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SIN IN ONEPIECE 82氏_第05話

Last-modified: 2013-12-24 (火) 03:35:34

 ゆらり、とワイングラスの中で、真紅の水面が波打つ。ナミの白魚のような細い指がグラスを静かに揺らすたび、答えるようにワインは踊り、その芳香を鼻腔に届けていた。
 いや、自分の職業からして、海水とたとえるべきだったかしらと、ナミはふとどうでもいい事を考えた。
 しかし、すぐに思い直す。本来海の水というものは雄大であっても寛大ではなく、美しくあっても美味ではない。
 彼女とて海で生きる女だ。海の上で飢えた苦い経験くらい、腐るほどある。そのときの海水の憎たらしい事といったら……ふんだんにあるくせに飲めないときている。芳醇な香りと味わいを持つこの液体に、海水をたとえるのは気が引けた。

 気を取り直すように、ぐっと一口。
 ――美味い。
 飢えと渇きの苦い記憶を、洗い流すような真紅の美酒。
 彼女は、この海上レストランの味を存分に楽しんでいた。

「うーん。いいお酒ねぇ」
「……なあ、殴っていいか??」

 目の前で、見せ付けるように美味しそうな料理を口にするナミに、シンはジト目で睨みすえる。

 状況に流され、ルフィと二人無理やりウェイターにさせられて精神的に疲れながら店に出てみれば。
 迎え入れたのは船にいるはずの仲間達。しかも、自分達を差し置いて美味い飯を食らっていたりする。
 ……むかつくな、って言うほうが無理だろう。

 傍らで黙々と食べていたウソップは、そんなシンの様子に頬に汗一筋たらし、

「なんでお前がウェイターなんかやってんだよ」
「聞くな……」

 白いワイシャツに黒いベスト。
 今のシンの格好は、いっぺんの非の打ち所も無い完璧なウェイター姿であった。服装そのものはありふれているのだが、コーディネーターであり、容姿も整っているシンがきると嫌に映える。この世界に来るまではいかにも女性受けしそうな優男だったシンだが、今ではその容姿に海でもまれた精悍さが漂っており、女性の注目度を上げていた。
 現に、店内にいる妙齢の女性の何割かは、シンのその姿に見惚れていたりする。

「いやー、シンの缶詰があんまり不味かったから、ここのコックが怒ってさぁ」

 やたらとリラックスしてゾロ達と同じテーブルに座るルフィが、ここに至るまでの経緯を説明する。こちらはシンとは対照的に、いつもの格好に前かけつけただけという格好である。
 そして、あくまで堂々と手にした茶を啜り……

「缶詰じゃないし他人事じゃないだろーが!」
「つーかテメーは何やってんだ雑用!」
「ぶへっ!?」

 そこまで来てようやく、シンのモップとサンジの踵が振り下ろされ、ルフィの後頭部に突き刺さった。テーブルに打ち付けられ、一瞬動きの止まるルフィの両側にシンとサンジは回りこみ、腕を引きずっていく。

「オイクソウェイター、注文取ったらとっとと厨房もどれ」
「……はいはい」
「てめぇもだ雑用!」
「うぃ」

 柳眉ならぬ、素敵眉毛を吊り上げて怒鳴るサンジに、二人はしぶしぶながら、応答するのだった。

 その姿を遠くから見つめる人影の存在に、その場にいた人間は誰一人として気が付かなかった。

 突然話はそれるが。レストランという業務形態ならば、昼飯時と夕食時の間に、下拵え兼休憩をかねて休業時間を挟むのが普通なのだが、バラティエは違った。基本的に一度店を開けたら閉店までずっと営業を続けるのだ。
 立地条件が海であるというところに問題があるのだ。女心は海の空……ではないが天候によって極端な制限を受け、どうしても正確な時間に店を訪れようとしても、中々出来る事ではない。中には3時間近く遅れてやってくる客もいるのだ。苦労してやってきても店が閉まってた、ではお客様に申し訳がたたない……故に、バラティエに休業時間は存在しないのだ。
 無論、そこで働くコックにも明確な休憩時間というものが存在せず、ローテーションで休憩を取り、食事を取り……賄(料理店において料理人たちが店の裏で食べる食事)を作る。

「ほら、ここでタレだ」
「……はぁ〜」

 サンジにあれこれ言われながら、シンは鍋の中身に液体をたらしていく。お玉でかき回される鍋の中はやたらと粘度が高いうえ、色合いが茶色とカレーのようにも見える……が、匂いの方が凄まじいことになっていた。なんと言うか、魚や肉の生臭さだけを抽出して圧縮し、香水にしたようなそんな匂いだ。
 本来ならコックが作るべき賄飯。
 それを何故か、シンが作っていたりする……理由は簡単だ。サンジが、不味いなりに栄養価の高いレーションの作り方に、海の一流コックの面々が興味を持ったのである。
 料理の過程を見て、その改善点を指摘してやろうと思ったのだが……

「最後に香辛料を入れてかき混ぜて……後はこれをビンに詰めて、発酵させるだけさ。
 大体が、2,3日で出来る」
「……なんとまあ」

 どうだといわんばかりになべの中身を指差すシンに、サンジはなんともいえない表情で、コメントに困っていた。後ろに居並ぶコック達も、サンジと同じくコメントし辛そうだ。

 ……これは料理ではない。

 それが、サンジの率直な感想だった。味に対する配慮が一切なされず、栄養価や吸収性、保存性が最優先……その加工過程はまるっきり薬品のそれであり、『料理』というカテゴリにはありえない代物だった。
 ちなみに、不味さの原因と思われるのは、発酵食品のにおい消しに大量にぶち込んだ、香草や香辛料だろう。本当に、匂いを消すためだけにありえない配合で混入されていた。
これでは、食事にトイレの芳香剤をぶちまけるようなものだ。

「大量に作れて手間がかからず、長持ちする。保存食としては最適だろ?」
「……せめて、もう少し味を調える努力をしろ、クソ赤服」

 いつものサンジならば、食品に対する冒涜とも言えるこの料理に対し、高速で蹴りを叩き込んでいただろう。レーションの製造過程を間近で見続け、ショックで憔悴すらした彼に、それを求めるのは酷というものだ。

「いやあ、下手に味調えようとすると、匂いが凄くなるんだよなぁ……一度それやって臭くて死に掛けたし」
「……俺としては、なんでこんなモン作る事になったのか知りてーんだが」
「昔、常食だったんで」
「…………テメーの味覚は人外魔境か」

 もはや突っ込む気力も無いらしく、サンジはふらふらとシンから離れる。

「? どこ行くんだよ」
「賄作るんだよ。そんなもん賄に出したら、クソジジイに殺される」
「じゃあ、これは……」
「一応完成させとけ……でもって、お前が全部食え」
「げ」

 思わず、うめいて鍋を見てしまうシン。目の前の鍋では、かなりの量のレーションが煮立っており、なんともいえない異臭を放っている。
 勘違いしないでほしいのは、シンはこのレーションが好きというわけではない、という事だ。彼自身も言ったように味は二の次三の次であり、製作者であるシン自身余裕があるのなら食べたくは無いような代物だ。
 慌てて辺りを見回すも、辺りにいたコック達は蜘蛛の仔を散らすように去っていく。製造過程から味を予想し、逃げ出したらしい。
 そして改めて視線を鍋に戻せば……煮え立つ怪奇物体A。

「……お、俺一人でこれを食えと??」

 捨てる、という選択肢は存在しない。
 この店ではどんなに悪い食材であろうと、食べれるものは食べる決まりがあると、レーションを作る前にサンジから聞かされている。お客様に出す食材は流石に一級品の新鮮なものを使うが、それ以外は賄で消費するとの事。現に、シンがレーションに使った食材も店で使う材料に比べて明らかに見劣りするようなものばかりだった。
 喧嘩しようが何しようが自由、というバラティエにおいて唯一絶対の取り決めらしく、これを破ればどんなに腕が良かろうと問答無用でたたき出されるとか。
 賠償としてウェイターやってるシンがこれを破ればどうなるか……想像に難くない。

「……はぁ……船の倉庫に保存するかなぁ」

 ナミに聞かれたら船からたたき出されそうな事をのたまい、シンは辺りを見回す。とりあえず、完成して『しまった』これをビンにつめ、発酵させる必要があるのだ。

 流石海の一流レストランというべきか、キッチン内の調理器具は理路整然と整頓されているのだが……肝心の、これを詰めるための空き瓶が見当たらない。
 完全密閉する型のビンならばあるのだが、それでは駄目なのだ……発酵食品という性質上、ガスが発生してしまい、密封してしまうと容器が耐え切れず 爆 発するのである。
 ……サンジが食品じゃないと感じたのも、頷けるというものだ。

 蓋がプラスティックのものが理想的なのだが……

「ほれ」
「あ、サンキュ」

 ビンを探してきょろきょろしているシンの肩越しに、大きめの瓶が差し出された。視界に映ったそれと背中にかかった声に、軽くこたえつつ瓶を受け取る。
 都合よく蓋はプラスティック製、大きさもかなりのものであり、今作ってある鍋の中身なら全部入りそうだった。
 ふって沸いた最適な容器に、重ねて例を言おうと振り返り……その体勢のまま、固まってしまった。

「……なにやってんだウェイター。とっとと『それ』を詰めちまえ」

 シンの背後にたたずみ、苦々しい表情でシンに言い放ったのは……長い髭を三つ編みにし、やたら長いコック帽をかぶった、義足の男だった。
 オーナーシェフ・ゼフ……この店の主である。
 荒くれ者揃いのバラティエにおいて絶大な影響力を誇り、コック達が、この男の前では赤子のようにおとなしくなる。
 それだけに、まとう雰囲気はただならぬものがある。コックとしての自信に裏打ちされたその威厳は、シンが今まで体感した事のない類のものだった。対抗できそうな人間といえば、議長ぐらいしか思い浮かばない。
 その空気ゆえ、馴染み難いものがあり……はっきり言えば、シンはこの人物が苦手だった。

「わ、わかりましたオーナーゼフ」

 その雰囲気に推されてか、思わず敬語で答えてしまう。ルフィはこの男を前にしても全くかしこまることなくタメ口を貫いていたが……そういうところは本当に凄いと、シンは思う。どんな相手にも物怖じせずに平常心を保つあの胆力は、ルフィの大きな長所の一つだろう。
 そんなシンの内心を知ってかしらずか、ゼフはひょいと鍋を覗き込んで……

「におい消しの配合がでたらめだな」
「え?」
「多少匂いがきつくなってもいい。カレーならカレー系統、中華なら中華系統で香草を統一してみろ。そうすりゃあ、もう少しマシな内容になるはずだ」
「は、はぁ……ありがとうございます」

 意外な人物からのアドバイスに、シンは面食らってしまい、単純な礼しか言えなかった。
てっきり、サンジと同じようにマジギレするものかと思っていたのだが。

「……怒らないんですか?」
「なにがだ」
「いや……」
「フン。ケツの青いチビナスと一緒にすんな」

 おずおずと問いかけるシンを、ゼフは鼻で笑った。シンが内心で感じていたサンジとの差異もお見通しのようだった。

「栄養価や吸収率、保存性は中々のもんじゃねえか。お前のこいつが商品化されりゃあ、海の上で飢えるやつは大分減るだろう。
 コンセプトは悪くねえし、テメーはコックじゃねぇんだからな。怒鳴り散らす必要もねぇ」
「はぁ……」
「それとも……」

 思わぬ褒め言葉に呆然としていたシンの脳裏に。
 続けられたゼフの言葉は、これでもかというくらいに深く、突き刺さった。

「ザ フ ト じ ゃ あ 違 う の か ?
 コ ー デ ィ ネ ー タ ー 」
「! ! ! !」

 不意打ちのようにたたきつけられた言葉。
 アスカ・シンが、シン・アスカだった頃の記憶を刺激する単語の群れ。
 ザフト。
 コーディネーター。
 どちらも、この世界には存在しない概念のはず……!

 ここでうろたえてはいけない――!!
 シンは必死で自分に言い聞かせ、ゼフに対する対策を考え、導き出す……が、結果はじき出された答えは、この上なくうろたえまくった最悪の代物だった。

「……!」

 傍にあったモップをつかみ、

「っ!!」

 持ち前の超スピードで、ゼフに向かって振り下ろ

 が ご っ ! ! ! !

「!」

 そうとした、その瞬間に、勝負は付いた。
 ……信じがたい事に、シンが振り下ろしたモップに対し、ゼフの義足が高速で跳ね上がり、その柄頭を押さえ込んだのである。
 靴を履くタイプではなく、この上なく原始的な棒状の義足で、同じく棒状のモップを押さえ込む。それが、どれほど困難な事か、考えるまでも無い。しかもこの老人、明らかにシンの動きを想定し、うろたえもせず迎撃したのだ……!

(こ、この爺さん……! 俺と同等のスピードなのか!?)

「片足がないとは言え、このくらいは造作もねえ」
「爺さん……あんた、何を知ってる!?」
「お前が異世界から来た、って事ぐらいか」
「……!」
「まあ落ち着け。別にとって食やしねえよ……店の馬鹿供もしばらく入って来ねえ。安心しな」

 モップを止められ、うろたえるシンに対し、ゼフの言動は貫禄と余裕が漂っていた。
 義足を下ろし、そばにあった椅子に腰掛けるゼフ。いまだ警戒を続けるシンは、モップを手放さずに、

「……舐めてるのか?」
「舐めちゃいねえよ。ただ、俺は手前に耳寄りな情報をくれてやろうと思ってるだけさ」
「情報?」

 ゼフの言葉に、シンの構えていたモップの先端が少しだけ下がった。それを見て、ゼフはようやく、シンが知りたいであろう『本題』に入る。

「……グランドラインには、『三大勢力』って呼ばれる連中が君臨してる。そして、その連中の存在があの場所を『最強の海』にしてると言われてるんだが……以前、これが妙な事になった時期があってな」
「妙?」
「なんて事はねえ。三大勢力にけんか吹っかけて、叩き潰された馬鹿共がいたのさ」
「……それがどうした」
「その勢力が、『ザフト』でも同じ台詞が言えるか?」

 まじめに聞いていたのにとんだ肩透かしを食らったシンは、再びモップを構えなおそうとしたが……続く言葉にそれを取り落とした。
 よくよく、この老人はこの手の不意打ちが好きなようで。

「ザフトに関しちゃあ色々ときな臭い噂が絶えねえが、非合法な研究者の組織だと思って間違いはねえ。設立そのものは400年前に原型となる組織が確認されてるが、ザフトを語るにおいて、最も重要なものは特異なその技術」
「……」
「常に時代の一足も二足も先取りする超技術は有名だったがな。
 武力をもたぬ身の研究者が、武力がものをいうグランドラインでのし上がっていくのは不可能だった……それでも、政府の警戒心を呼び起こすには十分だ」

 まさか。
 そう、シンは思った。自分と同じように、この世界に飛ばされてきた奴らがいるのか!?

「その技術の中で最も特徴的なものが『 悪 魔 の 実 の 人 工 精 製 』」
「…………」
「政府もその技術を真似ようと必死で研究してるらしいが、成功したって噂は聞かねえな」

 不思議と、ゼフの口から飛び出した超技術に対して、シンの心の水面は凪いでいた。
 コズミックイラ、ひいてはコーディネーターの技術でも、悪魔の実の精製は難しい……
だが、決して、不可能ではないだろう。

「余りに危険な技術から、政府から警告まで受けるようになったが、奴らは全部突っぱねた上に、人工悪魔の実の能力者で作られた私兵集団まで作りやがった。そのせいで政府の攻撃目標にされ壊滅。
 余り有名な話じゃねえな。政府の関係者でも知ってるのは一握り。
 どうだ? 面白い話だろう」
「…………なんで」

 ぽつりと。
 シンは、ゼフの言葉をぶった切り、口を開いた。そこから飛び出してきたのは、疑問の言葉。

「なんで、俺にそんな事を話すんだよ。アンタは一体……何なんだ?」
「元海賊のシェフだ……なに、昔の仲間に、お前と同じのがいたのさ。
 死んだと思ったら変な世界に飛ばされてきた、気のいい馬鹿がな。そいつも、手前がさっきまで来てたのと同じ、変な素材の赤い服を着てた」
「俺があんたの言う『ザフト』の一員だとは考えなかったのか?」
「ほざけボケナス」

 シンの最もな疑問に、ゼフは鼻で笑い、立ち上がる。

「こっちのザフトは、そもそもそんな格好してねえよ。
 それで思ったのさ。ひょっとして、ラスティと同じで右も左も分からずこの世界で海賊やってるだけなんじゃねえのか、ってな」
「……ラスティ?」
「俺のところに来たコーディネーターの名だ。テメーと同じでマークを髑髏に差し替えてた」

 自分に背をむけるゼフの言葉を聴き、シンはようやく事の次第を全て理解した。肩を落とし、嘆息して、

「カマかけただけか? ひょっとして……」

 シンからは見えないが、その呟きにゼフの口元は綻んでいた。
 そう、ゼフは『ラスティと同じかもしれない』という予測に基づき、ちょっとした話の種のつもりで話しかけただけなのだ。それを、シンが実にド派手に過剰反応を示し……ああなったと。
 よーするに、話をややこしくしたのはシンのうろたえまくった反応なのである。情けなくもなるだろう。

 そしてもう一つ分かった事。
 赤服=ザフトという事を知る者も、ザフト=異世界から来たという事実をしる者も、この海には一人もいないだろうという事だ。ラスティという赤服の証言から情報を得た、ゼフ以外には。
 当たり前である。こちらの世界のザフトが赤服を着ていない以上、ザフトと赤服を関連付けるものは、肝心の当人による証言しかなくなるのだ。

「……もう一度聞かせてくれよ。なんで俺にこんな事を」
「雑用が終わったらグランドラインに行くんだろう? 知っといて損はねえ筈だ」
「あんたは、そのラスティって人の言う事、信じたのか? 異世界から来たっていう、荒唐無稽な話を」
「普通は信じねえだろうな。だが……あそこなら、それがありえても不思議じゃない。
 そう思わせるような場所だぜ。『偉大なる航路』は」

 確信に満ちた物言い。
 この男にそれほどまで言わせるグランドラインとは、一体どんな場所なのか……?

 言い放ち、歩みさるゼフの背中を見送って、シンは物思いにふけっていた。
 そして、気が付く。

 『死んだと思ったら』
 この発現が意味するものは、ラスティという人間も死に掛けるような目にあったという事。
 それは、大胆な仮説だった。馬鹿馬鹿しい妄想でもある。
 しかし……異世界からきたことすら肯定できる場所の存在を示唆されたシンにとって、その妄想は非常に現実味のあるものに思えた。

 死人が全員この世界にやってくるわけではないだろう。もしそうならば、今頃この世界の人口は爆発しているはずだ。それ以外の条件が存在するのは確かだが……
 『死』が世界を移動するトリガーたりえるのならば。

(ステラやマユも、この世界にいるのかもしれない……!?)

 そのIFは。
 シンの心に、一本の『槍』を作り出すきっかけとなった。

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