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SIN IN ONEPIECE 82氏_第02話

Last-modified: 2013-12-24 (火) 03:18:01

大筋は本編と同じなんで、シンの見せ場だけピックアップしていきます。


 早朝の森というものは、いつも湿った、しかし心地よい涼しさをはらんでいるものだ。
 森の中を槍を片手に走りながら、シンは昔の事を思い出す。
 この世界に来る前。コズミック・イラの世界の記憶。この世界では決して戻れない場所の事。

 自分はわなの仕掛け方が余りうまくなかった。よく、アカデミーのサバイバル実習でレイにそこを突っ込まれ、ルナに笑われたものだ。
 それが悔しくて、シンは必死になってワナの勉強をした。森で有効なワナや、ワナに使う道具の現地調達、殺傷能力を高める術……寝る間や自由時間といった訓練にかかわらない全ての時間を惜しんで本にかじりつき、レイに教えを乞うたものだ。そんな努力が実り、『へたくそ』だったシンのワナの腕は『人並み』にまで上達したのであった。

 『通り抜けられたときのために、森にも罠を作ってくる』

 村に一つしかない海岸の入り口で迎え撃つというウソップの作戦に、シンがそう提案したのはある意味当然の流れだったのかもしれない。しかし……逆側にも同じような坂があったらしい。

(まさか、逆側から来るなんて)

 せっかく作った全ての罠が無意味となってしまったのには、少し落胆した。時間と村人達の身の危険を考え、単純で殺傷能力の無い罠しか作らなかったので、予定通りだったとしても、どれだけ効力があったかは分からないのだが。
 自分の努力が無にされるというのはいい気分ではない。

 そんな緊迫した状態でシンが森の中にいる理由は、単純至極。

 ……自分で自分の仕掛けた落とし穴にはまり、脱出に時間がかかったからであった。しかも、一番深くてねずみ返しまで着けた奴。
 まるっきりアホである。

「アホか、俺はぁっ!」

 情けない事この上ない自分の姿を思い出し、叫ぶシンちゃん。
 いくら慌てていたとはいえ自分の仕掛けた罠の位置を忘れるとは情けない限りである。
どーやら、せっかく努力して身に着けた人並みの罠の知識も、長い宇宙生活と始まったばかりの海賊生活ですっぽり抜け落ちてしまったらしい。

(間に合うか!?)

 間に合わないかもしれない。そんな思いが脳裏によぎったそのときだった。
 見えたのだ。道の先に、黒いバックを担いだ黒い背中が。見覚えがあると断言できるほど、シンは『そいつ』の姿を見たわけではなかったが、その姿に双眸が鋭く引き締まり、足の回転が上がる。

(まさか!? なんでこいつがここに!)

 手にした槍を構え、速度をなおも上げながら、シンは叫んだ。

「キャプテン・クロォッ!」

 ぴたりと。
 道の先を歩いていた男が立ち止まる。
 もはや是非も無かった。災い転じて福をなすということか、この場でこの男を倒せば全てが終わるのだ。思考する時間すら惜しみ、シンは意識を戦闘モードに切り替える。
 全力疾走の状態から槍を構え、体にかかった勢い全てを両手にこめて……突いた!

「デ フ ァ イ ア ン ト !」

 ゴウッ!

 全力疾走の勢い全てを槍に預け、全身を使った渾身の刺突を放つ、高速の一閃。
 目にも留まらぬ速度で放たれた槍の穂先は、クロの背中を貫いてその命を奪うだろう。
シンはそう確信し、この技を放ったのだ。
 しかし、現実は甘くなかった。

 ヒュッ!

「!?」

 完全に不意を突いたはずの最速の一撃は、実にあっさりとかわされ。ここで始めて、シンは攻撃直前に相手に声をかけてしまった自分のうかつさに気が付いた。
 しかも驚くべき事に、クロがとった回避行動の速度は速く、麦わらの一味一の速力を誇るシンですら、補足しそこないそうな程だった。
 クロはその速度のままシンの後ろに回りこみ、シンは後ろに回りこんだクロに向かって、振り向き様に槍をたたきつける。
 その一閃をさらにバックステップで回避し、二人はようやく、お互いの顔を見合わせるに至った。

「『はじめましてキャプテン・クロ』」
「……『赤服のシン』か」

 白々しさ爆発のシンの前置きに、クロはマユ一つ動かさずにバックに手を入れた。

「俺の『抜き足』についてくるとは大したスピードだ」
「たいした事ないさ」
「……お前は今、俺の名を呼んだ。それでもあえて問おう。『なんのつもりだ?』」
「アンタの計画をぶっ壊しに来たのさ。……お気に召したかな?」
「ああ。最 悪 の 気 分 だ よ 」

 言いつつも、シンは自分の頬に流れる汗を止める事が出来なかった。疲れによるものではなく、冷や汗だ。
 相対してみて始めて分かる、クロの威圧感。自分は全て出し切っての攻撃だったというのに、相手に漂うあの余裕……底の見えないクレバスを前にしているような感覚を覚え、シンは『百計のクロ』が予想以上の難敵だと悟った。
 クロはバックから奇妙な武器らしき物を取り出した。黒い毛皮に包まれた猫の手らしきもの。ただし、その爪は物騒な刀……

「あの世で自慢するんだな。800万の分際で俺に『猫の手』を使わせた事を」
「舐めるなぁっ!!」

 目の前でのうのうと武器を装着し始めるクロに、シンは吼えた。構えた槍を正面にかざし、高速で回転させ……その遠心力をそのままに、高速でクロに向かって打ち込む!
 それは、ルフィたちと始めて出会った海岸で放った、目にも映らぬ乱撃……

「ヴ ァ ジ ュ ラ !」
「――!」

 その一撃目が放たれるのと、クロが猫の手を装着し終えるのとは全くの同時だった。

 ギギギギギギギィンッ!

 そこから、常人には理解できない世界での駆け引きが始まった。

 シンが凄まじい速度で打ち込めば、クロが猫の手で受け流し、クロが猫の手を振るえば、シンは紙一重で回避する。クロが横へ飛べばシンもその方向へ向き直り、シンが間合いを離せばクロが詰める。
 相手の反応をさらに返す。行動自体は単純事にもかかわらず、そこは常人の領域ではない。

(((な、何やってんだあの二人!?)))

 背後の茂みに隠れているウソップ海賊団の三人組は、目の前の光景を理解する事が出来なかった。ウソップの様子が可笑しい事を村の道端で相談していた矢先、様子の可笑しいクロを見かけ後を追ってきたのだが……こんな場面に遭遇する事になるとは。
 二人の間を高速で『なにか』が行きかっているのは分かるが、余りにも高速すぎて理解できないのだ。
 背後の驚愕の気配に気付きつつも、シンは彼らを気遣う余裕など無かった。

(攻撃の速力は、完全に互角! しかし……)

 実に単純なロジックだ。
 速度が同じならば、それ以外の要素が勝っているほうが勝つ。そして、それらの優位性をもっているのは……
 高度な駆け引きが始まってからおよそ三分。

 ざざっ!

 高速で行われていた応酬と、それを行っていた双方の動きが止まる。そこで始めて、三人組は二人のまともな姿を視認することができた。
 シンは二つ名の由来になった赤服の所々を切り裂かれ、血は垂れ流し。槍にもたれかかるようにしてやっとこさ地面に立ち上がっている。
 クロは……完全な無傷だった。
 呼吸もきれいなもので、肩で息をしているシンとは雲泥の差だった。

「……わかるか? これが俺と貴様の差だ」
「…………」

 クロの言葉に、シンは無言だった。
 言い返せるわけが無い。猫の手による手数の差1対10。体力や持久力にも大きく差をつけられ、速度も移動力まで含め総合的に見れば差がある。この有様……誰の目にも勝敗は明らかだった。

(あーあ、無様だな、俺)

 槍に体重をかけながら、シンは自嘲した。調子に乗ってイーストブルー最速を名乗り、海賊なんかに後れを取るかと挑みかかってこの結果。
 思えば、自分は昔からこんなだった気がする。己の感情にしたがって生きてきて、衝突しては相手を殴り倒し、気に入らなければ喧嘩を吹っかけ。相手は勿論選ばずに怒りの赴くまま直進し……国家元首に食って掛かった事さえあった。『もう少し分別をつけなさいよ』とルナマリアに釘を刺されていたことすら今は懐かしい。
 えらそうな事を言っても、単に子供のように自分の感情をもてあましていただけだった。
ルナマリアに子ども扱いされるわけである。その傾向は今も余り変わらないだろう……その結果が、これだ。

 もういいだろう? シン・アスカ。
 お前はこの世界の人間じゃない。ゾロやルフィみたいな化け物じゃない。こんな馬鹿げた世界から逃げ出したところで誰も文句は言わない。さっさと膝を折っちまいなよ。

 心の中の声を裏切るように、シンはゆっくりと槍を構えた。それは、自分の闘志が折れていないことへの意思表明。

「……無様だな。何をそこまで足掻く?」
「アンタにゃ関係ない」
「命を欠ける理由が、あの村にあるのか?」

 けど。もし、もしもだ。
 『あいつ等』だったら……今の俺の立場に立ったらどう考えるのだろう?
 俺と同じように故郷を焼かれたとしたら、あいつらは……

『海賊王に、俺はなる!』『うるさい! さっさと仲間に入れ!』
 俺と同じように、

『俺の夢? そりゃあ、世界一の大剣豪さ』『俺はこんなところで終われねえ!』
 家族の無念を叫びながら、

『俺はウソーップ! 勇敢なる海の戦士だ!』『俺はこの一件を嘘にする!』
 八つ当たりに近い世界への怒りを見せるのだろうか。

 ……あぁ、駄目だ。
 とてもじゃあないが、あいつらのそんな姿なんて、逃げ出す姿なんて思い浮かばない……!

「……『信 念』」
「?」

 シンはこの世界に来て、彼らと旅をして……短い時間で分かった事があった。カルチャーショックの影響か、ルフィたちと比べて自分の行動概念が驚くほど幼稚だった事を悟ったのだ。
 アスランが以前に俺にかまってきたのも、叱りつけたのも、きっと、自分に『信念』が無かったからだ。幼稚な怒りに全てを任せていたからだ。
 それ故に、シンの目には彼らが……輝いて見えた。自分には無い、決して折れ曲がらない信念、譲れない誇り。大いなる『夢』、犯罪者と呼ばれようが突き進む『道』。
 彼らと並んでいると、シンは自分の存在が恐ろしくちっぽけなものに思えてならなかった。

「俺の…… 信 念 の た め だ !」

 彼らと同じ視点に立ちたい。同じ場所に並んでいたい。
 彼 ら の よ う で あ り た い。
 それが、シンの信念。
 その為にも、ここで引くわけにはいかないのだ。

 クロはシンのその姿を見て舌打ちした。追い詰められても諦めない信念馬鹿というのは、吐いて捨てるほどいる。だが、自分が少し、ほんの一ミクロン程、『速度』のみとはいえ認めた相手がそうだった事に、苛立ちが隠せないのである。

「余程死にてぇらしいな……」
「……死にたく、ないさ……」

 シンは呻く、

「ただ、守りたいだけだ……!」

 自分の故郷と同じように踏みにじられようとしているウソップの村。自分より遥かに弱いはずのウソップが、必死で守ろうとするその場所。
 シンはそれを守りたいのだ。
 彼に自分と同じ絶望は似合わない。

(俺とマユのような不幸は、二度と繰り返させない!)


今手元にコミックが無いんで、描写はここら辺が限界。スピード系ファイター、個人的にオリキャラと絡めにくいストーリーなどからクラハドール相手に完敗させてみた。
後は、この後クロにズタボロにされたシンがウソップと一緒に投げ捨てられたときに、ルフィの切れ方2倍。
それに書き上げてみたら全然ワンピっぽくなくてorz
『シンがルフィたちの影響で考え方が変わる』的な描写も入れようか悩んだのだが、結局入れてみた。

……なにやら議論を呼んでいるガン種キャラについては、出す事に決めました。それについては、いろいろ考えてあるんで、期待しててくださいな。

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