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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第33話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 00:59:57

第33話 「捕獲」

 

 オリジナルのペルゼイン・リヒカイトとの戦闘後、ハガネ・ヒリュウ改へと連行されたレイ=ザ=バレルであったが、彼の取調べはほとんど行われておらず、監視と移動区画の制限付きではあったがわりと快適にハガネでの軟禁生活を満喫していた。
 取調べが行われなかったのは、先日伊豆基地をアインストの大軍が襲いかかり、身も蓋もない言い方をすれば事後処理に忙しくてそれどころではなかったのである。
 他方、そんなレイに会いに行こうとしたシンであったが、彼の部屋の前にはどういうわけか行列ができており、近付くことができなかった。
 新西暦の世界では一応芸能人的なポジションにいるレイのサインを求めるイケメンが大好きな女性陣に行く手を阻まれてしまったのである。
 ちなみにその中にはリュウセイから見せられた映像ディスクの影響を受け、リュウセイ病の亜種のようなものに罹患した割とミーハーなSRXチームのアヤ=コバヤシの姿もあった。
 結局シンは特に他にすることもないので、機体の調整をするために格納庫へ向かうことにしたのだが、格納庫の脇で腕を組み、下を向いて難しい顔をしているラミアを発見した。

 

「ラミアさん、何か考え事ですか?」

 

 組んだ腕に持ち上げられた豊潤で甘い蜜を持っていそうな胸元の2つの超高級マスクメロンに行った視線を瞬時にラミアの顔へと移動させたシンがラミアの方へと近付いていく。

 

「い、いえ。別に特に何かを悩んでちゃってたりはしませんのよ?ホホホ…」
「そうですか?なんかだいぶ考え込んでるように見えたんですけど」
「そんなことありませんのよ。ところで先日連れてきたアスカ様のお知り合いの方の様子はどうでございますですか?」
「なんかファンの人に囲まれてサイン会してましたよ。………でもまあ俺はあいつが無事に生きてるってだけで十分ですけどね」
「え?それはどういう…?」
「ホントはもうレイは俺がこの世界に飛ばされる直前の戦いで死んだと思ってたんですよ。相手は前の大戦の『英雄』様とやらで、そいつはアメリカで俺達の前に出てきた。ってことはレイは負けたってのと同じですからね。けど、あいつは生きてました。戦争なんてやってたらいつ死んじまうかもわからないのに…」
「確かラクス・クラインとやらが率いる『歌姫の騎士団』ことラクシズとギルバート・デュランダル議長の率いるザフトの決戦、でしたわね」
「ええ、もしも議長や俺達が勝ってれば戦争ってのは一応終わってたと思いますよ」
「人の自由というものは制限されるという代償つき、というものでござんすが」
「…少なくとも戦争で関係ない人たちが巻き込まれたり、無理矢理戦わされる人を見るのはもう嫌だったんですよ。たぶん…俺みたいな人間をもう増やしたくなかったのかな…ってすいませんね、なんかわかったような口聞いて…」

 

 普段の自分らしくないやや達観したようなことを言っていたことに気付いたシンは少し照れながら、照れ隠しでラミアから顔を背ける。
 そしてその時、艦内に鳴り響いた警報音が第一種戦闘配置状態を告げた。

 

「ラミアさん、行きますよ!」
「了解したりします!」

 
 
 

 胸の内で「このときが来たか」と呟きながらラミアは足を止めていた。造物主レモン=ブロウニングから出された命令はブリッジの占拠であり、アンジュルグのある格納庫とは方向が違う。
 管理された戦争の継続により人類の進化・発展を目指すことがシャドウミラーの目的であり、これまでのラミアはこれに疑問も賛同もすることなく、ただ命令あるままに動いてきた。
 アクセルからは人形と呼ばれたりすることもあったが、それすら気に留めることはなかったが、今のラミアは違っていた。
 これまで一緒に戦ってきたATXチームの面々などを始めとするハガネ・ヒリュウ改のクルー達と接する中で徐々に、シャドウミラーの考え方に「疑問が生じる」という今までにない感覚が芽生えただけでなく、シンが口にした戦争により失われるものの存在とその大きさがわかってきていたからである。
自分達が作ろうとした、戦争の続く世界に溢れることになるであろう人々の悲しさと、失われ行く命の存在がどれほど大きいものか、ラミアは少しずつ理解し始めていた。

 

「ラミアさん!何してるんですか!早く!」
「!」

 

 シンの声に思考を中断され、意識を現実世界へと戻したラミアは深く息を吸うと、力強く床を蹴って走り出す。
 そして、出撃したシン達を待っていたのは、消息を絶っていたはずのシロガネであった。だが味方のはずのシロガネは思いもよらない機体を引き連れている。
 斬艦刀を操る謎の特機スレードゲルミルやゲシュペンストやエルアインス、フュルギアなどのDCの量産機がシロガネから次々と飛び出してくる。

 

「お、おいおい! どうなってんだよ、こりゃあ!?」
「……どうやら、俺達は嵌められたらしいな」
「くそっ、リーが連中が手引きしやがったのか!?」
「どのみち、ここで引き下がるわけにはいかん。……行くぞ!」
「動くな!…全機に告ぐ。直ちに武装解除してもらおう」
「ラ、ラミアさん!?」

 

 突然ラミアの口から放たれた信じ難い台詞に、冷水を突然浴びせかけられたときのような戸惑いと驚き、焦りを隠しえないシン達であったが、そんなシン達の事情をさほど気に留めることもなく武装解除を要求したラミアは言葉を続ける。

 

「強制はしない。だが、アンジュルグには自爆装置がある…ただの爆薬ではない。お前達はおろか、ハガネやヒリュウ改も撃沈できる」
「!」
「な、何ですって!?」
「ラ、ラミアさん、どうしたんですか!?何でそんなことを!?」

 

 ハガネ・ヒリュウ改のクルー達の中でもラミアの行動に最も驚きを感じている人間の1人であるシンが問い掛ける。
 ラミアの突然の裏切りに等しい行動はシンに、エンジェルダウン作戦でのフリーダム撃墜後のアスラン・ザラの脱走を嫌でも連想させるものではあったが、その時とは違い今回のラミアには意に反する作戦の強制や艦内での決定的孤立などの脱走の兆候すらなかったことがさらにシンを狼狽させていた。

 

「それが私の任務だからだ」
「に、任務!?」
「繰り返す。直ちに武装解除せよ…抵抗する素振りを見せれば、その瞬間にアンジュルグを自爆させる」
「馬鹿言わないでくださいよ!そんなことをしたら、ラミアさんだって死んじゃうんですよ!?」
「死ぬことで任務が遂行できるならば、それでいい…お前達の心がけ次第では、全員無事で『シャドウミラー隊』の直属として活動することが出来る」
「シャドウ……ミラー!?」

 

 聞いたことのない部隊の名が出てきたところでちょうどタイミングを伺っていたかのように、一瞬空間が歪むと、そこから1つの機体が姿を現す。
 先日シン達の前に姿を現した、肘、肩、頭部から角を伸ばし、腹部にもう1つの顔を持つ特機ツヴァイザーゲイン。
 まだこの機体に搭載された恐るべき本来の機能を知らぬシン達だが、ツヴァイザーゲインの放つ強烈なプレッシャー、または闘気とも呼べる不可視の圧迫感は確かにシン達に突き刺さっていた。

 

「あ、あのロボットは!?」
「この間、転移してきた特機……!!」
「ご苦労だった、W17」
「はっ……」
「W17!?そ、それは……ラミアさんのことか!?」
「そう……。それが私の本当の名称だ」
「本当の……名称!?」
「お前達は何者だ? シャドウミラー……それが組織の名前なのか?」
「そう。そして、私の名はヴィンデル=マウザー……シャドウミラーの指揮官だ」
「……」
「会えて光栄だ。連邦軍特殊鎮圧部隊ベーオウルブズ隊長……キョウスケ=ナンブ大尉」
「ちょっと、あんた達! ウチのラミアちゃんに何をしたの!?」
「何も。彼女は私達の仲間……わかりやすく言えば、スパイってわけ」

 

 そう言ったレモンはエクセレンの乗るヴァイスリッターを見て、このような戦場での出会いになってしまったことを幾分か悲観的に思いつつ、ラミアのアンジュルグを見て小さな疑問を浮かべた。
 ハガネのブリッジを制圧しろと言ったはずなのが、どういう訳かアンジュルグの自爆装置を使って艦の外からハガネやヒリュウ改を脅していたからである。

 

「では……返答を聞こうか、ダイテツ=ミナセ中佐。武装解除に応じるか、否か?」
「……」
「待て、話が違うぞ! 奴らの指揮権はワシが握ることになっておるはずだ!」
「お前は……ケネス少将か。司令部の制圧は成功したようだな」
「何だと?」
「せ、制圧!?」
「貴様……余計なことを言いおって!」
「うぬっ! すでに外堀は埋められていたと言うことか!スティール2より各機へ!その場で一時待機せよ!」
「賢明な判断だ」
「ヴィンデルと言ったな。お前達の目的は何だ?こんなまわりくどいやり方をしたからには、それなりの目的があるはずだ」
「我らの目的は一つ……理想の世界を創ることだ…永遠の闘争……絶えず争いが行われている世界……それが我々の理想の世界だ」
「ふざけんな!そんな世界のどこが理想だ!!」
「理想よ。戦争があるから、破壊があり……同時に新たな創造が始まる。戦争があったからこそ、発展した技術がどれほどあるか、考えたことがあって?」

 

 小型化・高性能化したテスラ・ドライブ、ヒュッケバインを始めとするEOTを応用した人型機動兵器、トロニウムを動力源とするSRXという、異星人との戦争がなければ生み出されなかったであろう超技術の数々がレモンの口から飛び出してくる。
 彼女が言う「戦争が生み出した技術の結晶」「人類の叡智」と呼ばれるものは、特にそれらを直に扱っているリュウセイやリョウト、アイビス、ツグミらにとっては、技術の生み出された目的とシャドウミラーの目的との関係を別としても、もはや異星人と戦う、または自分達の夢を実現するためには切り離すことのできない存在である。
 しかし、ヴィンデルの言葉を、シャドウミラーの目的を絶対に許せない男が、正史とは異なり、その場にいた。

 

「ふざっけるなあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ふざけてなどいない。絶えることなき戦いこそが人類を新たなステージに進め、地球を守るための唯一の手段だ」
「じゃあアンタは戦わない人はそれでどうなると思ってるんだ!!」

 

 争いに巻き込まれる、関係のない人間の犠牲。それが戦争で家族を失ったシン・アスカという戦士の原点であると同時に、最後までザフトに残ることを決定させた最大の要素である。

 

「彼らとて戦いで発展した技術の恩恵を受けることができるのだ。ならば彼らも本望だろう」
「俺の家族は戦争の流れ弾で殺された!しかも勝手に戦争を始めた奴らのせいで避難してる真っ最中に!」
「何事にも絶対というものはない。事故の確率をゼロに近付けることはできても、ゼロにすることはできん」
「じゃあアンタは訳も判らずに戦わされてる人だっているのを知ってるのか!?記憶を弄られて薬漬けにされてまで戦わされてる人間だっているんだぞ!」

 

 シンの脳裏には今でもディオキアで出会った連合のエクステンデット・ステラ=ルーシェが事切れたときの映像が残っている。
 戦いたいのか、戦いたくないのか。自分が何をしているのか。それらの意味もわからずに戦場に立たされていた彼女の最期は、戦うべき相手も決まらずに気の向くまま自由に戦場への乱入を繰り返した者達の手にかかる、というものであった。
 もしかしたらそのような最期こそが幾つもの都市を壊滅させ、多くの人間の命を奪った彼女への報いだったのかもしれない。
 しかしそもそも連合・プラント間の争いが連合にブーステッドマン、エクステンデットと呼ばれる生体CPUを生み出したことは事実であり、これ以上の争いや戦争の継続を拒否したシンにデュランダル側につく動機を与えたことも事実であった。
 そして似たようなことはスクールやDCという場所で新西暦の世界で行われており、今やシンの戦う動機の1つになっている。

 

「例えそうであろうとも、異星人から地球を守るためならばやむを得ぬことだ。連中の手はもうこの地球に伸びてきているのだ、もはや一刻の猶予もならん」
「そんなこと、誰が決めたんだよ!?そんなことしなくたって俺達がインスペクターを倒せばいい!もう…もう俺みたいな悲しみはたくさんだ!!」

 

 シャドウミラーが理想とする永遠の闘争は、それが必然的に無関係な人間にまで大きな影響を与えるという点において、シン・アスカの願うところとは対照的な位置付けがされうる。
 無関係な人間の犠牲を、技術の発展・進歩と腐敗の防止といった人類の行く末を憂う上でのある種の必要悪だと割り切るのがシャドウミラーであり、無関係な人間の犠牲を、を最も避けるべきものだと嫌悪し、それを少しでも、ほんの僅かでも減少ないし根絶させたいと願ったのがシン・アスカであった。
 シンとラクシズがその目的と目的達成手段において決定的に相容れないのとはまた異なるベクトルで、シンとシャドウミラーもまた相容れないものといえよう。

 

「話にならん…最後通告だ、ダイテツ=ミナセ中佐。武装解除をしてもらう…さもなくば……死だ」
「…闘争が人類の発展を促す……確かに、あの男の言う通りだろう。だが、戦いによって生まれるものと失われるもの……それは等価値ではない!」
「……その通りだ」
「え?」

 

 ラミアがダイテツを肯定したのとほぼ同時にアンジュルグがハガネから離れると、そこにいた面々が驚いて創ってしまったわずかな隙を突いてツヴァイザーゲイン、ヴァイスセイバーに取り付いた。

 

「む……!?」
「W17……あなた、何を?」
「ヴィンデル様、レモン様……」
「貴様、何の真似だ!?」
「ATA……ASH TO ASH、発動」
「あなた、まさか!?」
「我々は、この世界に来るべきではなかったのだ…今ならわかる。あの時、我々を否定した彼らの気持ちが!この世界は私のような作り物が介入できる所ではなかったのだ……!」
「!」
「ええい、所詮は人形! 貴様、狂っていたかッ!」
「学習したのだ……!」
「何故……何故なの、W17!? 最高傑作のあなたが!?」
「……出来が良すぎたのかも知れんな……!」
「やめなさい、W17ッ!!」

 

 ラミアが造物主であるレモンへのささやかな謝罪の念を思ったのを最期に、アンジュルグはツヴァイザーゲインとヴァイスセイバーに取り付いたまま大爆発を起こして、両機とともに爆煙の中へと姿を消した。
 細かなパーツや機体の破片がその中から海中へこぼれ落ちていくが、煙が晴れていくのとともにアンジュルグに取り付かれていた2機が、ボロボロになって機体の各部でショートを起こしながらも姿を現す。

 

「チ……! システムXNが損傷したか!戦闘も不可能……!おのれ、人形風情がよくも……!」
「こっちも……駄目ね。システムXNのこともあるし、ここは撤退すべきでしょう」
「仕方あるまい……!リー中佐、ハッチを開けろ。帰艦する」

 

 ヴィンデルの指示で開き始めたハッチの方向へツヴァイザーゲインは向かっていくが、同程度に損傷しているはずのヴァイスセイバーはアンジュルグが爆発したポイントにまだ留まっていた。
 レモンが海上に浮かんでいるアンジュルグの残骸、しかもそのコックピットブロックと思しき物体を発見したのである。

 

「連れて行かせるかよ!」

 

 自爆したアンジュルグのコックピットブロックと思しき物体をそっと掴んだヴァイスセイバーを見たシンは、ビルガーのウイングを一気に開いてその後を追う。
 だが進行方向の先には、既に斬艦刀を戦闘時の状態にまで延ばして敵を迎え撃つ準備を整えている咆哮巨神スレードゲルミルの姿があった。

 

「ここを通すわけにはいかん!」

 

 先陣を切って突っ込んでくるビルトビルガーに狙いを定めて、スレードゲルミルは振り上げた斬艦刀を一気に振り下ろすが、ビルトビルガーは機体を横に移動させて回避する。

 

「そんなデカい図体してビルガーのスピードに追いつけるかよ!!」
「ぬぅっ!」

 

 スピードに乗ったビルガーは斬艦刀を振り下ろして隙が出来た状態のスレードゲルミルに攻撃を加えることもなく、一気にその横を通り過ぎてみるみるうちにアンジュルグの脱出ポッドを回収したヴァイスセイバーとの距離を詰めていった。
 アンジュルグの至近距離からの自爆に巻き込まれて、ツヴァイザーゲインもろとも半壊気味のヴァイスセイバーは本来のスピードを出し切ることができない。
 そのために、スピード自慢のビルトビルガーの追跡を許すことになっていた。そしてヴァイスセイバーの近くにまで迫ったビルガーがコールドメタルソードを引き抜いた。

 

「切り裂け!コールドメタルソ…!?」

 

 途中までシンが言い掛けたところで、その口が止まった。ビルガーのレーダーが新たな敵機とそれによる攻撃を察知してコックピットの主にそれを警報音で知らせる。
 とっさにビルガーを後退させたシンの目には、シロガネから発進してきた見覚えと苦い記憶のある赤い機体の姿が映っていた。
 その赤い機体は手にしたビームライフルからビームを放ってビルガーを牽制しつつ、ヴァイスセイバーの前に立ちはだかると、ライフルの代わりに出力を強化したビームサーベルを構えてその切っ先をビルガーに向け、斬りかかってきた。

 

「シン!ようやく見つけたぞ!」
「またアンタか、アスラン!いつも嫌なタイミングで!」

 
 
 

 シンとビルトビルガーの前に現れた赤い機体、それはもはや彼にとってはフリーダムに次ぐ嫌悪感の象徴ともいうべき、鶏冠のようなアンテナと紅のボディが特徴的なインフィニットジャスティスであった。
 覇王がCE世界で手にしていた二振りの剣のうちの一振りであり、CE世界でのシンの愛機デスティニーを撃ち破った機体であり、この新西暦の世界で得たマシンセルの力により復活と大幅なパワーアップを遂げて新生したインフィニットジャスティスは、ラクシズ本隊と合流して再び覇王の剣となっていた。
 互いに振り下ろされたビームサーベルとコールドメタルソードが交差して鍔迫り合いが始まるが、今回は勢いをつけて斬撃を繰り出したビルガーがジャスティスをほんのわずかだが押していた。

 

「見損なったぞ、アスラン!永遠の闘争とやらがアンタ達の理想かよ!!」
「きっとあれは異星人との戦いが終わった後の話だ!その前にお前を…」
「もういい!アンタとはしゃべってるだけ時間の無駄だ!」

 

 ビルガーに向けられたジャスティスのサーベルを、ビルガーはコールドメタルソードを振り抜いて弾き飛ばすと、ファトゥムの自動防御が発動する前に至近距離から手の空いているスタッグビートルクラッシャーでジャスティスのボディを殴りつける。

 

「シン!」

 

 機体を襲う衝撃をもろともせずにビルガーから目を離さないアスランであったが、今のシンの視界と思考の中にはアスラン=ザラの声も姿もほとんど入っていかなかった。
 そしてインフィニットジャスティスを振り切ってシロガネとの距離を縮めていくビルトビルガーであったが、
その正面に幾つかの空中を浮遊しながらこちらへ向かってくる物体をシンはすぐに認識することになる。
 直感で危険だと判断したシンは、思考が働くより先に本能でその物体からビルガーを遠ざけようとしたが、その物体はさらに数を増やしつつ、その幾つかがビルガーに向けてビームを放ち始める。
 ビルガーは機体を上下左右に激しく移動させて囲うように迫ってくる飛行砲台とそこから放たれるビームをかわしていくのだが、徐々にシロガネから遠ざかることを余儀なくされてしまった。

 

「クソっ!まだ出てくるのかよ!」

 

 毒づくシンの視界には新たにシロガネから出てくる「白い」機体が映っていた。
 大きな砲塔オーバーオクスタンランチャーを背部に背負い、腕に備わった巨大な爪マグナムビーク、今現在ビルガーを追跡しているソリッドソードブレイカーを構えたその機体の名前はラピエサージュ。
 その機体色はシロガネ滞在中に塗り替えられ、白を基調として機体各部が黒、青、赤に塗られている。
 シャドウミラーの持つアシュセイバーを基にして、ATX計画や強奪したビルトファルケンのデータなどを踏まえ徹底的にカスタマイズされたこの機動兵器に乗るのは死亡した「3人目」の後を継ぐ形で目覚めた「4人目」のキラ=ヤマトである。

 

「キラ!」
「大丈夫だった、アスラン?」

 

 ラピエサージュの射出したソリッドソードブレイカーにビルガーが追われている隙に近くへジャスティスが駆け寄っていく。
 だが外部スピーカーを通して行われた彼らの会話の中に聞き流せない単語を見つけたシンは、敵の攻撃を潜り抜けながら今出撃してきたラピエサージュを厳しい目つきで睨み付けた。

 

「キラだと!?」

 

 そして改めて目に入れた「白い」機体が、シンにあの機体を強制的に連想させるのに十分すぎるものである。
 彼から両親を、妹を、ミネルバの同僚達を、守ると約束したエクステンデットの少女を奪ってなお、覇王の唱える自由と正義の名の下に破壊を撒き散らしていったフリーダムという機体を。
 そしてシンは、キラ=ヤマトとストライクフリーダムがマサキのサイバスターにより討たれたことしか知らず、覇王の手により新たなキラ・ヤマトが稼動し始めたのだということを知らない。
 そのため、どうして死んだはずの仇、キラ=ヤマトが生きているのかをシンは理解できないでいた。
 だが目の前にフリーダムを連想させる機体がいること及びそのパイロットがアスランから「キラ」と呼ばれていたことは紛れもない事実であり、かつてシンがインパルスの機体性能を活かしてフリーダムを落としたときも生きていたという前歴を持つのがフリーダムのパイロット・キラ=ヤマトであることを思い出したシンはそこで考えることをやめた。
 今はラミアの救出をするのが先決だが、キラ=ヤマトがまだ生きていたのなら倒せばいい、それだけのことだと判断したからである。

 

「あいつは助け出したい、力を貸してくれ」
「え、あの機体のパイロット、知り合いなの?」
「ああ、あいつはあのインパルスのパイロットなんだ!」
「え、それだったら…」
「あいつは議長に騙されてたんだ!正しいように聞こえる議長の言うことに丸め込まれて…!それで今度は連邦に騙されて…!だから今度こそ俺の手で助けてやらないと!」
「…わかったよ、アスラン。僕も力になる。いつまでも憎しみあってたって何も始まらないんだ」

 

 シンは特に戦う意味を考えることなどなく、一面では正しいことを言っているかのように世界へ語りかけていたデュランダルの思うがままに利用されていたのだと思っているアスランは、キラ=ヤマトがシン=アスカにしてきたことをほとんど知らず、またシンやレイが助けようとしたステラ=ルーシェについても彼らとは異なる認識を持っている。
 デスティニープランに少なからぬ問題があるとしても、それでも戦いとは関係のない人間までもが巻き込まれる戦いがこれ以上続くことを拒絶しようとしたシン=アスカと、そんなシンを知らないアスラン=ザラが理解しあうことができるわけもなく、どちらかが他方を力ずくで屈服させないかぎり両者の対立は終わらない。

 

 そして、シンの家族を殺した「2人目」、ステラやミネルバクルーを殺した「3人目」ではない、「4人目」のキラ=ヤマトにとってはシンから寄せられる憎しみはお門違いともいえるのだが、シンもキラもそんなことを知る由もなく、キラはアスランの言うがままに正しいように聞こえたシンの「救出」に力を貸すことに決めた。

 

「どけえぇぇぇぇ!!!」

 

 ソリッドソードブレイカーの猛襲を潜り抜けながらコールドメタルソードを構えたビルトビルガーがラピエサージュへと斬りかかっていく。
 ラピエサージュはそれをマグナムピークで受け止め、逆に動きを止めたビルガーにビームサーベルを構えたインフィニットジャスティスが横から斬りかかってきた。
 剣がラピエサージュに止められておりビームサーベルを止める術を持たないビルガーは、マグナムピークを強引にはねのけって上空へ逃れるが、今度は周辺で好機を窺っていたように漂っていたソリッドソードブレイカーが再びビルガーへと襲いかかってくる。
 そこから何とか逃れて態勢を整えなおそうとするシンとビルガーであったが、その前にまたもインフィニットジャスティスがビルガーの下へと斬りかかってきた。

 

「くそっ!あいつらなんかに構ってる暇はないってのに!」
「シン!いい加減、俺と一緒に来い!どうして同じ世界から来た俺達が戦わなければならないんだ!?」
「何にもわかってないアンタなんかと!」
「わかってないのはお前だ!議長はもういないんだぞ!?」
「議長は関係ないだろ!それにフリーダムのパイロットと一緒だなんてアンタは何を見てきたんだよ!?」

 

 両手に持ったサーベルでインフィニットジャスティスはビルトビルガーを押し込んでいく。
 ジャスティスとの接近戦を避けようとすればラピエサージュの砲撃に動きを止められ、結局ジャスティスから逃れることができない。
 遠距離戦を挑もうにも、相手にはジャスティスの自動防御があるし、ラピエサージュとジャスティスの2機を相手に射撃戦を倒すのには無理がある。
 ラピエサージュを先に倒そうとしても、ソードブレイカーを全て掻い潜るのは至難の業だし、それをジャスティスが黙ってみていることはない。
 接近戦も遠距離戦も封じられ、ビルガーは想像以上に苦戦を強いられることになっていた。
 そしてこの苦戦の様をハガネの艦内から見ている者がいた。

 

「あのニワトリ野郎…!それに…この気分の悪さは何なんだよ…!」

 

 取調べを受けていた部屋でシンのビルガーの戦闘の様子をモニター越しに眺めていたレイ=ザ=バレルである。
 自分を知っているというシンの戦闘を見守っていたレイであったのだが、現在彼の頭の中にはノイズのような痛みが走っていた。
 レイにペルゼイン・リヒカイトという戦う力を与えたアルフィミィの声が聞こえてくるときのものとは違う、何者かが近くに存在していることを警告するような痛みであった。
 感じている存在感の主に対して、理由はわからないが、激しい嫌悪感と憎悪の感情が込み上げてくるのがレイにははっきりとわかっている。
 そして顔見知りのシンが戦っている相手なら、DCか今、世間を賑わしている異星人であろうから、レイが戦う決意をするのに時間はかからなかった。

 

「変身!」

 

 腰に巻いていた銀色のベルトの赤いボタンを押して、懐から電子通貨貯蓄機能が付属している乗車カードの模造品をベルトのバックルへと近づけると、
 レイの体が黄色い光に包まれ、次の瞬間にはハガネの外壁をぶち破ってその光が飛び出していった。
 他方、シンはソードブレイカーの攻撃を回避し続けていたが、やはりそこにインフィニットジャスティスが斬撃を仕掛けてくる。
 全身刃物のようなインフィニットジャスティスとの接近戦はあまり好ましくなく、シンは距離を取ろうとするのだが、回避行動を取る先々に次々とオーバーオクスタンランチャーの弾丸が襲いかかってくる。それはまるで回避行動先を計算済みであるかのような正確な射撃であった。
 そしてまたもインフィニットジャスティスがサーベルで斬りかかってくるのをビルガーはコールドメタルソードで受け止める。

 

「そんなに一緒にきてほしいならあいつの首を持って来いよ!話はそれからだ!」
「キラは敵じゃない!どうしてそれがわからないんだ!?」
「あいつがやってきたことを忘れろとでも言うのか!?いい加減に間抜けたことを言ってるって気付けよ!」
「憎しみをいつまでも抱いて何になるんだ!?」
「その憎しみをばら撒いてるのは一体誰かわかってるのかよ!?」
「この…馬鹿野郎!」
「馬鹿はどっちだ、この大馬鹿野郎!」

 

 ジャスティスのサーベルを受け止めているコールドメタルソードを無理矢理押し出してビルガーがジャスティスを突き飛ばし、続けてその左腕をスタッグビートルクラッシャーで掴み取る。
 挟み込まれたジャスティスの腕にはミシミシと音を立てながら無数のヒビが入り始めるのだが、右腕のサーベルはコールドメタルソードに押さえ込まれており使えない。
 空中で姿勢を維持するためには無闇にビームブレイドの付いた両足も使えないためアスランは左腕の損傷を覚悟した。
 だが、ビルガーとジャスティスの2機が取っ組み合って動きを止めている隙に、ソリッドソードブレイカーが接近していることにまではシンは意識が回らなかった。
 狙いを定めた飛行砲台から放たれたビームはスタッグビートルクラッシャーを貫くと、ビルガーとジャスティスの間で小さな爆発が起こる。
 それがドラグーンの仕業だと気付いたシンとアスランであったが、ソードブレイカーに包囲されることを防ぐためにシンはビルガーをいったん後退させようとする。
 放たれるビームから逃げ回りながらどんどんシロガネとの距離が離れていくことにはシンも気付いていたが、その飛行砲台はシンの目的地をわかっているかのようにビルガーの進行方向には穴を作らず、他方で後方に逃げ道を残しているかのようにビルガーを包囲しようと動き回っていた。
 だがわずかに一瞬だけ前方に包囲網の穴ができたことに気付いたシンはそこを突き抜けるべくビルガーの速度を一気に上昇させるが、それはキラとアスランの思う壺であった。

 

「!?くそっ!」

 

 シンが包囲網を突破するより先に、進行方向からジャスティスの背部に備わっている攻防一体となった飛行ユニットファトゥムがビルガーを狙ってまっすぐに突っ込んでくるのが見えた。
 シンがビルガーの上半身を横に反らせたことで、ファトゥムの串刺しになることだけは避けられたが、猛スピードで突っ込んでくるファトゥムの片翼に機体を強く打ちつけてしまう。
 そしてそれによりバランスを崩して動きを止めたビルガーに、辺りを漂っていたソードブレイカーが一斉に襲いかかっていった。
 機体の各部へ体当たりを繰り返す飛行砲台はコックピットに連続して大きな衝撃を与え、機体のみならず中にいるシンにもダメージを蓄積させていく。
 さらに後方からさきほど回避したファトゥムが戻ってきてビルガーに迫っていくが、それを告げる警報音になんとか対応してシンはビルガーを上方へと逃れてさせてファトゥムを回避するが、逃れた先には既にその行動を予想していたラピエサージュが待ち受けていた。
 左腕に備わった巨大な爪マグナム・ビークが突き出され、ビルガーはコールドメタルソードを盾代わりにしてそれを受け止めるが、その隙に脇から数機のソードブレイカーがビルガーを打ち付ける。
 そしてラピエサージュはこの隙にコールドメタルソードをマグナム・ビークで弾き飛ばし、ビルガーのコックピット付近に蹴りを叩き込んだ。

 

「ぐあああああっ!」

 

 その衝撃で地上へ落下し、基地の外れにある建造物の一つに叩きつけられたビルガーは力なく倒れ込んだまま動かなかった。今の攻撃と地上への激突時の衝撃で意識を失っていたのである。
 動かないビルガーの姿を見たアスランはインフィニットジャスティスをビルガーの近くに降り立たせると、ジャスティスはビルガーの両肩へと手を伸ばす。
 機体ごと連れ去るべくその両腕がビルガーを掴むが、その時、ジャスティスのコックピットに敵機の接近を告げる警報音が鳴り響いた。

 

「!上か!」
「俺…参上っ!」

 

 光球状の姿でハガネから飛び出し、上空で赤鬼を連想させる魔人へと姿を変えたペルゼイン・リヒカイトは、真紅の大剣を振りかざしたまま地上へ真っ直ぐに急降下してくると、インフィニットジャスティスに向けて落下エネルギーを加えた大剣を振り下ろす。
 刃がインフィニットジャスティスに触れる前に、攻撃を感知したファトゥムがその刃を受け止めるが、ペルゼイン・リヒカイトはその反動を利用してうまく地上に降り立つと第二、第三の斬撃をファトゥムに見舞って表面を削り取っていった。
 それを嫌ったアスランは、今度は左右のサーベルでペルゼイン・リヒカイトの斬撃を受け止めると、いったん後方へさがって距離を取る。

 

「レイ…!また俺の邪魔をするつもりか!?」
「久しぶりだな、ニワトリ野郎!また俺の前に出てくるとはいい度胸じゃねえか」
「そのふざけた喋り方をやめろ!俺は真剣に言っているんだ!」
「ああん!?俺は最初から最後までマジにクライマックスだ、この前も言っただろうが!」
「それがふざけてると言ってるんだ!」

 

 報告でレイが記憶喪失らしいということは聞いていたアスランであったが、今の別人格のような喋り方が今のレイの普通の喋り方であることまでは知らず、苛立ちが強くなっていく。
 サーベルを手に、インフィニットジャスティスはペルゼイン・リヒカイトに斬りかかって行くが、それはペルゼイン・リヒカイトの大剣に阻まれる。
 続けて右足のビームブレイドを繰り出そうとするジャスティスであったが、それがペルゼイン・リヒカイトに到達する前に零距離ノーモーションで繰り出された頭突きがジャスティスの頭部に見舞われ、さらに大剣を持っていない方の腕から繰り出された拳がジャスティスの顔面を殴りつける。
 だが次ぎの瞬間、レイの頭の中に鋭い痛みが走り、白い光のようなものが見えた感覚を覚えたレイはペルゼイン・リヒカイトをジャスティスから後退させた。
 すると、レイの視界に、今までペルゼイン・リヒカイトが居た場所に上空から幾つものビームが降り注いできたのが見えた。
 レイが上空を見上げると、幾つもの飛行砲台を従わせた白い機体がこちらへその銃口を向けているのが見えたのと同時に、彼に奇妙な感覚を味合わせている犯人がその機体なのだと直感で理解した。
 その白い機体、ラピエサージュはレイとペルゼイン・リヒカイトへの警戒を維持しながらジャスティスの下へと降り立つと、中にいるキラが口を開いた。

 

「アスラン、機体ごと持って行くのは無理だよ。僕が囮になるからコックピットからパイロットを」
「…すまない、キラ。でも気を付けてくれ、あの機体のパイロットは…」
「わかってる、レジェンドって機体のパイロットでしょ?大丈夫だよ、それにいざとなったらアレがあるし」
「ああ…そうだな。じゃあここは頼んだぞ!」

 

 そう言ってアスランは再び動かぬビルガーのもとへと向かっていく。それを見たレイはジャスティスに向かっていこうとするが、その前にはラピエサージュが立ちはだかった。

 

「どきやがれ!てめえの相手は後でしてやる!」
「悪いけどアスランの邪魔はさせないよ?」

 

 真紅の大剣ペルゼイン・スォードと巨大な爪マグナム・ビークがぶつかり合い、火花を散らす。それと同時にレイとキラ、2人を不快感と頭痛が襲い、双方が歯を喰いしばった。

 

「てめえは一体何モンだぁ!?気持ち悪ぃんだよ!」
「君は自分が何をしているのかわかっているのか!?」
「ダチ助けに行こうとしてんだよ!!」
「それなら僕も同じだよ!」

 

 お互いがその獲物を振り抜いていったん構えなおすと第二撃を繰り出して再び火花を散らしての力比べが始まる。
 互いの刃を押し付けあいながら、まずキラが収納させていたソリッドソードブレイカーを再び射出すると、レイも肩にある黒い突起を射出した。
 地上でペルゼイン・リヒカイトとラピエサージュが刃をぶつけ合う一方で、上空ではそれぞれの意思を受けて飛び交う遠隔操作兵器がこちらも激しい火花を散らしながらぶつかり合いを始める。

 

「じゃあこの頭痛はやっぱてめえの仕業か、この野郎!」
「それは…君があの人の…!」
「あれ、それ、こればっかでてめえの言ってることはわかりずれえんだよ!」
「…君がラウ・ル・クルーゼのクローンだっていうのは君自身が言ってたんじゃないか!?だから僕と君は…!」
「!?…何…だと?俺が…クローン…?……………出鱈目なこと言ってんじゃねえっ!!!」

 

 突然言われた途方もない言葉に精神を大きく揺らがされつつ、レイは大きく首を振る。
 自分が別の人間のクローンだと聞かされれば、自分の存在そのものに大きな疑問が生じることは当然だが、普通であればすぐに信じるようなことはしない。
 しかし原因不明の頭痛をもたらし、嫌悪感を伴いながらも存在を認識できてしまうような相手がいう言葉には得体の知れない説得力があるのも事実であった。
 だが幸か不幸か、この時首を振ったレイの視界に、ビルガーのコックピットをこじ開けてその中から気を失ったシンを連れ出そうとするアスランの姿が映ったことが、自分の正体や素性はどうあれ今はシンを助けるのが先決だとレイに考えさせたのである。
 再び戦いに意識を集中させたレイは、強引にペルゼイン・リヒカイトの大剣を振り抜いてマグナム・ビークを弾き飛ばすと、大剣を体の中心へと持って来る。
 そして頭部の2本の角と桃型のベルトのバックルから放たれるエネルギーを刀身に纏わせながら、腰を落として静かに剣を構えた。

 

「行くぜ!必殺、俺の必殺技パート2!」

 

 収束を終えたメタリックレッドに輝く斬撃が剣先から飛び出してラピエサージュへと向かっていく。
 正面からの攻撃は容易くかわされてしまうが、ペルゼイン・リヒカイトが剣を振り上げるとその動きに呼応してメタリックレッドの斬撃も空中へと軌道を変えると、上空のソリッドソードブレイカーへと襲いかかっていった。

 

「しまった!?」

 

 レイの狙いを見誤ったキラはソードブレイカーを下がらせようとするが、ソードブレイカーの位置は、遠隔操作兵器同士がぶつかり合っていた場所であることはわかっており、逃れようとするソードブレイカーは次々と輝く斬撃に切り裂かれて爆発へと姿を変えていく。
 そして全部の飛行砲台を叩き落したペルゼイン・リヒカイトはもう一度剣を振り回して、斬撃をラピエサージュに向けて飛ばす。
 狙いの露骨な攻撃が、最高のコーディネーターたるスーパーコーディネーターと同一のスペックを持つキラを捕らえられるはずもなく、再びラピエサージュは攻撃を回避するのだが、その眼前で幾つもの爆発が起こってキラの視界が覆い尽くされてしまった。
 斬撃が飛んでいく先にはペルゼイン・リヒカイトが自ら放った黒い突起があり、それが切り裂かれて爆発したのである。
 爆煙が晴れたときにはキラの前にペルゼイン・リヒカイトの姿はなく、キラは辺りを見回すと、ペルゼイン・リヒカイトは剣を構えてジャスティスへ向かい斬りかかっていくところであった。
 そしてシンを回収し終えたインフィニットジャスティスのアスランもペルゼイン・リヒカイトの接近に気付くと、この場から離脱するために急速に機体を上昇させる。

 

「逃がすかよ、ニワトリ野郎!!」

 

 レイがそう言うとペルゼイン・リヒカイトは上半身を屈め、膝を大きく曲げて一気に大地を蹴って、大空へと飛び上がった。

 

「何!?」

 

 予想外の跳躍にアスランが驚きの声を上げるが、このままシンを奪還されるわけにもいかず、ジャスティスのビームライフルを手に取らせてペルゼインに向けてビームを放つ。
 だが跳躍したペルゼイン・リヒカイトは返り血で柄や鍔を赤く染めた大剣を正面に構えてビームを防ぎながらインフィニットジャスティスとの距離を詰めていく。

 

「レイ!まだ邪魔を…!行け、ファトゥム!!」
「今度もまた誰かを連れて逃げられるなどとは…思わないことだ!アスラン=ザラ!!」
「お前!その喋り方…!やはりふざけていたんじゃないか!」

 

 マシンセルの力でパワーアップを遂げたジャスティスから射出された、飛行補助機能と攻撃防御機能が一体となったファトゥムがマシンセルの力で巨大化してペルゼイン・リヒカイトに向かっていくが、対するレイはこの攻撃が来ると予想していた。
 より正確に言えば、ペルゼイン・リヒカイトを止められうるような攻撃はファトゥムによる足止めしかないであろうと、冷静に分析していたのである。
 そして、ペルゼイン・リヒカイトは既にエネルギーの収束を終え、メタリックレッドに輝くエネルギーを纏わせた大剣を振り構えてファトゥムを迎え撃つ用意を完了させていた。

 

「お気に入りの…必殺、俺の必殺技、パート1!」

 

 自分を貫くべく向かって来たファトゥムから伸びている、ミネルバすら容易く貫いた対艦ブレードに向けて、ペルゼイン・リヒカイトはメタリックレッドに輝くエネルギーを纏わせた大剣を振り下ろすと、大剣の刃はそのエネルギーに耐えられなくなったブレードを消し炭にしながら破砕し、ファトゥムの先端から末端までを一気に斬り進んでいく。
 ついにペルゼイン・リヒカイトが大剣を振り下ろしきると、ファトゥムは中央から真っ二つに分断されて断面から小さな爆発を起こし始めた。
 さらにペルゼイン・リヒカイトは2つに分断されたファトゥムのうちの1つに足を掛けると、それを足場に再びインフィニットジャスティスに向けて跳躍する。
 そして再びジャスティスに迫り、ペルゼイン・リヒカイトの大剣がインフィニットジャスティスを捉えようとしたときであった。

 

「ぐおっ!」

 

 大剣を振り上げてがら空きになったペルゼイン・リヒカイトの背部に大きな衝撃が伝わる。
 さらに続けてもう一度衝撃がペルゼイン・リヒカイトとレイを襲うと、ペルゼイン・リヒカイトは地球の重力に引かれて静かに地上への落下を始める。
 レイが攻撃の飛んで来た後方を睨みつけると、そこには銃口からまだ白い煙を上げているオーバーオクスタンランチャーを手にこちらへ向かってくるラピエサージュの姿があった。

 

「ゲイムシステムとのリンク良好…敵行動予測完了。当たれえぇぇぇぇっ!!!!」

 

 旧DCのアードラー=コッホが開発したゲイムシステムとの同調を始めたキラがオーバーオクスタンランチャーの照準を再びペルゼイン・リヒカイトに合わせる。
 ゲイムシステムが直接キラに告げる敵の所在に銃口を向けてキラが引鉄を引くと、放たれた弾丸は落下中で思うように行動が取れないペルゼイン・リヒカイトに面白いように命中していく。
 命中するたびに落下軌道を変えるペルゼイン・リヒカイトに面白いように弾丸が命中し、軌道が変わるたびにゲイムシステムが敵の居場所と合わせるべき照準をキラに告げる。
 しかしゲイムシステムとのリンク係数が上昇してもキラの精神状態には何ら変わるところはなく、キラは淡々と敵への攻撃を継続していた。
 ゲイムシステムはパイロットの戦闘能力を高める高性能なマンマシンインターフェースであるが、その分パイロットに与える負荷の大きさも凄まじいものがあり、かつての教導隊に所属したテンペスト=ホーカーや念動力を持たないながらもリュウセイと互角の戦いを繰り広げたテンザン=ナカジマも、ゲイムシステムに耐え切ることはできなかったのである。
 だが遺伝子レベルでコーディネイターの精神状態を侵す覇王の声を近くで聞き続け、そして連合から流出させたゆりかごと呼ばれる人格調整システムによる記憶の消去・捏造にも耐えうるほどの高いスペックを生まれながらに持つスーパーコーディネーターと同一のスペックを持つ4人目はさすがというべきか、彼にとって戦闘に関してのみ干渉を行うゲイムシステムの負荷は、負荷と呼ぶべきほど大きいものですらなかったのである。
 他方のレイは、大剣を盾代わりにして防御をしていたが、それでも防ぎきれない攻撃に傷付いていく機体に気を配りながら何とかバランスを崩さずにペルゼイン・リヒカイトを地上へ着地させたが、そこには既にマグナム・ビークを構えて向かってくるラピエサージュの姿があった。迎え撃つペルゼイン・リヒカイトも大剣を構えて一気にそれを振り抜く。
 地力では勝るペルゼイン・リヒカイトの剣は、突き出されたマグナム・ビークを弾いて軌道を大きく逸らさせた。だが、レイの次なる攻撃が来る前に、ラピエサージュは振り抜かれた大剣を握る腕を蹴り上げると、ペルゼインの腕から大剣がこぼれ落ちる。
 そしてレイの意識が一瞬だけ落下した剣に向いた瞬間に、ラピエサージュは後退しながら素早くオーバーオクスタンランチャーへ手をかけると、零距離からとはいかないまでも、近距離の銃口から放たれたエネルギーがペルゼイン・リヒカイトに向かって襲いかかっていった。
 撃ち分けが可能なオーバーオクスタンランチャーのうちで、弾速と攻撃範囲の広さに重点をおいたEモードがペルゼイン・リヒカイトのボディに命中すると、大きな爆発が起こってペルゼイン・リヒカイトがそこに呑み込まれる。
 そしてキラは自分の勝利を確信すると、機体を上昇させてアスランを追うべく戦場からの離脱を始めた。

 
 
 

 レイは爆煙の中から小さくなっていくラピエサージュの姿を見ながら、ゆっくりとペルゼイン・リヒカイトを立ち上がらせようとしていた。
 近距離からの攻撃をほぼマトモに喰らって少なからぬダメージが機体に残っていることは否定できず、現に攻撃が着弾した胸部中央には上下左右に大きな亀裂が入っており、そのダメージの幾分かはペルゼイン・リヒカイトと同調しているレイ自身にも及んでいる。
 しかし、シンが連れ去られ、ハガネやヒリュウ改の部隊もスレードゲルミルをはじめとしたシャドウミラーの決死の足止めを受けており、シンを助けに行けそうなのはレイのみ、という状況ではレイもそのままやられて倒れこんでいるわけにはいかなかった。
 だが高い飛行能力を持つインフィニットジャスティスやラピエサージュに、それらの機体ほどの飛行能力を持たない今のペルゼイン・リヒカイトでは追いつくことはできないこともわかっていた。

 

「チクショウ!思うように飛べないとこれじゃあ追いつけねえ…………!」

 

 シン救出のための対策を考えていたレイが言葉を詰まらせた。そして彼の視線の先には今、主を失って力なく建造物にもたれかかっているビルトビルガーの姿がある。

 

「シン、お前のためだ。……悪く思うなよ?」

 

 既に口調がザフト時代の頃と現在のものとが完全に混合してしまっていることを気にも止めず、ペルゼイン・リヒカイトは剣を拾ってビルガーの下へと歩いていく。
 そして静かにビルガーに手を触れると、ペルゼイン・リヒカイトとビルトビルガーの姿が淡い光に包まれ始めた。
 かつてペルゼイン・リヒカイトが水中戦闘能力を得るためにシーリオンを取り込んだ時のように、光の中でさらにビルトビルガーは発光を開始しながら徐々にその姿を小さいものを変えていく。
 そして光の輝きが最高にまで高まると、両機を包んでいたサンライトイエローの光の珠は弾け飛び、その中からペルゼイン・リヒカイトが再び姿を現した。
 だがその姿は今までのものとは異なっているところが幾つもある。
 ビルトビルガーの機体各部にある増加装甲ジャケットアーマーは吸収・再構成された上でラピエサージュの攻撃により大きく傷付いた胸部を覆い、さらに強化するべく龍の頭部のような形でペルゼイン・リヒカイトの胸部に集約されて装甲を補い、増強させるために用いられており、ビルガーの両翼は取り込まれて再構成される中でペルゼイン・リヒカイトの肩幅のサイズにまとめられて高い機動性と高速飛行能力をペルゼインに付加していた。
 ペルゼイン・リヒカイトは両手を前後に回したり、足をぶらつかせて機体に異常がないことを確認すると、新たに獲得した翼を羽ばたかせ、取り込んだテスラ・ドライブから粒子を撒き散らしながら大空へと飛び立っていった。

 
 

「待ってろよ、小僧おぉぉぉ!」

 
 

つづく