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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第13話

Last-modified: 2013-12-26 (木) 20:49:28

SRW-SEED_ビアンSEED氏_第13話
第十三話 堕ちた桜の花

どおおん、と遠い雷の様な音が聞こえる。体そのものを揺さぶるような強く重い音。それが何度も、何度も。
怯え震える子供達を宥めすかしてオウカは時折不安そうに窓からのぞく外を見つめた。
濃緑のストレートの髪は、ゆるやかにオウカの動きに従って波打ちさらさらと流れた。
平凡な薄いピンクのワンピースに身を包み、孤児院の広間で集めた子供達の面倒を見ながら、こうして遠く聞こえる戦いの音が絶えるのを待ってどれほどたったろう。
DCのパトロール部隊が、連合の不明瞭な意図で侵入していた少数の部隊と交戦しているのだ。
雲に覆われ灰色にけぶる空に、時折光の筋が幾度か描かれ、眩く照らしだされている。
(少しずつ、近づいている?)
また、脳裏に走るノイズに優美なかんばせをわずかにしかめて、オウカは早くこの戦いが終わればいいと切に願う。
「大丈夫ですか、オウカ? どこか具合でも?」
オウカが身を寄せる孤児院の主である盲目の男性マルキオが、わずかに苦しみを帯びた気配を察したのかオウカの身を案じた。
黒髪をオールバックにした色白の、柔和そうな雰囲気の男性だ。年は40代とも50代ともとれる。元宗教家とあって、どこか浮世離れした所もある。
「い、いいえ。なんでもありません。導師様。ただ、一刻も早くこの様な戦いが終わればいいと、そう思って」
「そうですか。貴女の言う通りです。人類同士が争い合う闘いなど、誰も望んでなどいないでしょうに」
オウカがマルキオの孤児院に身を寄せてから五カ月近くが過ぎている。
ある強い雨の日、ぼろぼろの人型機動兵器のコクピットの中で虫の息だったオウカを子供達のうちの一人が見つけ、マルキオは極秘裏にウズミに連絡を取り、オウカとその機動兵器ラピエサージュをオーブ政府に託した。
当時エクステンデッドや強化人間を保護し、彼らの治療法を模索していたビアンの元に預けられ、オウカは二ヶ月ほど入院する事となった。
当初は通常の病院に運ばれる筈が、オウカの体内から通常ではあり得ぬ物質が検出され、彼女が何らかの外科的な処置を受けて肉体を改造されていると判明したため、ビアンに預けられる事となったのだ。
無事傷が癒えたオウカであったが、一つの問題が残った。目を覚ました彼女は自分の名前と、「ラト」「アラド」「ゼオラ」という人の名前らしきもの以外の記憶がなかった。
不思議と一般常識や教養は持っていたものの、己れがどう言った人生を経たのか分らぬ不安に苦しむオウカは、ウズミの勧めもありマルキオの孤児院で暮らす事となった。
ビアンはラピエサージュ内のデータや、オウカの体から検出された物質の配合や改造の痕跡から、オウカがCE世界の強化人間ではなく、新西暦において強化された人間であると確信するにいたった。
おそらく、地球連邦にかつて存在したパイロット養成機関「スクール」や大脳研の関係者であると目星を付けるのはそう難しくはなかった。
なぜなら旧DC副総帥アードラー・コッホが大きく関与していたのがそのスクールであり、アードラーの研究内容を知るビアンが、関連付けて結論を出すのはあり得ぬ話では無かった。
ラピエサージュに残されていたデータから、オウカがビアン亡き後のノイエDCという組織で戦っていた事は分った。
ビアンが命ずればこの世界のDCの兵としても戦ったかもしれない。
だが、オウカには記憶がない。自分がかつてスクールの長子として血の繋がらぬ弟や妹たちを可愛がっていた記憶も。
機動兵器のパイロットとしてその弟や妹達と銃火を交えた記憶も。己の選んだ最後の結末も。
ならば、忘れた記憶を取り戻さずこの世界の人間として生きてゆくのもオウカの選択の一つだ。
故にビアンはオウカのメディカル・データについては多くを語らず、連合から脱走した強化人間として扱い、また記憶が無い事から、一般人として暮らす平穏を与える事をウズミとマルキオとの間で取り決めた。
だが、今となってはそれも虚しい約束となってしまったのかもしれない。オウカが安息の日々を送っていた孤児院は、戦火に晒されようとしていたのだから。
一際大きな爆発の音が孤児院の建物そのものを揺さぶり、戦いの決着が近い事を伝えてきた。
はっと窓を見つめるオウカの視界に、黒煙を噴いて落着するエムリオンの機体が映った。
まだ機体そのものは生きているが、パイロットは意識でも失ったのか、機体は横倒しの態勢で孤児院のすぐ近くで落着したまま動かない。
オウカはわずかに逡巡して震える子供達とエムリオンを見比べたが、迷った時間は短かった。

「導師様。この子たちをお願いします」
「! 待ちなさい、オウカ。いけません! 外は戦場なのですよ!」
「あの機体のパイロット、まだ生きているかもしれません!」
 制止するマルキオの声を背中で聞きながら、オウカは雨の中、エムリオンのパイロットを助けようと孤児院を飛び出した。
どしゃぶりの雨にぬかるんだ大地を、オウカは躊躇わず走った。

 DC所属のエムリオンと交戦している連合の部隊はあの新型のGの内の一機、フォビドゥンだった。カーキ色の機体色はPS装甲を改良したTP装甲。
背中に背負い、今は被るようにしている円形の装甲と補助アームに支えられている二つの盾はエネルギー偏向装甲ゲシュマイディッヒ・パンツァーだ。
重刎首鎌ニーズヘグを両手に握り、三機のエムリオンの内既に一機を沈め、二機目も今は大地に転がっている。
「ううらああああーーー!」
 薄い緑色の髪に隠れた色違いの瞳を薬物による自我崩壊によって濁らせたシャニは、アードラーによって施された戦闘意欲と破壊衝動にしたがい、眼前のエムリオンに死神の如く恐ろしくおぞましく襲い掛かっている。
 ゲシュマイディッヒ・パンツァーによって、エムリオンのビーム兵器は偏向され通じず、レールガンやミサイルも実体弾に対し高い耐性を持つTP装甲相手では効果が今一つだ。
加えてコーディネイターを超える能力を与えられた強化人間の技量は、エムリオンのパイロットのそれを大きく上回っている。
ミナやビアンに伝えられた報告と違い、他の二機がいないのは、最も人格崩壊が進んでいるシャニのデータをもとにオルガやクロトの限界を見極めるためのサンプルにしようという、残酷な意図があるためだ。
既にクロトとオルガはそれぞれ別の母艦に帰還して、艦隊と合流すべく帰路にある。
フォビドゥンの母艦である輸送船とそれを守る形で随伴している巡洋艦の艦橋では、連合の士官が不機嫌そうに暴れまわるフォビドゥンの様子を見ていた。
(ちっ、やつがどれだけ戦果を挙げた所でそれはアードラーの研究成果という事になる。おれの手柄にはならんというのが何より腹立たしい)
まだ三十前半の金髪の男だ。特徴的なもみあげと切れ長で冷たい印象が目立つ目をしている。階級章は中佐。年齢の割にそれなりの地位を得ていることからして実力もあるのだろう。
「ジーベル艦長。アードラー技術主任からそろそろ撤退するようにとの通達です」
「ふん。死に損いが、このおれにこんな役目を押し付けおって。アンドラス少尉に帰還するよう命令しろ。無視するようなら砲の一発も叩き込め」
「は、はい」
なんとも無茶苦茶なジーベルの指揮に、この人と一緒だとなんだか死にそうだなあ、とオペレーターは思ったが口には出さなかった。ジーベルは短気で知られていた。
そして、もちろんシャニが帰還命令を受け付けるはずも無かった。
「あの小僧め!! 生体CPUの分際でこのおれの命令を拒否する気か。……ふん、まあいい。どうせ薬物なしでは生きていけない使い捨て共だ。せいぜい一時の快楽に身を委ねて大いに苦しむがいい」
こういう非人道的な台詞を艦橋で堂々と言うから、この男部下からも上司からも人望が無い。

最後のエムリオンが、フォビドゥンの誘導プラズマ砲「フレスベルグ」の直撃を受けて、エネルギー・フィールドを貫かれて爆発・四散してしまう。
「なんだよ、もう終わり? ……ああ、いるじゃん。まだあそこに」
にいっと亀裂の様に唇を歪めて吊り上げるシャニの瞳には、孤児院の近くに落着したエムリオンが映っていた。
そのエムリオンのコクピットに、一人の少女が近づいているのも。
「大丈夫ですか、しっかりして!」
手探りで外部からの開閉装置を見つけ出して、首を項垂れているパイロットのヘルメットを脱がし、声を掛けた。若い、二十になったかどうかの青年だった。額から血を流して、意識が混濁しているのか目の焦点が合っていない。
それでもオウカの声をかろうじて聞き取ったのか、わずかに呻いた。
「ううっ、き、危険だ。……逃げな、さい」
「無理に喋らないで。今助けます!……きゃあっ」
 エムリオンをわざと外したフォビドゥンの88mmレールガン「エクツァーン」の着弾の衝撃が、オウカを嬲り、か細い悲鳴を上げさせた。
「あのMS、嬲り者にするつもりなの?」
「ぐ、援軍が、来るまで、……私がやつの相手を、する。君は逃げなさい」
「無茶を言わないで。貴方は怪我をしているんですよ?」
起き上がろうとするパイロットを押しとどめる間にも、フォビドゥンは115mm機関砲「アルムフォイヤー」やエクツァーンでエムリオンの周囲を穿っている。
「……ふふ、なんだ。動かないのか。じゃあ、いいや。死ねよ」
反応の無いエムリオンにすぐさま興味を失くしたシャニは、フレスベルグの砲口を向け、青い輝きがその奥に灯る。
「っ!」
プラズマが迸るその一瞬の隙に、エムリオンが手に持っていたメガビームライフルを立て続けに三度、フォビドゥンに向けて狙い撃った。
強化人間ならではの反射神経で獲物の反撃を見きったシャニは、ゲシュマイディッヒ・パンツァーで光の矢をすべて逸らし、改めて立ち上がったエムリオンを見下ろした。
獲物をいたぶる悦楽の時が、今少し続く事を知った喜びが、口から突いて出た。
「へえ?」

ぎこちなく立ち上がったエムリオンは、フォビドゥンとの交戦で損傷したリオン・パーツを外し、身軽になってメガビールライフルを構え直す。
「く、今のを防がれた?」
「無茶な事を、MSの操縦は、簡単なものでは、ぐうぅ」
負傷したパイロットは広いエムリオンのコクピットシートの傍らにいた。今エムリオンの操縦桿を握っているのはオウカだった。
咄嗟にコクピットに入り込んだオウカだが、自分が機動兵器の操縦ができる事を疑問に思っていた。
「どうして? 似たようなものを見た事がある気がする?」
エムリオンのコクピットはリオン系のそれに酷似している。それがオウカを助けていた。
苦しみにうめくパイロットの様子を気にしつつ、コンソールパネルを見渡し、今自分が乗っている機体の状態を確認する。
「この本体自体に問題はない? 武器も、大丈夫。しっかりつかまっていてください。これから動きます」
「きみは、一体?」
ゲシュマイディッヒ・パンツァーを頭から被り滞空するフォビドゥンは、こちらの様子を窺うように攻撃を仕掛けてはこない。
「余裕、なのかしら? なら、こちらから!」
機体に搭載されたテスラ・ドライブが、オウカの操作に従い出力を上げてその能力を開放する。
加速するエムリオンは直進し、フォビドゥン目掛けてメガビームライフルを通じぬと知りつつ連射する。
ゲシュマイディッヒ・パンツァーさえなければTP装甲とて貫く高出力の光学兵器も、当たらなければ意味がない。
ゲシュマイディッヒ・パンツァーで受けずに回避したシャニは、機体を掠めるエネルギーの矢に恐怖さえ抱かず、エムリオンへと肉薄する。
振り上げられたニーズヘグの首狩りの刃を、重力ブレーキを掛けて装甲一枚掠めるにとどめ、エムリオンの左手に握らせたG・リボルバーの虚空の銃口を、フォビドゥンの胴体、コクピットがあると思われる個所へ向ける。
引き金に掛けた指に力を込めるのに、躊躇いは無かった。轟く銃声が重なる事三度。瞬時の差でMSサイズの巨大な銃弾を、フォビドゥンのシールドが防ぐ。
TP装甲とはいえこの距離からの実体弾なら装甲内部と、パイロットにかなりのダメージを与えられるはずだが、流石にシャニがそれを許さない。
反撃に撃ちだされたプラズマの輝きが網膜に焼きつけられるよりも早く、G・リボルバーを防いだシールドが開く動作に危険なものを感じたオウカはエムリオンを後退させていた。
左肩を掠めたフレスベルクは、エネルギーフィールドの防御を貫き、かすめたエムリオンの左肩の装甲を融解させる。

「なるほど、近・中・遠距離とバランスの取れた武装に、ビームの効かない装備と実体弾に対する高い防御を持つ装甲の二段構え、強敵ですね!」
自然と体が機体を動かす。思考と肉体をつなぐパルスはオウカの知らぬままに加速・加熱する。
オウカが乗るエムリオンの武装はイーゲルシュテルン、G・リボルバー、メガビームライフル、ビームサーベル。
取り回しの難しいメガビームライフル以外にTP装甲を打破できる武装が接近戦用のビームサーベルしか無いのが辛い。
エクツァーンとアルムフォイヤーの火線を、風に遊ぶ蝶のように優雅にかわすエムリオン。
負傷したパイロットは緊急時用のサバイバルキットから取り出した粘着テープで体を固定しながら、エムリオンを操るオウカの実力に、薄らぐ意識を驚きに満ちたものにしていた。
「これは、おれな、んか及びもしないな……」
そう呟いたのを最後に、パイロットの意識は暗黒に落ちた。
だがオウカに傍らの本来のパイロットを気遣う余裕は無かった。アードラー・コッホによって戦闘能力の強化と薬物使用による禁断症状の緩和、戦闘継続時間の延長がなされたシャニの戦闘能力はオウカに勝るとも劣らない。
ましてやオウカには、慣れぬ機体と五カ月のブランクのハンディキャップがあった。
それでも意識を失ったパイロットの体に過剰な負荷が掛からぬよう、無茶な軌道は控えざるを得ない。
「くっ、受けなさい!」
「ああらああ!!!」
メガビームライフルの光条が立て続けにゲシュマイディッヒ・パンツァーに偏向され曲げられる。
一方向からのビームだけ偏光するかと考え、フォビドゥンを中心に円を描くように動きながら撃ち続けるが、シャニもまたそれに合わせてフォビドゥンを動かす為、無駄弾になってしまう。
「あれだけの装備、エネルギーはそう長く持たないはずだけど」
着弾の瞬間にのみ相転移する事で電力の消費をPS装甲よりも大幅に抑えたTP装甲とはいえ、フォビドゥンの装備からすれば、継戦能力が長時間に及ぶとは考えにくい。
バッテリーの消費に気を使う理性は残っているのか、シャニはアルムフォイヤーとエクツァーンを主軸に射撃を行い、オウカの回避行動の隙を見つけては軌道を有る程度曲げられる反則的なフレスベルクを打ちこんでいる。
初見だったならどんなパイロットとても撃墜の危機に追いやられる兵装だ。エムリオンとの戦闘で使用されているのを見ていなかったら、オウカとても回避し続けるのは困難という他なかった。
至近弾がエムリオンの機体を揺さぶり、パイロットの呻き声にオウカの意識が逸れた。
「いい加減、うざい!」
いつまでたっても落とせず、爆発する時の輝きを見せようとしない眼前の敵に、苛立ちを募らせたシャニは、イーゲルシュテルンとメガビームライフルの弾幕の中にフォビドゥンを突っ込ませた。
「無茶な真似を、命が惜しくはないのですか!」
「うざいうざいうざい!」
メガビームライフルをゲシュマイディッヒ・パンツァーが偏向させ機体後方へ捻じ曲げるが、立て続けにイーゲルシュテルンの75mm高速徹甲弾が着弾し火花を散らばせる。
連続する実体弾の衝撃に機体が揺れ、TP装甲も機体のエネルギーを食い散らかす。
だが暴食の勢いで減ってゆく機体のバッテリーのゲージを見もせずシャニは、遂にオウカのエムリオンの懐にまで飛び込んでいた。
「っ」
「らあああ!」
虚空に描かれた銀色の弧月が、エムリオンの胴に横一文字の斬痕を刻み、コクピット内のコンソールパネルの一部が爆発し、機体のコントロールが失われてエムリオンが墜落する。
「ああっ!?」
 かろうじてスラスターを吹かして機体の姿勢を整え、大地を震わせて片膝をついたエムリオンのコクピットの中で、オウカは朦朧とする意識の中、眼前に降り立つフォビドゥンの悪意を見ていた。
「……う、く」
とどめを刺そうとするシャニは、唐突に入った通信に不機嫌そうに眉をしかめた。
「待て、アンドラス少尉。その機体は撃墜せずに鹵獲しろ」
「あ?」
シャニの帰還を待つジーベルがせめてわずかでも己の功を得るべく、DC製MSの捕獲を考えつき、戦闘能力を失ったエムリオンをこれ幸いとばかりに手に入れるつもりになったのだ。

「おれに命令すんなよ」
「ふん。貴様、自分がどう言う存在か分っているのか? 命令に従わぬ道具に価値はない。そのような己の立場を弁えぬ振る舞いを続け、貴様が依存している薬物がなぜか紛失している。あるいは投薬が間に合わなかった、などという事が今後ないと言い切れるか?」
「てめえ」
「狂犬如きが鼻息を荒くするな。さっさとその機体を捕獲しろ」
 ジーベルの瞳は人間を見る眼差しでは無かった。
「……いつか殺す」
それなりに端正ともとれる若い顔立ちを、隠さぬ殺意と怒りに歪ませるシャニを、ジーベルは侮蔑と嘲笑で迎え、一方的に通信を切った。 
所詮、ジーベルにとってシャニは使い勝手は悪いが能力はある道具でしかないのだ。
不快さを消化できぬままシャニはフォビドゥンを沈黙したエムリオンへ近づける。
この苛立ちを目の前のMSにぶつけてわずかでも溜飲を下げたい衝動に駆られたが、投与される薬物が切れた時に襲ってくる苦痛の記憶が、シャニにそれを許さなかった。
「殺す。いつか殺す。必ずぶっ殺す」
 ぶつぶつとただそれだけを呟き続けるシャニは、ニーズヘグに切り裂かれたエムリオンの胴体から、パイロットの姿が見えるのに気付いた。
――機体さえあればいいはずだ。だったら、パイロットは要らない
そう考え、コクピットを潰して少しばかり胸に渦巻く憎悪と破壊の衝動を紛らわそうとシャニはニーズヘグの、灰色の空から注ぐわずかな陽光に輝く切っ先をコクピットに突きつけた。
機体そのものをあまり傷つけずに殺せるだろう――ぼんやりとそう考えて、後は実行に移すだけだ。