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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第15話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:44:04

第15話「動き出す覇王」

 

「ああ!もう!何なんだよ!あの人は!?」

 

ガーリオンのコックピットの中に怒鳴り声が響いた。
今、シンの乗るガーリオントロンベは単機で北米の空を猛スピードで進んでいる。
どうしてシンがそんなことをしているのかというと、話は少しややこしくなる。
スレイのカリオンを輸送機へ運び、後は彼女らに任せるようにとレーツェル及びプロジェクトTDチーフだというツグミ・タカクラから挨拶を交す間もなく言われたため、
異星人インスペクター、しかもその指揮官機との戦闘で疲労していたシンは、与えられていた部屋で愛妹の肩身である携帯電話を一息入れていた。
シンはそのまましばしの眠りについていたのであったが、そこで彼はある夢を見た。
それはあの悪夢の日の出来事。
オーブ解放作戦のために連合軍がオーブに侵攻してきたときに、戦火を逃れるためにシンの家族はシェルターへの避難をしようとしていた。
そして彼らの避難路の上空にそのMSはいた。当時のザフト軍の新型MS、ZGMF−X10Aフリーダム。
家族がいた方向で大きな爆発音がして、そこへ戻ったシンの目に入ったのは…
望まぬ悲劇と再会する前に彼の意識は現実世界へと引き戻された。輸送機の艦内に大きなアラート音が鳴り響いていたからである。
その直後、レーツェルから通信が入り、輸送機から発進したというスレイ・プレスティ及びアイビス・ダグラスを連れ戻すために彼は発進したのであった。
そして、何か嫌なことが起きるのではないかという予感がしていた。
今になって悪夢の日の夢を見たことに何か意味があるのではないか。
根拠は何一つないが、嫌な予感がシンの体の中を駆け巡っていた。
やがてレーダーに示された2機のカリオンは動きを止める。
しかし、ガーリオンのコックピットの計器は、2機による戦闘が始まってしまったことを示し始めた。
それを把握したシンはそこに急行したのであったが、到着した頃にはその戦闘は終了していた。
目の前で白いカリオンが爆発を起こし、大地へと力なく落下していったのである。

 

「あんた!何をやってるんだ!あんた達は仲間じゃなかったのかよ!?」
「…黒き竜巻の連れか。案ずるな。アイビスは脱出している」
「スレイ…あなた…」

 

輸送機からの通信が入ってきた。どうやら、やや遅れてこちらへ到着したようであった。

 

「タカクラチーフか。結果は見ての通りだ。これでαプロトんは誰が相応しいかはっきりしたな」
「……」
「よかった…スレイ…TDに戻って…くれるんだね……」
「アンタ、撃墜されたのに何を…!?」
「撃墜…されるのは…慣れてるからね…打撲…ぐらいはしたけど…大丈夫……だ…よ」
「………」
「スレイ…これで…気が済んだでしょ…一緒に……帰ろうよ…あたし達はさ…プロジェクトTDの仲間…なんだから…」
「アイビスさん…そんなにスレイさんのことを…」
「やっぱり…あたし…あんたにかなわなかったけど……いつか…絶対に…星の海を……飛んで見せる…よ…あんたと一緒に…だからさ………一緒に帰ろうよ…」
「!?」

 

アイビスの言葉はシンに少し、ザフトにいた頃の仲間のことを思い出させていた。
シンにも、時にはぶつかったりしながらも、意思を通じ合い、ともに戦ってきた仲間がいた。
そんな仲間達も今はいない。また異世界に来ては無事かどうかを確かめる術はない。
生きているのかわからない者もいるし、フリーダムやジャスティスに殺された者もいる。
初めてフリーダムがザフト・連合の戦闘に介入してきたときに始まり、
自分達の世界での最後の戦いとなったメサイア・レクイエム防衛戦に至るまでの間、シンは何人もの仲間を失った。
少なくとも自分がジャスティスとの交戦を始める前に、母艦であるミネルバはジャスティスの攻撃により撃沈されていたし、
大切な人達の仇であるキラ・ヤマトを討つことを譲ったレイ・ザ・バレルの消息も不明である。
あのままザフトとともに敗れ去り、テロリストと仇達に屈服させられることに比べればマシだが、
自分だけ異世界に飛ばされてムザムザと生き延び、出会ってしまった宿敵、裏切り者アスラン・ザラに敗れた自分が酷く惨めに思えた。

 

「スレイ…君の方こそこれで判っただろう。何故、フィリオが君ではなくアイビスを選んだかを。
 ナンバー01であることのみに固執する君とさらなるゴールを目指す彼女…どちらが星の海を往くに相応しい者かは一目瞭然だ」
「黙れ!」
「スレイ…!」
「どうやら、あくまでも私の存在を認めない気だな……ならば私は私のやり方で私の力を証明するまでだ!」
「待って!スレイ!」
「アイビス!今日からお前は私の敵だ!次に会った時には生命を掛けての勝負だ!それまでに腕を上げておけ!」
「ちょっと待てよ!どこに行くんだ!?」
「…貴様には関係ないことだ。………だが兄様をいたずらに悲しませるようなことはしない」

 

シンに少しばかりは感謝の意を示して、スレイのカリオンの姿はみるみるうちに小さくなり、視界から消えていった。
救助したアイビスを、やがて到着した輸送機に連れて行き、輸送機がその場を後にしようとしたその時、再び輸送機内に警報が鳴り響いた。
ガーリオントロンベの計器も警報の原因を端的に示している。レーダーに映る十機ほどの所属不明機群。
間もなくそれらは視界に入ってきて、出撃したヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戞▲哀襯鵐スト弐式がガーリオントロンベの下にやって来た。

 

「シン、奴らは第一波を囮とすることが多い。油断するなよ!」
「本命はあとから来るってことですね!?」
「そうだ。では行くぞ!」
「マキシブラスター、いきます!」

 

先陣を切ったのはグルンガスト弐式であった。弐式が両腕を開き、その巨体の重心を落とす。
胸部の星の形をした装甲表面が、エネルギーの収束により輝き出し、やがて収束してゆく。
そして弐式がさらに重心を落とすと同時に、胸部の装甲と同じ星型の光線がこちらに向かってくるガーリオンや量産型ヒュッケバイン、シュヴェールトのいる上空に向けて放たれた。
バイオロイド兵が操るインスペクターの部隊の各機は放たれたマキシブラスターを散開して回避しようとするが、
何機かの量産型ヒュッケバインとシュヴェールトはそれが敵わずに超闘士の放ったエネルギーに呑み込まれ、爆発と共に姿を消した。

 

「シン、仕掛けるぞ!」

 

感情を持たない、戦闘のためだけに存在するバイオロイド兵は僚機の撃墜を確認しても何一つ動じることはない。
与えられた指令を忠実に実行するべく散開してなおも輸送機へと向かってくる。
だが、レーツェルとシンは敵機が散開することは弐式の両腕が開かれた時からわかりきっている。
回避行動に移った折にバランスを崩したガーリオンやヒュッケバインに出来た隙は、黒き竜巻にとっては迂闊以外の何物でもなかった。

 

「ここで私に出会って不幸を呪うがいい。撃て、トロンベよ!」

 

ガーリオンらが体勢を整えなおそうとしたところに向けて、既にヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戮魯屐璽好謄奪疋薀ぅ侫襪鮃修┐討い襦
ライフルの狙いが定まった瞬間に静かに引鉄が引かれ、放たれた弾丸が寸分違わずにコックピットを貫き、小さな爆発がコックピット付近で起きる。
そしてすぐにその爆発に続いて、機体全体をさらなる爆発が覆っていった。
だがレーツェルは機体の爆発を確認することなく、次の機体を、またさらに次の機体を狙撃していく。
残ったガーリオンと量産型ヒュッケバインは迎撃に向かってきたガーリオントロンベに向けてレールガンとフォトンライフルを撃ち込むが、
たったの2機では仮にもトロンベの名を持つ機体を止めることは不可能であった。

 

「そんなのに当たってたまるかよ!今度は…こっちの番だ!!」

 

シンは機体を左右に振り、ときにロールさせて攻撃を回避しながら出来る限りスピードを落とさぬように
回避行動完了と同時に手にしたメガビームライフルの引鉄を引く。
発射されたビームは量産型ヒュッケバインの左足を撃ち抜き、ヒュッケバインは落下を始めた。

 

「はああぁぁぁ!!!」

 

そこを狙い、手にしているライフルを腰部にマウントさせると同時にビームソードを構え、ヒュッケバインの頭部に刃を突き立てた。
そしてガーリオントロンベはビームソードを突き立てるとすぐにそれを引き抜き、その場を離れる。
さらにガーリオントロンベを狙ったのであろうレールガンの弾が既に動きを止めていたヒュッケバインに命中するが、
ガーリオントロンベは既にそのヒュッケバインの懐にいた。
そのままコックピット部分にビームソードを突き立てると最後のバイオロイド兵は活動を停止した。

 

「…敵機、全機撃墜しました」
「ああ、そうだな。だが引き続き警戒を怠るな」
「………!?何かが…来ます!」
「レーダーに反応!少佐、何かがこっちに向かってきます!」
「デ、データにはない機体です!」
「は、速い!」
「来たか!?」

 

レーツェルがレーダーに反応があった方向に目を向けると小さな影が、瞬く間に大きくなる。
そしてそれを確認した瞬間、シンに悪寒が走った。
パイロットとして重ねてきた経験に基づく勘であろうか。
反射的に機体を後退させると、突如襲ってきた衝撃にガーリオントロンベが吹き飛ばされた。

 

「ぐあ!!」
「大丈夫か!?」
「クソっ、かすったか!」
「フン、ヴィガジに言われてこんな所まで来たのはいいけど、なんだい。珍しいのはヒュッケバインの新型くらいじゃないか」
「女…?何なんだアンタは!?」
「あたいはアギーハ。インスペクターさ」
「何だって!?」
「あ、そうそう。付け加えておくと裏のリーダーね。ところであんた達、ヴィガジとやらかしてきたらしいけど、さっさとそこの輸送機の中のものを渡してもらおうか?」
「ふざけたことを言うな!そんな簡単にあんた達の思い通りにいくと思うなよ」
「そうだ。残念ながらそちらの要求は丁重に断らせていただこう。あの中にあるのは我が友から託された大切な預かり物だからな」
「ま、そうだろうね。あたしとしても本当にお宝を渡してもらおうとは思っちゃいないさ。でもその前にちょっと遊んであげるよ!まずはそっちの坊やからだよ!!」
「!」

 

アギーハがそういい終えると同時にシルベルヴィントがガーリオントロンベの方を向き、両腕の高周波ブレードが振動を始めた。

 

「!?」
「そらそらそらそらぁぁぁ!!!!」

 

連続して振り下ろされるブレードをシンは2本のビームソードを使って何とか捌き、相手の攻撃を防ぐ。
シルベルヴィントのスピードもパワーも今まで戦ってきた相手の中でもトップクラスのものであり、シンは異星人の『裏のリーダー』という肩書きは伊達ではないことを体感していた。
だが攻撃を繰り出すアギーハの声にはまだまだ余裕が込められており、遊ばれていることは明らかであった。

 

「やるじゃないか坊や。言うだけはあるよ。だけど…次は本気で行くよ!」
「!?」

 

先ほどまでのスピードをさらに早くしてシルベルヴィントが斬撃を繰り出してきた。
今度は2本のビームソードを使っても捌ききることができず、できない分は機体を左右に、または後退させるなどして何とか回避してダメージを防ぐ。
しかし、徐々に捌ききれない斬撃が増加してきて、ガーリオンの頭上から振り下ろされた1つの斬撃はその左腕を綺麗に斬り飛ばした。

 

「しまった!?」
「ほらほら、坊や。どうしたのさ」
「少佐、私が!」
「待てクスハ!弐式では無理だ!君は輸送機を!シン、ここはいったん下がれ!私が囮に…」
「あんたはお呼びじゃないんだよ!」
「!」

 

突如ヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戮諒をシルベルヴィントが振り向くと、
さきほどまでトロンベがいたところを見たこともないくらい太く収束されたビームが抜けていった。

 

「ハッ!いい腕してるじゃないか!けど出鼻は挫いたよ」
「うぬっ!」
「さあ、坊や。覚悟はいいかい?」
「いかん!あのままでは…………何!?どうするつもりだ!?………承知した!!ターゲット、インサイト!撃て、トロンベよ!」

 

さきほどのお返しとばかりに、ヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戮ブーステッドライフルをシルベルヴィントに向けて発射した。
弾丸は猛スピードでガーリオントロンベへ向かうシルベルヴィントの目の前を通り抜け、勢いを殺すが、アギーハの戦意は燃え上がったままである。
シンはその隙になんとか左腕を失ったガーリオントロンベを後退させて距離を確保するものの、
先ほどまでのシルベルヴィントのスピードを以ってすれば心もとないもので、未だ緊張が高まった状態であった。

 

「!?あんたの相手は後でしてやるよ!」
「……それまでお前が無事ならばな」

 

その時、輸送機から1機のアーマードモジュールが飛び出してきた。
白と銀色のボディと大きく張り出した肩部が特徴的であるが、線の細いボディと突き出した頭部は見慣れつつあるガーリオンによく似ている。
元々ガーリオンを含むリオンシリーズを生み出した一人であるフィリオ・プレスティが中心人物となって進められていたプロジェクトTDの機体であるのだから、似ているのも無理はないのであるが、それはシンの知りうるところではなかった。

 

「何だ、あのガーリオンは!?」
「いや、あれはガーリオンではない!そうか…星への翼、羽ばたくか」
「ハハッ!未だ新型を隠してたとはね!けどあたいのシルベルヴィントには追いつけないよ!」
「私だって……やってみせる!」

 

テスラ・ドライブの出力が上昇していくとともに、アステリオンの張り出した肩部を中心ブレイクフィールドが形成されていく。
それを迎撃すべくシルベルヴィントも動こうとするが、そうはさせじとヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戮ライフルを構えて威嚇射撃を行い、動きを抑えていた。

 

「フィールド収束…行けー!」
「ちいっ!」

 

咄嗟に機体を反らせて直撃こそ避けたものの、ブレイクフィールドの激突にシルベルヴィントが大きく弾き飛ばされてアギーハが舌打ちをする。

 

「やった!?」
「浅いんだよ小娘!!」
「アイビス、相手はバランスを崩したわ!すぐにスプリットS!続いてマニューバーRaMVs!」
「く……ううぅ!!」

 

アイビスのうめき声とともに、高速で飛行しているアステリオンが左右に揺れ始めて安定を失い出した。
機体にかかるGの大きさに、コックピットのアイビスは体を押す潰すような圧力に意識を飛ばされまいと必死に葉を食いしばっている。
だが操縦桿を握る彼女の細い腕はGの大きさに今にも引きちぎられそうであった。

 

「!?機体を制御し切れていない!?」
「戦場で何をやってんだい!?そんなので…ぐあ!」

 

突如、背後からシルベルヴィントの機体を連続した大きな衝撃が襲い、今度はアギーハの呻き声があがった。
爆煙の中からは、シルベルヴィントの右ウイング部分のバーニアの噴射口が潰されているのが見て取れる。
その場にいたレーツェルやアイビスたちにとっては誰の仕業か知る由もないが、それを見てシンは動きを止めた。

 

「今だ!我が敵を切り裂け!ファングスラッシャー!!」
「ちいっ!こいつ!!…!?シルベルヴィントが!?」

 

バランスを崩し、さらに動きを制限されたシルベルヴィントに黒い竜巻の牙が襲い掛かってその装甲を刻み、抉っていく。
それに続いて己の中の壁を1つ乗り越えたアイビスと真の力を発揮し始めたアステリオンがシルベルヴィントに襲い掛かっていた。
だが他方で、シンの赤い瞳はある一点を見たまま全く動かなくなっていた。

 

「よ、よくも……!あんた達!この勝負ひとまず預けるよ!」
「…行ったか…シン、どうした!?機体トラブルか、シン!返事をしろ!」

 

シルベルヴィントが戦場から離れていくのを注視しながら、先ほどから完全に動きを止めてしまっているシンのガーリオントロンベにレーツェルは通信を入れる。
しかしシンからは何の反応もない。その原因は今、彼の瞳に映っているものの存在によるものであった。

 

「……なんでアンタがこの世界に……」

 

目の前にいるのは、ここにいるはずのない存在。
しかし、この世界でアスラン・ザラに遭遇したときから内心ではいつか遭遇することを覚悟していた存在…
シン・アスカにこの上ない大きさの楔を打ちこんで戦場に引きずり出し、戦士シン・アスカを生み出す端緒となった存在。
その後、幾度となくさらなる楔を彼に打ち込んで、シンに修羅道を行くことを決意させた存在。
自由の名を冠した機体を操りコズミック・イラにおける最強を不動のものとしている男の名は、キラ・ヤマト。
そしてキラ・ヤマトが駆るのは命を奪わない聖剣だなどと言う者すらいる、コズミック・イラの覇王が生み出した2振りの剣のうちの一振りである、ZGMFX20Aストライクフリーダム。
シンの心の中には、新西暦の世界に来て鎮みつつあった憎悪の炎が再び激しく燃え上がるのと同時に、どこか異世界に来てもなお怨敵と巡り合えたことに喜びが生まれつつあることも確かであり、
ちょうど今日は夢にまで見てしまった敵との遭遇に乙女座のシン・アスカとしてはどこかセンチメンタリズムな運命を感じていた。

 

「いや、そんなことはもういい………会いたかったぞ、フリーダムゥゥゥ!!!!

 

頭の中に何かがはじけたイメージが生まれ、シンは自らの力が高まっていくことをはっきりと感じ取っていた。
今日こそ決着をつけられる、そしてそのための力が体の中からあふれ出してくることに精神が高ぶっていく。
自分の中の何かが叫んでいた、奴を倒せ、と。
機体が損傷していることを気にも留めずビームソードを構えたガーリオントロンベが一直線にストライクフリーダムに向かっていった。

 

「このガーリオン…早い!」

 

ストライクフリーダムのコックピットでキラ・ヤマトが呟いた。
今までこの異世界に来てからそれなりに戦いを重ねてきたが、ストライクフリーダムの改修が進んでいくにつれて、
この異世界での戦闘も自分達の世界におけるのと同じように、敵の命を奪うことなく勝利していくことが容易になっていった。
今回も連邦とDC残党と思しき戦闘が行なわれている反応があったことから、それを止めるためにやってきたが、目の前にいる敵機は一筋縄ではいかない可能性があることをキラは感じていた。

 

「やめてください!僕たちは戦闘をやめてもらいたいだけなんです!」
「知らないな!俺はアンタを倒したいだけだ!フリーダム!!」
「!?フリーダムを知っている!?この動き…君は…」
「そうだよ!俺はインパルスのパイロットだ!!!」

 

動きを止めるべく放ったクスフィアスを潜り抜けて振り下ろされたビームソードを、自らもビームサーベルで受け止めながらキラは、この世界にやってきて初めて遭遇したCEの人間に驚きを隠しえなかった。

 

「でもどうして君が…!」
「そんなことはどうだっていい!あんたを今日こそ倒す!それだけだ!」
「そんな!?とにかく戦闘をやめてくれ!同じ世界から来た僕達が戦う必要なんてないじゃないか!」
「冗談を言うな!アンタにはなくたって俺にはある!みんなの仇…取らせてもらうぞ!」
「やめるんだ!憎しみで戦ったってさらに憎しみが…」
「憎しみを撒き散らしてるアンタが言えたことじゃないだろ!!!」

 

ガーリオントロンベとの距離を置くべく、ビームソードを振り下ろして胴体ががら空きとなったガーリオンに腰部固定兵装のクスフィアスの狙いを定める。

 

「同じ手を喰ってたまるかよ!!」

 

オーブに侵攻したときに交戦したとき、振り下ろしたアロンダイトを白羽取りのように止められ、
力の差を見せ付けるかのように、PS装甲で実弾攻撃の効果が薄いボディにクスフィアスを打つ込まれたことをシンは忘れていない。
シンはビームソードを止めている腕に蹴りを入れさせ、その反動を利用してガーリオンをクスフィアスの射線上から退避させた。

 

「クソっ!」

 

ストライクフリーダムの体勢を整えつつ、キラにしては珍しく思い通りに戦闘が進まないことに苛立ちを覚えていた。
どうやらそれなりの本気を出さなければ、目の前のガーリオンを押さえることはできないらしい。
それが、かつて自分を倒したことがある数少ないパイロットであればなおさらだ。

 

「戦闘を中止してください。わたくしはラクス・クラインです」

 

本気を出す、つまりSEEDを発動させようとした矢先、彼の主による通信が周辺にいた全ての機体に届けられた。
ラクス・クライン。
類稀なる意志の強さと、政治的影響力、戦闘に何度も介入を続けられるほどの私的軍事戦力、独自の一国の半分近くにも及ぶといわれるシンパを持ち、ギルバード・デュランダルがロゴスを滅ぼすまで連合・プラントに別れて戦っていたナチュラルとコーディネーターの争いで疲弊しつつあったCEという乱世を、その圧倒的な力をもって統一せんとした覇王であり、同時に己の決めたことを貫くためには、既存の規範・価値観などには全く囚われずに無法を以って法となし、
戦争の一応の終結をせんとしたギルバード・デュランダル亡き後のCEという混世に君臨せんとした魔王でもある。

 

「わたくしたちはこれ以上の戦闘の継続を望んでおりません。戦闘を中止してください」
「ラクス・クライン?…シンの言っていたテロリストの首魁か!」

 

シンがキラに対して発していた言葉から、彼が戦っているのは以前聞いたシンが自分のいた世界で敵対していた勢力であることを知り、戦いの動向を静かに見守っていたレーツェルが呟いた。
レーツェルにとっては、ここがインスペクターの勢力下になりつつある現在、これ以上の戦闘はできることならば避けたいところであった。
シンから聞いていたことは、穿った考え方をすれば敵対勢力であるが故に多少のバイアスがかかっていることが大いにありえるし、この新西暦の世界が置かれた状況を説明すれば、この場での戦闘は回避できるもしれない、とも思える。

 

(ここはいったん話をしてみるか…)
「聞こえている。私の名はレーツェル・ファインシュメッカーだ。そちらの話を聞こう」

 

一方、主である覇王が戦場へとやってきたことを知り、主を万が一にも戦闘に巻き込まぬよう、襲い掛かってくるインパルスのパイロットを排除すべくキラはSEEDを発動させた。
袈裟斬りにすべく振り下ろされたビームソードを、わずかに機体を後退させて回避すると、キラはストライクフリーダムのウイングを展開させた。
それと同時にウイングの先端から10以上の蒼いプレートが射出される。

 

「何だって!?」

 

自分の攻撃を意図的にギリギリのところで回避したことへの驚きと、ストライクフリーダムのウイングにドラグーンが搭載されていることは身を以って知っているが大気圏内で使うことはできないはずなのに目の前で使われていることへの驚きが混じった声がシンから発せられる。
だがドラグーンはそんなシンの驚きを知るはずもなく、あっという間にシンのガーリオントロンベを包囲してしまった。

 

「くっ!!」

 

急いでその包囲網から逃れようとするが、ドラグーンは先端からビームを放ちながらガーリオンを追いかける。
シンはもともと空間認識能力には恵まれず、ドラグーンへの対応が得意ではない。
それでもなんとか今の状況を切り抜けるべく腰にマウントしておいたメガビームライフルを手に取り、ドラグーンに向けて放つ。
しかしもともと小さいサイズのドラグーンが、大気圏内でも宇宙空間と同じように上下左右に動き回っているところにビームを当てるという芸当は簡単ではなかった。
どのビームも蒼いプレートを呑み込むことなく空を切る。
だがそれだけでなく、ドラグーンから放たれた一筋のビームが残ったガーリオンの右腕を貫いた。

 

「しまった!?」
「今だ!」

 

両腕を失いバランスを崩したガーリオンに、ドラグーンがさらに襲いかかる。
シンも必死に回避行動を取ろうとするのであるが、両腕による姿勢制御がかなわず細かなバランス調整が難しくなっているところにドラグーンを凌げるほどの力はなかった。
さらに右足、そして左足がドラグーンに貫かれたところにキラはガーリオンの首を刎ねるべくビームサーベルを振りかざした。

 

「くそおおおおぉぉぉ…………!!!!!」

 

シンの叫びが北米の空に響き渡る。だがそれとは関係なくストライクフリーダムの腕は振り下ろされていく。

 

(ちくしょう!俺はこいつに勝てないのか…)

 

シンがそう思った瞬間であった。
一陣の熱き風が疾風となってシンの前を吹き抜けた。
首を刎ねられて生じるはずの衝撃が閉じていた目を開けた先にあったのは、ストライクフリーダムのサーベルを受け止めている、太陽の光を反射して輝き、純銀色をした両刃の剣。

 

「よう、エルザムのオッサン!苦戦してるようじゃねえか!」

 

シンは剣の持ち主を見るべく刃の根元の方へと目を向けた。
そこで彼の視界に入ってきたのは自分達の世界のものでも、この世界のものとも思えない、
あえて言うのであればまるで剣と魔法のファンタジーの世界から飛び出してきたようなロボットであった。
だが新西暦の人間はその機体をこう呼ぶ。

 

風の魔装機神サイバスター