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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第12話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:42:24

第12話「新たな戦乱の予兆」

 
 

「邪魔をするなぁぁ!」

 

シンが咆えるのと同時にビルトシュバインが敵ゲシュペンストの間をすり抜けていく。
本来であれば敵のど真ん中を猪突猛進するビルトシュバインはゲシュペンストの部隊にとっては格好の的であるのだが、あまりにど真ん中に入り込まれたせいで、同士討ちを防ぐために射撃兵器が使えなくなっていた。
シンの前に1機の亡霊がスラッシュリッパーを展開させながら立ち塞がらんとするが、シンはビルトシュバインのスピードを落とさない。
リッパーを両手に携えさせたビームソードで切り払いながら猛スピードで進軍を続け、回避モーションを取ろうとしたゲシュペンストのコックピットにシンはビームソードを突き刺さした。
そしてビルトシュバインは主を失って動きを止めたゲシュペンストのボディを地面にむけて蹴りつけ、突き刺さったビームの刃を抜くと、再び主の指示に従いある一点を目指してテスラ・ドライブの翼を羽ばたかせた。

 

「アスラァァァァァン!!!」

 

やや紅色に近い赤色に染められたアルブレードモドキ、アースクレイドルにいる面々からはエルアインスと呼ばれる機体に対してシンが叫ぶのと同時に、エルアインスに向けてビームの刃が振り下ろされた。
アスランはその刃を、機体を後退させて回避すると同時に態勢を立て直し、自らもビームソードを手に取らせて迎撃の準備を整える。
エルアインスはそこに再び切りつけられたビームの刃を受け止めると、交差するビルトシュバイン、エルアインス両機の刃はさらに輝きを増した。

 

「やめろ!お前は異世界に来てまで利用されているんだぞ!?」
「それはあんたの勝手な思い込みだ!」
「お前はそうやって同じようにデュランダル議長に利用されていたじゃないか!?」
「ザフトを裏切ったあんたが言えたことか!?」
「俺達がここで戦ってどうなる!?」
「だったらここはあんたが引いたらどうなんだよ!」
「お前は連邦に利用されているだけなんだ!だから俺と一緒に来い!」
「よくもそんなことが平然と言えたもんだな!裏切ったあんたを信用なんてできるか!」

 

エルアインスが刃を振りぬいてビルトシュバインを弾き飛ばし、両機の間合いが開く。
両機のパワーはR−1、アルブレードで得られたデータを検証し最新の量産技術を用いているエルアインスの方が地力で勝る。
だが勝るのは機体性能差だけではない。現時点での操縦技術、経験値の両方でアスランの方がシンを上回っていた。
幾度か斬撃を交えるうちに徐々に機体、パイロットの差が形勢に現れてくる。
当初はビルトシュバインが繰り出す斬撃の方が多かったが、今はエルアインスからの斬撃がビルトシュバインを追い詰め始めていた。

 

「いつまでお前は過去に囚われているつもりだ!」
「あんたは他に言うことがないのかよ!」
「そうだ、お前がいたということはキラ達も…」

 

アスラン・ザラにとっての至上の存在、キラ・ヤマト。彼の存在は常にアスランの思考の中枢部にあった。
そしてシン・アスカがこの新西暦の世界にいたことが判明した以上、メサイア付近で戦闘していたキラ・ヤマト達もこの世界に来ている可能性がある。
そうだとすればアスランがすべきと考えることは当然、キラ・ヤマト達の行方を探すことであった。
しかし、他方でアスランがこぼした言葉をシンは安易に聞き流すことはできなかった。

 

「…やっぱり結局あんたの仲間はフリーダムご一行なんだな!」
「それがどうした!?」
「あんたは裏切られた人間の気持ちを考えたことがあるのか!?」
「何!?」
「信じてた人に裏切られたときの気持ちがわかるのかって聞いてんだよ!」

 

シンの言葉の裏では、赤毛の少女の泣き顔がよぎっていた。
アスラン・ザラはミネルバにおいて広く慕われていたとはいえなかった。
パイロットであるシンにはパイロットとしての腕は凄まじいものがあるが、どうしてもにっくきアスハの手先で、オーブが絡むとまるで当てにならないという印象があることを否定できなかった。
同じくミネルバのパイロットであったレイ・ザ・バレルはギルバート・デュランダルにいつ弓引くかもしれない信用ならない男だと思っていた。
挙句、ミネルバのメカニック達からは、彼らのアイドルラクス・クラインの婚約者だということから妬まれていただけでなく、最新鋭の機体であったセイバーを修理不可能なまでに破壊したことから疎まれていた。
そんなミネルバの中で、動機はそれぞれ異なるもののアスランに好意的に接していた数少ない人間が、赤毛の少女ことルナマリア・ホークと、彼女の妹でありアスランがザフトから2度目の脱走をしたときに連れ去ったメイリン・ホークであった。
そしてアスラン脱走の折、強く心を痛めていたのがルナマリア・ホークである。
その彼女の悲しみを最も近いところで見たシンには、仮にも一時はともに戦ったアスランの一言を捨て置けなかったのである。

 

「やっぱり俺はアンタを信用できない!アンタが一緒にいる連中も同じだ!」
「シン!!!」

 

ビームソードを携えたエルアインスの右腕を左足で蹴り上げ、そのバランスを崩させるとシンはそれに続けてエルアインスの顔面をビルトシュバインの右腕で殴り飛ばした。

 

「クソ!なら…無理にでも連れて行くぞ!」

 

威嚇のため、エルアインスがその両肩のビームキャノンを発射する。
シンは機体をとっさに左に逸らさせて直撃は避けたが、そのエネルギーの大きさに吹き飛ばされてしまった。
だがシンの闘志は未だ折れなかった。機体のバランスを整えなおし、ビームソードを再び手にさせる。

 

「そう簡単にいくと思うなよ!やれるならやってみろ!」
「そうさせてもらおう」
「「何!?」」

 

通信にいきなり割り込んだ女の声に2人が同時に反応して驚きの声をあげた。

 

「エキドナか!どういうことだ!?」

 

アスランの問いに返答はない。しかし次の瞬間、ビルトシュバインに爆発が起こり、力なく機体が大地への落下を始める。
アスランが後ろを見やると、そこには肩に背負ったリニアカノンから薄い煙を上げながら高台にそびえ立つランドグリーズの姿があった。
他方、ビルトシュバインはとっさに腕で胸部を庇ってコックピット付近への直撃を避けることができたものの、リニアカノンによる精密射撃はビルトシュバインのコックピットに大きな衝撃を与えていた。

 

「貴様、いったい何をする!」
「手助けをしてやったのにご挨拶だな。さっさと目的を達して他の機体の相手をしろ」

 

エキドナが指し示した方向では、オウカのエルアインスを鹵獲すべく、ヒュッケバインMK―供▲咼襯肇薀廛拭次▲イのゲシュペンスト、グルンガストらがエルアインスを取り囲もうとしていた。

 

「余計なことを…だがまあいい。了解した」

 

アスランは自分たちが置かれた状況を即座に認識し、冷静さを取り戻すと、その視線をシンのビルトシュバインへ向ける。
そしてシンを回収すべく大地に降り立とうとしたその時、エメラルド色をした数条の矢がエルアインスのすぐ先を通り抜けた。
光の矢を放った天使、アンジュルグはそのままシンのビルトシュバインを抱え上げその場を離脱しようとする。
突然の攻撃に瞬間的に姿を止めたエルアインスであったが、岩陰からアスランのエルアインスとは異なる赤い機体が姿を現した。

 

「何!?」
「この距離、取ったぞ!!」

 

キョウスケが言い終えるのとほぼ同時に、赤い機体の右腕に備え付けられた巨大な杭打ち機がエルアインスの右腕を貫いた。
右腕は小さな爆発を起しながら肩のビームキャノンもろとも姿を消したが、キョウスケが狙ったのは腕ではない。
コックピット直撃を狙い、ボディブローを入れる要領でリボルビングステークを突き出したのであったが、アスランもシンと同様、人並みはずれた反応速度でなんとか機体を逸らして直撃を避けたのであった。
そしてアルトアイゼンはそのままエルアインスの前に立ち塞がり、左腕のマシンキャノンでエルアインスを牽制する。

 

「そうそうお前たちの思い通りに行くと思うな」
「連邦め!邪魔をするな!」

 

アスランの愛機であるジャスティスであれば、マシンキャノンレベルの実弾を避けるまでもなかったが、エルアインスを駆る今はそういうわけにもいかない。
機体を上昇させてマシンキャノンを回避して、態勢を立て直し、携行兵装であるレールガンの引鉄を引く。
それらはアルトアイゼンに命中することはなかったが、一瞬だけアルトアイゼンの勢いを殺すことには成功していた。

 

「悪いが貴様達には容赦しない!」

 

動きを止めたアルトアイゼンにターゲットを定めて、アスランは残された左肩のビームキャノンの引鉄を引いた。
肩から再び放たれたエネルギーの奔流はアルトアイゼンを呑み込み、大きな爆発音とともに真っ黒な煙があがる。
討ち取った、そう思ってオウカのエルアインスの方にアスランは目を向けた。だが彼の思惑通りにことは運ばない。
赤い炎がゆらゆらと揺れ、黒い煙が天に向け立ち上っていたが、それらは間もなく切り裂かれてしまう。
頭部のヒートホーンで炎を切り裂くかのように、赤い刃を前面に向けながら再びアルトアイゼンがエルアインスに向けて突撃してきた。
アスランは無意識に危険を察知して機体を後方に下げつつ、足止めのためのレールガンをアルトアイゼンに向けて撃ち続けた。
しかしアルトアイゼンはそれを避けることなく、逆に速度を増しながらアスランの下へと迫り来る。

 

「馬鹿な!直撃だぞ!?」
「頑丈なのが取り柄でな。これだけのベアリング弾、抜けられると思うなよ!!」

 

背部のスラスターを全開にしてアルトアイゼンがエルアインスとの距離を瞬時に詰め、アルトアイゼンの両肩にある扉が開くのと同時に、大剣の名を冠した特殊なチタンの刃が一斉にエルアインスに振り注いだ。
無数の刃はエルアインスの頭部メインカメラ、左腕、両足を次々と傷つけていく。
ベアリング弾がグリーンのメインカメラのバイザーに1つ、2つとヒビを入れていき、やがてバイザーを貫き、カメラをも打ち貫いていく。
そして、さらに続く弾が頭部のより奥へと突き刺さっていき、やがて頭部は吹き飛んだ。
両の足ももぎ取れることこそ免れたものの、確実に動きが鈍くなったことはアスランでなくても明白であった。
アスランにとって幸いであったのはクレイモアは前面から降り注いだもので、背部のテスラドライブが無事だったことである。
機体をさらに上昇させてアルトアイゼンの凄まじい近距離攻撃の範囲から離脱すると、ちょうどアンジュルグと交戦中であったエキドナのランドグリーズから通信が入った。

 

「アスラン・ザラ、目的は達した。撤退するぞ」
「…了解した、撤退する。シン、今度こそお前を助け出してやるからな…ASRS展開…ブースト!」

 

エルアインスはアルトアイゼンらに背を向けると、ブースト付きの背部テスラ・ドライブを起動させ、あっという間に戦域を離脱してしまった。
ブースト付きのテスラ・ドライブという、この新西暦の世界には未だない技術で撤退していった、この世界に存在するはずのない機体にキョウスケの心中は穏やかなものではなかったが、そこにラミアから通信が入る。

 

「キョウスケ中尉、敵全機離脱致しましたです」
「ああ、そのようだな。シンはどうした?」
「はい、アスカ様はハガネに回収されたようでございますです」
「…あいつはあの敵機のパイロットを知っていたな」
「はい、そのようでございましてです」
「どうやら奴から聞かなければならないことがあるようだな…」

 

(ラトゥーニがもう1機のアルブレードもどきのパイロットを知っていたことはスクール絡みだからともかく、マオ社のテストパイロットだというシンが正体不明の機体のパイロットと知り合いというのは引っ掛かるな…
 イングラムやハンスのように腹にイチモツを隠し持っているとは思えんがあのアルブレードの謎を解く鍵はシンにあるのかもしれんな…)

 

だがキョウスケの目論見は結果として外れてしまうことになる。
というのも、戦闘で受けた衝撃によりシンはハガネに回収されたものの、その意識が失われたままで、事情聴取をすることが叶わなかったからである。
そして、戦闘が終了し、ハガネのブリッジでもアインストに続く敵のアンノウン、エルアインスの正体及び、そのパイロットを知っていたシンのことが議題に上がっていた。

 

「…シン・アスカが敵のパイロットを知っている、そういうことか?カイ少佐」

 

艦長席に深く腰掛け、吸ったパイプの煙を吐き出しながらダイテツ・ミナセがカイに問い掛けた。

 

「先ほどの戦闘の開始前の通信は記録されてます。おそらく間違いないかと」
「彼はマオ社のテストパイロットなのだろう?」
「ええ、マオ社に照会したところ資料とともに間違いないとの回答が送られてきました。
 ですが、リョウトやリオは彼のことを知りませんでした。一介のテストパイロットならそれも不思議ではありませんが…」
「どちらにしろシン・アスカが意識を取り戻すのを待って尋問をするしかないようだな…素直に離してくれるといいのだが…」
「すまないが彼の身柄はこちらで預かる」
「「「「!!!」」」」

 

ブリッジにいたダイテツ、カイ、テツヤ、さらに彼らに話に耳を傾けていたエイタの視線が聞き覚えのある声、強い決意とともに一抹の寂しさを同時に宿した渋みのある声のする方向に目をやった。
そこには、紫色をした少々クセっ毛となった髪で顔面の半分近くを隠し、腕を組み壁にもたれながらダイテツらを見やる男の姿があった。

 

「ギリアム!」
「諜報部が動く、ということなのか。少佐?」

 

一体いつのまにブリッジに入ってきたのかということは聞いてはならない、と暗黙のうちに認識している彼らはいきなり本題について問いだそうとする。

 

「…すみませんが今はそれに答えることはできません」
「お前の方であいつや今回のアルブレードの正体について見当はついているのか?」
「すまない、それも答えることはできない。…だが彼の身柄の安全は私が責任を持って保障する」
「…ギリアム、シンを頼んだぞ」
「ああ」

 

ギリアム・イエーガーが動く、という事実が意味するところがどのようなものなのかを彼らは知っている。
存在するはずがないアルブレード、そのパイロットを知っていたシン・アスカ、それらを調べるギリアムの存在。
情勢が単なるDC残党の掃討では終わらないであろうことをカイ達が認識するのには既に十分な資料がそろっていた。