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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第36話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 01:01:02
 

スーパーロボット大戦 OS's DESTINY
第36話「強襲、教導隊」

 
 

 シンのヴァイサーガとアスランのインフィニットジャスティスの決着が着いた頃、ラミアとアクセルによる、互いに決め手を温存しながらの戦いがいまだ続いていた。
 アンジュルグ、ソウルゲインともに互いに相手の隙をうかがうように距離を置きながら技を繰り出しており、双方とも目立ったダメージもなく、まともな攻撃が命中してはいない。
 だがこの状況において先に痺れを切らし、仕掛けていったのはアクセルのソウルゲインであった。
 ファイティングポーズを取ったソウルゲインが大地を踏みしめながらアンジュルグとの距離を詰めていく。そして、これに対してアンジュルグはそれを上空に逃れつつ牽制するべく腕部を正面に構え、グリーンに光輝く4条の矢、シャドウランサーをソウルゲインに向けて放った。これに対してソウルゲインは上空から向かってくる一本目の矢を上半身を屈めてやりすごし、すぐに向かってきた2本目を機体を左前方に飛んでかわす。さらに、迫ってくる3本目の矢は首を右に傾けたソウルゲインの頭部のすぐ脇を通過するに終わり、ソウルゲインが前方に突き出した左の拳が4本目の矢を打ち砕いた。

 

「!」
「喰らえ、玄武剛弾!」

 

 予想以上の動きにラミアはわずかに眉を動かす。対するアクセルのソウルゲインが右の拳を繰り出すと、その勢いも受けてソウルゲインの右腕の先端の拳が高速で回転を開始するのと同時に、アンジュルグへと向かって射出された。ラミアが当初に想定していたのよりも近い間合いから繰り出された鋼の拳は、回転速度を増しながらアンジュルグとの距離を詰めていく。
 ラミアはそれを回避不能だと判断すると、アンジュルグは手にしていたミラージュソードを構えて迫り来る拳撃を迎え撃つべく、剣を振り抜いた。
 だが、真っ直ぐ向かってくる拳の勢いをすぐに殺すことは特機であるアンジュルグであっても難しく、高速で回転する拳を受け止めた剣ごと徐々に後方へと押し込まれていく。
 回転する拳と銀色に輝く刀身が凄い勢いでぶつかり合って無数の火花を散らす中、アンジュルグはそれでもなんとか剣を振り抜くが、コックピットにはすぐに新たな攻撃を告げる警報が鳴り響いた。
 ラミアがその方向に目を向けると、アンジュルグの脇からもう1つの拳、つまりソウルゲインの左の拳が機体の死角を突くかのような角度で向かってきていた。

 

「しまった!?」

 

 それでも何とか反応し、刀身でもう1つの拳をアンジュルグは受け止めるが、今度は拳の勢いに容易く敗北してしまい、緩やかに機体が下降を開始する。そして、アクセルはそれを待っていた。
 ソウルゲインは生じたこの隙を狙ってアンジュルグをその間合いに捉えると、大地を蹴って飛び上がり、第2の拳撃の衝撃の余波に見舞われていたアンジュルグを、腰の回転を加えた回し蹴りが襲う。
 コックピットを狙った必殺の蹴りは、辛うじて両腕をクロスさせてガードしたアンジュルグを地面に叩きつけるに終わったが、地面に激突したアンジュルグは地面の土を数十メートル抉り取ってからようやく動きを止めた。
 そしてそれを好機としてアクセルは再びアンジュルグとの距離を詰めるべく、ソウルゲインはアンジュルグに向かって突っ込んでいく。

 

「これでトドメだ、W17!……何?!」

 

 だが敵機の襲来を告げたのは地面に倒れ込んでいるアンジュルグではなく、コックピットに警報が鳴り響いたのは今まさに攻撃をしかけようとしていたソウルゲインの方であった。
 アクセルはとっさにソウルゲインの足を止めさせると、その目の前を一直線に青い衝撃波が通り過ぎていく。アクセルはその跡に目をやると、決して広くはないが、衝撃波が通過していった地面は深く切り裂かれている。
 その特徴的な痕跡を見て一瞬でその犯人の正体を理解したアクセルは鼻で笑い、表情にもほんのわずかに笑みを浮かべながら攻撃が繰り出されてきた方へと目を向けた。

 

「この技…ほう、あの人形はやられたか。ざまぁないな」

 

 アクセルが目を向けた先からこちらへ向かってくる機体の正体は、風を受けて背部のマントをなびかせながら真っ直ぐにソウルゲインを見つめる蒼い特機。
 鞘に収められた剣、五大剣を腰部に引っさげ、先端が鋭角的なデザインとなった頭部に、青と黒をベースの色とした装甲、シン・アスカと同じような赤い瞳を持ったその特機の名はVR−02ヴァイサーガ。
 もはや言うまでもなく、CE世界の覇王と本質的な部分で相容れえぬ科学者であり、ラミアの母ともいうべきレモン・ブロウニングによる、ある種の嫌がらせの結果としてシン・アスカの手に渡った、
 極めて近く限りなく遠い世界で製作された特機の1つであり、シン・アスカの手に渡ることがもう少し遅れていればマント以外の部分のほとんどを金色に塗られ、脚部に大型ビームブレード発生装置を取り付けられる予定であった。

 

「よくもラミアさんを!水流…爪牙っ!!」

 

 当然ながらシン・アスカがそのような舞台裏の事情を知るわけもない。今現在彼の頭にあるのは、ソウルゲインに追い詰められつつあるラミアのアンジュルグを救出することのみであった。
 ソウルゲインから目を離さずに向かってくるヴァイサーガは、接近戦のレンジに入る直前に、両腕の先端にカギ爪を伸ばし、構え、飛びかかる。
 振り下ろされた右腕先端の赤い爪をソウルゲインはバックステップしてかわすが、ソウルゲインが反撃態勢に移る前に、ヴァイサーガはその左腕の爪を掬い上げるように振り上げる。
 それをソウルゲインは上半身を仰け反らせて攻撃をやり過ごすと、アクセルは第三撃が来ることを嫌がってソウルゲインを大きく後方へと下がらせる。
 だがヴァイサーガによる連続攻撃はまだ続いており、振り上げた右腕を再びソウルゲインに向けて振り下ろした。

 

「甘いっ!」
「っ!?」

 

 しかしアクセルもそう易々とシンに連続攻撃を許すべくもない。振り下ろされようとするヴァイサーガの右腕であったが、アクセルはソウルゲインの左半身を強引にヴァイサーガの右腕の内側にねじり込ませる。
 続けて、流れるような動きでその左腕によってヴァイサーガの右腕を内側から弾き飛ばすと、今度はカウンターを見舞うべくソウルゲインが、右の拳をヴァイサーガの顔面に向けて繰り出した。
 しかし、今度はヴァイサーガの左腕が、やはり強引にではあるが、いち早くソウルゲインの右腕の内側に潜り込んでおり、ソウルゲインがしたのと同じように繰り出された攻撃を内側から弾き飛ばす。
 これにより両機ともが正面から激突すると、両機のコックピットのその衝撃で大きく揺らされ、中のパイロットにも衝撃が伝わる。シン、アクセルともに特機どうしがぶつかるという小さからぬ衝撃にほんのわずかに攻撃の手が緩むが、
 すぐさまソウルゲインは空いている右足を振り上げる。だがこの攻撃はいったん距離を置くべく機体を急上昇させようとしていたシンの判断が幸いして空を切ってしまう。
 そして上空へと逃れながらもヴァイサーガの態勢は整え直しつつ、腰部に備え付けられたクナイへと手をかける。
 他方のソウルゲインもすぐさま態勢を整えるとほぼ同時に、機体正面に構えた双方の掌を近づけ、エネルギーのチャージを開始していた。
 ソウルゲインの両腕に青と白に光るエネルギーが集まっていき、それらが徐々に混ざり合っていく。そしてアクセルとソウルゲインが上空を見上げるのとほぼ同時にエネルギーを収束させた両の掌を、上空へと向けた。

 

「列火刃っ!」
「喰らえ、青龍鱗!!」

 

 ヴァイサーガの両腕に握られていたクナイが上空から投げ下ろされるのと同時に、上空へ向けられたソウルゲインの掌から青と白のエネルギーが混ざり合った光弾が放たれる。
 クナイと光弾は、互いにソウルゲインとヴァイサーガを捉えるべく一直線に向かっていくが、ほぼちょうどソウルゲインとヴァイサーガの中間地点において両者はぶつかり合い、瞬間的に小さからぬ爆発を起こした。
 そして爆煙がソウルゲインとヴァイサーガを後方へと吹き飛ばすのと同時に両者の視界を覆いつくし、互いの姿を覆い隠す。

 

「くそっ!やっぱり一筋縄じゃいかないか!」

 

 誰に向かって言うでもなく、シンは刃を交えるのが数えて3度目となる相手パイロットと、戦うのが2度目となる特機の手強さを口にした。
 アスラン・ザラとインフィニットジャスティスとの戦いを終えて自らを一度は平常的精神状態に戻すが、汗は先ほどぬぐったはずなのに、額から熱とわずかながらも重さを感じさせる脂汗が流れ落ちようとしている。
 前方を注視しつつも、呼吸を整え直すべく、口内にわずかにたまった唾液とともに空気を飲むと、やがて視界を覆っていた爆煙が空気の流れにより薄められてきた。そして、煙の奥からと呼ばれる機体が姿を現す。

 

「初めて乗るにしてはなかなかやるな」
「俺だっていつまでもアンタにやられてやるほどお人好しじゃないっ!」
「ふん、口は相変わらず達者らしい。だが俺だけでなくこのまま基地に待機させている連中も相手に……なに!?」

 

 何かによってアクセルの言葉が遮られた。ソウルゲインのモニターに映ったのは、基地敷地内に待機させていたエルアインスや量産型ヒュッケバインで構成されている部隊が、大出力のビームに飲み込まれ、消えていく映像。
 さらに、間髪置かずに今度はまだ戦闘空域近辺で様子見をしていたシロガネ付近で小さな爆発が数回発生する。
 シンとアクセルが視線を向けると、そこには機銃と発射管から土砂降りの雨のように降り注ぐ弾幕を潜り抜けながら黒い機影がシロガネへ迫っていくところであった。
 銃弾を一手早い移動で回避し、ミサイルのほとんどを、機体を上下左右に振り回すことで切り抜けながら、頭部のバルカンでミサイルを迎撃し、シロガネとの距離を詰めていく。
 そしてシンの目が黒く塗られたボディ、機体にペイントされた赤黄黒の家紋がペイントされたヒュッケバインの姿を捉えた。

 

「黒いヒュッケバインMK−掘帖張┘襯競狆佐かっ!」
「何者か知らんがこれ以上好き勝手にはさせん!」

 

 アクセルがそう言うと、腕を伸ばしたソウルゲインの左右の拳が高速回転を開始し、急速にその回転速度を上昇させる。
 そして、その拳をシロガネへと迫る黒いヒュッケバイン、ヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戮悗伴予个靴拭
 空気を切り裂いて回転しながら、2つの拳がヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戮悗噺かっていく。他方、そのヒュッケバインのコックピットではソウルゲインが放った回転する拳撃、玄武剛弾の接近を告げるが、今現在は謎の美食家レーツェル・ファインシュメッカーと名乗っているエルザム・V・ブランシュタインはわずかに鼻で笑うのみで攻撃を回避しようとはしなかった。

 

「攻撃を避けないだと…!?」

 

 自分で攻撃を仕掛けたとはいえ、全くの不意打ちというわけでもないのに回避行動を取らないという、常識的には考え難いその行動に驚きを隠しえないアクセルであったが、その直後にその理由は明らかとなる。
 ヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戮悗版る拳であったが、ヒュッケバインを捉える前に玄武剛弾は下方から急上昇してきた回転する別の物体によって弾き飛ばされたのである。

 

「また邪魔が入っただと!?誰だっ!!」

 

 拳自体が回転しながら敵を砕く玄武剛弾を弾き飛ばすと、突き出た先端ごと回転している物体は地上に山がそびえるかのように直立する青、黒、赤で塗られたボディを持つ特機の下へと戻っていく。
 その回転する物体を両腕に装着し、先端のドリルユニットを両肩上部へと戻した一振りの刀を下げる機体、シンやラミアにも見覚えのある3代目の超闘士、その名はグルンガスト参式。そして、それを駆るのは…

 

「俺か?…我が名はゼンガー……ゼンガー・ゾンボルト!悪を断つ剣なり!」
「ゼ、ゼンガーだと!?」
「ゼンガー少佐!」
「その声、シン・アスカか!?」
「はい!」
「だがその機体は…」
「敵艦にあった新型の特機です!」
「私もいるぞ」
「ギ、ギリアム少佐!?」

 

 ヴァイサーガのモニターに最も端、壁際的位置に通信ウインドウが開いて、ちょうど外淵を背にしたような角度で緩やかなウエーブのかかる薄紫色の髪をなびかせたギリアム・イェーガーの表情が映し出される。
 そしてヴァイサーガの前を見慣れない、オリジナルのものよりも鋭角的なラインと巨大なビーム砲、テスラ・ドライブ搭載型の背部フライトユニットを装着したゲシュペンストらしき機体が通り過ぎていった。
 他方、次々と現れた援軍に苛立ちを増しながらそれを見ていたアクセルは、黒いゲシュペンスト―ハロウィン計画に基づいて強化改造されたものである―ゲシュペンストRVが巨大なビーム砲−メガバスターキャノンを携行していたことから、さきほど基地を砲撃した機体の正体がこのゲシュペンストであることに気付いた。
 そうであるとすれば、いち早くこのゲシュペンストを落とすべく攻撃を仕掛けたいところであったのだが、今のアクセルは、斬艦刀を背負ったグルンガスト参式だけでなく、今の今まで戦っていたヴァイサーガ、それに加え自分と互角の腕を持つラミアのアンジュルグがいる以上、迂闊に攻撃を仕掛けることができないでいる。
 アクセルがそんな状態にあることを知ってか知らずか、ギリアムはシロガネとの距離を縮めながら手元の通信機器を操作していた。

 

「シン、マスタッシュマン相手によく頑張ったな…あとは俺達、いや俺の仕事だ」
「え!?どういうことですか?!」
「…いずれ説明するさ。応答せよ、シャドウミラー隊指揮官……ヴィンデル・マウザー大佐」
「何者だ?」
「ヘリオス……と言えばわかるだろう」
「!!」
「ホントに!?」
「顔はともかく、あの声は……!」
「ふ、ふふふ……久しぶりだな、ヘリオス……ヘリオス・オリンパス。それがお前の素顔か?」

 

 その場にいたシンだけでなく、ゼンガーやレーツェルもが顔をしかめた。聞き覚えのない名詞の意味を思考しながら、ギリアムの持つ偽名か何かだという想像は可能であったが、だからといって、「影」と呼ばれる正体不明の部隊の、それもその首魁と一介の情報部員に過ぎないギリアムが何かのつながりを持っているとは素直には考えられない。
 人間性こそ知っているものの、素性自体あまり分からないギリアムだからこそ、そのような繋がりがあってもおかしくないとも考えられたが、そうであるとしても敵勢力の親玉とおぼしき人物と何かの因縁があろうとは通常であれば考えられない。
 シャドウミラーの構成員であるアクセルの他には、元シャドウミラーというべきラミアが事態の推移を静かに見守っていたくらいであった。
 だが、ギリアムとシャドウミラー首魁のヴィンデルらとの通信を聞いて、シン達にも確実に分かったことがある。いかなる理由があるのか詳細な理由まではわからないが、自分達の仲間であるギリアムとシャドウミラーが明確に敵対しているということ及びシャドウミラーの企みが世界規模で何らかの災いをもたらすおそれがあるということ程度なら理解できた。
 そして、それだけわかっていればシンたちもどちらにつくべきか、何をすべきかは簡単にわかる。
 ギリアムとヴィンデルの話が決裂に終わり、その場にある機動兵器のパイロットの誰もが些細なきっかけさえあれば戦闘を再開できる心の準備を完了させている。あとは誰が戦闘再開の合図を出すかであった。

 

「ここで決着をつけてやる。貴様ら全員まとめてな」

 

 ギリアムらの話を黙って聞いていたアクセルがコックピットのモニターに映し出されたゲシュペンストRV、ヒュッケバインMK−轡肇蹈鵐戞▲哀襯鵐スト参式、アンジュルグ、そしてヴァイサーガをそれぞれ一瞥した。

 

「出来るとお思いですか?……私だけならまだしも…」
「俺だっているぞ、アクセル・アルマー!!」
「シン!?だが彼女は…」
「キョウスケの部下だが、しかし…」
「Wシリーズ……君は我々の味方なのか?」
「連中に捕まった俺を助けてくれたのはラミアさんです!だから…!」
「…いいだろう。ゼンガー、レーツェル、異存は?」
「ない」
「行動でその証を立てるのであれば…」
「…了解」
「ありがとうございます、少佐!」

 

 シン達の意思が揃ったところで、ソウルゲインは両肩の正面に左右の拳を構えさせてファイティングポーズを取った。そしてその両眼に再び闘気と殺気が戻ると、握った拳はヴァイサーガやゲシュペンストに向けられて、交渉が決裂したことを蛮勇に物語る。言うまでもなくまだ戦いはまだ続いているのである。
 突然の乱入者にあたるギリアムやゼンガーら旧教導隊の出現で戦闘が一時的に止まっていたにすぎない。
 そして、戦闘の最中に容易に他者を信用し、受け入れた(ようにアクセルには映る)シンやヘリオスことギリアムら旧教導隊の様をアクセルは呆れ果てたような目で見ていた。

 

「甘い…その甘さが新しい世界の妨げになるとわからんようだな、お前には」
「今まではわかろうともしなかっただけです。私は指令さえこなしていれば良かった。ただ…その味を知ってしまった。それだけです、アクセル隊長」
「ふん……ならば、お前はこの世界をどうする気だ?戦いを終わらせ、平和をもたらすつもりだとでも言うのか?」
「…平和は何も生み出さん。ただ世界を腐敗させていくのみ。そして、闘争を忘れた者達は兵士を……軍を切り捨てる。我らの存在を否定するのだ」
「わかっておられないようですね、ヴィンデル様」
「何だと?」
「戦いに他人を巻き込み、殺すことでしか存在を見出せない……その後に何が残りますか?生まれるものと失われるもの…それは等価値ではない。彼らの中の一人もそう言っていたはず」
「貴様……」
「アンタ達をほっといたら、また戦いに巻き込まれる人達が出てくる……!もしアンタが言うみたいに腐敗するんだとしたって……戦いが続くことに比べればはるかにマシだ!」
「ええい!何も分からぬ小僧が!そのような甘い考えこそが世界を腐らせていくのがということがわからんのか!」
「そんなこと…わかってたまるかぁっ!」

 

 劇的な戦争のないまま緩やかに時が流れて腐り始めた世界を憂い、人類の衰退防止と発展のためにコントロールされた争いを世界にもたらそうとするヴィンデルの思考と、身近な人間だけでなく、その目で見ることができる人々、争いと関係なく平和に生きることを望む力なき者が1人でも傷付き、息絶えることのないよう、戦争を終わらせたいと願い戦士となったシンの思考は、双方とも世界や人類の行く先・未来を思っているものである点及び覇王のように世界は己のものであると考えているわけではない点において共通する。
 だがヴィンデルの意識は世界に住まう個々の人間ではなくほとんどが世界全体のみに向けられている。いわば戦いの中及び先についてマクロ的なアプローチをしているヴィンデルに対して、連合・オーブ間の戦争とフリーダムの戦闘参加により家族を失い、戦争の中で仲間や守ると誓った女を失ったシンの意識は戦争や争いにその者の意思とは関係無しに巻き込まれる個々の人間に向けられている。
 いわばこのようなミクロ的アプローチはヴィンデルとは真逆のものであるといっても過言ではないであろう。
 そうであるとすれば、双方とも戦士である以上、最終的には戦いという形によってそれぞれの義・信念をぶつけ合い、実現していく他はない。
 そうであれば次に問題になるのは、戦いのゴングを誰が鳴らすか、何時いかなる時に鳴らすかという点にシフトしていく。

 

「レモン、通常転移だ。この場から離脱するぞ」
「でも、私達がずっと捜していたヘリオスを放っておいていいの?」
「万が一にも、ここでシステムXN(ザン)をこれ以上損傷させるわけにはいかん」
「そうね……。コアを手に入れても、システムが壊れちゃ意味ないものね」
「最悪の場合、奴なしでもあの機能は発動できる。……我々がこちらへ来たようにな」
「その分、確実性には欠けるけどね」

 

 ここでヴィンデルが選択肢の中から選んだのは、自分達の本来の本懐の達成のための撤退であった。

 

「…アクセル、そろそろハガネやヒリュウ改が来るわ。基地は放棄して下がるわよ」
「…わかっている。W17、それにシン・アスカ。いずれ必ずベーオウルフのついでに、ケリをつけてやる。そのときを楽しみにしておけ」
「!?待てっ!」

 

 先ほどまではいつ戦いが再開されても何らの不思議もなかった状態であったが、現在おかれている状況からシャドウミラーの面々が選んだ撤退という選択肢にシンは驚きの顔を隠すことはできなかった。
 残っていたわずかなシャドウミラーの機体が急いでシロガネへと戻っていくのを見て、ヴァイサーガのモニターに映っている、これまた後退を開始せんとしていたソウルゲインに追撃をかけようとするが、それはレーツェルが遮った。

 

「いやここは深追いするな、シン!」
「どうしてですか、エルザム少佐!?」
「このまま戦い続ければいずれ干上がって戦えなくなるのは補給もままならない我々だ。それに間もなくハガネとヒリュウ改が来る。今はそれを待て」
「………了解です」

 

 クロガネと別れて密かに動いていたレーツェルやゼンガーらは、いくら根回しなどにより最低限の補給を受けることが出来たとしても、ここから連戦を続けるに足るだけのバックアップ体制はない。
 また、真相の一部を口にしたギリアム、シャドウミラーと袂を分けたラミアらとしては、シンらだけでなくヒリュウ改やハガネの仲間達に真相を告げなくてはならない。
 以上からすればこれ以上の追撃・追跡は断念せざるを得なかったし、シンとしても心配をかけたであろう仲間達に自分の安全を知らせなければならないであろうと思い至り、今回の追撃は断念することとした。
 それにハガネには今でこそ記憶を失っているものの、同じ世界からやってきた戦友であり仲間であるレイ・ザ・バレルが待っているであろうから、というのもあったことは事実であろう。
 だが、間もなくシンたちと合流したハガネにレイの姿はなかった。アスラン・ザラとキラ・ヤマトに捕獲・拉致されたシンを助け出すべく、レイとペルゼイン・リヒカイトがシンらの後を追ったことはまだシンの知るところではない。

 

   ▽   ▽   ▽

 

 そしてちょうど1つの戦いが終わりを告げようとしていたとき、レイに災厄が降り注ごうとしていた。

 

「クソっ!動け、動きやがれ!」

 

 コックピット内の計器類と思しき部分を手当たり次第に動かし、レバーを上下させるなどしていたレイは、シン救出の途中で休憩のために立ち寄ったとある無人島において、アインストの群れ、そしてそれらを率いるオリジナルのペルゼイン・リヒカイトに包囲されようとしていた。攻撃こそ仕掛けてこないものの、既にレイのペルゼイン・リヒカイト周辺はアインスト・クノッヘンにグリート、ゲミュートなどにより取り囲まれている。

 

 雨風がしのげる洞穴で休んでいるところに、突如として頭痛が走り、本能的に身の危険を察知したレイが変身という名の機体召喚を行って、大剣を手にした、御伽噺に出てくる赤鬼のような面をしたペルゼイン・リヒカイトに乗り込んだまではよかったのだが、その後がどうすることもできなかった。
 歪んだ空間の中から現れた骸骨武者のような空洞のボディと両肩に1つずつ鬼の面をつけた機体、オリジナルのペルゼイン・リヒカイトが手にしている刀を大地に突き刺すと、そこから光が溢れ出し、その光がおさまったと思ったら、今度は機体が操作をまったく受付けなくなり、身動きがまったく取れなくなってしまっていたのである。
 そのような状態のレイとペルゼイン・リヒカイトを見て静かに笑みを浮かべるアルフィミィは、オリジナルのペルゼイン・リヒカイトをレイのペルゼイン・リヒカイトの傍へと近づけると、レイの機体の顔面部たる鬼の面へと手をかけた。

 

「ふふ…あなたの力…有効につかわせてもらうのですの…」
「何!?どういうこ…と………だ………………………」

 

 アルフィミィがそう言った途端、レイの意識は暗闇の中へと徐々に引きずりこまれ始め、疑問の言葉を言い終えるのとほぼ同時に、意識は完全に闇の中へと落ちていった。
 そして、レイのペルゼイン・リヒカイトを少し重そうに抱えたオリジナルのペルゼイン・リヒカイトがゆっくりと浮き上がると、引き連れていたアインストらも連れて歪んだ空間の中へと姿を消していく。
 パイロット・機体ともに予想以上に高い戦闘能力を秘めているだけでなく、戦場で適宜新たな力を獲得してゆき力を増してきたレイのペルゼイン・リヒカイトの利用価値は、アルフィミィらアインスト低いものではない。
 シャドウミラーやインスペクター、ノイエDC、それにラクシズとはまた異なった意図を持つアインストが本格的な活動を開始するための準備は、最終段階に到達しようとしていたが、それを知る者は誰もいなかった。

 

(つづく)