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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第18話a

Last-modified: 2013-12-26 (木) 20:54:16

SRW-SEED_ビアンSEED氏_第18話a
 第十八話 ダンスの後には紅茶を一杯 APart

 出撃を前に、コクピットで出撃前に機体のコンディションをチェックするシン達に、アルベロが重々しく告げた。

「各員、そのままで聞け。戦場では生の中に死がある、死の中に生がある……。死中に活を見いだせ、与えられた任務を確実に遂行し、必ず生きて帰れ。
 死には何の意味もない。倒すべき敵を倒し、生き延びろ。生に執着しろ。それが、我がクライウルブズ隊の鉄則だ」
「了解」
「へっ、死ぬ気なんて最初っから無いって」
 
 スティングとアウルが彼ららしい返事をし、ステラとシンも頷いた。そうだ、死ねない理由がある。生き残らねばならぬ理由がある。
 だからといって戦場で生き残れるとは限らない。だが、生を望まなければ死の溢れる戦場に飲み込まれ、無残な死を晒してしまうのも事実。
 ならば、アルベロの言う通り、たとえ醜くても生に固執する。死んでしまっては、何も出来なくなってしまうのだから。

「生き残る……」

 ステラはその言葉を反芻した。『死』、かつてステラを縛った禁忌の言葉。エクステンデットと呼ばれた次世代強化人間を抑制するためのブロックワード。
 今はそれに対して拒絶反応を起こすような事はなくなったが、その意味を考えるようになっていた。
 死、もう二度と動く事が無くなる事。命を失う事。
 話す事も触れる事も、ぬくもりを与えてくれる事も無くなる事。もう二度と会えなくなる事。
 それを考える度、ステラは足元が何もない奈落に変わったような不安に襲われて、涙を流しそうになる。
 それは、自分に限った事では無かった。
 ずっとラボで一緒だったスティングやアウル、かつて研究の一段階として殺めた仲間達、自分を助けてくれたビアンやミナ、DCの人達。そして、オウカや子供達、シンにマユ。
 たくさんの思い出をくれた人達と二度と会えなくなって、話す事も出来なくなってしまったら……。それが何よりもステラは怖い。
 自分が死んでしまうよりも、知っている人達がいなくなってしまう事の方がずっと怖い。
 だから、戦う力を持つ自分が、守るのだ。そう、ステラは誰でもない自分に誓っていた。それと、マユとも。

「シン、また、マユ達と遊ぼうね?」
「ああ、絶対さ。マユも喜ぶよ」
「うん、マユが喜んでくれるなら、ステラもうれしい。だから、皆、皆で帰ろうね」
「当り前さ。大丈夫、誰もいなくなったりするもんか」
「うん。マユや家族を守るシンを、ステラが守る。そうすればマユは泣かなくていい。マユと、約束したの。シンを守るって」
「そっか、マユと。大丈夫だよ。おれが守るのはおれの家族だけじゃない。ステラもだ」
「シン、ありがとう」

 シンとステラは今が戦闘の最中というのも忘れて、モニター越しに見つめあっていた。まあ、おおむね甘い世界というものは長続きしないのが世の常だ。

「シン、ステラ、話を邪魔するが、そういうのは回線をオープンにしてするものではないぞ?」
「へ?」

 どこか愉快そうにアルベロが、頃合いを見計らって二人の会話に入ってきた。いつもの鬚面に、少しだけ笑みを浮かべている。
 それを皮切りに、シンとステラのコクピットのモニターに、アウルやスティング、エドやジェーンが映し出された。
 どうも、シンとステラの世界を見せつける結果になっていたらしい。ステラは大して気にしていないようだったが、シンはたまったものではない。
 戦闘を前にした緊張が、たちまち羞恥に萎んで行く。

「若いってのは良いなあ。なあ、ジェーン?」
「ここまで見せつけられちゃね」

 陽気に笑うエドと微笑するジェーン。シンは穴があったら入りたくなった。アウルやスティングも何か言いたそうだったが、それ以上に笑いを堪えるので精一杯の様だ。

「き、聞いてたんなら早く言ってくださいよ!」
「いい雰囲気だったのでな。人の恋路をするものは馬に蹴られて死ぬと言う故事もある。ちょうど、全員の緊張をほぐれたようだしな。良く言ったな、シン」
「……絶対笑ってたくせに」

 それでもふてくされているシンを無視して、今度はギナがモニターに顔を映した。まさか、ギナさんまで? 流石にそれはないだろうと思いつつ、シンは警戒した。

「戯言はそこまでだ。すでに戦端は開かれた。我らの成すべき事は連合に死をまき散らし、ただ破壊する事。戦場に立ったならば、ただそれだけを遂行しろ」
「……はい」

 思いっきり悪役の台詞だな、とかなりの面々が思ったが流石に口にはしなかった。ブリッジから連絡が入り、各機出撃の用意に入る。

「ウルフリーダーよりクライウルブズ各機へ、任務を遂行し必ず生きて戻れ! アルベロ・エスト、AI1、ガームリオン・カスタム出るぞ!」

 タマハガネの艦首モジュールムゲンシンボから、アルベロ機から順にスティング、アウル、ステラ、シンが出撃し、他のカタパルトからギナのGF天、エドとフォー・ソキウスのソードカラミティ二機、ジェーンとシックス・ソキウスのフォビドゥン・ブルー二機、サーティーン・ソキウスのレイダー制式仕様が出撃する。
 と、シンはテンザンがいつものバレルに乗っていない事に気付いた。鹵獲した105ダガーで出撃するらしい。ストライカーパックも見慣れないものを装備している。

「テンザン隊……じゃなくて一尉。なんでダガーに乗ってるんですか?」
「ああ? せっかくのレアもんだぜ? ちっと性能が悪くたって一回は使うのがやりこみ派なんだっての。それにこのライトニングストライカーもおれ好みだしよ」
「ライトニング?」
「おうよ。射程120キロのカノン砲よ。タマハガネの甲板上からボンボン戦艦落としてやるぜ。こっちだけずるして無敵モードみたいなもんだから、おれには難易度がイージーだけどよお?」
「そういうのって死亡フラグっていうんじゃないですか? 長距離の狙撃をかいくぐってきた敵機の攻撃に、とか。戦艦を庇って、とか」
「ばぁか。んなもん知るかよ? これはマジモンの戦争なんだぜえ。いいかシン、アルベロのおっさんが言った通り戦場に立ったら生き残る事を考えな。
心をぶっ壊しちまうのも、戦争が終わった後の事も、全部は生き残ってからにしろよ」
「……なにか、悪いもの食べました?」
「アホ! ここまで生き残った後輩に兄貴分が助言するハートフルなイベントだろうが!」
「……ますます死亡フ」
「さっさと行けっての!」

 モニター一杯に顔を映して怒鳴るテンザンに負けて、シンはエムリオンを連合のMS達に向けて加速させた。
 アルベロ・スティング・ステラ・シンの四人でフォーメーションを組み、テンザンがそれを援護する形となる。
 アウルとジェーン、シックス達は、三隻のストーク級から出撃したシーエムリオンと合流して編隊を組み、連合艦隊に海の中から襲いかかっている。
 ギナの天とエド、フォー、サーティーンはそれぞれ独自に動いて敵の数を減らしているようだ。
 タマハガネの艦橋でも、新たに就任したエペソがブリッジクルーに手早く指示を出している。
 緑色の長髪を首の後ろ辺りでまとめ、理知的な顔立ちの中に傲慢さと高貴さを滲ませる若い男だ。
 一佐の階級章を首の襟につけ、冷たいとも言える冷徹な瞳で戦況を見回している。
 ビアンとグレッグの推薦で急遽タマハガネの新艦長に就任した端正な顔立ちの男だ。
 艦長席に座し、眼下のクルー達からの報告を聞き、心中で優先順位をつけて命令を出している。

「MS隊全機出撃。ナカジマ機は第二カタパルト上にて砲撃支援に入ります」
「連装衝撃砲1番から5番、照準を右前方イージス艦合わせ、艦を前進させよ。MS隊を支援する」

 ストーク級三隻も連合艦隊を三方から攻め込み、浮き足立った艦艇に砲撃を打ち込んでいる。所詮四隻、しかし侮れぬ四隻であった。
 下駄履きのストライクダガーにテスラ・ドライブによって、機動性で勝るソードカラミティが、背から抜き放った15メートルに及ぶ対艦刀シュベルトゲベールで、次々と両断してはオイルの飛まつが空中にしぶく。
 エドのソードカラミティ二号機だ。肩のマイダスメッサーを投げつけ、105ダガーのエールストライカーのウィングを切り落としてバランスを崩し、左手のロケットアンカーで頭部を掴み取り、引き寄せて真っ向唐竹割にする。
 フォー・ソキウスも、カラミティに比べれば70パーセントの出力に抑えられたソードカラミティのスキュラでスカイグラスパーを牽制し、タマハガネに集中する砲火をわずかずつでも減らしている。

「はは、こりゃいいや。狙わなくても向こうから突っ込んできてくれるぜ。指揮官殿、これ本気で全滅させるのかい?」

 ミラージュコロイドで姿を隠していた天がソードカラミティの傍らに立ち、接触回線でギナがエドに答えた。
 その間にもトリケロスのビームライフルで一機、二機とストライクダガーを撃墜している。

「当たり前だ。我らに歯向かう下賤にかける情けなどあろうはずも無い。こやつらの骸こそが我らの力の証明」
「へーへー、それはまた容赦ないこって」

 周囲を取り囲むストライクダガーと指揮官機らしい105ダガーを、エドは不敵さと疲労を交えて迎えた。傍らのギナはどこまで余裕の笑みを浮かべていることだろう。

「あ〜あ、来るトコ間違えたかねえ?」

 重力アンカー、ヴァルシオン、クライウルブズの投入で連合、DC間での戦力は互角にまで持ち込まれていた。
 テンザンのライトニング105ダガーの砲撃とスペースノア級の連装衝撃砲やミサイルの雨は、間断なく連合艦隊に降り注ぐが、逆に連合艦隊からの反撃は、タマハガネのエネルギー・フィールドを突破できずにいる。
 とはいえ、エネルギー・フィールドとて無限に展開できるものではない。着弾毎に船体を揺らし、ダメージを蓄積させる。
 いくら撃っても対峙している敵艦隊は数が減った様には見えず、クルー達に及ぼす心理的圧迫は重かった。
 群がる戦闘機が、降り注ぐミサイルが、タマハガネの船体を揺らす。

「迎撃! 406mm連装衝撃砲4番から7番、各固に狙いを合わせよ。ミサイル発射管、全門対空溜弾装填。撃て!」

 動揺などといった感情とは無縁の様に、エペソの表情に揺らぎはない。
 彼がかつて戦ったゼントラーディやメルトランディ、宇宙怪獣といった連中との戦いに比べれば、ささいな遊戯のハンディ程度にしか感じぬ数の差だからだろうか。
 だがエペソは知っている。地球人一人一人の力は弱くとも、強い絆で結ばれた者達が、思いを一つにした時の、奇蹟としか思えぬ凄まじい力を。
 眼前の地球連合の兵達がそれを発揮するとは思えぬが、エペソは『地球』と名のつく星に産まれた者達を侮る心は持っていなかった。

「取り舵二〇、艦首魚雷発射管、装填済次第順次発射せよ。各員、汝らに課せられし責務をただ果たせ! 勝利はその先にある。……ズフィルードの加護があらんことを!」

 タマハガネの周囲で迎撃されたミサイルの生む炎の花が幾輪も咲き、その炎を割いて連装衝撃砲の光の筋が、連合艦の装甲に吸い込まれ、次の瞬間には高い水柱を吹き上げて爆発する。
 海面のどこを見渡しても、澄んだ青を湛えた美しい水面を覗く事は叶わなかった。海上や空中だけでなく、海中でもまた死闘は繰り広げられていたのだから。

「へ、海の中ならこっちの方が有利なんだぜ」

 アウルのシーエムリオンが、水中用に調整された実体剣でディープ・フォビドゥンのダガータイプの頭部を斬り飛ばした。
 この時代でも海中の潮の流れや干潮の変化を克明に記録したデータは重要機密であり、それ自体が武器となる情報だ。
 四方を海に囲まれたオーブが、そういったデータの価値を理解し、緻密に網羅していたのは言うまでも無い。
 それを利用し、DC側は水中において有利なポイントにあるよう動き回り、あるいはじっと息をひそめた。
 キラーホエール級三隻と、旧オーブ艦隊の保持していた潜水艦を合わせたDC潜水艦隊は、連合の水中用MSと激しい戦闘を繰り広げていた。
 ゲシュマイディッヒ・パンツァーを標準装備するフォビドゥンタイプも水中では、水圧対策と使用しているし、そも水中ではビーム兵器は基本的に使用できないから、これはさほど問題とはいえなかった。
 その代り、彼らの装備するTP装甲が撃墜を一際困難なものにしている。

「まあ、こっちもPS装甲あるからおあいこってね」

 シーエムリオンに装備された音速を超えて奔るスーパーキャビテーティング魚雷で次々と狙いうち、五発撃った内の二発が命中してフォビドゥン・ブルーの機体が揺らぐ。
 そこに一機に接近して至近距離でレールガンを叩きこむか、アサルトブレードで間接や頭部、バックパックを刺し貫くのが有効だ。

「アウル、無駄口叩いてないできびきび動きな。海の下じゃそんなに数の差はないが、上は偉い事になっているんだからね!」

 潜水艦とクジラを足したような生き物のマークが特徴の、『白鯨』ジェーンは、フォビドゥン・ブルーの手に持った銛でディープ・フォビドゥンをまとめて二機葬る。

「ああ? だからこうしてやってんじゃん! おばさんの目節穴なんじゃねえの?」
「おば!? この、後で覚えておきな! ……く、鬱陶しいね、『白鯨』を舐めるな!」

 アウルの禁句に募った怒りを、周囲の連合MSにぶつけるジェーンの奮闘は凄まじく、おばさん呼ばわりしたアウルが、やべ、と思うほどだった。
 ジェーンのフォビドゥン・ブルーの放ったフォノン・メーザーが、洋上の巡洋艦の船底に大きな穴をあけ、ゆっくりと沈没させた。
 ジェーンの怒りはまだまだ収まりそうに無かった。

 テンザンのライトニングダガーの放ったカノン砲を回避したスカイグラスパーやストライクダガーに、シン、スティング、ステラのエムリオンが襲い掛かりレールガンやビームライフルを浴びせかけ、瞬く間に三つの爆発が生じる。
 アルベロはシン達に指示を飛ばしながら、同時に二機のストライクダガーを相手にしていた。
 過熱した金属粒子を、両肩の誘導子が集束させ、ブレイク・フィールドに重ねて形成する。
 ガーリオンから受け継いだソニック・ブレイカーだ。下駄履きのストライクダガーも慌てて上空や左右へ飛び下がるが、ガームリオンの機動性には及ばず、また逃げ道を予測していたアルベロによってあっという間に肉薄されて機体を砕かれる。
 ソニック・ブレイカーの解除と同時にバーストレールガンを立て続けに撃ち、包囲しようとしていた新たなストライクダガーを散らす。
 AI1の警告とほぼ同時に、培った歴戦の勘が、警鐘を鳴らし、下方から迫る強力なエネルギーを回避した。
 連合の旗艦パウエルから出撃した機体が三機、クライウルブズへ牙を剥いたのだ。

「スティング、シン、ステラ、フォーメーションを崩すな! 厄介なのが来たぞ」
「あいつ、あの時の新型!」

 一度フォビドゥンと矛を交えたシンは、その時の苦い戦いの記憶を掘り起こし、14歳の顔立ちを顰める。
 スティングやステラも、自分達の同類の登場に、緊張を走らせていた。
 新型のGとはいえ、エムリオンならば性能で引けは取らない。ならば後は操るパイロットの技量が勝利へのカギだ。
 リフターから機体両面に伸びたシールドで機体を守るフォビドゥン、人面鳥の様なMA形態で、腹に破砕球を抱えたレイダー、背・腹・両手とあらゆる所に火器を満載した下駄履きのカラミティ。
 他にもオルガ達ほどではないにせよ強化された兵達の乗るロングダガーやデュエルダガー、105ダガーが続々と出撃し、連合艦隊中枢を守るべく布陣する。
 機体とパイロットが高いレベルでまとめられたこれらの機体は、DCにとってかつてない強敵として立塞がる。
 GF天やソードカラミティ、レイダー制式仕様で次々と連合のMSや戦闘機を撃破し、鬼神の働きをしていたギナとエド、フォー、サーティーン・ソキウスがそれに気付く。

「ギナ様、あれらの機体に乗っているのは連合の強化人間達と思われます」
「となると、エムリオンとの性能差を含めても並の者どもでは互角に近いか。エドワード、我らであれらを片づけるぞ」
「はいよ。一人当たり五、六機撃墜すれば万事解決ですかね」

 こんな時にも陽気な調子を崩さぬエドだ。ギナはそれに満足したのか一つ頷くと、アルベロのガームリオン・カスタムに通信を入れた。

「アルベロ、新型のGはお前達に任せるぞ」
「よかろう」

 それだけ短く言うと、アルベロがすぐさま指示を出したのだろう。
 シンとステラのエムリオンとスティングのガームリオンが三機編成のフォーメーションを組んでカラミティ達に向かって行った。
 アルベロはそれまで四機で相手をしていた周囲のストライクダガーやスカイグラスパーを一人で相手をするようだ。
 タマハガネとテンザンの砲撃支援もあるが、いささか厳しい数を相手にせねばならなかった。