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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第21話a

Last-modified: 2013-12-26 (木) 20:57:43

第21話 マドラス燃えて

ステラもmaigo……まいご……マイゴ……my碁……迷子?

「お、お前はDCの兵なのに、自分の基地で迷子になったのか!?」
「うん。なっちゃった」

 屈託なくステラは頷き、無垢な瞳でアホかと吠えるイザークを見つめ返した。
 ラボから救出された頃は、見知らぬ人物には警戒心をむき出しにしていたステラだが、人間関係というものを学び、情緒が安定してきた昨今では、むしろ人懐っこくなっている。
 頭を抱えたくなるイザークだが、こうまで子供子供しているステラを前にすると自分がしっかりしなければという風に開き直った。

「ええい、仕方ない! ステラと言ったな、どこまで道を覚えている!」
「うん? ……あっち」

 とイザークが来た背後を指さす。そりゃまあ、イザークの背後から現れたのだから当然である。
 これは役に立たなそうだとイザークは早々に判断したが、ここであきらめるのも癪なので、息まいてずんずんと歩き出した。

「行くぞ、ステラ!」
「うん」

 どことなく微笑ましい二人組の迷路脱出行の始まりだった。
 で、結局脱出は失敗を継続中だった。
 実に三十分歩きまわった二人は、無言で自販機からソフトドリンクを買って備え付けの長椅子に座っていた。
 ドリンクはイザークの奢りである。ステラは財布も持っていなかった。
 ちっとも道を思い出さないステラに辟易しつつ、イザークは自分がいったい何をしているのだろうと、都合34回目の思いに捕らわれていた。
 それからなんなんだこいつは、とくぴくぴホワイトサワーを飲んでいるステラを見た。
 なんとなく子犬か何かを餌付けしている気分になる。
 しかし、この年齢でDCの兵、となるとどんな役職にしろ、ナチュラルという事はあるまい。
 15歳で成人と認められるプラントの基準から見てもまだ幼い少女だ。
 どんな素姓の主か、というのも気に掛かる。
 椅子に座って足を前後にぶらぶらさせているステラに、直接聞いてみる事にした。

「ステラと言ったな。お前はコーディネイターか?」
「ううん、……ナチュラル?」
「なぜ疑問形になる!? 道だけでなく自分がナチュラルかどうかも分からんのかお前は!」
「うう……」
「ええい、そんな泣きそうな顔をするな、別に怒ってはいない」
「本当?」
「本当だ。怒鳴って悪かった」

 どっと肩にのしかかってきた疲れに溜息をついて、イザークは紙コップの中身を一息に飲み干した。
 なんとなくボズゴロフ級潜水艦に帰れない気もしていた。ザフトレッドの自分が、余所の勢力の基地で迷子って……。
 こんな醜態が本国の母に知られたらどうなる事やら、とイザークはステラと出会ってから大量に生産している溜息をまた一つ吐いた。
 幸い、その溜息に飽きたのか、元念法使いの神様か美しい白衣の悪魔が助けを寄越してくれたらしかった。

「あれ、ステラ? それにザフトの人?」

 何故か木刀を腰のベルトに差したシン・アスカが、たまたま通りかかったのだ。
 シンの登場に、ステラは顔を喜色一色に染め上げて立ち上がり、シンに駆け寄った。
 大好きなご主人様を見つけた小動物そのままの仕草だ。思わずイザークの口元も緩む。

「えっと、シン・アスカです。あの、どうかしたんですか?」
「む、イザーク・ジュールだ。……少し道に迷ってな。そこのステラに道案内を頼んだのだが……」
「あー、ステラも迷子だったとか?」

 イザークは黙って頷いた。
 尻尾があったらパタパタと振っていそうな様子で自分に寄り添うステラの頭を片手で撫で、柔らかい金髪の感触を楽しみながらシンは納得した。
 ステラの放浪癖は今に始まった事ではない。基地や戦艦の中をうろつきまわって道が分からなくなり、通りがかった人たちに助けられた事が多々あったのだ。

「シン、すまんが、6番ドックまで案内を頼めるか?」
「え? いいですよ。おれも近くまで行く用事あるし」

 ステラと手をつないで、シンはイザークの案内を承諾した。
 歩きだしてからしばらくして、自分よりもまだ若いシンに、イザークがこう聞いた。

「若いな。シンはコーディネイターか? ステラも?」
「え、ああそうですよ。おれはコーディネイターです。でもス……ステラもです」

 ここでステラの素姓が強化人間だなどと口を滑らせたら、後でどんな問題になるか分からない。
 咄嗟にそこまで考えついたシンは、多少無理はあるが誤魔化した。ステラはシンに会えたのがうれしいらしく、特に気にしていない様だ。

「そう、か。オーブはコーディネイターも受け入れていたからな。いても不思議じゃあない。シンは、プラントに移住しようとは思わなかったのか? 連合が攻めて来た時、それなりの数のコーディネイターがプラントに移住したと聞いたぞ」
「ええ、おれと妹はコーディネイターですけど、両親はナチュラルだし。それに、おれは逃げるよりここで戦う事を選んだから」

 少し前のイザークなら裏切り者のコーディネイター呼ばわりしかねないところだったが、アラスカやパナマ等の経験を経て人間的に成長し、思う所もあるイザークは黙ってシンの言う事を聞いていた。

「そうか。故郷を守るためか?」
「はい」
「なら、おれ達と変わらんな。……オーブにはすまない事をしたと思っている」
「? ヘリオポリスですか」
「そうだ。連合のMS開発を行ったとはいえ、コロニーが崩壊する事になるとは思ってもみなかった。ザフトを代表して、とはいかんがおれ個人としては謝罪したい」

 これまたイザークを知る者なら脳腫瘍でも出来たのかとか、かなりひどい疑いを持ちかねない台詞だが、彼とてもプラント愛する人間である。
 ユニウスセブンの悲劇を想起するような、コロニーの崩壊に特設関わったものの一人としては、たとえその事を口に出せなくても、申し訳ない気持ち位は湧く。

「いいですよ、別に。確かにザフトが攻め込んできたせいでヘリオポリスは壊れちゃったけど、映像が回ってきてからは、コロニーの中で重火器をばかすか撃ちまくったアークエンジェルやストライクも悪い、ていう声もありますし」

 実際ヘリオポリス崩壊の映像で内部の戦闘状況が公開されると対要塞戦などに用いられるD装備のジンを使用したザフトへの非難も殺到したが、戦艦クラスのミサイルやコロニーの外壁を貫く大出力のアグニをぶっ放すストライクの姿もあり、オーブ国民の感情はザフト・連合それぞれによろしくない。
 もっとも、ウズミの中立政策や思想の影響を受けているカガリでさえ、基本的には地球連合よりの思考であり、アフリカで現地ゲリラに参加しザフトと闘っていたくらいだから、連合が攻め込んでくるまでは、ザフトに対して悪感情が強かったと言えよう。
 ヘリオポリスに関してはなぜ外交ルートで抗議しなかったのか、と憤る声が多くを占めている。
 シンの言葉に、イザークは多少なりとも溜飲が下がったのかわずかに肩の力を抜いたようだった。

「あ、ここのエレベーターで6番ドックに行けますよ」
「む、そうか。すまんな、手間をかけさせた」
「いいですよ」
「シン、ステラ、次は戦場でない場所で会えるといいな」
「はい、イザークさんもお気をつけて」
「ばいばい、イザーク」

 小さく手を振るステラの幼い仕草に、イザークは微笑んだようだった。
 妹がいれば、こんな気分なのだろうかと、温かいものが胸にあった。
 かくて、イザークは無事に母艦へ帰る事が出来たのだった。

「所でステラ、どうしてここに来ていたの?」
「エルに渡すお土産、お部屋に置いてきちゃったから、取りに来たの」
「エルちゃんに?」
「うん、マユの分もあるよ」

 初めての給料でステラが買ったプレゼントを取りに戻ったらしい。
 ちなみにステラやアウル、スティングらは咄嗟の時に調整が出来るよう、クエルボの研究室の近くに私室を持っている。

 エルというのはヘリオポリス崩壊に際し、オーブ本国に避難してきた一家の小さな女の子で、アスカ家のお隣さんである。
 マユやシンもエルとは時折遊んであげていたが、そこに最近ではマルキオの世話している孤児達や、ステラも加わっていた。
 第八艦隊の壊滅した低軌道会戦では危うくザフトに奪われたGのうちの一機に撃墜されそうになったらしいが、状況を見守っていたアメノミハシラのユーリアが、事前に第八艦隊内部の内通者からシャトルに避難民が乗っている事を知らされ、撃墜の危機を見過ごせずに助けたので、一命を取り留めたのだ。
 シンは知らなかったが、エル達ヘリオポリスの避難民が乗っていたシャトルを撃ち落とそうとしたのはイザークの乗っていたデュエルだった。どちらにせよ、ユーリアの介入が少なくない命を救ったのは事実だった。
 マユやエル達へのお土産の包みを大切そうに抱えているステラに、思わずシンは微笑んだ。
 ステラがもっとたくさんの人と出会って、その度に笑顔を浮かべられたら、シンにとってもこんなに嬉しい事はない。
 そんなシンの思いは知らず、ステラはシンの腰に差された一振りの木刀が気になったらしい。

「シンはなんで木刀なんか持っているの?」
「これ? いや、折角人型に乗っているんだから自分の体を動かす訓練もしろ、自分の体も満足に制御できずに手八丁で済ますなってアルベロ三佐に言われてさ。おれってステークとかブレードをよく使うから、ボクシングとか剣術の練習をする事になったんだ」
「ふうん、木刀に名前とかあるの? シン、そういうの好きそう」
「名前? そう言えばなんか文字が彫ってあったな。ええと、漢字か。『阿修羅』だってさ」
「強そう」
「はは、そうだな。名前に負けないようおれも強くなんなきゃな」

 後に飛鳥流念法始祖となる日への遠い始まりであった――かもしれないしそうでもないかもしれない。
 
 C.E71.7月――DCの台頭によって南太平洋のミリタリーバランスが変化し、連合対ザフト・DCの様相を呈する事は、おおむね予想されたとおりだった。
 アフリカ大陸やヨーロッパでの劣勢、オペレーション・スピリットブレイクの痛手により地上戦力の撤退と宇宙戦力の強化を決定したザフトであったが、前述したDC対連合の戦闘の結果により連合の海洋戦力の損失が多大なものとなったため、残された地上戦力による反攻作戦が練られていた。
 具体的にはジブラルタル・カーペンタリアへいずれ侵攻してくるであろう地球連合の戦力を削り、その時期を遅らせる程度を目的としたものであったが、もともとマンパワーで圧倒的に劣るザフトはすでに、疲弊した地上では前線に出ている兵が満足に訓練も受けていない新兵が珍しくない状況にあり、地上戦力の早期回収によって宇宙の戦力の充実を図っていた。
 クルーゼとの会見の末DCに求められたのは、インドのマドラス基地襲撃への戦力の提供である。連合艦隊を撃退してから二週間以上が経ち戦力の再編もある程度進んでいる。
 現在マドラスにはジブラルタルないしはカーペンタリア攻略の為と思われる物資の搬入や戦力が集められており、その数は楽観視できるものでは無かった。
 最寄で最大規模の連合の軍事基地であるハワイではまだ大敗の痛手から立ち直れずにいる。なにしろ失われた戦力と人員が半端ではないから、それを立て直すのも多大な手間と予算を必要とする。
 DCから出せる戦力はたかが知れている事はザフトからも分かるが、問題なのはDCの保有する戦力は数では無くその質が常軌を逸している事に着眼していた。端的に言えばヴァルシオン一機で一個師団相当の戦力がある判断されているのだ。
 まあ、総帥直々に出撃するわけもない。変わりに白羽の矢が立ったのは、総帥直属の親衛隊『ラストバタリオン』から選出された超エリートで構成された特殊任務部隊クライ・ウルブズであった。
 ザフトとの共闘を告げられ、オノゴロ島地下のドックでタマハガネの格納庫に集合したクライ・ウルブズの面々に、ロールアウトした新型を受領していた。数日間たっぷりと休養を取った後の事だ。
 勢ぞろいしたシン達の目の前には、核融合炉を搭載したガームリオンが二機、初めて見る新型、バレルエムリオンV、純白のガームリオン・カスタムなどが並んでいる。機種転換の必要はない仕様なので、すぐに搭乗して戦場に立つ事が出来る。
 こういった簡便性はDCの基本的なコンセプトとして全機種に受け継がれている。容易な機種転換、整備性、稼働率と言った信頼性、生産コスト、パイロットの生存性et cetera。どれもこれも両立させるのは難しい注文ではあったが。

「ジャン・キャリー? なんで貴方が」
「久しぶりかな、シン・アスカ。思う所あってね、無理を言って私も加わらせてもらったよ」

 柔和な笑みを浮かべて、DCの軍服に身を包んだジャン・キャリーがそこにいた。“煌く凶星J”の異名を持つスーパーエースが、何を思ってDCに身を置く事にしたのか、それに自分が大きく関わっているとは知らず、シンは差し出されたジャンの大きな手と握手を交わしていた。
 アウルやスティングなどはジャンの高名を知っているから、少しばかり目を見開いていた、いつもマイペースなステラや話を通されていたアルベロなどは特に気にした様子はない。
 ジャンとシンの挨拶が済むのを待ってから、アルベロが今回配備された機体について説明を始めた。

「白いガームリオン・カスタムはジャン・キャリーに使ってもらう。おれとスティングのガームリオンは動力源とEフィールド発生機構を新型のモノに転換する。
 それとシンにはお前用に仕様を合わせたガームリオン・カスタム、アウルには動力源を変えたエムリオン、テンザンにはバレルの改良型であるバレルエムリオンVを使ってもらう。ステラには、統合整備計画で造られたアーマリオンを使ってもらう」

 配備された機体全てが核融合炉搭載と言う洒落にならない編成だ。
 アルベロには黒と紫でペイントされたガームリオン・カスタム、スティングには緑と白のガームリオン・カスタム、
 テンザンには黒で塗装され、両手にツイン・アーム・レールガンを装備し、砲撃支援用に再設計したバレルエムリオンV。
 アウルには汎用性を求めてだろう、動力源と内部のセンサーやサーボモーターの出力を強化したエムリオンの後期型。
 ステラには、完全な新型であるDCMS−004FAアーマリオン(Ver.CE)が渡されていた。
 ラピエサージュなどのデータから再現した新西暦の機種のデータを流用して作り上げた高性能機だ。
 近接戦闘をメインに、射撃兵装も備えオールレンジで戦える。全高21.9メートル、重量41.9トンと、重武装ながら軽量MSであるM1よりもさらに軽い。実の所軽量なはずのM1も53.5トンと、ストライクダガーの55.31トンと大差はない。
 武装は両手甲部のビームサーベル兼用のスプリットビーム二門、頭部のハードヒートホーン一振りと75mm対空砲塔システムイーゲルシュテルン二門、両脚部には電磁加熱した金属粒子を纏って対象を切り裂き破砕するソニックブーストキック、
 両肩には特殊チタン刃を無数に射出するスクエア・クラスターを二門装備している。
 PS装甲、ラミネート装甲どちらにも対応できる充実した装備だ。接近戦を得意とするステラには相性の良い機体だろう。
 防御面も分厚い装甲に加えてPS装甲とEフィールド、ABコーティングを装甲表面に施してあるから万全に近い。
 関節への負担もTGCジョイントの採用で極めて軽く、超接近戦でも長時間戦えるだろう。
 流石に量産タイプとなればいくらか装備をオミットする事になるだろうが、極めて高性能の機体に仕上がっている。
 開発に携わった者も、ラピエサージュのデータ内に残っていたこの機体を設計した者には才能があるとしきりに零していた。
 新たな相棒を前にして、ステラはいつもと変わらないぽけっとした顔で見上げていた。うれしいのか喜んでいるのよく分からない。

 一方で、変わらず阿修羅を腰に差すシンも新しい相棒を前に子供っぽい喜びを顔に浮かべていた。トリコロールカラーのガームリオン・カスタムだ。
 右肩には、シンの名字を漢字で書いた『飛鳥』の二文字が達人の豪快な筆からなったように荒々しく塗装されていた。
 なにより特徴的なのは左脇に装備された一振りの刀だろう。見事な細工の鍔と質実剛健な鞘がシンの目を引いた。DC謹製のMS用実体剣『シシオウブレード』の一振り目である。
 まだオーブが健在だった頃に、オーブに立ち寄ったとあるジャンク屋の持っていたガーベラ・ストレートというMS用の名刀を目にしたビアンが、そのジャンク屋に教えを請うて完成させたものだ。
 もともと新西暦世界にも同様のモノはあったがジャンク屋とジャンク屋に技術を与えた老人の技が活かされたこのシシオウブレードは、新西暦世界のモノと比べても遜色はないとビアンも太鼓判を押している。
 木刀・阿修羅での剣術の修行には、このシシオウブレードを扱う為の意味も含まれていたのだろう。
 他には両肩の突き出たショルダー・アーマーに推進装置が追加され突進力を向上させてあるようだ。
 要所要所にもバーニアや装甲が追加され遠距離から一気に敵機の間合いに踏み込み、シシオウブレードで立ちはだかる者を斬って捨てる戦い方を前提とした、というかそれしかないじゃじゃ馬のようだ。

「それがお前用のガームリオン・カスタム“飛鳥”だ」
「飛鳥、おれの名前?」
「そうだ。その名の通り、戦場の空を飛ぶ鳥となれ。何者をも断つ刃を持った鳥にな」
「お前が、おれの新しい相棒か」

 感慨にふけるシンだったが、一人エムリオンに乗る事になったアウルは不満そうだった。

「てかさあ、普通エムリオンの方がガームリオンより多いもんじゃねえ? なんで指揮管制・エース用のガームリオンの方が多くておれ一人だけエムリオンなわけ? えこひいきじゃないの」
「そう言うな、アウル。エムリオンも良い機体だ。海中で本領を発揮できる機体を一機位は残しておかんとな。お前にも今組み立て中のジガンシリーズを回してもらうようおれから上に伝えておく」
「頼むぜ、アルベロ隊長。おれだけ仲間外れってやだもんなあ」

 テンザンは新しいバレルに不満はないらしく、にやにやと新しい機体を見上げていた。
 一見するとかなり不気味だった。ロボットゲームオタクの気性を存分に滲ませている。

「それと新しく二人のパイロットが配属される。機体と合わせてそろそろ来るはずだが……。あれだな」

 アルベロの言う通りトレーラーに乗せられて先日の連合別動艦隊をさんざんに痛めつけた赤いラーズアングリフと緑のランドグリーズが一機ずつタマハガネに運び込まれてきた。
 見慣れぬ機体に、全員の視線が集中する。特に好みなのか、テンザンはねばっこい視線を向けていた。
 その内メンテナンスベッドに二機が収まるとトレーラーからパイロットらしい二人が降りてシン達の所にまで歩いて来た。
 茶色い髪の青年と赤味の強い髪に褐色の肌の少女――ユウキ・ジェグナンとリルカーラ・ボーグナインの二人だ。

「ユウキ・ジェグナン三尉、リルカーラ・ボーグナイン曹長であります。遅くなり、申し訳ありません」
「うわ、ユウ、見て見てみんなこんなに若いパイロットだよ!」
「……カーラ、人の話の腰を折るな。申し訳ありません、エスト三佐」
「ああ、すいません!」
「構わん。こいつらを部下にしているとそういうのには慣れるのでな。この二人が本日からわれわれクライ・ウルブズの一員となる」

 シン達を向き直ったユウはカーラの言う通り、シンやステラと言った少年少女がいる事に多少驚いたらしい。
 沈着冷静な性格らしく、それを表にする事は無かったが。

「ユウキ・ジェグナンだ。これからよろしく頼む」
「リルカーラ・ボーグナインよ。仲良くしようね!」

 元気の良いカーラの挨拶に飲み込まれたユウだが、おもむろに懐中時計を取り出して、ひどく真剣なまなざしで呟いた。
 カーラはまた始まったよと小さく呟いていた。

「さて、紅茶の時間だ。よければ一杯御馳走しよう」

 というわけで、ユウの持ちこんだティーセットで淹れた紅茶を食堂でシン達は堪能する事になった。ユウのうんちくも。
 紅茶の味が分からなくなりそうなほどたっぷりと紅茶の知識を叩き込まれ、シンは正直辟易したが話を基本的に聞いていなかったステラは、もぐもぐとお茶菓子と紅茶を目いっぱい味わっていた。
 カーラはいつもの事となれた様子であり、ジャンとテンザンとアルベロはすでに逃げていた。
 歴戦の経験が培った勘だろう。アウルはもううんざりだという顔で、黙って紅茶を啜っていた。

「じゃあ、あのラーズアングリフとランドグリーズの生産は少数どまりだと?」
「ああ、そうだ。元々テスラ・ドライブ搭載機でないラーズとグリーズは陸戦タイプである以上オーブ諸島での使用には向いてない。テスラ・ドライブの小型化には成功しているが、搭載を設計段階で想定されていない機体に後付けする為のユニットはまだ少数しか作られていないし、それもエドワード・ハレルソン二尉やギナ副総帥のGF天に装備されているからな」

 機体に話を持って行き、紅茶のうんちくを回避したスティングが、ユウと話し込んでいた。
 元々はクエルボ・セロの乗っていたラーズアングリフを参考にして開発し、テスラ・ドライブの搭載を見送った為に、ラーズとグリーズの両機は飛行能力を有していない。
 ただ生産コストは安く、改修の余地もあるため、その内飛行能力を持ちより火力の増した新たなラーズとグリーズの後継機も開発される可能性は残っている。

「だが、足を止めての砲撃戦で真価を発揮したラーズの力は馬鹿に出来ん。ザフトのザウードはもちろん、連合のバスターやカラミティにも負けんとおれは思っている。……ビーム兵器が無いのが欠点と言えば欠点だがな」
「コストや特性から考えれば将来他国への輸出品になりそうですね」
「確かに、大陸などの陸地でこそ活躍の場は多そうだが……。いかんな、紅茶が冷めてしまう。オークレー准尉、早く飲むと良い」

 そう言って、手ずから淹れた紅茶の香りをユウは楽しんだ。

 かくてまたイロモノの仲間を加えて、タマハガネはにぎやかさと戦力を増していた。
 ギナ、フォー、シックス、サーティーン・ソキウス達は宇宙のアメノミハシラへ。
 エドとジェーンはオノゴロ島で南アメリカとの交渉に関わっている。
 代わりにジャン、ユウ、カーラと新型機を補充し、タマハガネは一路ザフトの潜水艦隊と合流する為に、ローレンス・シュミットの乗船したキラーホエール級二隻と共に地下ドックを出航した。