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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第24話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:53:16

24話「女の戦い」

アースクレイドルに帰還したアスランは、報告を終えるとすぐさまキラ・ヤマト達が身を置いているイーグレット・フェフのラボにやってきていた。
そんなアスランを待っていたのはイーグレットがいつも傍に置いている1人の少年であった。
だが彼には少年特有の幼さや無邪気さなどのようなものは一切備えていない。常に静かで、どことなく不気味で、正体を掴み難い雰囲気と、アスランそっくりの声をしている。

「やあアスラン。どうしたんだい?」
「ウルズか。いや、キラ達はどうしたのかと思ってな」
「ああ、君のお友達なら今は研究用のシミュレータでスリサズと模擬戦の真っ最中だよ」
「そ、そうか。ありがとう」

そう言ってアスランはその足を、研究用のシミュレーターがある機体開発用格納庫へと向けた。
規則正しく配置されたライトが照らす長い通路を、久しぶりに会えるキラ・ヤマトに一秒でも早くあうために、かなりの早足でアスランがゆく。
格納庫の扉を開くと、中央にある巨大なモニターが2機のPT様の機体どうしの戦闘を映している。その脇にはシミュレータから送られてきているデータを映し出し、
記録する装置を眺めながら興味深げに両機の戦闘を見つめるアースクレイドルの現責任者兼クレイドルのマッドサイエンティストその1ことイーグレット・フェフ、
同じくその2ことアギラ・セトメと、現状におけるその4の筆頭候補であるCE世界の覇王ラクス・クラインの姿があった。
そして格納庫にアスランがやってきたことに気付いた覇王は奥底の知れぬ瞳を大きく開いてアスランを手招きする。

「戻ったのですね、アスラン」
「まあな。だがキラがシミュレータとはいえ戦っているとはどういうことだ!?」
「問題はありませんわ。医師によれば傷は既に完治しております。それに戦闘訓練の再開を申し出てくださったのはキラ自身ですのよ。それとも私が信じられないとでも?」
「!…そんなわけじゃない。ただ俺はキラの体が心配なだけだ」
「ならばその心配は無用じゃよ」
「アギラ様!」
「あの小僧、さすがお前の世界で最強だと言われるだけのことはあるわ」
「どういうことですか?」
「お前やオウカですら適応が難しいゲイムシステムに大した訓練もせずにすぐに適応しおったわ。それどころか、既にシステムを使いこなし始めておる」
「キラがゲイムシステムに!?」
「そうだ。私のマシンナリーチルドレンですらまだ適応が不十分だというのにな」
「イーグレット博士!」
「それだけではない。見てみろ、既にスリサズが押され始めている」

そう言ったイーグレットが指差したのは中央の巨大なモニターであった。
その中で刃を交える機体の1つはメタリックブラウンを基調にして随所にエメラルドの増加装甲らしきパーツを輝かせ、頭部から背部に向けて尖った尻尾のようなアンテナ、
そして何よりも特徴的なのが背部の曲線様のフレームに付属する6つの巨大な勾玉である。
連邦軍から強奪したヒュッケバインMK−2にマシンセルを投与して高性能化させたその機体名前は、ベルゲルミルという。

もう1機は背部に大きく展開した何枚ものウィングと、実体弾とエネルギー弾の両方を使い分けることができる巨大な槍オーバーオクスタンランチャーを背負い、頭部の左右にアンテナを広げ、
右腕に巨大な鋼鉄の爪マグナム・ピークを備えている。シャドウミラーがこの世界にもたらした中遠距離戦用の機体であるアシュセイヴァーに、ATX計画の機体や強奪したビルトファルケンの
データを利用して強化改造してカスタマイズしたその機体は各勢力の技術を調和させて継ぎ合わせたものであり、名前もフランス語で「継ぎ接ぎ」を意味するラピエサージュとされている。
ラピエサージュ本来のパイロットとしてはキラ・ヤマトが想定されていたわけではなかったのだが、この機体がラクシズに譲渡されることになった折に
パイロットとなるキラ・ヤマトへの適合を促すために、UUNを排除する代わりにストライクフリーダムにあったドラグーンシステムをも用いて使うソリッドソードブレイカーが加えられている。

「お前…お前えぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

激情に身を任せてトリガーを引き続ける少年の機体が手にしたマシンナリーライフルから連続して弾丸がラピエサージュへと降り注ぐ。
だがシミュレータが機動してからしばらくが経っているものの、ベルゲルミルから放たれた攻撃がラピエサージュに命中したことは一度もない。
むしろラピエサージュによる攻撃が要所要所でベルゲルミルの戦闘能力を奪っているのところを、マシンセルによる回復能力でなんとかベルゲルミルが持ちこたえているというのが実情である。

「もうその攻撃は…!」

降り注ぐ弾丸を潜り抜けてベルゲルミルにラピエサージュが迫っていく。そしてラピエサージュは、上昇して距離を取ろうとするベルゲルミルの真下に潜り込むとそこから一気に機体を上昇させた。

「効かないよ!」

その速度に対応しきれないベルゲルミルは真下から迫ってくるラピエサージュになんとかライフルを向ける。だが照準を合わせた頃にはライフルはマグナム・ピークに貫かれ、爆発していた。
とはいえ、さすがのスリサズとベルゲルミルもやられているばかりではいられない。爆発の一瞬前にライフルを離して再び距離を取ったベルゲルミルは最後の反撃に出ようとしていた。
ベルゲルミルは背部の勾玉が備え付けられたフレームを両手に取ってそれらを、自身の機体を囲むように接続させる。

「よくも僕を小馬鹿にしてくれたね!その機体、バラバラにしてあげるよ!!」

シミュレータによる模擬戦であることも忘れて熱くなっているスリサズが機体の破壊予告を言い放つと、円状のフレームが高速で回転を始める。
やがて勾玉のエメラルドの輝きを纏ったように光を放つフレームから勾玉がパージされ、ベルゲルミルの周囲で浮遊を始めた。

「さあ、終わりだよ。ハハハハ!アーッハッハッハッハ!」

ベルゲルミルがマグナム・ピークを構えるラピエサージュを指差すと、その腕の動きに対応して6つの勾玉がエメラルドの弾丸となって一斉にラピエサージュに向けて襲い掛かっていく。
とっさにキラはラピエサージュを後退させて勾玉を振り切ろうとするが、勾玉は上下左右に機体を振って逃れようとするラピエサージュをどこまでも追い続ける。
そこでラピエサージュは勾玉のうちの1つを切り裂くべく急速に振り返り、その鋼鉄の爪を振り下ろした。だがその爪は振り下ろされたまま空を切ると、その隙に他の勾玉がラピエサージュに襲い掛かる。

「くっ!」

キラはゲイムシステムが知らせる攻撃予測に従い機体を急降下させて、なんとか連続して迫り来る勾玉の直撃を回避すると、追撃してくる勾玉を静かに見定めた。
そして深く息を吸って意識を集中させると同時に、ラピエサージュの背部ウィングに搭載された12の飛行砲台が次々と射出される。
かつて覇王とその軍勢ラクシズが保有する機動兵器数では遥かに他の軍勢に比べて少なかったものの、終局的にはほぼ無傷の完全圧倒勝利を得ることが出来たのは、
覇王直々の指令に基づき盗み取った上でスーパーコーディネーター用に大幅なカスタマイズを行った、フリーダムの後継機であるストライクフリーダムの働きがあったからに他ならない。
改造の末に、そのストライクフリーダムに搭載されていた、戦場に多くの破壊を撒き散らした特殊兵装ドラグーンのシステムを応用したソリッド・ソードブレイカーは、
ラピエサージュを囲む6つの勾玉に向かっていくと即座にその周囲を取り囲んだ。数で勝るソリッド・ソードブレイカーは各個に勾玉へとエネルギー弾を見舞い、又は自らを叩きつけていく。
逃れようとする勾玉も、数で劣るから機動力などで勝る、というわけにもいかず、エネルギー弾をかわしても他の砲台に立ちはだかられ、そこから放たれるエネルギー弾に飲み込まれていった。

全ての勾玉が撃ち落されるまでに要した時間は1分足らず。マシンナリー・ライフル、シックス・スレイブ全てを失ったベルゲルミルを、12の砲台が取り囲み一斉に襲い掛かると、その頭部、
両腕、両足を破壊してベルゲルミルは地上へと大きな音を立てて落下していった。そして機体を再生させようとしたベルゲルミルのコックピットの目の前にマグナム・ピークを突きつけられて模擬戦は終了することとなった。

「キラ…凄いじゃないか…」

誰が見ても鮮やかな戦い方に、2回の大戦を潜り抜けたアスランは心奪われていた。今の戦い方を見ている限り既にキラの体調はすこぶるいいようだし、
前回はレイのペルゼイン・リヒカイトに完敗を喫してしまったが、これからも続いていくであろう、覇王の下での戦いにも幾分かの光が差し込んでいるように思えたアスランであった。

「フェッフェッフェ、さすが『スーパーコーディネーター』の面目躍如じゃのぅ」
「いえ、このくらいであればキラにとっては造作もありませんわ」
「だが…あのスリサズをあそこまでとはな…正直に言えば面白くないな」

顎先に右手をかけて首を捻りながらイーグレットが口を開く。
彼にとってはブーステッド、アドバンスドを超える新たなチルドレンであり、彼の最高傑作であるマシンナリーチルドレンのうちの1人を容易く打ち破られたことは不愉快であった。

「機体のスペック自体は、ほとんど差はありゃせん。要は中身の問題、ゲイムシステムへの適合度の高さの違いが出ただけじゃろうな」
「何を言う。あれがそう易々と適合できるシステムでないことはこの中ではお前が一番よく知ってるだろうが」
「だから中身の問題といったんじゃよ。あのパイロット、一度詳しく調べみたいもんじゃな」
「そんな、キラを実験動物にするような真似をわたくしがさせるとお思いですか?」

覇王の目が細くなってアギラを睨みつける。
それはまるで、自分が一番大事にしている玩具を勝手に触ろうとした相手を未来永劫、末代まで呪い続けてやるぞといわんばかりのものであった。
相手も海千山千、覇王に劣らぬほど人に恨まれるのが仕事といっても過言ではない狂気の科学者アギラ・セトメである。

「ヒッヒッヒ。そんなことわかっておるわ、冗談のきかん奴め」

さすがの覇王の睨みも今回ばかりは笑ってスルーされてしまう。だが、アギラだけでなくイーグレットも、ゲイムシステムへの見事までの適合を可能とするパイロットを意のままに操れる
手駒を持つ覇王に一目置いていることは確かであり、いわばアースクレイドルに集うザ・マッドに新たに加わった覇王がなしていく行動に期待している部分すらあった。

「…それではわたくしは先に失礼させていただきますわ。アスラン、キラをよろしくお願いしますわ」
「あ、ああ。わかった」

その場にいることが大きく気分を害したため、キラ・ヤマトがシミュレータから出てくるのを待つことなく覇王は静かにその場から立ち上がり、格納庫の出口へと向かっていく。

「どこへ行くんじゃ?」
「…戦力の補強ですわ」
「ほう、あの戦いの後にさらに補強とは。なるほど世界征服に手をかけた者には隙がない」
「征服?それは違いますわ。私は世界が憎しみに包まれないように、人々が自由を奪われないように、仕方なく立っただけですもの」

そう言って格納庫の自動扉が閉まり、覇王の姿はアスランやイーグレット達の前から姿を消した。

 

「お〜い、シン!ちょっといいか〜?」
「?」

シンが機体の調整を行うためヒリュウ改の格納庫に来たところに、彼を呼ぶ声が響き渡った。
声がした方向に目を向けるとバンダナを頭に巻いた1人の青年が立っている。
タスク・シングウジ。DC戦争の頃からヒリュウ改に所属し、現在は超大型特機ジガン・スクード・ドゥロ、通称ガンドロのパイロットをしている男であり、
持ち前の明るさと人懐っこさがあることから、シンも気付いたらいつのまにやら仲良くなっていた。
タスクがメカニックを兼ねてもいることからシンにとってはアカデミー、ミネルバ時代の友人であるヨウランやヴィーノを思い出させる人物であり、彼ら同様、この世界におけるシンの悪友のような存在となりつつあった。

「頼まれてたビルガーの修理、終わったぜ。あと塗装もな」
「サンキュー!これであの野郎と同じ色ともオサラバできるぜ」

「あの野郎」というところに連想されるのはシンの宿敵の一人であるアスラン・ザラのことを指しているのであるが、シンの脳裏に一瞬だけ浮かんだのは、幾度も命を奪い合ったノイエDCの
エースパイロットの1人ユウキ・ジェグナンと、そのユウキと間違えたアクセル・アルマーが乗っていたラーズアングリフであった。

「高くつくぜ〜?とりあえず今度、新しく出来たっていう妹喫茶に付き合えよ」
「だが断る」

シンにとってはマユ・アスカこそ、ただ1人の、そして永遠の妹なのだから。

「なんだ、即答かよ…まあいいや…話は変わるけど、やっぱあんまりビルガーで無理すんじゃねーぞ。ビルガーは特機じゃねーんだからよ」
「あ…まあ気をつけてはみる。でもビルガーみたいに動けて、特機並にパワーとかがある機体とかないかな」
「バーロー、そんな機体があったら…あ、でもなくはないのか………一応」
「あるのか!?」
「あるっちゃぁあるな。無いっつったら嘘になる。けど、お前じゃ絶対使えないぜ」
「な、なんでだよ?他の機体のシミュレータもやったけど、一応問題なく乗りこなせたぞ」
「サイバスターもか?」
「あ………………」
「ほらな?」

今現在、連邦軍に存在している機体は大きく分ければ特機とPT・AMに分類できる。
特機は機動力にやや欠けるものの、パワーや装甲・耐久力において優れている。一方のPT・AMはパワーや耐久力では特機に劣るものの、操作性、そして何よりも機動力に優れている。
上記の分類の例外はPTでありながら機動性を犠牲にすることで特機に準じるほどのパワーと耐久性を獲得できたアルトアイゼンくらいのものであろう。
つまり、パワーとスピードの両立を成し遂げた機体は無いに等しい。
だからこそ、分離と合体によりPTと特機双方の長所の具備を目指したSRXが作られたのだという側面すらある。
それらの例外が、従来のPTを大きく上回る機動性と特機をも上回る攻撃力を持つサイバスターであるものの、サイバスターは連邦軍の持つ技術により作られたものではない。

「っつっても作ってはいるのかな、一応」
「…またそんな言い方してるところからすると俺には無理だって言いたげだな」
「ヒュッケバインMK−靴裡腺優ンナーは見たろ?近接戦用のAMボクサーってのをちょうど今開発中なんだけど…」
「もしかして念動力とかって奴か」
「ご名答。お前さんが一緒にいたエルザム少佐のはPTとしての性能しか考えてない通常のエンジン搭載型だから、ご要望にはこたえられないってことだ」
「はあ…うまくいかないもんだな」
「何の話をしてるんだい?」

シンとタスクが話しているところに1人の少年といっても通じなくはない、幼げかつ優しげな表情を浮かべている、ツナギを纏った男がやってきた。
リョウト・ヒカワ。
テスラ研から脱出してきたときに合流したヒリュウ改に乗っていたヒュッケバインMK−靴離僖ぅ蹈奪箸任△蝓▲魯ネ・ヒリュウ改のパイロットの中でも強い念動力を内に秘めている。

「お、リョウト。お疲れさん。ちょうど今ボクサーの話してたんだよ」
「特機のパワーとPTのスピードがあるって聞いてちょっと気になってな」
「確かに完成すれば、だけどね。なかなかうまくいかないんだ」
「バーロー。殴る蹴るするための機体なんて整備士泣かせなもん設計しやがって」
「うん、だから次は鎖鎌とか手裏剣とか忍者刀みたいな暗器を持った、アサシンっぽいパーツなんてどうかなって」
「なんか自己主張が強くてちっとも忍ばなそうな暗殺者になりそうだな」
「じゃあ和風に、武者っぽいのはどうかな」
「井型のゲートから現れて、城をひっくり返しそうだな」
「あらん、男の子3人で何を話してるのかしらん?」

シン、タスク、リョウトが振り向いた先にいたのは当然ながら、自称女教師ブロウニングこと、エクセン・ブロウニングである。さらにいつものように一緒にキョウスケ、ブリット、ラミアを伴っている。

「男の子どうしでヒソヒソと。タスク君もレオナちゃんがいないからって羽を伸ばしてイケナイことでも企てるの?お姉さんは悲しいわん」
「いえいえ、俺はレオナちゃん一筋っスから」
「そんな口ぶりがイルム中尉っぽくて胡散臭いわん。リョウト君は…これはこれで大変なことになりそうねん」
「ぼ、僕はそんなことしませんよ」
「シン君もあんなに激しくラミアちゃんの胸をまさぐっておきながら…」
「ちょっと!!アレは事故ですよ!事故!!」
「じゃあブリット君は…」
「ちょっと、何言ってるんですか、少尉!」
「ほら、ブリット君も混ぜてもらって少しはクスハちゃんとの間に波風を立てて見たらどう?槍降って血固まるっていうじゃない」
「それを言うなら雨降って地固まるだ」
「そそそそうですよ!それにそんなことできるわけないじゃないですか!?」
「バーロー、何テンパってんだ?キバッってばっかりいないで、クスハの肩でも抱いて『勤務は20秒前に終わったよ』とか言ってデスクに押し倒すくらいしてみやがれ」
「無理だろうな。答えは聞いてない」
「まあ宇宙一ヘタレな男の子だもんねぇ」
「ちょっと!なんでいつのまにか俺に対するダメ出しになってるんですか!?」
「それがお約束ってやつでござそうろうでござんす、ブルックリン少尉」

確かに、ブリットが言うとおりエクセレンが乱入してわずか30秒ほどで、その場にいる全員を巻き込んで、様々な突っ込みが飛び交い始めており、
状況は混沌としたものになり始めていた。そこでこの面子の中ではエクセレンのノリに対する耐性が強い方であるタスクが状況を整理して話を元に戻す。

「そういえばそうだったな。いや、シンがパワーとスピードのある特機に乗りたいだなんて言うもんだから」
「シン君にピッタリの特機ねえん…」
「あ、俺の話はもういいですよ!特機自体1機も余ってませんし!!」
「う〜ん………あ!」

エクセレンがそう言うと、その口にニヤリとした笑みがこぼれた。
それを見た全員が、彼女が新たな獲物とネタを発見したのだということ、そしてそれが危険なものなのだということを確信していた。
そしてエクセレンが口を開くまで、その口からどのような爆弾発言が飛び出すのか、そこにいる全員がビクビクし始める。

「バリっとした特機なんてどうかしらん。きっとシン君だけに合身できるわよん。ラッキーアイテムは狼さんな剣ね」
「ちょっとそれ合身がごっちゃになってますよ、っていうかバリっとしてたら被っちゃうじゃないですか!ダメですよ、それは」
「え〜!きっと女社長にシン君の下半身差し出せばなんとかなるわよん」
「だ〜か〜らそっちもダメですってば!ゴタゴタして打ち切られちゃったらどうするんですか!?」

ちなみに、必死なブリットの突っ込みが繰り返される中、自分達の世界でのキョウスケの別名もやはりまずいのだろうかとラミアが内心で思ったが、
それを口外しなかったのは彼女に芽生えつつあった良心か、それともWナンバーズの最高傑作としての高い状況把握能力のおかげであろうか、どちらなのかは定かではない。

「いやん、ゴールデン左遷くらいで何とか勘弁してくれないかしら」
「2クールごとに打ち切りに脅えてグダグダになっちゃったらどうするんですか!?」
「そこはシラカワ博士に出てきてもらえば何とかなるんじゃない?」
「…そろそろその辺にしておけ、エクセレン」
「あら、教頭先生から注意されちゃったわん」
「タスク、リョウト。アルトとヴァイスの修理はどんな感じだ?」
「それならもうほとんど完璧っス」
「シン、ビルガーだってPTの中では頑丈な方だ。しばらくは我慢しろ。でないともっと恐ろしい人がやってくるぞ」
「了解です」

このとき、シンだけでなくタスク、リョウト、ブリットの脳裏に浮かんだのがカチーナであることは言うまでもない。

 

一方、「4体目」の調整が予定していたよりも順調に進んでいることを確認した覇王はイーグレットやアギラらが使っている区画とはまた別の研究用区画へと足を伸ばしていた。
ラピエサージュとゲイムシステム、キラ・ヤマトには目ぼしい問題点はなかったが、覇王にとっては手駒の1つであるアスランのインフィニットジャスティスが報告にあるように
正体不明の機体に敗れ去ったという事実が気にかかっていたのである。インフィニットジャスティスの性能の高さは彼女も北米において直に目にしただけあって知っているつもりであるが、
それを凌ぐ者が出てきたということであれば、駒の質の高さに物を言わせて、少ない数で戦いを乗り切る覇王の軍勢ラクシズにとってそうそう楽観視はできない。
高い性能を持つ機体を1機でも多く自分の手元に置き、さらなる強化を施さなければこの世界において勝ち抜き覇道を敷くことがままならなくなるおそれがあるからである。
渡されたIDカードをリーダーに通して扉を開け、さらに奥にある部屋の扉の前に到達した覇王は、その扉を軽くノックした。それから少し間を置いてバタバタとした音とともに扉が開いた。

「…あら、珍しいお客さんね。一体どういうご用件かしら」
「お邪魔したしますわ、レモン・ブロウニング博士」

覇王がやってきたのはシャドウミラーの頭脳であり、アースクレイドルのマッドサイエンティストその3兼自称紅一点のレモン・ブロウニングの部屋であった。
扉が開いて互いがその存在を認識した直後から2人の間には言葉によらぬ、視線のぶつけ合いによる静かな戦いが始まっている。
確かに2人ともこのままこの戦いを続けていても別に構わないのであるが、とはいえ、いつまでもそのようなことをしていてもラチが開かないことも確かである。
仕事が山積みになっていて非常に忙しいレモンの方がこの場に限っては譲歩した。

「とりあえずこんな所で睨み合うのも時間の無駄だからお入りなさい。話は中で聞くわ」
「ではお言葉に甘えさせていただきますわ」

レモンは腕を組みながら部屋の中に覇王を招き入れて部屋の中央にあるソファに座るよう促した。
他方の覇王は首を動かさずに眼球を動かして部屋の中をつぶさに観察しながら、促されるままにソファに腰掛けた。そして再び眼球のみを動かして部屋の中を見回す。
脱ぎ散らされた衣服や白衣、空になった食べ物のパックや報告書・計画書などが部屋のあちこちに散らばっていて、覇王にとってはとても女性が住む部屋だとは思えなかった。

「それで今日はこんな所まで何の用かしら、お姫様?」
「こんな所だなんて、随分綺麗になさっていらっしゃいますのね」
「ふぅん…相変わらず度胸だけはあるわね」
「お褒め頂いて嬉しいですわ。先日、ヴィンデル大佐とお話させていただいてんですけれども、その時にシャドウミラーの皆様が使っていらっしゃらない機体があるので、
 それを私どもに譲って頂けるということになりまして。ですが皆様の機体と私達の機体のコックピットが違うという話をしましたら、そちらの方で改修して下さると。お聞きではありませんか?」
「ヴィンデルが?それは初耳ね。それで何て機体かしら?エルアインスやランドグリーズなら適当に持ってっていいわよ。あとはイーグレット博士にでも頼んで」
「いえ。譲っていただけることになったのはヴァイサーガという特機ですわ」
「何ですって!?」

覇王の口から出てきた機体の名前に、幾つもの修羅場を潜ってきたレモンも驚きの声を思わずあげてしまった。
確かにヴァイサーガは乗り手を選ぶ機体であり、今は乗り手に恵まれていないという状況にある。
だがいずれはソウルゲインの予備機として彼女の愛するアクセル・アルマーに、そうでなくてもWナンバーズの誰かに使わせようと思っていたため、
ヴァイサーガのラクシズへの譲渡は彼女にとってあまりに予想外かつ不本意な取り決めであった。

「でもあなた達にはこっちで改修しておいたラピエサージュやランドグリーズをあげたでしょ?それにイーグレット博士が改造したジャスティスってのも。それでもまだ足りないのかしら?」
「これから先、インスペクターや連邦軍と戦うにあたっては戦力があるに越したことはありませんわ。それに、先日ヒリュウ改に攻撃を仕掛けたインフィニットジャスティスは
 正体不明の機体との交戦で大きく破損してしまいまして、やはり私達も特機が必要だと思いましたのよ。既に大佐から指令書が発せられていると思いますけれど」
「え?」

覇王の言葉にレモンが固まった。既に彼女のデスクの上は書類の山がいくつもそびえ立っており、その中から指令書を探すというのは非常に骨が折れるところである。
そんな固まったレモンを嘲笑うかのように覇王は静かに微笑むと、懐から1枚の書状を取り出してレモンに差し出した。

「もしよければどうぞ。大佐から指令書の写しを頂いておりますので」
「…随分と根回しが上手いようね」

吐き捨てるようにレモンが言うと、彼女はその写しに急いで目を通した。
確かに目の前にいる小生意気な小娘が言うように、シャドウミラーの頭領であるヴィンデル・マウザーの名前でヴァイサーガを改修の上譲渡するよう記載がされている。
怒りに身を任せてその書類をビリビリに破り捨てた上でガンレイピアで破片すら残さず焼き尽くしてやりたくなる衝動をなんとか押さえつつ、
レモンは彼女の中にある英知を結集してなんとか目の前の小娘を言い負かす手段を探すべく、脳内をフルに回転させ始めた。

「でもそんな簡単にコックピットを改修っていうけど、それなりに技術が必要だし、相当手間もかかるのよ?ハイスクールのサイエンスとは次元が違うことくらいわかるでしょ?」
「年齢と優秀さは関係ありませんわ、少なくとも私のおりました世界では。歳を重ねれば優秀というのは、適切とは思えませんけれど」
「ふぅん…暗に私が歳を喰っているとでも言いたげみたいね」
「あら、そんなことは申してませんわ」
「悪いけど、物事には順序ってものがあるのよ。今はソウルゲインの全装甲の交換につきっきりで手一杯なの」
「それはもう間もなく終わりそうだとヴィンデル大佐から伺いましたわ」

この小娘は一体どこまで自分を小馬鹿にするつもりなんだ?とレモンは煮えくり返りそうになっているはらわたを必死に押さえながら次ぎなる対抗策を考えていた。

(ソウルゲイン…アクセル……そういえばこの前アクセルが壊したラーズアングリフは……ダメね、W16が使うって言うからもう直しちゃったし…ん?ラーズアングリフ?)

瞬間的に何かを閃いたレモンは机の上の書類を片っ端から調べ始めた。
挙動自体が、あれでもいないこれでもないと騒ぎ立てており、一枚、また一枚と書類の中に目を通しては、これも違うと言わんばかりに投げ捨てて次の書類に目を通す。

「ではヴァイサーガの件、お願い致しますわ、優秀なレモン・ブロウニング博士?」

勝ち誇ったようにソファから覇王が立ち上がる。だが部屋の扉を開こうとした時…

「悪いわね、その前にやらないといけないことができてたみたいよ?」
「…どういうことです?ヴィンデル大佐の命令よりも優先する命令なんて…」
「バン大佐経由で、ラーズアングリフとランドグリーズの改修とそのためのパーツをこしらえろ、って命令がヴィンデルからよりも先に出ていたのよ」

ギリギリまで追い詰められていたが、最後のターンで大逆転のカードをドローしたかのようにレモンの瞳は自信に満ち溢れていた。
形式上ではあったが、ノイエDCの総帥であるバンの命令は、階級は同じであるものの、バンの協力者としての立場に過ぎないヴィンデルのものよりも優先する取り決めになっている。
くどいようだが、あくまでも形式上のことではあったが。

「経由ですか?ではバン大佐に申請した方に申請を取り下げていただけば…」
「悪いけど、申請者は今作戦行動中よ。そんなことはできないでしょうね」
「ではその作戦行動が終了し次第取り下げていただきます」
「あらそう?ならせいぜい頑張ることね」
「…随分と自信があるようですわね」
「だって、申請書を提出したのはお嬢ちゃんの手先に部隊を壊滅寸前にまでされた少尉さんだもの」
「私達に?…まさか」
「ユウキ・ジェグナン少尉っていう名前、聞いたことくらいあるわよね?北米でお嬢ちゃんたちに降伏勧告した部隊の隊長さんよ」
「……失礼しますわ」

覇王にとっては今まで味わったこともない屈辱であった。しかも、自分に向けて無礼千万の口をきいた者に自分の計画の進行を邪魔されるなど、考えたこともなかった。
CEを影から規律する邪神経典が新西暦の世界すら規律していればパトリック・ザラやギルバート・デュランダルのように覇王への不敬罪として変態部隊の隊長に憐れな死を与えられたであろう。
だが覇王にとってまたこの新西暦の世界は自分の思うように動かしきれぬ世界であり、今はまだ雌伏の時なのだと、覇王は必死に自分に言い聞かせていた。

他方でなんとか覇王を撃退(?)することに成功したレモンは、自分がアクセルともども正座させて説教したおした変態部隊の中間管理職に感謝するとともに、
彼から提出された改造プランに目を通し、具体的な改善点や彼女独自の観点からのさらなる改良点を加えたプランを作成し始めていた。
とはいえ、間もなく終わるソウルゲインの装甲の全交換と、ラーズアングリフ・ランドグリーズの強化改造計画が終われば、今度こそヴァイサーガに手を着けなくてはならなくなる。
そうだとすれば、その前にラーズアングリフらの強化計画を終わらせなければいい、そう考えた彼女が換装ユニット、レイブンユニットを当初の予定数以上に作成してしまうのはこの少し後のことであった。
とりあえず、ひと段落したレモンは大きく息を吐いて自分のデスクの椅子に深く腰掛けると、1つのことを思い出した。
元はといえば今回の騒ぎ(?)の元凶はヴァイサーガを、あのピンク頭の小娘なんぞにくれてやると軽々しく約束したヴィンデルなのである。
次の瞬間、レモンは、自分の頭髪もピンク色であることは棚に上げて、ヴィンデルがいるであろうシャドウミラーのライノセラスへと向かって全力で駆け出していた。

「ヴィンデルはどこ!?」

肩で息をしながらライノセラスの格納庫へと飛び込んできたレモンの怒鳴り声が辺り一帯に響き渡った。
妖艶な女としてのフェロモンは影も形もなく、辺りを睨みながら見渡し、怒りのあまり髪が逆立っているように思えなくもないほど、感情が表に出ている。
普段は見せないようなレモンの激情的な表情にシャドウミラーの兵士達の多くは驚きや戸惑いを浮かべているが、そのあまりの気迫に気圧されて何も言うことができない。
偶然、ソウルゲインの修理の進展状況を見に来ていたアクセルは、レモンの機嫌の悪さが今までの中でもトップクラスのものであることを本能で察すると、
下手をすれば自分も巻き添えになりかねない危機的状況を何とか乗り切るべく頭を働かせ始めた。

「ヴィンデルの奴ならさっきバン・バ・チュンの所に行ったばっかりだぞ」
「バン大佐の!?で、いつ頃戻ってくるの!?」
「さあ?まぁ戻ってきたらそっちに知らせるからそれでいいか?」
「…わかったわ、じゃあ私は部屋にいるからヴィンデルが戻ってきたらすぐに知らせるのよ!?」
「ああ」

不在を知り、やや毒気を抜かれたレモンがまだ全身から怒りのオーラを滲み出させながら艦外へと出て行ったのを見てアクセルは相方の恐ろしさを改めて実感していた。
そして、レモンが完全に付近から姿を消したのを確認して、ツヴァイザーゲインの方へと振り向くと呼びかけるような大声を上げた。

「もう出てきていいぞ」

それを聞き、ツヴァイザーゲインの脚部の影から1人の男が姿を現した。
ヴィンデル・マウザー。シャドウミラーの頭領であり、自分達のいた世界が腐敗していく様を見過ごすことができず、世界の行く末を憂いたからこそ反乱を起こした高潔な軍人である。
だが今だけはそんな影はなく、ある種、生命の危険を感じて辺りを見回しながら、アクセルの方に近付いてきた。

「本当に大丈夫だろうな、アクセル」
「嘘だったら俺も巻き込まれて大目玉だ。安心しろ」
「確かにな。しかし、せっかくお前が戻ってきたというのに、最近の奴は目に見えて機嫌悪い。お前、さては何かしたか?」
「そんなこと何も…いや、ラーズアングリフぶっ壊したくらいしかしてねえよ。でもあれはもう済んだ話だ。それよりもあのもう1人のピンク頭のせいじゃないか?」
「あのイーグレットの所にいる異邦人か?トラブルがあったという報告はないが」
「俺も具体的にはそんな話は聞いてないな」
「ではなぜだ?」

ヴィンデルの問いかけにアクセルは口を閉ざすが、しばらくして思い出したように口を開いた。

「女ってのは何人かいれば絶対つるまない奴がいるからな。昔ミドルスクールとかハイスクールとかであったろ?仲が悪いってわけじゃなさそうだけど絶対に口も聞かない、目も合わせないって連中」
「あいにく、俺は男子校だったのでな」
「はいそうですか…まぁ俺も上手くは言えんが、腹の底から反りが合わないんだろ。理屈抜きでな。レモンの場合はピンク頭同士の近親憎悪かもしれんが」
「…それよりはむしろアクセル、お前のせいだと思っていたがな」
「どういうことだ?」
「せっかくレモンがお前のためにアシュセイバーを改造したものをベーオウルフどもの技術など、と一蹴しただろう」
「それだけであんなにならんだろ、そういう女だ、むしろお前からそんな言葉がでてくるとは…意外だったな」
「…貴様、私が女心に疎いと思っていただろ」
「まあな」
「…戦争を秩序的に続けるには軍組織の把握が不可欠だ。それには女性士官の人心掌握も欠かせん」

アクセルにとっては、仏頂面の上官の思わぬ一面を垣間見た一時であった。

「ところで今度は誰をヒリュウ改にぶつけるんだ?」
「急に話題を変えたな。…まあいい。W15だ」
「大丈夫なのか?」
「メイガス・ゲボを通していれば問題はないはずだ。それよりも奴にベーオウルフをやられるかもしれんが、それでもいいのか?」
「…俺が倒すべきベーオウルフはこの世界にはいない。W15に倒されるならば、この世界の奴は所詮その程度だったというだけのことだ」

アクセルは、自分の世界に残してきた「宿敵」と呼んだのでは表現が不十分な因縁の相手を思い出しつつ、吐き捨てるように言い放った。
つづく

 

  

 

次回予告〜ゲーム中断風
シン「アスランのインフィニットジャスティスに次ぐ、アースクレイドルからの第2の刺客、W15ことウォーダン・ユミルと斬艦刀を持つ白き特機スレードゲルミルがヒリュウ改に迫る。
 そして、その強大な力に苦戦を強いられる俺達の前に現れたのは…次回、スーパーロボット大戦オリジナルジェネレーションズデスティニー第25話…」
エクセレン「『萌えよ斬艦刀』を生暖かく待っててねん」
シン「アンタって人はぁぁぁぁ!?そっちじゃないでしょ、そっちじゃ!では『燃えよ斬艦刀』を期待せずにお待ちください」
エクセレン「あら、展開的にそれはそれで別の所と被っちゃうんじゃないのん?」
シン「こっちはまだクライマックスじゃないからいいんです」
レイ「何言ってやがる、鼻垂れ小僧!前回からクライマックスは始まってるんだぞ!」
シン「やっぱりお前が出てきたかぁぁ!?でもあの人達がきっと締めてくれるからいいよな…答えは聞いてない!」