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SRW-SEED_ビアンSEED氏_第30話a

Last-modified: 2013-12-26 (木) 21:05:58

第30話 真の大地より 前編

「私のR−GUNとルナマリアのR−2は、MSとは違う新たな機動兵器TEアブソーバーにカテゴリーされます。TEアブソーバーの動力源であるTEエンジンは、端的に言えばこれまで未知のものだったターミナス・エナジーを用いた半永久機関です」
 イザーク達はプラント本国に戻り、NJC搭載機とは別に極秘に開発されていたRシリーズについてのレクチャーを受けていた。
 もともとエネルギー関係の研究者でもあり、Rシリーズの開発に携わっていたシホとヴィレッタが講師役だ。
 タイトスカートから伸びるすらりとした脚線美が眩いまでに美しいヴィレッタは、優雅に足を組み、Rシリーズのデータが移るディスプレイを背にして、イザークとレイ、ルナマリアを見ていた。
 身に着けているのはザフトの赤服に下半身はタイトスカートに黒のストッキングだ。
 今はシホがディスプレイを背に三人詳細な説明を行っている。
 バディム隊ならぬWRXチームはMSパイロット全員が赤服というエリート隊であると同時に、プラント最高評議会議長パトリック・ザラ直属の特務隊でもあり、他の隊には見られない特別待遇を受けていた。
 ザフト管轄下にあるあらゆる施設、物資の優先的使用・徴発などなど。その一つが、今回彼らに受領された新型の機動兵器達であり、今はそのスペックの説明の最中というわけだ。
 ちなみにチーム内の序列は隊長であるヴィレッタに次ぎ、イザーク、シホと来てルナマリアとレイが同列となる。
 なお、赤服――ザフトレッドはアカデミーの成績優秀者である事を示すのであって、緑服がおしなべて階級が低いというわけではない。緑服でも隊長クラスを務める事もある。
「TEアブソーバーは、重力、電磁力、強い相互作用、弱い相互作用の4つ以外に存在が予言されていたターミナス・エナジーを用いたもので、どこにでも存在している力を動力源にしています」
「では、R−GUNとR−2は無限に活動が可能という事ですか?」
 黙ってシホのレクチャーに耳を傾けていたレイが、挙手をして質問した。核動力も無限動力だなんだの言われているが、そんなわけはないのはザフトでの誰とても理解している。
 だが、このTEエンジンはどこにでも存在するエネルギーを利用するという話が事実であるならば、確かに半永久的に稼働が可能だろう。
 それは文明を支えるために不可欠なエネルギー問題にも光明を射す可能性を持った、軍事に限らず重大な発見だ。
「理屈の上ではそうなります。実際には出力が不安定で繊細な調整が必要ですし、今は補助にバッテリーを使っています。
目下、実戦に投入されているTEエンジンはR−GUNとR−2の二基だけです。それにTEエンジンの調整はかなり繊細な作業です。なのでルナマリアにはこれからTEエンジンの出力調整の訓練を重点的に受けてもらいます」
「それはいいけど……何なんですか、この格好!!!」
 それまで黙っていたルナマリアが絶叫にも似た叫び声を上げて、がたんと椅子を鳴らして立ち上がる。
 腕を組んで目をつぶっていたイザークが、ルナマリアを片目だけ開いてその姿を見つめて頬を赤らめた。
 レイは我関せずとディスプレイを見つめ続けていた。
 頬を赤らめて頭から湯気が出ていそうなほど沸騰した顔で、プルプルと握った拳を震わせてシホとヴィレッタを睨んだ。
 そのルナマリアの様子に、ふっと小さく笑いシホはどこか悟ったような顔になった。その眼はどこか遠い所を見ていた。ヴィレッタは少し不憫そうにそんなシホを見ていた。

 目で目に焼きつきそうだ。
 白い肌に黒い生地がめりこみ、肌理の細かい雪肌に食い込む様は、はっきり言ってしまえばSMプレイなどで着用されるボンテージの一種と大抵の大人は判断するだろう。
 ルナマリアは、つつましく窪んだおへそや上半身と下半身をつなぐには心細いほどにきゅっとくびれた腰に、若さ故の肌の張りと女の脂が乗り始めた太もも、豊かな乳房の上半分を大胆に露出させ首にはスカーフを模したベルトを巻いていた。
 一応、肩と腰に赤を基調にしたジャケットが着いているから、後ろから見る分にはあまり露出は過剰ではないのだが、正面から見る分にはどう見ても露出過剰な水着である。軍に入って着る羽目になるとは誰も思わないに違いない格好だ。
 実際、それを着せられたルナマリアは羞恥心に塗れて頬を赤くしてシホに抗議している。
 まだ15歳と少女の域を出ぬ年齢ながらたわわに実った乳房に大人と少女の中間の張りと肉を乗せた尻やお腹を大胆に晒し、グラビアの表紙を飾ってもおかしくない色気を自然と振り撒いている。
 そしてその水着スーツを着ているのはルナマリアだけでなくシホもだった。
「これはDFC(ダイレクト・フィーリング・コントロール)スーツ。TEエンジンの調整に欠かせないものですよ。そんなに嫌がらないでください」
「し、シホさんは恥ずかしくないんですか、これ!? どう見たって水着ですよ! いいい、いくらなんでもこれはないんじゃないですか!」
「ふふふ、ダイジョウデスヨ。ソノウチマワリノメモキニナラナクナリマスヨ?」
「シホさん」
 シホは生気の抜けた死んだ魚の目をしていた。思わずその屍の如き姿にルナマリアも息を呑む。これがDFCスーツを着るものの末路か。遂には羞恥心まで無くすのだろうか。
(……シホも最初は泣いて嫌がったものね)
 と同情しつつも救いの手は出さなかったヴィレッタが、心中で呟いた。シホとルナマリアの、DFCスーツが抑えつけている胸の白い乳房がむっちりと零れ落ちそうな姿に、イザークは少年らしい反応で頬を赤く染めて目を逸らし、対してレイは無関心らしい。
「で、でもこんな恰好で機体の操縦もしなければいけない何でおかしくないですか!? こ、こんなスーツで操縦しないといけないなんて初耳ですよ!? わ、私露出狂じゃありません!」
「……私だって、私だって、こ、こんな、こんな格好したくなんてしたくなかったです! なんでこんな胸もお腹も足も出さなきゃいけないんですか!? 
機体に乗る間だけじゃなくて降りた後もこの格好のままでいないといけないし……。うう、お嫁にいけないしお婿さんも貰えません」
 しくしくとその場で膝を抱えてうずくまり泣き出しそうになっているシホに、流石にルナマリアも何も言えなかった。
 シホさんは性格が生真面目な分、こんな軍がするにはとてもまともとは思えぬものを着せられて、軍人としての責任感と一人の少女としての感性が葛藤し、摩耗してしまったのだ。
 そう思い到り、ああ、この人も苦労しているだな、と心から思った。自分もそうなるのだろうな、とも。
 立ちあがったままのルナマリアの肩に、レイの本当に男かと疑いたくなるような、細く長い指を持った手が置かれた。
 優しい手付きだった。この少年なりに自分を慰めるつもりなのかと、少し驚きながら淡く期待した。
「気にするな。おれは気にしない」
「私が気にするのよ!!」
 期待するだけ無駄だった。この野郎、天然か!?
「そのスーツなりに長所もあるのよ?」
 息巻くルナマリアを宥めすかすように声をかけたのはヴィレッタである。疑わしさを渦巻かせた視線を向けるルナマリアに対して、至極真面目にこう言った。
「着たままでお風呂に入れるから手間がかからないわ」
「……」
 この人も天然なのか……。シホに目を向けると、シホは小さく横に首を振った。諦めてくださいと、その仕草が伝えている。
 ルナマリアはこのチームでやっていけるのか果てしなく不安になった。
 せめてシホとイザークがまともなのと、全員実力はあるのが救いだろうか。いや、実力があるからこそ余計に救いがないのかもしれない。ルナマリア・ホーク、自分の将来が不安な少女だった。

 ザフトの若者たちが微妙に羞恥心と闘っている頃、宇宙に上がり無重力戦闘の訓練などを積み重ねていたシン達は、何時も通りアメノミハシラ周辺宙域の警戒シフトに着き、時折姿を見せる連合の部隊などと小競り合いを重ねていた。
 ビクトリアやカオシュン、再建したパナマのマスドライバーを使い、連合が月基地を中心に宇宙の戦力の再編成・増強を行っている事が耳に入って久しく、ザフト・DCでも新型機動兵器や戦艦の建造、部隊の編成に慌ただしく追われている。
 ザフトではエースやベテランを中心に次期主力量産機であるゲイツとメディウス・ロクスの配備、NJC搭載機であるフリーダム、ジャスティスと母艦であるエターナル級の量産・建造、機種転換訓練などが盛んに行われている。
 地上から回収した兵士達の扱いもあり、やはり今すぐに軍事行動に移れる時期ではなかった。
 DCでも各MSの核融合ジェネレーターへの動力変更やオクスタンライフルなどを始めとした新型兵装の配備、簡易生産機であるリオンやストライクダガーやジンなどの人工知能搭載機の配備が進められている。
 ジガンシリーズは生憎と一号機からして破損してしまったが、モルゲンレーテ本社とアメノミハシラのファクトリーそれぞれでビアン自ら設計した機体や、AI1、エペソ・ジュデッカ・ゴッツォのもたらした各種データを参考にした超高性能機が、日の目を見るのを今か今かと待っている。
 使われている技術や資材などの問題から、それらがロールアウトするのは随分先の話とされてはいるのが現実だけれども。
 そういった開発関係の問題もあり、いまだビアン・ゾルダークや副総帥ロンド・ミナ・サハクといった重鎮とその乗機はDC本土に残されている。
 だが虎の子であるスペースノア級を預ける特殊任務部隊クライ・ウルブズが宇宙に上がり、アメノミハシラに配備されているヴァルシオン改・タイプCFや、
完成したCE製ヴァルシオン・ギナ――通称“ギナシオン”などの戦力の集め方からすれば、やはりDCも宇宙が決戦の舞台となることを見越して準備を整えていた。

 アメノミハシラ周辺の警戒シフトをこなし、都合数十度目になる実戦を終えて、第三種戦闘配置に付いたタマハガネに、レーザー通信が繋げられた。他に艦を伴わぬ単艦での行動中だ。
 通常DCは二隻か三隻で行動を組む事が多いが、タマハガネの場合その戦闘能力を見込まれて単独での行動が多い。元より、他の部隊では達成困難な任務をこなすことを前提としている分、他の部隊の兵士や指揮官クラスからも特別視される事が多い。
 今回の通信の内容は、これまでに従事した作戦から考えれば、比較的安易そうなものだった。
 エペソに呼び出され、ブリーフィングルームに集ったシン達を前に、今回の指令が伝えられる。
「暗礁宙域の調査ですか?」
 疑問の声を挙げたのはスティングだ。エペソは気品漂う仕草で首肯して言葉を続ける。壁に掛けられた3Dホログラフの画面が切り替わり、プラントで採用されている砂時計型のコロニーとは異なる円筒形の密閉型コロニーが映し出される。
 採光・太陽電力を取り込む為のミラーがいくつか破損して周囲に漂っていた。
「そうだ。60年代に廃棄されたコロニー群の一つで連合のモノと思しい戦闘が確認された。相手の所属は不明だが、アメノミハシラまでの距離も考えれば見逃すわけには行かぬ。
 何度か戦闘が行われているようだが、連合と戦っている者達の情報がない。海賊かもしれぬし、ジャンク屋か、あるいは傭兵か。
 いずれにせよコロニーに何者かが居座り、無視できぬ戦力を保有しているのは確か。そこで我らに調査するよう命令が来たのだ」
「ほんとの理由は単純に一番近いからだってよ。ここ最近ザコキャラとばっか戦ってるからな。ちっとはマシなイベントが起きる頃か」
 ぼりぼりと音を立ててスナック菓子を齧りながらのテンザンだ。エペソが厳しい視線で一瞥するが、意に介した様子はない。この二人、性格上の問題もあってかどうにも折り合いが悪い。
「仮に、敵対行動を取って来た時にはどうするのです?」
 これはユウキ・ジェグナンだ。ラーズアングリフとランドグリーズの改修の目処が付き、件のグランゾンとの戦い以降再びクライ・ウルブズに合流している。
「その時はこちらも応じる覚悟を持て。少なくともこちらから火の粉を掛けるような真似はせぬよう、司令部からは通達されている。銃を手に取る前に言葉を尽くせ、といった所であろう」

「でも、一体だれが戦っているんだろうね? 傭兵とかの凄腕だったらやっぱりサーペント・テール?」
「プロトタイプのアストレイ使っているジャンク屋も結構強いんだろう。そいつらかもね」
 ユウの傍らで、ついこの間まで民間人だったカーラが、後ろの席のアウルと小言を交わす。ちょうどカーラの弟がアウルやシン達と同じ位らしく、カーラはよく話しかけたり、面倒を見ていた。
「どちらにせよ、行けば分かる話だ。連日の戦闘で疲れもあろうが、各員第二種戦闘配置で待機せよ。場合によっては戦闘もあり得る事を肝に銘じておけ」
 聞く者を粛然とさせるようなエペソの声に、シンは自然と緊張を強いられた。

 第三戦速で航行するタマハガネが、コロニー群での戦闘が行われているのを捕捉したのはブリーフィングルームを出て、搭乗機で待機するよう指示が出てから間もない間の事だった。
 既に愛機であるガームリオン・カスタム飛鳥に搭乗して待機していたシンの目の前で、全天周囲モニターにアルベロの顔が映り、艦橋からの報告をシンにも伝える。
『片方は連合のMSだ。だが、おそらくコロニー側の使用する兵器はザフト、連合、そしておれ達DCの物でもないようだ』
「該当するデータがない? 未知の兵器って事ですか?」
『……そうなるな。こちらから仕掛けるような真似は慎めよ、シン?』
「そんな事はしませんよ! あ、でも本当に向こうから何かして来た時は?」
『撃墜も止む無しだな。ただコロニーに居住している者達がいるらしい。おそらくはその居住者たちの戦力なのだろう。ならば話す余地はあるというのが司令部の考えだ』
「だといいけど」
 本当に、連合と闘っているのは誰なのだろうかと、シンが首をかしげようとした時に、オペレーターから発進を促された。
『ガームリオン・カスタム飛鳥、発進どうぞ!』
前方のハッチが開いて、機体のカメラがとらえた宝石を散らばらせた闇色のビロードにも似た宇宙と、時折灯るオレンジがかった白い光がシンの目に映る。 
 発信の用意が整った事を示すランプが灯った。
「シン・アスカ、ガームリオン・カスタム飛鳥、行きます!」

 タマハガネの前方では、五隻の連合の戦艦と二十五機ほどのストライクダガーが展開し、コロニーから現れた機動兵器と交戦しているようだった。
 タマハガネに命令が来る以前から、なんどか交戦していたらしく、コロニー側の戦力が侮れない事を悟った連合側が本腰を挙げた所に、シン達は出くわしたのだ。
 スロットルレバーを押しだしながら、シンは飛鳥のカメラが捉えたストライクダガー以外の機体に注目を寄せていた。
「なんだ、スーパーロボットタイプ?」
 周囲を囲み、ビームライフルを浴びせかけるストライクダガー達を相手にしているのは二機の大型の機動兵器とプロトタイプのジンだ。
 一つは飛鳥の倍――おおよそ五十メートルほどの、白を基調とした機体を緑の装甲で縁取り、肩には緑色の玉をはめ込んだ、フィンに似たものを幾つも連ねている。サイズこそ倍近いが、頭部の形状はGタイプ、俗に言うガンダムタイプに酷似している。
 少し前ならこの手のデザインの機体は連合製かと疑われる所だが、今ではザフトやオーブ、DCでも似たような機体が造られているから、一概に連合のものとは言い切れない。
 あちこちが破損しているようで、その破損した箇所を体裁を整えた程度の装甲を継ぎはぎにする様な形で補っているようだ。ほとんど破損した状態で戦っているようなものだ。
 サイズに見合った巨大な緑色の光刃が伸びるハイメガサーベルを片手に、圧倒的な出力のサーベルでシールドごとストライクダガーを両断するその姿は、本来の姿であったならどれだけの力を発揮するのかと、シンの背筋にうすら寒いものを奔らせた。
 巨躯と破損状況には釣り合わぬ機動性・運動性、それを見事に乗りこなすパイロットの腕前も並ではないようだ。
 傷つきながらも、勇壮にストライクダガーと戦う機体――デュラクシールと共に漆黒の宇宙で、背後のコロニーを守るようにして闘っているのは、いくつもの鋭角の白い装甲を重ね合わせ、機体の斜め後方に伸びた四つの翼のような白い装甲と機体中央や両脇の金色の装甲が目立つ機体だ。
 おそらく頭部と思われる個所にはカメラアイと赤い突起がある。
 少なくとも人型の機動兵器ではないが、かといってMAとも違う。
 サイズはデュラクシールよりさらに大きく、70メートルに届く巨躯だ。こちらもデュラクシール同様に機体のあちらこちらが破損しており、動きに精彩を欠いている。
 名前をヴァイクル。かつて地球側ではグリフォンと呼ばれていた異なる星からの侵略者である。

 ヴァイクルは機体の周囲に中心に空洞の空いた白い十字の様なものをいくつも浮かべ、その中心から青白いビームの矢じりの様なものを発生させてストライクダガーと闘っている。
 現在ザフトでようやく実用化した量子通信による誘導兵器“ドラグーン”系列の技術に類似したものか。
 ある種この二機よりも目立つのは、この中で最も戦力はならない筈のプロトタイプのジンだった。CE60年代後半から配備されたジンのプロトタイプであり、練習用として用いられる事の多いCE最古のMSである。
 ジンの特徴である頭部のとさか状のセンサー類や、ショルダーアーマーなど装甲の一部がオミットされ、スラスター推力なども低下している。
 ジン同様かなりの数が民間にも出回っている機体だが、その分戦闘に用いるには心もとない性能でしかない。だが、このPTジンが動くたび、手に持った重斬刀がストライクダガーの腕を斬り、サーベルやライフルを斬り戦闘能力を奪って行く。
 機体こそ最弱だが、パイロットという点では紛れもなくこのPTジンの乗り手こそが最強だろう。
 シン達が駆け付ける頃には、八倍以上の戦力を持っていた連合の部隊は壊滅し、残された母艦も何隻かは背を向けて逃げ出していたが、ネルソン級二隻をジャン・キャリーとアルベロ、タマハガネが抑え、投降を呼びかけていた。
 少なくとも共通の敵として戦えただろう連合の部隊が無力化した事で、コロニー側の戦力であるデュラクシールとヴァイクル、PTジンとの間に奇妙な沈黙が生まれる。
 シンも、仮に戦うとなったら手傷を負っていても油断できぬ強敵になる事を察知し、操縦桿を握る腕に力を込めた。
 それにしてもPTジンはともかく、あのガンダムタイプと巨大な白い奴はどこの誰が造ったものだろうか。ガンダムタイプはまあ、なんとなく有り得るだろうかという気にはなるのだが、MAとも違うあの白い奴は本当にどこのものだか見当もつかない。
 そういう意味ではDCが造ったものではないのかと、他の勢力は考えるかもしれないが、DCに身を置くシンとしてはあの兵器は微妙に、DCの機動兵器のコンセプトとは違うものだと感じていた。
 分りやすく言うと、ビアンの趣味とは違うかな? という程度だが。
「……いや、敵メカならありか?」
 ヴァルシオンのデザインからして主人公側の乗るような正統派に機体よりも、ああいう凶暴なデザインの機体の方が得意なのかも知れない。
 残念ながら、シンは新西暦世界でビアンが設計を行ったダブルGシリーズを知っていればまた違った考えに至っただろうが、シンが知っているのはヴァルシオンとミナシオーネ、それにフェアリオンだけなのだ。
 デュラクシールがリーダー格なのか他の二機がその左右を固め、シン達と対峙する。痛いほどに張りつめた緊張が満ちる。
 こちら側の戦力も先程の連合部隊とは比較にならない精鋭だが、目の前の連中も手傷を負いながらも並の部隊等歯牙にもかけぬ力を持っているのは分かる。いざ戦うとなれば、タダでは済まないだろう。
 おもむろに、アルベロのガームリオン・カスタムが全周波の回線を開いた。機体に握らせたオクスタンライフルの銃口は下を向いている。
「こちらはDC親衛隊ラストバタリオン所属特殊任務部隊クライ・ウルブズ、アルベロ・エストだ。貴官らの所属と姓名を告げられたし。こちらに戦闘の意思はない。繰り返す、こちらに戦闘の意思はない」
 あくまでシン達に戦闘の意思はないと繰り返すアルベロに、返答がされたのはまもなくだった。
 アルベロのコックピットに、デュラクシールのパイロットであろう青年の顔が映し出された。 
 まだ若い、二十代の青年である。混じり気の無い翡翠を神の腕を与えられた職人が加工したような波打った髪に、彫りが深く眼鼻の顔立ちからは嫌味にならぬ程度に気品が匂いたっている。どこかの国の王族と言われても素直に納得できるだけの高貴さだ。
 今はアルベロを前に典雅な顔を厳しく引き締めている。
「私はフェイルロード=グラン=ビルセイア。所属は……強いて言えば、あのコロニーの人々に力を貸している、という所か。貴方方の目的を聞きたい。あのコロニーの人々は戦乱をさけて寄り集まった難民だ。彼ら自身に何か戦う力があるわけではない」