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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第03話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 19:17:03

SRW-SEED_ビアンSEED氏_第03話
 第三話 聖十字に捧ぐ飛鳥という名の生贄

「シン、機体のバランスを保て、編隊が崩れてんぞ!」
「は、はい! くそ、緊張してんのか、おれは」
 武装を強化したFタイプのエムリオンに搭乗したシンは、今自分が戦場に立っているという現実に、浮足立つような感覚に襲われていた。
 自分が今戦争の兵器を操り、命の奪い合いのまっただ中にいる。冗談じみた状況だと思った。
 だが、それはシンの選んだ道だった。
 シン・アスカはオーブ首長連合国オノゴロ島に両親と妹と暮らす14歳の少年である。
 中立を謳うオーブで育ち、テレビのモニター越しに見る戦争の風景は、どこか現実感の無い、遠い世界の出来事だと思っていた。
 それはシンばかりでなくオーブ国民の大多数がそうであった。彼らが信頼し、依存するアスハ家の族長ウズミが、オーブに戦火が降りかかる事の無いよう守ってくれると、過度に信じ込んでいたのかもしれない。
 だが、彼らの知らぬ所でオーブは変わりつつあった。いつからか、99パーセントという非常識極まるアスハ家への国民の支持率は低下し、街の至る所、職場、校舎、酒場、レストラン、喫茶店、街角で、現在のオーブの中立政策に対する意見が交わされるようになり、国民の意識が外へ向けられ始めたのだ。
 それは時折テレビに映るアスハ家以外の氏族たちの政治的見解や議論が活発に放映され、なによりもオーブが無関係ではいられぬ事が度々、あらゆるメディアで主張された事もあるだろう。形骸化していた上院下院もその機能を取り戻しつつあった。
 それでもやはり、ウズミ・ナラ・アスハへの支持は根強く、オーブの安寧には一見何の変化も無いように思われた。
 その水面下で、極秘開発されていたM1が、ある異邦人の男の指導の下、設計から見直され、オーブ本土での戦闘のみならず、あらゆる局地・戦場での戦闘を想定したバリエーション機が開発、OSにも抜本的な変化が加えられ、現在ザフト・連合で開発された如何なるOSよりも優れたモノが順次搭載されていった。
 資金は多少、技術は多量に、しかし物資はないオーブにおいて、MSの数を確保する事、また希少な人材の損失を少しでも減らす為にさまざまな策が立案された。採用されなかったものもあるが。
 例を挙げれば、現在オーブもといディバイン・クルセイダーズの主戦力たるエムリオンは、既に生産ラインが確保されていたM1をほぼそのまま流用している。簡単に言えば、M1本体に、リオンシリーズを換装パーツとして装備させているのだ。
 リオン、シーリオン、ランドリオン、コスモリオンの4種と武装強化タイプのFや機動性強化タイプのVなどもそれぞれに存在する。要するにM1にリオンの上半身を被せた様なもので、リオン部分が被弾してもパージする事で、本体であるM1部分で戦闘の続行は可能だ。  
 もともと対異星人用に高性能と優れたコストパフォーマンスを両立したリオンとM1の組み合わせは大量生産にも向いていた。
 更に、OS開発の遅れと中立政策から実戦経験に乏しいオーブ軍のパイロットの生存率を上げるべく、エムリオンのコクピット・ブロックなどにはPS装甲が採用され、
同時に大量生産を前提にした簡易Eフィールド発生機構が搭載され、二,三発程度ならビーム兵器に耐える事が出来る。
 加えて、飛行機能をゆうするMSは極めて少なく、陸戦タイプがほとんどの連合、ザフトに対して有利な戦いを行えるのも、エムリオンの長所だ。
 五氏族の内、サハク家とセイラン家が、密かに下級氏族や他の五氏族と、ビアンを交えた会談を積極的に持ち、軍部にもその勢力が浸透し、親DC派の人間は確かに増えて行った。

 そして、連合がオーブへマスドライバーの接収を命じ、オーブ政府からなんの返答も得られなかった日、水面下で着々と進められていたクーデターは実行に移され、ついにDCが蜂起し、オーブ政権は転覆する事となった。
 オノゴロ島におけるビアン自身の宣言まで、如何なる情報機関も知る事無く、既に深く地中に根を張った巨木の様にオーブの政治と軍事に根を張っていた、ビアンを擁する現体制への反対勢力は、極めて静寂に、極めて迅速に、ウズミ政権の主要人物達を拘束し、軍部を掌握、ほぼ無血でオーブを手に入れる事となった。
 現在国民へは、拘束されたウズミとビアンの側についたウナト・セイランを始め、ウズミの実弟ホムラらが、ビアン・ゾルダーク指揮下のもと、アスハ政権の瓦解とDCの目的・思想が、今この混迷する戦争の時代、オーブにとって必要不可欠、必要悪である事を説明している。
 実質的にオーブの政権は、ウズミの知らぬ所ではるか前にビアンのものへと変わっていたのだ。
 ビアン自身が持っていた『科学者が持ってはならない素質』――いわば『英雄』としての素質、カリスマ、不動の精神力、ゆるぎなき意志、明晰な頭脳……。かつて反連邦の勢力を一つにまとめ上げた政治力・英雄的カリスマは、オーブにおいても遺憾無く発揮されたのだ。
 それを活かす時代に産まれた事は、果たして、ビアンにとって幸か不幸であったか。
 言える事は一つ。ビアン・ゾルダークは、己れの意志で決め、歩んだ道を決して後悔の心で振り返る事はない、という事だ。彼が来た道を振り返る時は、その為に犠牲にした者達の命を振り返り、未来への思いへと変える時だろう。

 そしてシンは、蜂起以前に密かにDCが行っていた民間に埋もれている逸材の発掘を目指したバーニングMSというゲームで極めて優秀な成績をおさめ(独特のクセがだいぶ強いが)、蜂起より前にDCのスカウトを受けた。
 スカウト自体はあくまでシンの意志を尊重するものだったが、シンにとっては悪い冗談の様な話だった。だが、何より驚いたのはスカウトを行ったのがビアン・ゾルダークであり、シンはビアンと顔見知りだったのだ。
 アスカ家の近くに越してきたらしいのが、このビアン・ゾルダークという壮年の男だった。モルゲンレーテの技術者らしいこの人とは時折挨拶を交わす中だったが、バーニングMSに熱中するシンに何かとアドバイスをくれ、妹のマユもその内ビアンに懐いた事もあって、シンはビアンの大人だなあ、と子供心にも思う雰囲気と人格に、いつしか尊敬の念さえ抱いていた。
 唖然とするシンを前に、ビアンは一瞬浮かんだ苦渋を飲み込んで、今オーブが置かれている状況を懇切丁寧に話し、DCという軍事結社の結成とオーブ政権転覆を期して雌伏の時を過ごしているという事、すでにオーブを守るための力を蓄えていること。
 そして、シンにパイロットとして類希なる素質があり、それをオーブ達の為に役立てて欲しい、とビアンは語った。もっとも、シンの14歳というプラントでさえ成人と認められない年齢を考慮し、次代のオーブの守り手となってもらいたい、というものだった。
 むろん、シンにそんな事を言われて即答する事も、理解する事も出来る筈がない。それはビアンにとっても了承していた事だったので、その日シンは家に戻り、一日ぼーっとして過ごした。
 

 スカウトを受け、他言無用とまた、見えない形ではあるが監視を着けさせてもらう、と告げられてから数日、シンは決意を胸に、自分からビアンへ連絡した。
答えはまだ先でも良いが、と言うビアンに、シンは答えた。
「戦争をするなんて、おれにはとても実感が湧かないけど、でも、父さんや母さん、マユが危険な目にあうなんて、おれには耐えられない。家族を守るためなら、戦えるかもしれない。ビアンおじさん、本当に、オーブは、戦争に巻き込まれるんですか?」
「そうだ。残念ながら頑是ない事実だ。連合はマスドライバーを有するこのオーブを見逃す事はあるまい。かといって連合に与すれば、ザフトはオーブを敵と見なすだろう。彼らのこれまでの行動を考えれば、国民にコーディネイターを抱え、希少な条約締結の場としても利用できる中立国であろうとも、彼らは容赦すまい。
また、ザフトに与しても同じだ。連合が、ブルーコスモスの意が浸透した彼らが許しはしないだろう。オーブが理想を貫く道は極めて少ない。
 一つ、あくまで中立を貫き、連合に焼かれるか
 二つ、連合かザフトか、どちらかに身を寄せ、庇護という名の支配を受けるか
 三つ、自らの力を持って、押し寄せる敵を打ち破り国を焼かれる事無くその理念を貫くか。
 ウズミが選ぶのは三つ目の道に限りなく近い一つ目の道だ。あの男が類希な政治家である事は事実だ。このような戦いの時代でなければ、あの男のもとでオーブは今まで通り、そして今まで以上に繁栄しただろう。
だが、時代が悪かった。あの男の信念へ殉じる姿勢は確かに、ある種敬意を払うに値する。だが、あやつはそれを自国の民にも求める。理念を守り、それを実現する為に命を賭ける事を厭わぬゆえに、それを他者も強要する。シンよ、オーブに逃げ場はない!」
「……ビアンおじさんは、ウズミ様とは違う、三つ目の道を選ぶんですか?」
「それは違う、シン。私は中立を貫く道を選びはしない」
「え?」
「シン。所詮私の語る理想も、ウズミが語る理念も、他者に押し付けるエゴ以外の何物でもない。己に課すのみならず他者にそれを求める以上、私もウズミもなんら変わらぬエゴイストだ。多くの人々を己の信ずる道に巻き込み、苦しめる“悪”だ」
「ビアンおじさん……」
「シン、私が選ぶのは第四の道だ。私はオーブに戦う事を求める。この戦争と混乱と憎悪の時代に、自らの意思で戦う事を。平和の国に住む人々に、『戦う』という行為を。
シン、私はオーブ国民のみならずこの世界のすべての人々に、何のために戦うのか、なぜ戦うという道を選んだのか、それを問う。
シン、私はオーブを試練とする。人々すべてを巻き込む劇的な試練へと。新たな時代を築く為の、流血と破壊と死を必要とする試練にする」
「……」
 シンには、ビアンの言う事が半分ほども理解できてはいなかった。ただ、ビアンの語る言葉には、彼の真実が込められ、そこには人間らしい感情が込められていた。
 祈りの様な希望。胸の張り裂けそうな悲しみ。退かず揺るがぬ不退転の決意。この世界と人類という存在への、根底的な愛。深い、優しさ。 
 シンは、ビアンという男に魅了されつつあった。
「シンよ。お前は家族の為になら戦えるかもしれないと言ったな? だが、私が巻き起こし、また今世界にはびこる戦争という名の病に身をさらせば、お前はお前と同じ想いで戦う者達と銃火を交えねばならん。
シン、お前はお前の大切な者の為に、他者の命を、未来を、思いを奪い拒絶し、断つ事が出来るか?」
「それ、は」
 シンの脳裏には、今朝ニュースで見たヘリオポリス崩壊の報道が浮かんでいた。オーブ所有の工業コロニーが、ザフトと連合の戦闘によって崩壊したというのだ。平和の国と皮肉と羨望を交えて呼ばれるオーブのコロニーが破壊された!
 ニュースでは詳しい事は語られなかったが、シンにとっては本物の雷に打たれたかのような、ショッキングな話だった。ビアンの話が、唐突に現実味を帯びてきたのは、皮肉な話だった。

 喋りすぎたな、ビアンは思っていた以上にシンに多くを話し、問いかけた自分に小さく驚いていた。
 ひょっとしたら、新西暦において、自分の前に辿り着いた彼らと同じ『何か』をこの少年から感じ取ったのだろうか。まだあまりに幼く、まだあまりに小さなこの少年に。
「すまんな、シン。少し喋りすぎたようだ。今日の返事はまた考えなおすと良い。もう、夜も遅い。今日は泊ってゆけ。ご両親には私から連絡を入れる、お前も声は聞かせておけ」
「あ、はい」
「そういえば、お前には言っていなかったが後で四人ほど来る。私の家族と客人だ。後で紹介しよう」
「は、はい」
 バカみたいに同じ返事しかできない事が、少しだけ、シンには悔しかった。
 それから、ビアン手ずから淹れてくれたお茶と買い置きの茶菓子をつまみながら、世間話で時間をつぶした。気を利かせてくれたのか、ビアンはシンが行った事も無い、想像もした事の無い外国の話を聞かせてくれて、年頃の少年ならではの好奇心を発揮したシンは、先程までの暗澹たる思いを払拭して聞き入った。
 日が沈み、薄い紫色の闇が舞い降り始めたころ、ビアン邸の前でエレカが停まる音がした。ビアンの言っていた家族と客人だろう。
 先程の話とあいまって、また緊張しきったシンに、苦笑いを見せてから、ビアンは玄関に向かった。
「うわ、なんか変に緊張してきた」
 内心心臓ばくばくのシンは、そうして、ステラと初めて出会った。玄関の方からにぎやかさが聞こえてきて――。
「うえい?」
「あ、あの、初めまして」
「ああ、誰だよ、こいつ?」
「お客さんですか、ビアン総……博士?」
「ああ、シン・アスカだ。お前達と年も近い、仲良くな」
 きょとんとした顔をする、薄い水色のワンピースの、びっくりするくらい可愛い女の子、あからさまに不信そうな顔をする、胸元があらわなタンクトップにジャケットを羽織った青い髪の男の子、何かビアンの名前を言い直した、金太郎みたいな上着の緑色の髪の年長の少年、それに
「これは珍しい。ビアンに客人とはな。しかも、このような」
 見惚れる長身に滝の様に流れ落ちる黒髪の美女。
「『アドバンスド・チルドレン』だ」
「ほう? では、シン、といったか。この少年もDCに?」
「いや、それはシン次第だ」
「ふむ、まあよい。シンと言ったな。私はロンド・ミナだ。お前達も挨拶せよ」
「うん、ステラ」
「あ、ああ、うん、ステラ、ステラだね」
「アウルだ。あんたが、おやじの言ってたやつか。後でゲームでもしようぜ!」
「スティングだ。少し騒がしいが、まあゆっくりしていってくれ」
「うん。おれ、シン・アスカ。よろしく」
 子供達が笑顔で話し合う様子を。少し離れたソファに腰かけたビアンとミナが穏やかな顔で見つめていた。慈父と慈母の眼差しであった。
「ああしていると、ステラ達がエクステンデッドだったなどとは思えぬな」
「うむ。だが、あの子らに刻まれた非道の業はいまだ消えてはおらん、それを利用しようとする我らも、さして連合と変わるまいがな」
「卑屈と謙遜、自嘲、どれにしてもお前には似合わぬよ」
「ふ、かもしれんな」
「しかし、よいのか? 我らの事を話しても? いささか軽率であろう?」
「私にも分らん。だが、私はシンに何かを感じたのかも知れん。常識では測れぬ、規格外の何かを。あんな年端も行かぬ少年にな」
 その日、シンはビアン邸で穏やかな時間を過ごし、シャワーを浴びていたステラと生まれたままの姿でばったり遭遇して、スティングとアウルからラッキースケベの称号を得る事となった。

 シンが、ステラ達がエクステンデッドと呼ばれる連合の犠牲者たちである事を知ったのは、それから間もなくの事だった。ヘリオポリスの光景、ステラ達の事情、ビアン・ゾルダークという男、外の世界とオーブの関係……。
 それまでのシンにとっての世界を覆すいくつもの要因は、シンの中の世界観を大きく変え、そしてビアンの家の扉を、改めて誓った決意を胸に叩く事となった。
 本来なら、数年後、次代のオーブの守り手としてビアンが想定したシンであったが、MSに対する異常なまでの高い適応性を見せ、周囲が驚くほどの速度でエムリオンを乗りこなして見せてしまった。
 それは、ヘリオポリス崩壊の原因となったアークエンジェル級に乗っているというストライクのパイロットに勝るとも劣らぬ素質であると、後にモルゲンレーテの技術者にして、M1の設計、OS開発及びエムリオンシリーズの主任エリカ・シモンズはビアンに報告している。
 今はまだステラやスティングには及ばぬものの、実戦を経ればその実力は瞬く間に開花してゆくだろう事は明らかだった。
 そして、いまビアンの言った通りの未来が現実に襲い掛かり、シンは止める周囲の声を振り払い、エムリオンのコクピットにいる。
「シン、お前はおれ達の援護に徹しろ。初陣なんだ敵を落そうなんて考えるな。生き残ることだけ考えりゃいい」
「そーそー、僕らと違って普通に暮らしてたんだからさ。こーいうのは、僕らに任しときなって」
「スティング、アウル。でもそれじゃあ」
 モニター越しにシンを気遣うスティングとアウルに、シンは、しかし自分だけが、という思いから素直にうなずく事が出来ない。
「シン、隊長命令だ。おれらの援護に徹してろっての」
「大丈夫。ステラ達、皆負けない。シン、だから必ず生き残って」
「……分かった。でも、おれはおれの出来る事を精一杯するよ」 
「ホ! それで良いっての。よーしお前らあ、いいくぜええ!」
 エムリオンの右腕を巨大な銃身に変え、機体全体にテスラ・ドライブドット・アレイの不可視の長砲身を備え、機体構造自体も比較的シンプルで、M1との換装システムで接近戦もこなすのがこのバレルエムリオンだ。
 エムリオン同様量産向きだが、性能も高水準を維持している。
 エムリオンに比べれば鈍重なバレルエムリオンの右腕の、ツインアームレールガンを乱射し、一見狙いの付けられていない超音速の弾丸は、しかし恐るべき精度で次々とストライクダガーや航空機を撃ち落として行く。
「おらおらおらおらおら、オーブを焼こうなんざ、百万年はええんだよおぉお!」
「相変わらずすげーのな。テンザン隊長」
「アウル、ステラ、おれ達も行くぞ」
「あいよ!」
「うん」
 スティングはM1をベースに、ガーリオンの技術を転用し、指揮管制機・エース用に開発されたガームリオンを駆り、手にした71式ビームライフル改の狙いを定め、上陸艇や次々と吐き出されるストライクダガーへ襲い掛かる。
 水中戦用のシーエムリオンで、味方イージス艦の援護にアウルは向かい、次いで水中戦に対応するMSを持たぬ連合の艦隊に、獰猛な鋼の鮫として襲い掛かる。
 スティックリムーバーによる破格の走破性と、通常のエムリオンよりも大型のレールガンとミサイルコンテナを搭載したランドエムリオンを駆るステラは、既に上陸したストライクダガー達へ向かい、襲い掛かる。
 これらエクステンデッドと呼ばれた少年少女達が駆るオーブのMS達に技量・性能共に劣る連合のMSは効果的な反撃を行う事ができず、彼らに対抗でき、また凌駕しうるカラミティ、レイダー、フォビドゥンとそのパイロット達である強化人間達は、自分達と同等かそれ以上の腕を持つソキウス達の駆るフェアリオンを相手に完全に封じ込められていた。
 四人の状況を確認した、シンは、ごくりと大きな音を立てて唾を飲み込み、意を決した。シンの乗るエムリオン・タイプFは通常のものと違い、シンの適性に合わせて接近戦に特化した装備を持っている。
 ビームライフル、ビームサーベル、イーゲルシュテルンといったM1の装備と、リオンのマシンキャノン、ホーミングミサイル、レールガンに加えて、実体剣アサルトブレードに、M1の左腕にはプラズマ・ステークが追加され、搭載されたOSにも接近戦用のモーション・データが多く記録されていた。
 どちらかというと(いわなくても)、援護向きの機体では無かった。テスラ・ドライブの噴射光を噴霧の様に零して、シンのエムリオンは、ステラの援護に向かい駆けた。
「当たれえええ!!」
 これが当たれば人が死ぬ――頭のどこかで囁く自分の声を無視して、シンはトリガーを引いた。