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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第09話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 19:45:14

SRW-SEED_ビアンSEED氏_第09話
 第九話 クライウルブズ

 連合艦隊が増援部隊との合流の為、動きを見せずに日々が過ぎ、訓練と哨戒任務に明け暮れていたシン達は、ある日朝五時に叩き起こされた。
 いまだベッドから引きずりだした時から変わらぬ寝ぼけ眼のステラを引きずりながら歩いているスティング達と一緒に、指定された地下ドックに向かっていった。
 ちなみに寝ぼけたままのステラはアウルとスティングが着替えさせた。
 ラッキースケベであるシンはなんとも言えないもどかしい気持ちのまま、ステラの着替えが終わるまで部屋の外で待たされる事となった。
 そんなわけで、DCの装飾がやや華美な軍服をそれぞれ着崩したスティングとアウルが二人してステラの両腕を掴んでずるずると引きずっている。
 スティングも普段なら鋭い刃の軌跡のような瞳を歪めて困った顔でむにゃむにゃ言っているステラを引きずっている。ずりずりずりずり。
 ぽやぽやとか、そんな言葉が似合う柔和な顔立ちをさらに緩めたステラは、もうしばらく起きそうにない。秋のリンゴの様に赤らんだ頬に煌く金髪が幾本か輝き、ステラ自身が輝きを放っているかの様にシンには見えた。
 呆れたようなスティングとは正反対に、ぶつぶつ文句を言っているアウルに、シンが今回の呼び出しの理由を聞いてみた。
「何だろうな? おれ達に呼び出しって?」
「別に命令違反とかしてないし……。テンザン隊長がなんかやったのかな?」
「だ〜〜れがなんかやっただってえええ? ああ? アウルうう〜〜」
「ぎゃあ!? てて、テンザン隊長! いつの間に」
 何時の間にか気配を感じさせずに、四人の背後に立っていたテンザンが、ぬめっとした声でアウルの耳元で囁いた。不意を完全に突かれたステラ以外の三人が驚いて背後を振り返る。
 DCの軍服に身を包んだテンザンが、朝っぱらから糖分過剰摂が日課なのか、チョコバー片手にそこに立っていた。相変わらず目つきが悪い。
「人のいない所で陰口ぬかす奴は視聴者に嫌われてその内死ぬキャラだぜえ?」
「いや、つい、口を滑らせたっていうか。ほら、隊長は何か聞いてないんすか?」
 流石に慌てたアウルが、唇を引くつかせて言い訳を展開する。テンザンは目つきを更に鋭くしてアウルに顔を近づけて、ふん、と鼻を一つ鳴らして済ませた。そこまで短気でもないらしい。
「話題逸らしたな、アウル。まあ良いけどよ。おれも詳しい事は聞いてねえ。どーせ、きっつい任務が下るんだろうぜ? ビアン総帥の性格からして守るだけじゃねえだろうからな」
 起きろステラ、とステラの華奢な肩を揺さぶって、テンザンは先頭に立ってズカズカと歩いて行った。シン達は互いを見つめあって、その後を付いて行く。横暴な所があるものの、実力と意外な面倒見の良さは評価している。
 エレベーターをいくつか乗継ぎ、その間も起きないステラに辟易しながら、シン達はDCの一部の幹部しか知らない隠しドックへとたどり着いた。
 意図的にか照明が落とされ、足元を見るのもおぼつかない。かなり大型の艦船を建造・修理できる規模のドックの様で、暗闇の中でも広大な空間である事が肌で感じられる。
 カツン、と軍靴の立てる足音が何重にも重なり、ドックの中に響き渡る。
「ここは? 地下ドックみたいだけど」
「秘密の地下ドックてかあ? 正義のスーパーロボットでもあるんじゃねえのか」
 冗談まじりで笑うテンザンの声が広い空間に木霊した時、ようやく周囲の照明が灯されて、この地下ドックの主をシン達の瞳に映し出した。
 上下対称の、流線型の銀色の船体を持った戦艦。全長は600メートルを超すだろう。いくつもアンテナや砲塔が突き出し、一目で知れる重厚な造りは目の前の戦艦が傷つくなど想像する事もできない。
 その船体には53・3ミリ艦首魚雷発射管8門。406mm連装衝撃砲7基。150mm連装砲6基。88mm対空レーザー機関砲無数。VLSホーミングミサイルランチャー16基。他にもいくつものMSや戦闘機用のカタパルトを備えている。
 ザフト、連合、オーブ、その他世界各国のどこにも存在しない型の戦艦だ。
「なんだ、これ」
「すっげー。記録で見たアークエンジェルよりも大きいな!」
「うーん、なあに?」
「これは、噂のスペースノア級?」
「ホ! 良いじゃねえか。こいつはいい戦艦だぜ。こいつに乗れって事かよ」
 シンをはじめ、目を覚ましたステラもアウルもスティングも一様に目の前の戦艦の威容に目を丸くして見惚れた。味方なら頼もしく、敵ならばいやになるほど厄介な相手になりそうな戦艦だ。

 そうしているとシン達が入ってきたのとは違う方向から、赤を基調としたロングコートを纏った逞しい体つきの壮年の、青みを帯びた黒髪の男――ビアンが姿を見せた。
「そういう事だ」
「ビアンおじさ……じゃなくて総帥?」
 ビアンのほか、まっすぐに流れる漆黒の長髪に、貴族的な雰囲気のするマント姿でともすれば冷たい印象を受ける切れ長の瞳のロンド・ギナ・サハクとロンド・ミナ・サハク、それに見慣れない褐色の肌に額に傷のある男、逞しい体つきに熊みたいな顎髭のアルベロ・エスト、あとはシンも顔と名前だけは知っているソキウス達が3人いる。
「これはスペースノア級万能戦闘母艦壱番艦タマハガネだ」
「お父さん!」
 ビアンの顔を見て目を覚ましたらしく、ステラがにぱっと笑みを浮かべる。ビアンも淡く笑みを浮かべて、傍らのスペースノア級を指し示しながら、ゆっくりと歩み寄ってくる。
「お前達ナカジマ小隊にはこのスペースノア級万能戦闘母艦壱番艦タマハガネに乗ってもらい、地球連合の増援艦隊を強襲してもらう」
「単艦でですか!?」
 流石にスティングが驚きの声を挙げる。単艦で豊富な戦力を抱える地球連合の艦隊に殴り込もうなど、正気の沙汰とは思えない。というか無理である。無茶を通り越して無理なのである。
「連合のアークエンジェルの真似事ってか? ヒャハ、馬鹿らしくっていいねえ! 連合の連中も群がってくるだろうぜ?」
 余裕なのか戦闘狂の気でもあるのか、テンザンは愉快そうに笑っている。もっとも他のメンツはそう言った性癖はないので、自分達に命じられる任務の過酷さを想像している。
「お前達の他に、今回に限ってギナとギナの直属の部隊を同行させる。ナカジマ小隊はアルベロの部隊としてタマハガネに乗ってもらう」
 いつもの貴族風の黒マントはおったギナが、ビアンの傍らまで歩み、尊大な眼差しでシン達の顔を一人ずつ見てゆく。
 シンにとってはミナの生まれたままの姿を見た一件の後に行われた地獄を思い出す苦手な相手だった。
「光栄に思うがいい。ディバイン・クルセイダーズ初の特殊任務部隊『クライウルブズ』の一員となるのだからな」
「クライウルブズ……」
 オーブっぽくない名前だなあ、とシンが思ったのは内緒である。言ったら何をされるか分かったものじゃない。とはいえなんとなく格好いい名前だし、嫌いじゃない。
 ずいとアルベロが一歩前に出て、よく通る低い声で自分の名前を告げる。
「おれがアルベロ・エストだ。クライウルブズのMS隊の隊長を務める。ギナとソキウス達は今回の作戦後別行動になるがな」
 既にAI1はアルベロの乗機であるガームリオン・カスタムに積んであるから手ぶらだ。如何にも軍人らしいアルベロの容姿はいささかシンを緊張させた。
 良くも悪くも普通の軍人とは違う面々が周りには多い。
 寝起きの頭で状況を把握しようとしていたステラが、自分なりに結論を出して目の前のギナを見上げて聞いた。190センチはあるギナ相手だから、首の傾斜もかなりだ。
「ギナお兄ちゃんと一緒に戦えばいいの? それとそこのおじさんと一緒に?」
「そうだ。お前達の他に彼らにも同行してもらう。顔と名前くらいは覚えておけ」
 ギナが手招きして、見知らぬ男とソキウス達がシン達の前に並んだ。丸っこい瞳に人懐っこい光の、親しみやすそうな男だった。額の傷が玉に傷かもしれないが。年は二十代半ばくらいか。
「おいおい雑な紹介だなあ。おれはエドワード・ハレルソン! 元連合の人間だが、そこの旦那に説得されてな。あんたらDCに協力させてもらうぜ。あ、階級は中尉、こっちの言い方じゃあ二尉な?」
「フォー・ソキウスです」
「シックス・ソキウスです」
「サーティーン・ソキウスです」
 エドワードに続いて感情を感じさせぬ機械的な口調のソキウス達が、まるっきり同じ個性の無い台詞を吐いた。DCに所属しているワン、ファイブ、トゥエルブ達もあまり感情を表に出す事はないが、彼らと比べてもあまりにも人間味が希薄なソキウス達だった。
 血の気の薄い白い肌も、感情と意志の光が灯っていない瞳も、人間の姿をした人形のようだ。人間を前にしているとは思えない気分になって、シンはうすら寒い感触に襲われた。
 だから、というわけではないようだが、ギナが新たなソキウス達について口を開いた。

「お前達も知っていようが、ソキウスとはかつて連合が作り出した服従遺伝子を強化された戦闘用コーディネイターだ。ワンやファイブ達は自我を確立させたが、彼らは精神を薬物で破壊され、戦闘行為以外はほぼ受動的で、自ら何かをするという事はほとんどない。 ビクトリアで連合が寄越した戦力だったのだが、ついでに私に同行してもらった」
 自分達のいわば前身であると知ったアウルとスティングが、あからさまに不愉快そうな顔をする。自分達もビアン達に助けられなければ、目の前のソキウス達と同じ目にあっていたかもしれないのだ。
「……」
 ソキウス達はじっと黙って立ち尽くしている。その様子にいらついたのか、テンザンがギナにこう、聞いた。
「ソキウス達の実力は知ってるがよお、ギナ副総帥。相手はナチュラルだぜえ? 服従遺伝子のあるそいつらには辛い相手だ。ここに残してった方がいいんじゃねえかよ?」
「連合が攻めてくれば同じ事だ。ソキウス等にはタマハガネの護衛を任せる。不殺ならば、ソキウス等も戦えるからな」
「ていうことは、タマハガネ1隻と、MSが11機? ……それで大丈夫なんですか?」
 流石に不安そうなシンだ。先日の戦いで目の辺りにした連合の大戦力は恐怖に近い感情と共に脳裏に焼き付いている。
「ほかにもキラーホエールと高速輸送艇が何機か動くが、今回の作戦における我らDCのMSの総数は30に届くまい。臆するのも無理はないがな、シン。
 我ら残らず一騎当千とまでは行かぬが一騎当五か当十の腕はある。四、五倍程度の戦力なら問題はない。そもそも洋上での戦いでは連合のストライクダガーは動く砲台程度の事しかできん」
 本当かなあ? と首を捻るシンだが確かにテンザンやミナ(ギナも腕前は変わらないと思うので)の撃墜スコアを見れば言う通りなので、やや不安は残るものの納得した。
「出撃は五時間後。お前達の機体は積み込んである。残りの時間で艦に慣れておけ。それと艦長とも顔を通しておくように」
 言うや否やギナはすたすたと渡された橋を通ってタマハガネの中に消えて行ってしまい、ソキウス達もそれに追従する。後に残されたエドが、陽気な仕草で肩を竦めて、それに続いた。
 アルベロもシン達の顔を一通り見回す。
「若いな。……だが、戦場ではそんな事は関係ない。新兵は初陣で死ぬのがほとんどだ。今ここにいるお前達はその稀な例外だ。だが次の戦場、そのまた次の戦場でも自分達が生き残れる保証はない。生き残りたければおれの指示に従え。
 おれは任務の達成とお前達を生かす為に指揮を執る。任務の達成と生き残る事、これを常に頭に入れておけ、いいな?」
 言葉は厳しく、しかしどこか優しいアルベロの言葉に、シン達は黙って頷いた。アルベロの言葉に聞き入るシン達に、ビアンが険しい表情のまま激励の言葉を掛けある。
「お前達には厳しい試練であろうが、必ずや成し遂げると信じている。頼んだぞ。シン、ステラ、アウル、スティング、テンザン」
「はい!」
「まあ、おやじの頼みなら聞くっきゃないよねえ? 任せといてよ」
「頑張ってくるね、お父さん」
「全力を尽くします。ビアン総帥」
 子供らの頼もしい返事に、ビアンは目元をわずかに緩めた。頼もしく感じているのだろう。それから、やれやれと首を振っているテンザンに向き直る。
「面倒をかけるな。テンザン」
「まったくだぜ。子守まで仕事のうちとは知らなかったし。ま、その分給料はもらうけどよ」
「フフ、口の割によく面倒を見ているようだがな」
「……しかし、結構な数の戦力が抜けちまいますが、大丈夫なんで?」
 テンザン自身も不安に感じていたのか、オノゴロ島防衛に方策はあるのだろうか? 虎の子のタマハガネにキラーホエール、加えてDCの誇るエース達がごっそりと抜けてしまうのだ。
 元々DCの保有するMSはあまり多くない。オーブ規模の国家としては破格の戦力だし、ヴァルシオンやミナシオーネ、フェアリオンといった規格外の超戦力もあるが、決して無敵の兵器では無い。
 戦闘を重ねれば弾薬は消費するし、機体も摩耗する。立て続けの戦闘はパイロットを披露させ、普段ならしないようなミスを誘引する。
 連合が総力をつぎこめばビアンのヴァルシオンとて骸を晒す事になるだろう。もっとも、連合もそれ相応の被害を受けるだろうが。

「今のまま再攻撃を仕掛ける事はあるまい。うまく増援を叩けばかなりの期間、攻撃は遅れるだろう。それにオノゴロ島には私とミナ、ワン達ソキウスも残る。戦力の大部分はこちらだ。
 お前達強襲部隊の成果次第では、これからの戦いが大きく動くきっかけにはなる。ささやかな贈り物だが、これまで政治的取引や購入した連合・ザフトのMSも積ませておいた。 好きな時に使え。お前とシンの機動兵器への適応性があれば、多少の操縦系統の違いは問題になるまい」
「期待ばっか寄せられてもねえ? まあ、やれるだけやりますわ」
 ヒラヒラ手を振りながら、テンザンはシン達を引き連れてタマハガネへと乗り込んでいった。
「ヒヨッコ共は確かに預かったぞ、ビアン。おれ達が戻ってくる場所をなくしてくれるなよ?」
「ふ、任せておけ」
 不敵に笑い、最後にタマハガネへ乗船するアルベロの背中を見届けてから、ビアンは踵を返した。
 果たしてシン達が、かつてビアンとDCを打ち破ったハガネ隊と成り得るか否か。もっともそれが味方となると、意味が違ってくるのだが。
 そして、今一つ。宇宙にまかれたウズミの希望の種。それらがどう芽吹くのか。
キラ・ヤマトとカガリ・ユラ・アスハ――この世界で提唱されたSEED論。救世主の種を持つ者たち。スーパーコーディネイター。ニュートロンジャマーキャンセラー、核動力MS、不沈艦アークエンジェル。
 それらのピースに加えてビアンが与えた、ビアンにとってもイレギュラーであるあの機体『ASK―G03Cラピエサージュ』。この世界には、自分以外のエトランゼが存在する。
 彼らは、この世界で何を思うのか。ビアンの起こした行動に対しどう応じるのか。この世界に何を望んでいるのか。彼らがこの世界に何を巻き起こすのか――。
 それが鉄と血に濡れた道に思えて、ビアンは暗澹たる思いにとらわれるのだった。
「だが、絶望の闇に世界が覆われても、人の意思が歩む事を止めぬ限り、希望という名の光が必ず輝く」
 ビアンにとっての希望。未来を切り開く子ら――シン、スティング、アウル、ステラ。今は闘う道しか彼らに歩ませる事は出来ぬが、何時か、世界に平穏が訪れる日を築く為に――
「今は悪鬼羅刹となるを厭わぬ」

グーンを入手しました。
ゾノを入手しました。
ディンを入手しました。
バクゥを入手しました。
タマハガネを入手しました。