Top > SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第42話
HTML convert time to 0.010 sec.


SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第42話

Last-modified: 2011-12-09 (金) 01:09:24

テスラ研を奪還すべく奇襲をかけたものの、インスペクター四天王リーダーであるヴィガジが駆るガルガウの猛攻によって傷付き、絶体絶命となったグルンガスト参式とゼンガーの前に現れたのは
己と同じような口調と太刀筋、そして斬艦刀を操るウォーダン・ユミルとその愛機スレードゲルミルであった。
この男の突然の出現は、スレードゲルミルによるドリルブーストナックルを喰らったヴィガジだけではなく、ウォーダンの標的であると考えられていたゼンガー、
そして、何度かウォーダンと直に刃をかわしたこともあるシンにとっても衝撃的なものであった。

 

「ウォーダン・ユミル…!まさかゼンガー少佐を…!?」

 

スレードゲルミルより一足早く戦場に乱入してきたメキボスのグレイターキンに斬撃を見舞いながらシンが呟く。だが、ウォーダンがそれに応えることはない。ただ彼の口から出たのはゼンガーへの言葉のみであった。
ウォーダンは、自身の目的―ゼンガーを倒すのは自分以外であってはならず、そしてつけるべき決着はこのような形であってはならないのだということ、そして己自身の確立するのだということ―を告げると
当面の標的、つまりグルンガスト参式を大破させた金色の大怪獣ガルガウに狙いを定める。そして、スレードゲルミルは肩から分離した柄を掴むと、斬艦刀を展開してガルガウと向かい合った。

 

ガルガウとスレードゲルミルが互いに攻撃態勢を取りながら向かい合って対峙する。互いに相手の出方を伺いながらいかにして己が先制攻撃をせいこうさせるか。
2人と2機の間を沈黙が支配している中で、当事者の1人であるヴィガジはこれまで収集されて己の記憶の中にインプットしておいた情報を高速で整理していた。
ノイエDCという地球の軍隊勢力が保有する「特機」という分類に属する大型の機体であり、グルンガストと呼ばれる機体シリーズの特徴を備えるとともに、
今目の前で手にされている「斬艦刀」と呼ばれる巨大な刀剣がその最大の特徴かつ戦力の源泉である。
これらの情報を踏まえてヴィガジが出した結論は、相手の間合いに入ってはならない、ということであった。
これまでの情報が正確ならば相手の斬艦刀による攻撃を喰らった場合には、己のガルガウすらただではすまないおそれがある。
地球人など野蛮で未熟なサル同然だと感情では思っているが、一人の戦士としてのヴィガジは冷静に相手の実力を値踏みしていた。
ならばメガスマッシャーで斬艦刀の届く範囲の外から、またはその内側から―そう考え、ヴィガジがトリガーに手をかけたのとスレードゲルミルが沈黙を破って動き出したのはほぼ同時であった。

 

「一意専心…推して参るっ!!」

 

ウォーダンの咆哮とともに斬艦刀を構えたスレードゲルミルの背部ブースターから猛火が噴き出す。その勢いにより地面の岩と砂を左右に撒き散らしながら、スレードゲルミルはガルガウへと迫っていく。
その巨体の纏う気迫と勢いに、胸部に展開したメガスマッシャーのトリガーに手をかけていたヴィガジの脳裏に一抹の不安がよぎった。
もし回避された場合、隙だらけとなったガルガウは斬艦刀の餌食となって真っ二つにすらされかねない。それは避けなければならない。
そしてヴィガジは1つの結論に辿り着く。
そもそも、野蛮な地球人との正面から立ち向かってやる必要などない。正面きって戦うだけが脳ではないのだということを知らしめてやるいい機会である。
ヴィガジの意を受けてガルガウの胸部の巨大な砲門に、急速に光が集まっていく。そしてスレードゲルミルの巨体すら飲み込むほどのものとなって、砲門から解き放たれた。

 

他方、それを見たウォーダンは放たれようとしている破壊の光ごと金色の大怪獣を斬り捨てようと考えていた。
だが、斬艦刀の切っ先がガルガウに届くよりも前に、スレードゲルミルのすぐ目前の地面にガルガウから放たれたメガスマッシャーが着弾する。
地面にぶつかった巨大なエネルギーの塊は、大きな爆発とともに大量かつ濃厚な土埃を巻き上げるとともに、スレードゲルミルの足を止めてその勢いを殺すことに成功した。
ヴィガジはそこに一瞬の勝機を見出すと、足元のブーストペダルを一気に踏み込んだ。ガルガウの背部及び両腕のロケットブースターから猛火が噴き出し、スレードゲルミルとガルガウの距離はあっという間に詰める。
そして両腕の大型クローがスレードゲルミルの両肩をがっしりと掴んで押さえ込み、ガルガウは斬艦刀の間合いの内側に潜り込んで組み付くことに成功する。

 

「ぬぅっ!?」
「どうだ、この零距離ならば自慢の大剣も使い物になるまいっ!」

 

続けてガルガウは斬艦刀を手にしていないスレードゲルミルの左腕を掴んでいた右腕の大型クローで、相手の顔面を渾身の力を込めて殴りつける。
細かな破片がスレードゲルミルの頭部からこぼれ落ちるとともに大きな衝撃がそのコックピットの内を揺らす。
それに怯むことなくウォーダンは、斬艦刀を持つ愛機の右腕を解放するべく力任せに右肩を振り回すのだが、ガルガウのアイアンクローはそれを許さない。
さらに追い撃ちをかけるべく、ガルガウはスレードゲルミルの首元にその牙を突き立てた。噛み付かれたスレードゲルミルの首元の装甲に少しずつ小さな亀裂が入り始めると、
いくらマシンセルによる再生機能があるとはいえ到底よろしくはない状況にウォーダンは表情を曇らせた。
そしてフリーになっている左腕で今度はスレードゲルミルがガルガウの顔面を殴り付けた。
1発、2発、3発と特機の強大な力で殴りつけられたためにさすがのガルガウの顎の力にも緩みが生じ、スレードゲルミルの首元は解放されるのだが、
それとほぼ同時に殴り飛ばされながらもガルガウの尻尾が、仕返しとばかりにスレードゲルミルの横っ面に叩きつけられた。

 

「ぐっ!ならば…ドリルッインフェルノォォォッ!」

 

今度はスレードゲルミルの側がガルガウに負けじと、急速に回転を始めた頭部先端の巨大な真紅の回転衝角をガルガウの首元に突き立てた。
高速で回転するドリルの先端は、ガルガウの首元の装甲の破片を撒き散らしながら、少しずつではあるものの奥へ、奥へと進んでいく。

 

「ちょこざいなあぁぁっ!!」

 

だがこれにより俯く形となったスレードゲルミルの顔面に対してガルガウが、今度は思いっきり膝蹴りを見舞う。
さらにガルガウは左側のアイアンクローを振り下ろしてスレードゲルミルの後頭部を叩きつけると、再び下を向いた顔面に膝を打ち付けた。
このようにスレードゲルミルとガルガウとの戦闘が激しさをましつつあったその頃、ヴァイサーガとグレイターキンの戦闘も徐々にヒートアップし始めていた。
五大剣を携えたヴァイサーガが、グレイターキンから放たれるビームを掻い潜りながら一気に間合いを詰めていく。
そして右腰の脇に構えた剣を振り抜くが、グレイターキンもそれを高周波ソードで受け止める。これに続けてヴァイサーガは持ち前の機動力を活かし、左右から連続して斬撃を見舞うが、
グレイターキンも剣と盾を上手く利用して攻撃を受け止めるため、さほど機体にはダメージが加わることはない。
軽い口調とは裏腹に確実な戦い方を繰り広げるメキボスにシンの焦りと苛立ちはさらに大きなものとなり始めていた。
そんな内心を反映してか、五大剣がまたも高周波ソードで受け止められたヴァイサーガは、グレイターキンのシールド表面を思いっきり蹴り付けた。
その衝撃でグレイターキンはややバランスを崩す一方、蹴撃の反動でわずかに距離を取ったヴァイサーガは素早く剣を鞘に収めて次の攻撃の準備を終えていた。

 

「地斬疾空刀ッ!」

 

シンの掛け声とともにヴァイサーガが鞘から剣を引き抜くと、鞘の内部でチャージされたエネルギーの斬撃が至近距離からグレイターキンを襲う。
しかし、メキボスもインスペクター四天王の一角であり、シンの思い通りにものごとは進まない。グレイターキンはバランスを崩しつつもビーム砲のチャージを終えており、
自らに襲いかかろうとするエネルギーの斬撃とその先にいるヴァイサーガに向けて、蓄え終えたエネルギーを一気に解き放つ。

 

「喰らえ、フォトンビーム!」
「!?」

 

放たれた白い閃光はあっという間にヴァイサーガから放たれた斬撃を呑み込み、さらにヴァイサーガへ迫っていく。突き刺さるような殺気と強大なエネルギーを、シンは動物的な勘によって感じて、その全身に寒気が走る。
とはいえ、このおかげで、ダイレクト・リンク・システムは既にシンの意思をある程度反映して回避行動を開始していた。そのため機体の回避行動はなんとか功を奏し、シンは機体をとっさに上方へ逃すことで絶命を免れることができたのであった。

 

「ほう、今の攻撃をかわすとはな。なかなかやるじゃないか…ん?」
「?何だ、この反応…地下から何か来るのか!?」

 

ヴァイサーガ、グレイターキンとも地下からの何物かの接近を捉えており、それぞれのコックピットにこれを告げる音が鳴り響く。
そしてテスラ研から少し離れたところにある地面が左右に割れると、その中から1機の特機サイズの機体がせり出してきた。
青みを帯びた黒を基調とした装甲に加え、両肩・両脛・両腕を真っ赤な増加装甲で覆い、その頭部からは日本に伝わる兜を思わせる突起が2本延びている。
全身を遠くから見たシンの脳裏には、映像資料でみたことがある、甲冑を纏った武士が浮かんでいた。
ただ、その資料では甲冑を纏っていたのは人間であったが、目の前で甲冑を纏っているのは全長50メートルを超える特機であり、その見た目だけで相当の威圧感がある。
一方で、テスラ研を制圧しながら目の前に現れた新型の特機を発見することができなかったヴィガジの面目は完全に丸潰れであった。

 

「…ダイナミック・ゼネラル・ガーディアン…いや、あえてその名は呼ぶまい。総帥がこの俺に遺した機体……俺のために作られた剣…そう、名付けるなら…ダイ・ゼン・ガー…!」
(…でっかいゼンガー少佐ってことか?確かにあの人は武士っぽいし…)

 

ある意味、想像の遙か上を行く独創的なネーミングにジョナサン、フィリオだけでなく、シンも呆気に取られてしまうが、このネーミングはヴィガジの怒りの火に油を注ぐ結果となってしまっていた。
そして、シン達にとってはネーミングはともかくとして、ゼンガーの新しい機体の強大な戦力に大きな期待を寄せていたのであるが、その機体がすぐに期待どおりのものとはならなかった。
機体のシステムトラブルによってダイゼンガーは内蔵武器の全てが使用不可能な上、機体自体も上半身が辛うじて動く程度にすぎなかったのである。
ジョナサン、フィリオが機体を動かせるようにするべく、すぐにOSの書換を始めるのであるが、丸腰ではいずれ限界が来るはずであるとリシュウにも焦りが生まれていた。

 

「ク、ククク…とんだ木偶人形だったな。白い奴もろとも葬ってくれる!」

 

ガルガウのアイアンクローがスレードゲルミルのボディを殴りつけ、そのコックピットが揺れる。さらに続けざまにもう一撃が繰り出されるが、それはスレードゲルミルの腕に阻まれる。
そして両機が今度は手と手を合わせて巨大なロボットどうしの力比べが始まった。そんな中、ウォーダンには丸腰となってしまったゼンガーを助けるための妙案を閃いていた。
白の咆哮巨神と金色の大怪獣が正面から両手を合わせて力比べをしている中で、ウォーダンはコックピットのモニターであるものの所在を探していた。
すると、スレードゲルミルはがら空きになったガルガウのボディに蹴りを入れて相手を突き飛ばすと、探し物の在りかへと体を向けた。

 

「ゼンガー! お前にはまだ戦う術がある!!」
「術だと!?」
「そうだ、貴様の斬艦刀…参式斬艦刀だっ!今それを…」
「調子に乗るなぁぁぁぁっ!地求人どもっ!!!」

 

参式斬艦刀を取りに向かうべく背を向けたスレードゲルミルのわずかな隙をヴィガジは見逃さなかった。ガルガウの尻尾が斬艦刀を握るスレードゲルミルの右腕の手首に巻きついてその動きを止めると、
アイアンクローによる鉄拳がスレードゲルミルの顔面を何度も強く打ちつけた。マシンセルによる再生能力があるとしても、即座に回復がされるわけではない。
顔面に加わったダメージはスレードゲルミルのメインモニターの機能を低下させ、これによってウォーダンの判断にも若干の遅れが生じたことは避けられなかった。
続けて、ガルガウは両腕でスレードゲルミルの右腕を押さえつけると、斬艦刀を握る右手首に噛み付くのと同時に灼熱の炎を吐き出した。
さすがのスレードゲルミルの装甲であっても高熱による融解が徐々にではあるが始まり、装甲の硬度が低下していく。さらに噛み付きによって加わった力によって右手首にひびが生じ、火花が散るのとともに握力を失ったスレードゲルミルの右手からは斬艦刀がこぼれ落ちてしまう。

 

「ざ、斬艦刀が…!?」

 

斬艦刀の喪失に強い危機感を覚えたウォーダンは残った左腕で何度もガルガウの顔面を殴りつけて強引にガルガウの口から右手を引き抜いて、なんとか間合いを取る。
顔面に続き、今度は右腕のマシンセルによる修復が始まるのだが、最大最強の獲物である斬艦刀をスレードゲルミルは失っている。
ガルガウと対峙しながらも、さきほどまでとはあまりに異なる状況はウォーダンにも強い危機感を覚えさせていた。そして、さらに悪いことは続く。

 

「ふっふっふっふ…はあぁっはっはっはぁぁ!」
「ぬぅっ…!」
「地球人よ、覚悟はいいかあぁぁっ!!」

 

戦場にヴィガジの笑い声が響き渡った。その理由は単純である。ガルガウの右腕には、さきほどスレードゲルミルが失った斬艦刀が握られていたからである。
これまでガルガウに対して大きな牽制力を持っていたのはスレードゲルミルの手にしていた斬艦刀に他ならない。
その斬艦刀がその手を離れ、自らの手にあることは、ガルガウがその強大な力を憂いなくスレードゲルミルに対して振るうことができるということを意味していた。
ガルガウが振り上げた斬艦刀をスレードゲルミルに振り下ろす。スレードゲルミルはそれを両腕をクロスさせてなんとかガードするのだが、腕に生じる損傷は大きい。
続けて左腕のアイアンクローでスレードゲルミルの顔面を殴りつけるとともに、バランスの崩れた機体を今度は巨大な金色の尻尾でさらに叩きつける。
その衝撃でスレードゲルミルは大きく吹き飛ばされ、後方にあった巨大な岩に叩きつけられる。機体の一部は岩にのめり込み、見た目にもスレードゲルミルに蓄積されたダメージが大きいことは明白であった。

 

「トドメだあぁぁっ!」
「これを使え、ウォーダン!」

 

斬艦刀を構えたガルガウがスレードゲルミルに向かって走り出すのとほぼ同時に、ウォーダンとヴィガジの間にシン・アスカの声が響いた。
そして、今の今までグレイターキンと交戦していたヴァイサーガの手にしていた五大剣がスレードゲルミルの目の前の大地に突き刺さる。
とっさにスレードゲルミルは五大剣を地面から抜いて斬艦刀を受け止めると、力任せにガルガウを弾き飛ばして、いったん態勢を整えなおすべく再び距離を取った。

 

「少なくとも今のアンタは敵じゃない、それだけだ!」
「シン・アスカ!…ならば礼は言わんぞ!」
「好きにしろ」

 

シンにとっては、強大な敵を目の前にしている今、敵の敵は敵ではない、ということが正直なところであった。また、結果としてゼンガーを助けてもらった、という恩があることも否定はできない。
さらに言えば、自らもメキボスのグレイターキンを相手にしている以上、理屈で考えるよりも直感に従って行動しただけと言い換えることも可能である。
現に対峙しているグレイターキンは高周波ソードを構えてシンとヴァイサーガの隙を狙って斬りかかって来た。これに対応するためヴァイサーガは後退しながら両腕の鉤爪、水流爪牙を展開する。
そして振り下ろされた高周波ソードを持つ腕を鉤爪で弾き飛ばすとともに、もう片方の鉤爪でグレイターキンを斬り付けるが、これはシールドに阻まれてしまう。

 

「剣がなくてもなかなかやるじゃねーか、地球人。だがこれ以上余計な真似したら研究所はドカンだぜ」
「ヴァイサーガの武器は剣だけじゃない!」
「ならもっと俺を楽しませてくれよ、地球人!」
「俺の名前はシン・アスカだ、覚えとけインスペクターッ!」
「俺はメキボスだって言っただろうがっ!」
「ヴァイサーガ、フル・ドライブッ!!」

 

シールドでヴァイサーガを弾き飛ばすと、グレイターキンは距離を取りながらビーム弾をばら撒いていく。ヴァイサーガはこれをかわしながら鉤爪を再び構えてグレイターキンとの距離を詰めていく。
近付いてきたヴァイサーガに向けてグレイターキンは高周波ソードを振り下ろすが、その刃は空を切った。一瞬メキボスはヴァイサーガの姿を見失うがすぐに機体がその居場所を告げて対応を促す。
グレイターキンのシールドがない右側面に現れたヴァイサーガは鉤爪を伸ばすのだが、その攻撃は高周波ソードで受け止められてしまう。
しかし、ヴァイサーガの連続攻撃はまだ終わってはいない。再び姿を消したヴァイサーガは次の瞬間にはグレイターキンのすぐ正面に現れると、既に構え終えていた右腕の鉤爪がグレイターキンに向かって伸びていく。
その爪は惜しくもコックピットを貫くことはなく、これを阻んだシールドを貫いただけで終わってしまったのだが、少なくともメキボスの肝を冷やすことには成功した。
とはいえ、最悪の状況は脱したのかもしれないが一切好転はしていない。むしろスレードゲルミルもヴァイサーガも最強の得物を失っており、状況は悪化しただけともいえる。
シンもメキボスのグレイターキン相手で斬艦刀を取りにいくことができないし、五大剣がない以上相手に深手を負わせることも期待できない。
ダブルG2号機のことを知る由もないシンにとっては、八方ふさがりの状況であった。

 

「ほらほら、今度はこっちからいくぜ、シン・アスカ!」

 

再びグレイターキンが高周波ソードを構えてヴァイサーガに向かってくる。だが、剣の間合いの内側にヴァイサーガ
が入る前に、グレイターキンのセンサーが新たな機体の接近を告げ、
続けてその進行方向の地面に数発のレールガンの弾丸が打ち込まれた。これをグレイターキンはシールドで受け止めるのだが、さらに今度は十数発のミサイルが襲いかかってくる。
それをメキボスは機体を後退させながらビーム砲でなぎ払うと、今の攻撃の主がいる上空へと目を向けた。ほぼ同時にシンも上空へ目を向けるとそこにいたのは見覚えのある緋色のAMであった。

 

「スレイさんっ!」

 

シンの問いに答えることなく、スレイ・プレスティのパーソナルカラーである緋色に塗られたカリオンはミサイルをばら撒きながらグレイターキンへとGドライバーを撃ち込み続けていた。
シンには先ほどのカリオンとの戦闘の時間を考えれば、十分な整備ができているとは思えなかったが、
そもそもプロジェクトTDの機体データはスポンサーであるイスルギ重工経由でノイエDCにももたらされており、迅速な修理・補給が可能であり、このおかげでテスラ研での戦闘に介入することができたのであった。

 

「だがこれしきのことで隙なんぞ作らんぞ、地求人ども」
「フッ、ならば俺達が相手をしてやろう」
「何だと!?」

 

どこからとはわからない通信が入るのと時を同じくして、グレイターキン後方から、カリオン以外の機体から発射された大量のミサイルがグレイターキンに襲いかかった。

 

「こんなのが当たるかよっ!」

 

上空から迫るミサイルをメキボスはメガ・ビームバスターでなぎ払い、20を超えるミサイルの爆発が空を覆いつくした。
濃厚な爆煙が立ちこめる中、シン、メキボスともにミサイルが飛んできた方向に視線を向けて今の攻撃を行った主を探す。ミサイルの爆発によって熱源での探知ができず、目視による捜索のみが可能であった。
爆煙が徐々に薄れ始めるとシンの目にはある生物の奇妙なシルエットが映った。なぜ奇妙なのかを一言で言えば、いるはずがないからである。
シンの目に映っていたシルエット、それは一匹の蝶であった。だが、蝶が戦場にいるはずがない。それに自分との距離をふまえて見える大きさからして、このような大きさの蝶がいるはずもない。
そして、さらに爆煙が薄れていくと、蝶の色は黒であることがわかってきた。

 

「黒い…蝶…?」

 

だが答えは正解ではなかった。段々とその蝶と思しきシルエットが、シンも見たことのある機体にそっくりであることが段々と分かってきた。
その機体の名はラーズアングリフ。よく見てみると付近にはそのラーズアングリフの後に続く4機のランドグリーズもいる。だがシンが知っているこれらの機体とは決定的に異なることが1つあった。
これまでは地上を移動することしかかなわなかったのだが、背部飛行ユニットという翼を得て大空を縦横無尽に駆け巡っていたのである。

 

ビアンの影響を受けたバン・バ・チュンの思いつきと、ヴァイサーガのラクシズへの譲渡を遅延させようとしたレモン・ブロウニングがした覇王への嫌がらせ。この両者の化学反応の結果として編成された、
ラーズアングリフ・レイヴンとランドグリーズ・レイヴンを中核とした、ノイエDCの切り札ともいうべき対インスペクター四天王特殊部隊オーバー・レイブンズ。
それが、スレイ・プレスティが連れてきた増援の正体であった。

 

「惜しいな、だが貴様にしては上出来な答えだ、シン・アスカ」
「そ、その声…その機体…まさかっ…」
「テスラ・ライヒ研究所は地球の軍事技術上、極めて重要な施設。インスペクターどもから奪還するのは当然だ」
「やっぱりユウキ・ジェグナンか!」
「フッ…わかったならさっさと貴様は自分の仕事をすることだ。俺達は俺達の仕事をするだけだ」
「いきなり出てきて何を…!」
「この場は俺達が引き受けてやると言ってるんだ、貴様は早く行け。すべきことがあるのだろう!?」
「…そんなことはわかってる!」
「なんだ、地求人ってのは遅刻常習者の集まりか!?」

 

メキボスがシンとユウキの会話を遮り、オーバー・レイブンズに向けてフォトン・ビームを撃ち込んだ。

 

「各機散開!相手は幹部機だ、油断するなよ。一気に火力で押し潰すぞ!」

 

ユウキの黒いラーズアングリフ・レイブンと4機のランドグリーズ・レイブンが散開して、スレイのカリオンとともにグレイターキンに向けて再びミサイルをばら撒き始めた。
メキボスは、機体を後退させて回避しつつ反撃の態勢を取ろうとするのであるが、その前にブレイク・フィールドを纏った緋色のカリオンがグレイターキンを襲う。
メキボスは機体を横にずらしてなんとかソニックカッターを回避するとともに、参式斬艦刀のもとへ行こうとするヴァイサーガの姿をその目に捉えると、フォトンビームの照準を合わせようとした。
だが、カリオンに続けて黒いラーズアングリフ・レイブンがヘビィ・リニアライフルの照準をグレイターキンに合わせて突っ込んでくる。
連続して撃ち込まれる威力の強化された弾丸をグレイターキンはシールドで防ぎつつ、なんとか反撃の糸口を探そうとする。
しかしその前にユウキをフォローするべく4機のランドグリーズ・レイブンからまたもミサイルがばら撒かれてメキボスに襲いかかってきた。
遠距離からの攻撃と接近しての攻撃の波状攻撃は、カリオンの機動性とも合わさることによってグレイターキンに反撃を許さない濃密な攻撃となっていた。

 

そして、このチャンスをものにするべくヴァイサーガが最大戦速で戦場を駆け抜けていく。その行く先にあるものは当然ながら今のシン達の希望の星ともいうべきゼンガーの武器、参式斬艦刀である。
大地に深々と突き刺さったゼンガー・ゾンボルトの魂ともいうべき参式斬艦刀をヴァイサーガは引き抜くと、ちょうどOSの暫定的改良を終えたダイゼンガーのもとへと投げ付けた。

 

「ゼンガー少佐っ!」
「応っ!」

 

参式斬艦刀は、刀身で太陽光を反射して白銀に輝きながらちょうどダイゼンガーの目の前に突き刺さる。
そしてダイゼンガーは、ゆっくりと、しかしながら確実に大地を踏みしめて斬艦刀の下へ辿り着き、柄に手をかけると算式斬艦刀を一気に振り抜いた。
液体金属によって構成された万物を断つ白銀の刃が太陽光を反射して輝き、切っ先が破壊の猛威を振るう金色の大怪獣ガルガウへと向けられる。

 

「フン、今さらそんな物を手にした所で!」

 

ヴィガジが、もう時既に遅しとばかりに嘲りの笑みを浮かべる。だが、当然ながらゼンガーにはヴィガジの言葉など全く意味のあるものではない。
そして、斬艦刀を引き抜いたときには閉じられていたゼンガーの瞳と口が力強く開いた。

 

「黙れッ! 斬艦刀は我が魂の剣! これさえあれば、俺は戦える!!我が魂を受け継げ、ダイゼンガー!否!」

 
 

「武神装攻ダイゼンガー」

 

「ぶ……武神装攻だと!? 今度は何の略だ!?」
「もはや問答無用!受けよ、我が魂の太刀をッ!!立ち塞がる者は何人であろうとも、倒す!我は悪を断つ剣なり!吠えろ!ダイゼンガー!」

 

ゼンガーの叫びに呼応するかのように、ダイゼンガーの口と思しき部分も開く。そして参式斬艦刀を振り上げたダイゼンガーが背部のブースターから業火を噴かせながら一気にガルガウとの距離を詰めていく。

 

「ぬうううん!!チェストォォォオ!!」

 

神速とも評し得る速度で一気に振り下ろされた参式斬艦刀を、辛うじてガルガウはスレードゲルミルの斬艦刀の刀身を盾にしてこれを防ごうとする。
だが剣を単なる武器として用いる者と、剣の道を行き剣に武器以上の意味を見出す者とでは、同じ剣を使ったのだとしても生み出される力は天と地ほどの違いがある。
それ故に、ゼンガーの参式斬艦刀の一閃を受け止めようとしたのが同じ斬艦刀であったとしても、容易に優劣は決しうる。

 

「我が斬艦刀に断てぬものなし!」
「ぐおおおっ!」

 

ダイゼンガーの一太刀を受けてガルガウは遙か後方へと吹き飛ばされてしまう。そしてガルガウの右腕に握られた斬艦刀の刃は音もなく崩れ落ちて姿を消し、柄と鍔のみがその手元に残された。
もしガルガウが斬艦刀ではなくアイアンクローでゼンガーの太刀を受け止めようとしたのであれば、おそらくコックピットの中のヴィガジごと真っ二つになっていたであろう。
この意味で、斬艦刀で防御をした結果として命拾いをしたヴィガジは幸運であった。

 

「ぐ、ううっ……!!」
「…礼を言うぞ、ウォーダン・ユミル」
「ゼンガー……雲燿の太刀、しかと見届けた。それでこそ……我が宿敵だ」
「おのれ、貴様ら……!貴様ら、もう許さんぞッ!!」

 

立ち上がったガルガウがテスラ研を向く。攻撃の矛先をダイゼンガーではなく、ゼンガーらが奪還しようとするテスラ研に向けていることは誰の目にも明らかである。
しかし、ダイゼンガーの一太刀の威力が強すぎたあまりに、ガルガウとダイゼンガーの距離は開きすぎてしまっていた。そのため、今から攻撃を仕掛けたとしても間に合うとは言い難い。

 

「しまった、このままではテスラ研がッ…!だがここからでは…」
「…ならばお前の足となる役目は私に任せてもらおう」
「何っ!?」

 

ゼンガーとシンに外での戦闘を任せてテスラ研内部に突入したレーツェル・ファインシュメッカーの声が戦場の各機体のコックピットに響いた。
そして研究所付近の地面が左右に開くと、テスラ研地下の隠し通路を経て地上へ飛び出してきた黒塗りの特機がダイゼンガーの側に現れたのである。
黒を基調にしつつ、各部に赤と黄色のカラーリングが施されるとともに、両肩に装着された大型の盾にも見える円盤状の物体の側面には金色でとある家の家紋が描かれている。
そして黒のマントと頭部の髪の毛のようなものをなびかせながら、その黒い特機は懐から2丁の小銃ランツェ・カノーネをヴィガジのガルガウに向けて引鉄を引いた。
放たれた二筋のビームは、テスラ研の方を向いて攻撃の態勢を整えていたガルガウの顔面の横っ面を叩くように突き刺さり小さな爆発が起こった。

 

「!!あれもダイゼンガーとやらか!?」
「そう、ダイナミック・ゼネラル・ガーディアンの2号機…名付けて、アウセンザイター……!」
「『穴馬』だと? また翻訳機が壊れたのか!?」
「…なるほど。言い得て妙だね」
「ゼンガー! モードを『プフェールト』に切り換えろ!」
「!?」

 

レーツェルに言われるがままにダイゼンガーのモードを切り換えると、ダイゼンガーとアウセンザイターが一直線に並ぶ。
そして、人型の特機であるアウセンザイターの変形が始まり、その姿は大地を駆ける漆黒の黒馬、
まるでレーツェルの愛馬であったトロンベを思わせるような姿へと変貌を遂げ、飛び上がったダイゼンガーがそこに跨った。

 

「行くぞ、友よ!!今が駆け抜ける時!」
「応!!刃・馬・一・体!参る!!」

 

ゼンガーとレーツェル、2人の声に応えるかのようにダイゼンガーを乗せたアウセンザイターの速度が加速度的に増していく。
その勢いと気迫とスピードに虚を突かれたヴィガジはダイゼンガーのガルガウへの接近を許してしまう。そして、振り上げられた参式斬艦刀によってガルガウは上空へと弾き上げられる。

 

「ぬうううん!吠えろ、ダイゼンガー!!武神の如く!!!」
「駆けろ、トロンベ!その名の如く!!」
「奥義!!斬艦刀ォォォオ…!!逸騎刀閃!!一刀両断ッ!!」

 

そして、身動きが取れなくなっていたガルガウに向けて、ダイゼンガーの両手に握られた参式斬艦刀が振り下ろされた。神速で振り下ろされる剣の軌道は確実にガルガウのコックピットを通過するコースを辿っている。
インスペクターの幹部として豊富な戦闘経験を持つヴィガジは、野蛮人と蔑む地球人への怒りが心を支配していくのとともに、この一撃が不可避なものであることを本能的に感じ取っていた。
だが、この斬撃がガルガウへと到達する寸前に、ヴィガジとガルガウをまったく別の方向から放たれたビームが襲った。
これによって起こった爆発の衝撃はガルガウの機体をわずかに横に弾き出し、その直後に振り下ろされた参式斬艦刀がガルガウの左腕を、根元からアイアンクローもろともに斬り裂いた。

 

「き、貴様らぁぁっ!!」

 

落下していくガルガウの中でヴィガジが怒号混じりの声を上げる。その怒り狂ったヴィガジの気持ちなど関係なくグレイターキンが落下中のガルガウを確保した。

 

「メキボス、貴様!?」
「引き際くらいわかるだろ。それにどうせ奴らはラングレー基地にやってくる。借りはその時にまとめて返そうぜ?」
「…ふん、そんなことわかっておるわ」
「やれやれ。ったく手のかかるリーダーだぜ」

 

ガルガウを抱えたグレイターキンはビーム砲をばら撒きながら戦場からの離脱を始めていた。
相手を撃退した、という意味においてはシン達の勝ちであると言い得るが、ダイゼンガー、アウセンザイターはきちんとした調整がされることなく実戦に投入されたものであるし、
スレードゲルミルはガルガウとの戦闘で損傷した部分の修復をまだ終えてはいない。ヴァイサーガも大きなダメージこそ残ってはいないものの、後顧の憂いなく追撃ができるほどのエネルギー残量はない。
スレイの目的は兄の奪還であるからインスペクターの追跡にはさほど興味がない。
また、オーバー・レイブンズとしても全機が揃っている訳ではない上に、今回が初の実戦であるため機体の調整が十分にされているとは言い難い。
結局、それぞれがそれぞれの事情によってこれ以上の追撃をすることはできなかったのである。そんな中、インスペクターに次いで戦場からの離脱を開始しようとしたのはスレードゲルミルであった。

 

「シン・アスカ」

 

ウォーダンはシンの名前だけを呼んで、借り受けていた五大剣をヴァイサーガに手渡す。

 

「今回は助けられたが、次は敵同士だ」
「ああ、わかってる」
「さらばだゼンガー・ゾンボルト、そしてシン・アスカ」

 

そう言うとスレードゲルミルはガルガウの腕からこぼれ落ちた自らの斬艦刀を回収して、何処かへと遠ざかっていった。その直後であった。
ラーズアングリフ・レイブンのレーダーがテスラ研に接近する部隊の反応を捉える。

 

「奴らの本隊が来たか…オーバー・レイヴンズ、撤退するぞ」
「まさかまたアンタが手を貸してくれるとは思わなかったよ、一応礼は言っとく」
「そうか…だが、インスペクターどもとの決戦はこれからだ。せいぜい気を付けることだな」

 

かくして戦場への乱入者が続々と離脱していく中、モニターに映っている緋色のカリオンがシンの目に止まった。
そのすぐそばには、テスラ研からやや離れた崖の上に機体を置き、研究所を静かに言葉なく眺めているスレイ・プレスティの姿がある。
助けてもらったことに対する礼をまだしていないことを思い出したシンは、ヴァイサーガをその近くに降ろすと、ヘルメットを取ってスレイの元へと駆け寄っていった。

 

「さっきはありがとうございました。スレイさん達が来てくれなかったら俺達どうなってたか…」
「か、勘違いするな。別にお前を助けに来たわけではない!お前達だけに兄様を任せられないから来ただけだ!…私ももう行く!」

 

夕焼けの光りのせいであろうか、わずかに顔を赤らめたように見えたスレイがシンに背を向けてスタスタと歩き出す。

 

「えっ!?お兄さんに会わなくていいのかよ!?」
「もう間もなく貴様達の本隊が来るのだろう。私はあの負け犬達の顔を見るつもりはない」

 

足を止めてスレイが答えた。だがその声は、先ほどまでのように心なしか狼狽したような声というよりは、アイビス達と話すときの、やや冷たい印象を与える低めのものである。
とはいえシンとしては―せっかくスレイが兄と会える機会というよりも―同じ妹を持つ兄として、フィリオ・プレスティという兄が妹とせっかく会える機会だというのに、
それを実現させないままスレイを帰すわけにはいかない。そのため、スレイを止めるべく走って追いかけていく。
アメリカ大陸突入作戦後のヴァイサーガとの戦闘でシンから発せられた言葉の意味を誤信してしまった結果として実はシンの顔をしっかり見れない状態になっているスレイは、
これ以上狼狽した言動を見せまいとして逃げるようにその足を速めていく。そしてシンもこれを止めるべく小走りでスレイを追いかけ始めた。

 

「おい、ちょっと待てよ!うわっ!」
「ん?………………………………………………!?!?!?!?」

 

結論から言えば、起こった出来事はなんてことないものである。銀河の存亡も、地球圏の安全も、今起こった出来事によっては何ら影響を受けてはいない。
念のために状況を客観的に説明すると以下の通りである。
スレイを追いかけようとしたシンの足元には大きな石があった。
シン・アスカは戦闘が終わったのと激しい激戦の疲労から気が緩んでしまっていた。そのため、スレイを追いかけようとしたときにその石に蹴躓いてしまった。
「うわっ!」という声にスレイはシンに何かあったのかと思わず振り向いた。慌てたような声を聞き少し心配になったのである。
そして、振り向いたスレイの胸部に実った2個の白桃の谷間に向けて、石に蹴躓いたシンは顔面からダイヴしてしまった。
躓きながらもなんとかバランスを取ろうとシンは両手をバタつかせたのであるが、その両手はそれぞれスレイの左右の果実を鷲掴みにしてしまった。
そして2人分の体重を支えきれないスレイは仰向けに倒れ込み、外観上は野外でシンがスレイを押し倒したような形になってしまった。
その上両手と左右の頬の柔らかい感触を確かめるために無意識のうちに指を動かし、これまで誰にも揉みしだかれたことのない、
強い張りを持ちながらも、触れるのがパイロットスーツ越しであっても触れば一定の弾力とともに優しく形を変える2個の白桃の感触を存分に堪能する結果となってしまった。
一言で言うのであれば、何かの神が宿っていると噂されるシン・アスカの指が未開の白桃園の触感を余すところなく堪能したのである。
さらに言えば、そのときシンの嗅覚はスレイ愛用のシャンプーとほんの僅かだけ汗ばんだ彼女のちょっぴり甘い香りを嗅ぎ付けてしまった。

 

そんな取るに足らない、他愛もないToLOVEるが起こってしまったに過ぎない。

 

そして確かに、これくらいのことで銀河宇宙が揺らぐようなことは全くない。だが、当の本人、特にスレイ・プレスティにとっては銀河が崩壊する以上のトンでもない事態であることも確かであった。

 

「こ、この…変態!色魔!鬼畜っ!」

 

顔をレイのペルゼイン・リヒカイト以上に真っ赤にしながら叫び声を上げたスレイの右足はシンの体の左右の中心部分を蹴り上げるとともに、これによって宙に浮いたシンの顎を右腕が極めて精確に打ち抜いた。
そして、頬と両手に温もりとと柔らかい感触を、鼻に甘いいい香りを、下半身の中心に表現のしようのない呼吸を不可能にさせる痛みを残しながらシン・アスカの体は宙を舞ったのであった。
なお附言すると、急ぎ足でその場を離れて行ったスレイの顔はしばらく真っ赤で、この粗相の責任をいかに取らせてやろうかという思考がしばらく彼女の脳裏から離れなかった。
シンにとって幸いであったのはこの出来事がスレイの兄フィリオ・プレスティやテスラ研スタッフ、ハガネ・ヒリュウ改の面々の知るところにはならなかったことである。

 

銀魂劇場版新約紅桜篇公開記念(非公式)&超電王トリロジー公開記念(非公式)記念第42話
「武神装攻ダイゼンガー」  おわり

 
 

 戻る