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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第13話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:42:46

第13話「動き出した影、監察者の襲来」

 

ハガネがエキドナ、オウカそしてアスランらの襲撃を撃退してからほぼ間を置かず、ハガネからはギリアム及びシンを乗せた輸送機が飛び立って行った。
輸送機の姿は段々と小さくなっていき、やがて白い雲の中に吸い込まれるかのように姿を消す。
その様をキョウスケ、ブリット、ラミアらはそれぞれの思惑を胸に抱きながら見送っていた。
そして、輸送機の姿が見えなくなるとブリットはその場を去ろうとしたキョウスケのほうを向く。

 

「キョウスケ中尉、どうしてシンがギリアム少佐に連れて行かれたりするんですか!?」
「それは俺にもわからん。だが諜報部が動くということの意味くらいはわかるはずだ」
「ですが!シンが敵のスパイだとは思えませんよ!」
「お前のいいたいこともわからなくはない。イングラムのように腹の中で何を企むタイプじゃあない。だが…」
「だが、なんなんですか?」
「奴の素性や行動にいくつかの謎があったことは否定できん」
「アルブレードもどきのパイロットのことですか?だとしたら偶然昔の知り合いだったとか、幼馴染だったってことだって…」
「いや、他にも奴には不明な点がある。まずはあいつが乗っていた機体だ。テスラ・ドライブを後付けしたビルトシュバインのテストパイロットなら、テスラ・ドライブの後付けを含めたゲシュペンスト強化プランを提案したカイ少佐やギリアム少佐がやるはずだ。
 それにそもそもゲシュペンストではなくビルトシュバインにテスラ・ドライブを搭載したにも腑に落ちん」
「ビルトシュバインはゲシュペンストの系列機じゃないですか。それにカイ少佐は新生教導隊の結成にかかりっきりでしたし、ギリアム少佐は職務上、機体のテストを行なう暇がなかったのかも…」
「イルム中尉によるとシンはリン社長のことを聞かれた時に、社長のことを知らないような様子だったらしい。
 それに俺が一番引っ掛かっているのはスクールのことを聞かされたときのあいつの反応だ」
「どういうことです?」
「あいつの反応はまるでスクールで行なわれていたことを知っていたことを前提としたような怒り方をしていた。
 しかしシンはスクールのことは知らないようだったし、ラトゥーニやアラド・バランガはシンのことを知らなかった。
 となると、考えられるところとしては、スクールとは別に人体実験や強化兵士育成の類をやっていた機関があり、それをシン・アスカは知っている、ということだ」
「アザラシのつまり、単なる民間のテストパイロットではない、ということですか」
「アザラシではなく『とど』だが、要はそういうことだ」

 

他方でラミアはブリットとキョウスケのやりとりを黙って聞きながら、独自にシンの素性を推測せんとしていた。

 

(さすがはベーオウルフだな。しかし我々の世界にそのような機関は我々以外に聞いたことはない。
 と、なると奴自身も我々同様、別の世界から来たということか…?いや、それにしては行動が目立ちすぎる…
 だがいきなり諜報部の人間が動く、というのは気になるな。それにギリアム・イエーガーという人物、姿を見ることはできなかったが、我々の世界では確認できなかった名前だ。姿を確認すべきだったな…)

 

「ラミア、お前は何かシンから聞いていないのか?」
「え?!」

 

思慮にふけっていたところに突然話を振られて驚いたあまりに、二つの神の造形が男の視線を釘付けるような曲線を描いて揺れるのと同時に、ラミアから素っ頓狂な声が飛び出した。

 

「い、いえ。アスカ様はあまりご自分のことをお話にならされたりはしませんものでしたので私も…」
「そうか…」
(危なかったな。しかし我ながら、いい加減この言葉遣いはどうにかならんものか…)

 

ラミア自身もシンの素性は気になっていた。
その理由については彼女自身、まだ明確な答えを作り出すことはかなわなかったものの、純粋に任務の遂行上気になるというものでもなかった。
そして彼女が浮かべる表情はやや不安そうなものであったらしく、それにブリットが気が付いた。

 

「そんな心配そうな顔をしなくても大丈夫ですよ、ラミアさん。
 俺も色々言いましたけど、ギリアム少佐が大丈夫と言ったらしいならシンはきっと大丈夫です」
「わ、私そんな表情をしちゃいまくったりしなかったりしました?」
「ええ、心配ですって顔に書いてありましたよ」
「書いてあるのでございますか!?」

 

ラミアは驚きの声を上げるとともに、文字通り顔に何か書いてないかを確かめるべく掌で頬や目の周辺に触れる。
小学生でも冗談とわかるところを真に受けて顔の状態を確かめるその様は、周囲に子供っぽさを示してしまうものであるが、ラミアの場合はそれでは終わらない。
ラミアが腕を動かすたび、実―漢達の夢が、ロマンが、希望が、欲望が―実がパンパンに詰まりつつもその形はこの世に二つと誕生することなど奇跡以外の何ものでもない、二つのマスクメロンが小さく震える。
同時に、その少し下では引き締まったウエスト及び胴体のマスクメロンに勝るとも劣らぬ熟し方をして男の食欲を複数の意味で激しく刺激するようなヒップが、レオタードのようなラミアの私服の上からでもはっきりと分かるほどにその存在を主張し、この体の主の女としての魅力を、色を、本人の意思に関係なく撒き散らし続けているのである。
仕草の子供っぽさと対称的な神の手による最高傑作を思わせる体は、色への免疫が世間通常の男子に比べて弱いブリットに対して、いかなる影響を与えることとなるのかは論ずることの方が愚かであろう。
真意を知りながらもあえて発する問い掛け。人、それを愚問という。

 

「ブルックリン少尉、鼻血が出ておりますわよ?」

 

一方、所は変わってアースクレイドルではエキドナ以下、オウカ、そしてアスランが帰投していた。
ゲシュペンストやビルトラプターのみならず、グルンガストやR2の相手も同時にこなす羽目になったオウカのエルアインスの損傷は大きく、アースクレイドルに帰還してすぐにオウカは奥の処置室に運び込まれることとなり、アルトアイゼンとアンジュルグの相手をしたアスランの疲労も小さいものではなかった。
そんなアスランを、運び込まれるオウカの様子を見に来ていたアギラが目にして、やって来る。

 

「なかなか派手にやられたようじゃの、アスラン・ザラ」
「いえ…久しぶりの実戦でしたから」
「そうか。この世界の連邦軍、その最強部隊のハガネの実力はどうじゃったかな?」
「さすがに手ごわいものでした。エルアインスに慣れていなかったことを差し引いても油断ならない部隊です」
「フェッフェッフェ、そうかの。じゃがこれからは奴らがわしらの戦う相手なんじゃがやれるかの?」
「それはもちろんです、アギラ様。ですが…奴らの中に俺の元部下がいました」
「ほう、ではお前の世界にいた者がお前以外にもこの世界にいたと言うことか?」

 

疲労とシンのことを考えていたためにアスランは、アギラのしわだらけの皮膚に隠れて細くなった目がギラリと光ったことを見落とした。

 

「はい。しかもあいつはまた誰かに利用されて戦わされていました…今度こそはあいつの目を覚まさせてやらないと…」
「連れ戻すつもりか?」
「それが俺の元上官としてのなすべき務めです」
「そうか。ならばこれからも手助けをしてやろう。しっかりやるんじゃぞ」
「ありがとうございます。助けていただいただけでなく私の都合にまで手を貸して頂けるなんて…」
「わしとて赤い血が流れておる人間じゃぞ。じゃが今はそのためにもメイガスの下でゆっくりと休むがよい。肉体だけでなく、精神的な疲労も小さくはないようじゃからの」
「わかりました。しばらく休ませていただきます」

 

そう言ってアスランはアースクレイドルのアギラらの研究スペースへと歩き出した。

 

「『利用されている』か。ふん、哀れを通り越して滑稽じゃの」
「だが奴が我々の研究に大きく役立っているのだから文句を言っては罰が当たるというものだぞ」
「そんなこと言われんでもわかっとるわ」

 

アスランの姿が見えなくなってから独り言のようにした呟きに口を挟んできた男の顔を確認することなくアギラが答えた。
アギラの後ろからは1人の少年を後ろに連れた爬虫類のような顔をした男が静かに歩いて来ていた。

 

「しかし面白いことになってきたぞ。どうやら奴の世界から来たのは奴だけではないようじゃ。
 もしかしたら奴を操っていたいい趣味をした輩に会うこともできるかもしれんの。ヒヒヒヒヒ」
「お前にいい趣味をしている、といわれても全く褒め言葉に並んだろうが」
「貴様だってそうじゃろうが。それよりもマシンセル注入の結果はどうなっとるんじゃ?」
「問題ない。今は最終調整に入っているからもう少しすれば実戦でテストをしよう」
「アスラン・ザラはつくづく役に立つモルモットじゃの」
「全くだ。こうまで役立つとは。たまには人助けもしてみるものだな」
「人助け?よく言うわ。フェっフェっフェッフェッフェ」
「ハハハハハハハ…」

 

アースクレイドルの奥深くに、2人のマッドサイエンティストの高らかな笑い声が響き渡る。
そして、それに反応したのか否かは定かでないが、アースクレイドルのさらに奥に横たわる、正義の名を冠し、CEの覇王のしもべとして、その凄まじい力を余すところなく発揮した機体の目が鈍い光を宿していた。

 

「ん…ここは…」

 

目を覚ましたシンの視界に見覚えのある天井が広がっていた。
だがその天井はハガネ内の自室のものではない。その天井は彼が新西暦の世界にやってきてはじめて見たものであった。

 

「目を覚ましたようだな、シン・アスカ」

 

まだ少し意識が朦朧としていたところに背骨の上から下までを駆け抜けるような声が聞こえてきた。

 

「ゼンガー少佐…」
「私もいるぞ、シン」
「レーツェルさん…どうして俺がここに?俺、たしかハガネで…そしたらアスランが…」
「そうだ。最近の君の様子が少し変わってきたと聞いてギリアムが君の動向に注目していた。そんな中で君が顔見知りと思しき敵のパイロットと接触してしまったようなのでな。
 あのままハガネにいたのでは少々厄介なことになりかねなかったので君には申し訳ないが一先ずこちらに戻ってきてもらった」
「あ…すいません…ギリアム少佐は?」
「ギリアムはもう自分の任務に戻ったよ。ところで…今回、君が接触した正体不明の機体に乗っていたパイロットは君の世界での敵か?」
「はい。あいつは…アスラン・ザラは、最初に助けてもらったときに話した、俺がこの世界に来る直前まで戦っていた裏切り者です」
「そうか…ではそのアスランとやらがのっていたアルブレードに似た機体を君は知っているか?」
「いえ。奴が乗っていたのはジャスティスという接近戦用の機体です。どうしてあいつがアルブレードに乗っていたのかはわかりません」
「なるほど…だが今回の一件で1つわかったことがある」
「何です?」
「君以外の人間がこの世界にやって来ているということだ。つまり君やアスラン・ザラ以外の人間もこの世界に来ている可能性があるということだ。仲間、敵、そのどちらかはわからないがな」
「はい…」
「このような言い方をするのは少々気が引けるが、君の話しを聞く限り、我々としては君のいた世界で対立していたというプラントだけではない。オーブやクライン派、連合、そのどれにも賛同することはできない。
 君が属していたというプラントのやり方はやや強引過ぎるきらいがある。連合とやらについてもそうだ。オーブやクライン派とやらについてもそうだ」
「シン・アスカ、どういうことかわかるな?」
「…俺の個人的な復讐に手を貸すことはできない、ということですよね」
「そうだ」

 

レーツェルことエルザム、ゼンガーはDC戦争において地球連邦に反旗を翻した人間である。
それは、現存する秩序・ルールを外部から破壊して新たな秩序を混沌の中から作り上げようとしたことに加担したことを意味している。
そしてそれがいかに重大なことであるかは佐官の地位を持っている彼らが知らぬはずがない。
にも拘らず彼らがDCに属した理由。
それは異星人による侵略には、現存の連邦を内部から改革していたのでは間に合わないのだということを理解していたからである。
著しい緊急性、本当に已むにやまれぬ事態に至ったことを認識していたからこそ、その最終手段として無法の極みともいうべき武装蜂起に至ったのである。
DC総帥ビアン・ゾルダークも、DCによる武装蜂起に至る前にEOTの解析及びその情報の提供を連邦に行なうことによって、予見した異星人の侵略に対しての備えをするように連邦政府に促してきたのである。
DCの側に彼らがついた理由には、ビアン・ゾルダークと連邦との間の一連の経緯を理解したということもある。
エアロゲイターを辛くも撃退できたものの、この世界は次なる異星人の侵略に備えなければならないのだ。
そんな彼らとしては過激な手段によりなおも人類同士で刃を向けあう連合やプラントを支持することは難しいし、武装蜂起や戦闘への介入など多くの軍事行動に疑問があるオーブ・クライン派を支持することもできない。
故にシンがプラント軍つまりザフトの生き残りとしてオーブ・クライン派と戦うことを手助けすることはできないのである。

 

「…少なくともこの世界が置かれてる状況くらい俺にだってわかりますよ」
「そうか。ならばお前はこの後どうするつもりだ?」
「DCと戦うつもりです。戦争が続いて関係ない人達が巻き込まれるのはやっぱり放っておきたくないです。それに出来る限りハガネのみんなの手助けもしたいと思ってます。仲間、だと思うんですよ」
「復讐を捨てるつもりか?」
「………………決着は俺の手でつけます。これは俺個人の問題ですから」
「シン、私も大切な家族や仲間を奪った相手を許すなど滅多にあるものだとは思っていない。かく言う私も君と同じで、とあるテロリストに妻を殺された…」
「!?」
「エルザム!?お前…」
「いいんだゼンガー。私にはシンの気持ちも痛いほどよくわかる…」

 

レーツェルは静かにゴーグルを外してイスに腰掛けた。
ゴーグルを外したこと、それは今ここにいるのが謎の美食家レーツェル・ファインシュメッカーではなく、エルザム・V・ブランシュタインであることを意味していることにシンは気付いていない。
ほんの少し、数秒程度、閉じていた目が開き、エルザムはまっすぐにシンの目を見る。
美しくなびく金色の髪の奥に見える瞳が深い悲しみを帯びていることが、言葉がなくとも十分に伝わってくるものであった。
そして一呼吸置いた後、エルザムの口からエルピス事件の悲劇が語られた。

 

「そんなことが…」
「シン、私は誰かを憎むな、怒る等ということを言うつもりはない。怒りや憎悪が力となること、それらにより目覚める力があることは1つの事実だ…
 しかし、君が真に大切な人の仇を討とうと願うならば怒りや憎しみだけに囚われてはならない。その仇が強敵であればそれはなお更だ。
 怒りや憎しみは力になると同時に刃を鈍らせることもある、いわば諸刃の剣だからな…」
「…わかりました」

 

CEの世界で彼は様々なものを失ってきた。両親と妹、守ると約束した女性、苦楽を共にして戦ってきた仲間達…
20歳前の青年が味わうにはあまりに大きな悲しみをシン・アスカは味わってきていた。
そしてシンから大切なものを奪い、悲しみを味あわせてきたのは、彼自身の無力とCEが覇王の剣の一振りたる自由の名を冠する機体及びそのパイロット、キラ・ヤマトである。
さらに言えば、無力ではあったものの、大切な者達の仇を討たんとしたシンを阻んだのが、もう一振りの剣たるジャスティスとアスラン・ザラに他ならない。
それらを踏まえればキラ・ヤマト、アスラン・ザラとの因縁は、シン・アスカにとって埋められることのないほど深いものであった。

 

「そしてもう1つ。君がその仇を討てば、君はその仇の仲間から仇だとして憎まれ、狙われ続けるかもしれん。その覚悟があるか?」
「…………これでも元軍人です。覚悟はできています」
「シンよ、お前は我らと同じく修羅の道を行くというのか?」
「はい。俺は奴らを許せないから奴らを討つんです。…俺の我侭だってことはわかってます。でも…それでも俺は奴らを…!」
「そうか。ならばもはや止めまい。早く体を本調子にするがいい、俺が稽古を付けてやる」
「ありがとうございます!」
「そうだったな、ついシンが怪我人だということを忘れていたな。よし、今日はとある町の中華料理店のシェフから直々に学んだ炒飯を馳走しよう」

 

こうしてまたしばらくレーツェルやゼンガーらとともに戦うことになったシンであったが、来るべきときは予兆なくやってくるものである。
ある日、レーツェルらの潜伏している秘密基地にギリアムから緊急だという通信が入ってきた。
ギリアム・イエーガーが「緊急」とまで評する事態の意をレーツェルは察するが、その事態は彼らの想像以上のものであったことは言うまでもなかった。

 

「突然すまない。悪い知らせが二つある」

 

通信モニター越しの壁際王子の表情はいつになく深刻であり、しかもかなりの疲労の色を帯びているのが容易に分かるほどであった。

 

「まず、これを見てくれ」

 

ギリアムがそう言った後に流れてきたのはシロガネの部隊が敵の部隊と交戦している映像であったが、その映像の最後に現れたDCの機体の姿とそこから発せられた声はその場にいた全員に大きな衝撃を与えることとなった。
突然現れたDCのものと思しき特機。だが、その最大の特徴はアルトアイゼンのものよりも太く雄雄しい赤い角に、白いボディでもない。
咆哮とともに繰り出した巨大な刃、口上、太刀筋、そのどれもがその特機のパイロットがすぐ横にいる男、ゼンガー・ゾンボルトであることを告げていた。

 

「ギリアム!これはどういうことだ!?」
「見ての通り、としかいいようがない。つい先日、降下してきたシロガネの部隊がある特機と交戦した。この特機の攻撃によりジガンスクードだけでなくシロガネ自体も大きなダメージを負う結果となった」
「それは見ていればわかる。なぜあのような機体が…いやあのパイロットが存在しているのだ!?ゼンガーは我々とずっと一緒に行動していたのだぞ!?」
「…確証はない。だがもしかしたら奴らが「影」なのかもしれん。そうとなれば大変なことになる…」
「!?ならば我らも…」
「いや、もう1つ悪い知らせが残っている。異星人にホワイトスターが占拠された」
「「「!!!!!!」」」

 

さらなる衝撃がレーツェル、ゼンガー、シンを襲った。

 

「馬鹿な!?ホワイトスターの駐留艦隊は何を…」
「艦隊はたった4機の異星人…『インスペクター』の機体によって全滅した。ヒリュウ改に私、ヴィレッタ隊長にリューネも脱出するのが手一杯だった」
「なんと…」
「ギリアムよ、俺達はどうすればいい?お前のことだ、今後の手を考えてはあるんだろう?」
「奴らは我々地球人の技術や機体を利用しようとしていた。となれば、ホワイトスターという拠点を手に入れた彼らが次に取る手は、我々の世界でも強力な機体がある施設の制圧と機体の奪取…」
「…ならば我々はテスラ研に行けばいいのだな?」
「ああ。あそこにも防衛戦力はあるだろうが、中途半端な戦力ではインスペクターの機体に立ち向かうのは至難の業だからな。
 俺はヒリュウとともにマオ社の方へ行く。エルザム、ゼンガー、シン、決して油断するなよ」

 

通信が切れ、訪れたのは沈黙。だが、それを破ったのはレーツェルでもゼンガーでもなかった。

 

「異星人…インスペクター…」
「そうだ、来るべきときが来たのだろう」
「だが注意すべきはそれだけではない。ギリアムのいう『影』と謎の特機、ゼンガーと酷似した動きをするパイロット…
 シン、我らはこれから我らの真の敵と戦うこととなる…手を貸してくれるか?」
「もちろんです!異星人をほうっておけばどうなるかくらい俺だってわかります」
「そうか。素直に礼を言わせてもらおう、我らとしても君の力をあてにしたいのは事実だ」
「シン・アスカ、敵は異星人…つまり我らはこの地球(ほし)の存亡をかけて戦うこととなる。戦いの激しさと厳しさはDCとの戦いとは比べ物にならないものとなるがわかっているな?」
「ハイ!」
「よし、ならば再び会えるときを楽しみにしているぞ」
「え?どういうことですか?」
「エルザム、俺はギリアムの言う『影』とやらを探ってみる。どうしてやつらの中に俺に似た者がいるのかはやはり俺自身の手で調べたいのでな。
 シン、テスラ研には俺の師がいる。あてにしている、頼んだぞ」
「そうか、わかった。ならば再び生きて会おう、我が友よ!」
「応!」

 

かくしてシンはレーツェルとともにテスラ・ライヒ研究所、通称テスラ研へ行くべくアメリカへ向かうこととなる。
しかし、彼を待ち受けているのは異星人、インスペクターだけではなかった。
インスペクターの襲来とともに新西暦の世界の状況の変化は劇的なものとなってゆく。