、この流れは変わるまい。

 

サングラスを外す艦長。
必死にシンに呼びかけている少女に一瞬だけ申し訳なさそうな視線を向けた後、
彼は小さく言葉を吐き出した。

 

「どうやら、ここまでか」

 
 
 

第20話 『いつもそこに君がいた』

 
 
 

高速で円を描くように回り続ける2機のMS。
先に攻撃を仕掛けたのはデスティニー。武器を手にしていない左掌から閃光が放たれ、
シンの視界を白く染める。
フリーダムは数十センチ単位の見切りでそれをかわすが、シンは構わず前に出た。
一瞬、いやおそらくその半分にも満たないだろうが、キラの注意はそちらに行ったはずだ。
勢い良くアロンダイトを振り下ろす。
渾身の一撃は視認すら難しいほどの速度でフリーダムに迫り、そして空を切った。

 

「逃がすかぁ!!」

 

これくらいは想定の範囲内だ。だが次は逃がすわけにはいかない。
続けざまに振り下ろしたばかりの長剣を跳ね上げる。オーブでは燕返しとも呼ばれる返しの太刀。
タイミングは今度こそ完璧かと思われたが、フリーダムは急スピードで後ろに跳ぶことでその一撃を避ける。
そして次の瞬間、右手に握られたライフルの銃口がデスティニーに狙いを定めていた。
近い、避けれるか―――?

 

「くそ、こいつ……ぐあああっっ!?」

 

咄嗟に左に跳ぶデスティニー。だが右足をライフルで撃ち抜かれた。
コックピット内を衝撃が奔り、同時に苦悶の声が響く。
一瞬死んだかとも思ったが、胴体への誘爆は免れたようだ。
確認したところ機体は不自由なく動くし、両腕も武装も残ってる。
ならばまだ終わってはいない。劣勢なのは事実だが、俺はまだ戦える。
例え地べたに何度も這い蹲ろうと、武器を取って、立ち上がって――――立ち上がって、どうする?
決まってる、身体が動く限り抗うだけだ。
絶望的な戦いは初めてではない。そして自分はその戦いを生き残ってきた。
ここに来て戦意喪失するくらいなら、俺は最初から戦場になんか戻ってきたりはしない。
しかし―――

 

「ハア、ハア………チッ……」

 

挽回できない劣勢。重さを増す身体。自分の荒い呼吸の音が煩わしい。
だがそれ以上に、自分自身が信じられなかった。
否定したい先刻のキラの言葉。だがその言葉は間違いなく自分の心に潜り込んでくる。

 
 

忘れてしまっただけだ君は。

 
 

俺の憎しみに誰かを巻き込んで、また悲しみを増やすようなこともしたくない。
憎しみの連鎖。それを嫌って、俺はレイや議長たちの復讐を諦めた。キラやラクスたちに屈服した。
そして軍を辞めてからこの数年、全てを捨てて 『彼女』 のために生きてきたつもりだった。
だがもしかしたら、キラの言う通り本当は違うのかもしれない。
俺は憎しみの連鎖や 『彼女』 の事を言い訳にして戦うことから逃げただけで。
親友を、仲間を、認めてくれた主を失った事を忘れようと逃避してしまっただけなのかもしれない。

 
 

他人の為に怒る事に、疲れ果てただけなんだよ君は。

 
 

そうなのかもしれない。
いくら力を振るっても何も守れなかった現実に、
戦争後の自分は戦う気が沸かなくなっていたのは事実だった。
そんな中、ラクスに連れて行かれた復興の進まないベルリンを目の前にして痛感したのは
約束を守れなかった過去と自分が 『彼女』 に罪を背負わせたという負い目。
そして当時と変わらず無力な自分。
そんな現実から目を逸らすために自分は贖罪の道を選んだのではないだろうか。

 

ルナマリアとは別れた。
彼女のことは愛していたが、純粋に彼女の事を想えない自分には傍にいる資格が無いと思った。
FAITHの地位も捨てた。ザフト軍人の憧れとも言える地位だったが、自分には過ぎた力だと思った。
無論苦しくないと言えば嘘になる。だが自分は失うことに慣れていた。
だから、大切なものを手放すのは仕方の無いことなのだと気持ちに蓋をするだけで耐える事ができた。

 

しかし、それは本当に罪と向き合っていると言えるのか。
ただ大切なものを捨ててまで償う自分に酔ってるだけじゃないのか。
そしてその償いという逃避で、自分が一体何を救えたというのか。
己の心すら救えていないのが自分の現実だと言うのに。

 
 

『これで決める……当たれぇぇぇぇ!!!』

 

ドラグーンが宇宙を舞う。幾重もの緑の閃光がデスティニーに向かって迫る。
瞬時に自分の頭が回避ルートを割り出すが、身体が鉛の様に重かった。
お前はここで敗れておけ。まるでそう言うかのように。

 

「駄目か……」

 

力が抜ける。
認めたくは無いけれど。認めるしか、ないのかもしれない。
キラの言う事は間違っていないと。

 

憎しみの連鎖を終わらせる。
ベルリンを復興させる。
医者になる。
彼女の代わりに償いをする。

 

それは全て、戦いから逃げるために自分に吐き続けた嘘だったのかもしれない。
そして自分は、その嘘に気付かない振りをしていたんじゃないのか。

 

でもだとしたら、俺は。
俺は―――――

 
 

―――相変わらずだな、お前は。

 
 

「え? ……うわっ!!」

 

不意に懐かしい声が頭の中で響く。もう、二度と聞くことのできない筈の声。
思わず動きを止めてしまったが、フリーダムの攻撃はかろうじて避けることができた。
頭の中で言葉が続けられる。

 

―――自分への評価が低くて、人に責められるとすぐそれを鵜呑みにする。それは今のお前の悪い癖だ

 

言いにくいことをあっさりと口にする声。いやそりゃ確かに流されやすいとこあるけどさ。
今回のキラの言葉はもしかしたら図星かもしれないんだ。
よく考えてみろ、俺みたいな奴が

 

―――俺も議長も平和を目指していた。それなのに俺たちの復讐のためと言って戦争など起こされても困る。
     だからお前の考えは正しい。ベルリンの復興にしてもそうだ。
     お前は守りたかっただけだろう? 彼女とした 『守る』 という約束と、彼女自身を。

 

確かに自分はあの時誓った。
彼女が死んでいようが関係ない。「君を守る」 という約束を守り通すのだと。
シン=アスカはステラ=ルーシェを守るのだと、そう誓った。
だが、しかし

 

―――いい加減にしろシン、何度でも言ってやる。
     お前のやっている事は正しい。いや、

 

ばっさりと反論が切り捨てられる。そして続くのは肯定の言葉。
本当に? 本当に俺は間違っていないのだろうか。自分を信じても良いのか?
自分に対する疑念が消えたわけではない。だが手には確かに力が戻る。
あれだけ自分で沈んでたくせに、親友に肯定された、ただそれだけで気を取り直したのか俺は。
何とも安直な自分に笑えてきた。

 

まあいいや理由は何でも。

 

だが、それにしても。
なんでこいつはいつも、自分のピンチを救ってくれるんだろう。

 

―――お前は、何も間違ってはいない

 

レイ。お前はなんで。

 
 
 

声が止んだ。
意識が跳んだまま戦っていたのか、フリーダムとの距離が先程までと違う。
キラは先程までと変わらず、自分に向かって叫んでいた。
声が掠れるのも構わずに怒りの声を吐き続けるその姿、
数分前の自分なら戦う意思を無くしていたかもしれない。
だが、

 

『君にはあるのか!!
 大切な人との思い出を忘れていって、過去のものにしている君に!!
 僕のこの想い、怒りを否定する権利が――――』

 

「五月蠅い」

 

今の自分には煩わしい。

 

誰かに背中を押された感触と共に、シンのSEEDが覚醒した。
同時に身体中に力が滾り、全神経がクリアになる。
中距離から放たれたライフルの光弾をアロンダイトで文字通り叩き落しながらシンは吐き捨てた。

 

『なんだって……?』
「五月蠅いって言ったんだよ、キラ」

 

考える時間が終わったらなんか腹立ってきた。
さっきから黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって。
少し黙れよお前。今は口喧嘩なんかの時間じゃないだろうが。
何が心の傷だ。何が逃避だ。
思春期真っ只中のアカデミー生じゃあるまいし、
過去を責められたところでそれが何だって言うんだこの野郎。

 

ああ認めよう。確かに自分の皆への想いは、お前のラクスへの想いほど強くはないのだろう。
それどころか未だに出すべき答えを出していないのだ。
こんなんじゃ彼女が言ってくれた 『明日』 へなんて程遠い。
そんな俺が他人の進む道をとやかく言う資格は無いと、自分でも思う。
けれど、今は。

 

「知ってるか、ガキ」

 

ただ、今は。

 

「他人の弱さを許せないのはなぁ」

 

誰だって生き続ける限り、傷つきながら誰かを傷つけている。
そんな事も気付かずに、自分の傷を免罪符にして他人を傷付けるのを止めようとしない

 

「――――――自分も弱い人間だけなんだぞ」

 
 

こいつが気に入らないからぶっ飛ばす―――――

 
 

2刀に切り替えてドラグーンを再び連射する相手に対し、
デスティニーは最小限の動きで避けながら距離を詰める。
そして振りかぶったアロンダイトを、そのままキラに向かって放り投げた。
不意を突いたその投剣を咄嗟に左手のサーベルで弾くフリーダム。
シンはその光景を確認もせずに、迷わず機体を前に飛び込ませた。
両掌を輝かせながら飛ぶデスティニーにタイミングを合わせ、右手に握られたサーベルが振り下ろされる。

 

『シン、何かが変わった……? ちぃっ!!』
「おおおおおッッッ!!!」

 

その一撃をシンは、絶叫と共に左手のパルマフィオキーナで受け止めた。
おそらく1秒も保たない。だがそれで十分。
肉を切らせて、骨を断つ―――――

 

『まずい!!』

 

左腕が縦に切り裂かれるのと同時に輝きを増すデスティニーの右手。
死中に活を求めたシンの動きに虚を突かれたキラだったが、それに対する反応は迅速だった。
背後に飛びつつ掌の方向から命中場所を予測、咄嗟にサーベルを捨てた右腕をコックピット前にかざす。
ビームシールドを最大まで広げるには間に合わないが、ビームの攻撃とは線ではなく点だ。
命中する一点さえ防げればそれで良いと思ったのだろう。その判断は間違いではない。だが

 

『……ぐっ!! 光が、散った……!?』

 

広範囲に散った光の粒がフリーダムを襲う。
爆発と同時に顔や腕など、美しい機体の右半分が歪に形を変える。

 

こちらもその動きは読んでいた。キラならばそれくらいのことはやってのけるだろうと。
だからここで切り札を投入した。これまで一度も使っていなかった散弾。
キラの意識から外れたこの一撃しか、起死回生は成しえなかった。
おそらく2度目は通用しないだろうが、今はそんなことどうでもいい。あとは止めを刺すだけだ。

 

左腕は完璧に死んだ。アロンダイトは放り投げたまま。もう次の手は無い。

 

ここしかない。

 

「届けぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

伸ばされた右掌がもう一度輝く。貫通力に難のある散弾ではなく仕留める為の通常弾。
照準がフリーダムを捉え、トリガーを引き絞ろうとしたその瞬間

 

「がっ……!?」

 

左肩が爆発を起こした。その衝撃で掌から放たれた光弾は外れてしまう。
続けて態勢を立て直したフリーダムのレールガンの直撃によって、千載一遇の好機は事実上消えた。
馬鹿な、誰が横槍を―――ドラグーンか

 

『……クッ、結構やられた……これ以上戦いを続けるのは自殺行為か。
 自殺……それは駄目だ。なら今日の所は一旦退くしかない』
「おい、何勝手言ってやがる」
『シン、君の今の力は……いやいい。それじゃ、また』
「待てよ、キラァァァ!!!」

 

言葉と共に戦闘を止め、フリーダムはデスティニーから後退していく。
追いかけようとするシンだったが、時間稼ぎのように立ちはだかるドラグーンのせいで追撃までは移れない。
ヤツを討つならここしかないのに。

 
 

『フリーダムが退却していきます!! アスカさん、凄い!!』
『あいつ、マジでやりやがった……』
『自由落し、健在だったんだな。流石だぜ』

 

歓声で満たされる自軍の通信。
だが喜ぶのはまだ早い。ここで逃がしては意味が無い。
次に戦った時もこう上手くいくとは思えなかった。となると、仕留めるチャンスは此処しかない。

 

『馬鹿な、キラ様が退がるだと!? ええい、なんとしてもお守りしろ!!』
「喜んでる場合じゃない、攻撃しろ!!―――艦長!!」
『全艦、エターナルとフリーダムを追うように伝えろ!! キラ=ヤマトだけは絶対に逃がすな!!』

 

シンの通信に即座に反応した艦長が、傍らの少女に向かって声を張り上げる。
そしてボルテールより全軍へ追撃の命が下り、
フリーダムを庇う様に前に出たストライクたちに襲い掛かった。

 

『ここまでお膳立てして貰ったんだ、美味しいところはありがたく頂くぜ!!』
『キラ様が…こんな事が、うわぁぁっっ――――――』

 

形勢逆転。
精神的支柱を失い余裕を無くした敵と、怖い敵がいなくなったうえ元々多勢だったザフト軍。
勢いの差は語るまでも無い。
フリーダムのドラグーンによる援護射撃のせいで完全に戦線を押し切れない面はあるものの、
先ほどまでの苦戦が嘘のように敵機を撃墜していった。
エターナルにも幾つかの爆発が見られるようになり、
あとは動きの鈍ったフリーダムに一撃でも入れば決着が着く。
ザフト軍の中に流れるそんな勝利の予感。
MSパイロットたちも、ボルテールのクルーも、その艦長も、シンですらそれを受け入れかけていた。
しかしその空気は、

 
 

『我々の大将に、結構な真似をしてくれたね。この借りは高くつくよ?』

 
 

エターナルの後方に出現した一隻の宇宙空母によってあっさりと吹き飛ばされた。

 
 
 

「まさかキラが手傷を負うとはねぇ……」

 

自分の傍らで薄く微笑んだままの盲目の男を無視しながら、バルトフェルドは誰にも聞こえないように呟く。
驚くべきはシン=アスカの強さだろう。嫌な予感は当たった。
キラだけで行かせるのは不安だったのでエターナルと精鋭を連れて行くよう進言はしたが、
このディーヴァも動かしておいて正解だった。
もし自分たちがこのタイミングで来なければ、最悪キラはここで終わっていたかもしれない。
だが思考に沈んでいる暇は無い。司令官としての自分がそんな己を制す。
余計な事はこの局面を切り抜けてから考えるべきだろう。
外から見てエターナルの損傷は放ってはおけないほどのレベルになっていた。
これはキラの回収はこちらが行って、エターナルは戦域から離脱させた方が良さそうだ。

 

「キラの回収を最優先しろ。その為にも突出した敵戦艦を速やかに破壊して、敵の追撃の意思を削ぐんだ。
 それからエターナルのダコスタ君に通信を繋いで、直ちに撤退させろ。合流は指定のポイントだ」

 

バルトフェルドの声と共にディーヴァからおびただしい数のミサイルが発射され、
それと同時にMSが出撃していく。
カタパルトから発進したのは抹殺者として名高いドムトルーパーの他に、ストライクタイプが5つ。
兵器に詳しくない者が見れば、追撃を迎え撃つには随分数が少ないと思うだろう。
実際ストライクカスタムは強い部類の機体ではあるが、
並みのMSと性能にそこまで大きな差があるわけではない。
出撃していった機体たちも特に変わった装備を着けている訳でもなく、
しいて言うならば肩に特徴的な模様が見えるだけ。

 

『ストライクの肩の紋章ってどっかで……。ッッ!!―――まさか!?』
『間違いない、白騎士どもだ!! チクショウあいつら裏切りやがった!!』

 

だがそれを見たザフト軍は動揺を隠せない。

 
 

白騎士。
ラクス子飼いの白服であり、キラの部下としてかつては軍部で幅を利かせていた面々だ。
上(キラやラクスなど)を崇め下には高圧的と人格的に問題があるものが多く、
そのうち幾人かは身内人事で白を纏ってはいたものの、ザフトの中枢、精鋭といっても過言ではない。
そんな存在が自分たちの敵に回るのだ。ザフト兵士たちの動揺は当然と言えた。

 

「別に彼らは裏切ったわけではないのですがね」

 

通信から聞こえた声を聞き、彼らを寝返らせた張本人であるマルキオは僅かに息を吐く。
その声に言い訳や罪悪感は感じ取れない。謂れの無い非難を浴びた際のそれである。

 

「彼らはラクスが存命の際、彼女を真似て己の存在が世界の為に在る事を公言していた。
 ならば今のプラントは世界を統べるに足る存在か……否。導き手は既に、他にいる」

 

その名はキラ=ヤマト。彼こそが世界の導き手。
だから彼らの行いは裏切りではない。
白き騎士が仕えるに値する王は、間違ってもプラント評議会などではないのだから。

 

「そう、SEEDを持つ者が世界を導く。ラクス亡き今、世界を統べる者は彼しかいない。
 ……シン=アスカ。
 君とてSEEDを持つ者、その存在は非常に惜しい。しかし」

 

口の端を僅かに持ち上げ、マルキオは微笑する。
視線の先 (と言っても目は閉じているが) にはディーヴァから出撃した数機の白いストライクカスタム。
同じくディーヴァからいくつか射出された大型のMAの様な機体と接続し、1つになった。
それは連合やオーブなどいずれの例外も無く、戦場に在る者ならば誰もが知っている機体。
そしてザフト軍兵士にとっては救世主であり死神であった、彼らの前に現れたその機体は―――――

 
 

「不安要素は排除させてもらいましょう。今、それが小さいものであるうちに」

 
 

ミーティア、と呼ばれていた。

 
 

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