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SRW-SEED_11 ◆Qq8FjfPj1w氏_第43話

Last-modified: 2014-01-03 (金) 01:04:27
 

スーパーロボット大戦OG's DESTINY
第43話「オペレーション・プランタジネット」

 
 

幸運な事故により、スレイ・プレスティの胸部に実る、未だ誰の手も及んだことのなかった2つの果実を鷲掴みにする結果を引き起こしたシンが、
スレイによる的確な急所攻撃を受けて男固有の苦しみに悶え苦しんでいた頃、
ダイゼンガーとアウセンザイターの2機による必殺技、竜巻斬艦刀の一太刀により斬り裂かれ、その衝撃によってテスラ研上空へと天高く巻き上げられた物体があった。
巨大なクローがついた金色の腕。グルンガスト参式やスレードゲルミルを苦しめ続けたガルガウのアイアンクローである。
ゼンガーのグルンガスト参式、ウォーダン・ユミルのスレードゲルミルをあと一歩というところまで追い詰めた凄まじい戦闘力を秘めたガルガウの腕。
この凶悪強大な力を秘めた腕はダイゼンガーと参式斬艦刀の最初の餌食となってやがて地面へと落下する運命を辿ろうとしていた。
だが、その運命は新西暦世界に迷い込んだイレギュラーの1つによって変えられることとなる。
ハガネやテスラ研のレーダーにも捕らえられることなく静かに上空に現れた赤い影。
その頭部には天を突く2本の角、赤色の全身の肩・胸・腰・脛の部分には黒の意匠が描かれ、さらに脚部には青、胸部には紫色の龍を連想される意匠の増加装甲がある。

 

「………」

 

それが音もなくガルガウの腕を掴むと、その金色の腕は、光り始めた赤鬼の左腕の中に飲み込まれていく。
そして、まもなく光の中から再び現れた赤鬼の左腕には、中央に鉞を思わせるような刃が備わった金色に輝く増加装甲が装備されていた。
そして、新たなる力を得た赤鬼は何らの音も、声も発することなくどこか別の空間へと姿を消した。

 
 

その数日後、北米ラングレー基地では、インスペクターとの決戦作戦オペレーションプランタジネットがそのファイナルフェイズを迎えようとしていた。
インスペクターの重点的な迎撃の矛先がヒリュウ改やハガネの方に向いていたために、先にラングレー基地周辺に到着したのはノイエDCの側であった。
その旗艦と護衛につくライノセラスには容赦のない砲撃が加えられているが、ノイエDCの側もひるむことなく反撃の砲撃を基地へと加えている。
ノイエDCの切り札的な部隊であるオーバーレイブンズは決戦に向けての補給を終え、搭載している夥しい数のミサイルをインスペクターの部隊に対して豪雨のように浴びせていく。
辛うじて難を逃れることができた機体も、2門のフォールデリング・ソリッド・カノンやヘビィ・リニアライフルの餌食となって鉄屑へと変わっていく。
点というよりも面で押していくオーバーレイブンズの大火力を活かした戦術によりインスペクターの防衛ラインは後退を続ける一方である。
もともと持っていた重装甲重火力と背部飛行ユニットという翼を得たことによる高い機動力、これらを兼ね備えた15機の蝶達を相手にすることは、幹部機体を欠くインスペクターの部隊にとっては重荷であった。
レイブンの名を持つ重戦車がこの戦場に2機しかいなかった本来の歴史であれば、ノイエDCの部隊は苦戦を強いられていたのだが、
シンやレイ、ラクシズの面々が転移してきたことにより新西暦の世界には徐々に大きな変化が生じ始めていたのである。

 

十数機のバレリオンが弾幕を張り巡らせてオーバーレイブンズの行く手を阻もうとするのだが、
先陣を切る黒いラーズアングリフは、一見すると鈍重そうな機体からは想像しがたい軽やかな回避行動を取りながら手にしたへビィ・リニアライフルの銃口を立ちはだかるバレリオンに向ける。

 

「貴様らに俺達を止めることなどできんっ!」

 

ユウキが力強くトリガーを引いて放たれた銃弾は、厚い装甲を持つバレリオンの数少ない弱点の1つ、レールガンの銃口に精確に打ち込まれると、
AM屈指の防御力を誇る機体は続々と爆発へと姿を変えていった。
そしてラーズアングリフ・レイブンに引き続いて14機のランドグリーズ・レイブンがラングレー基地中枢に向けて進撃を再開する。
とはいえ、ここまでは快進撃を続けていたオーバーレイブンズであったが、彼らが基地の敷地内へと到達しようとしたところで、状況が変わり始めた。
基地内からインスペクターの増援部隊とともにその幹部機体が地下格納庫からとうとう姿を現したのである。
汎用人型決戦兵器の如く地下からせりあがってくる青と金色の2機については、隊長のユウキには見覚えがあった。
金色の機体は、テスラ研防衛戦でダイゼンガーにより受けた傷の修理を終えて新しい腕を付けたガルガウ、青い機体はそのガルガウを連れて撤退していったグレイターキンに他ならない。

 
 
 

そして、それとほぼ時を同じくして戦場には2隻の戦艦が姿を現していた。その戦艦からは総計10機以上のPTや、AM、そして特機の数々が出撃していく。
ユウはその中でも青と黒のカラーリングに赤いマントを背負った西洋の騎士のような機体に目をやって静かに笑みを浮かべた。
言うまでもなく、彼が時に激しい命の奪い合いをし、時に肩を並べて戦ってきたシン・アスカ駆るヴァイサーガである。

 

「フッ…遅かったな、シン・アスカ」
「相変わらずアンタも素直じゃないな。大物はちゃんと残しといてくれるなんて」
「気を引き締めろ、ここからが正念場だ。何としても奴らをこの地球から叩き出すぞ!」
「ああ、テスラ研での借りはここで返してやるさ」

 

そう言ってシンはヴァイサーガのブースターを一気に踏み込んだ。
その視線の先にいるのは、先日の戦闘で決着を付けることが出来なかったインスペクター四天王の一角たるメキボスのグレイターキンである。
ヴァイサーガが鞘に納まっている五大剣の柄を握り、それを一気に引き抜くのと同時にシンは叫びを上げる。

 

「地斬疾空刀ッ!」

 

鞘から刀身が解き放たれたのと同時に、刀身が纏っていたエネルギーの斬撃が大地を切裂きながらグレイターキンへと襲いかかる。
それをグレイターキンは機体を飛び上がらせて回避するとともに、高周波ソードでヴァイサーガに斬りかかった。
対するヴァイサーガも手にした五大剣で迎え撃つべく上段から刃を振り下ろす。2つの刃が交錯して火花が散ると、続けて両機による力比べが始まった。

 

「今度は随分と大人数でご来場だな、シン・アスカ!」
「お前らインスペクターとの決着をつけてやる、今日…!ここで!!」
「俺の名前はメキボスだって前にも言ったろ、シン・アスカ?」
「人の名前をいちいちっ!馴れ馴れしいんだよっ!」

 

剣を交えた力比べが数秒続いた後、それを嫌がったのはシンの方であった。いったんヴァイサーガは後方に下がり体勢を整え直す。
続けてもう一撃を見舞うべくヴァイサーガは剣を振り下ろすが、正面からの攻撃は当然ながら高周波ソードによって阻まれてしまった。
しかし、攻撃を受け止められた次の瞬間にはヴァイサーガは、シールドのないグレイターキンの右へと回り込むと同時に次の攻撃の準備を整えていた。

 

「水流爪牙ッ!」

 

剣を離したヴァイサーガの左腕の先端から鋭い鉤爪が瞬時に飛び出して、ヴァイサーガはそれを一気に振り下ろす。 
鉤爪はグレイターキンの右肩から伸びる金色のウィング数枚の先端を斬り落とすことに成功したものの、
対するメキボスもインスペクター四天王の肩書きは伊達ではなく、ただで終わるような真似はしない。
グレイターキンは左腕のシールドでヴァイサーガの顔面を殴りつけると、ヴァイサーガは地面に叩きつけられてコックピットのシンにも大きな衝撃が伝わる。
現状として、両機の戦いは一進一退を繰り返す互角のものが続いていた。

 
 

他方で、シンとメキボスが一進一退の戦いを繰り広げているほかは、現状は概ね連邦・ノイエDC軍優位で戦闘は行われていた。
インスペクター側の増援がヒリュウ改・ハガネを押さえ込んではいたものの、ノイエDC側のオーバーレイブンズをガルガウ1機で十分に押さえ込むことができずにいたためである。
そんな中でタスクはジガンスクード・ドゥロで後方から支援砲撃を行ないながら、根拠のない不安感を覚え始めていた。
敵側の防衛戦力は不自然といえるほどに不十分ではないものの、ほとんどが自分達に有利に戦況は推移している。
しかし、勝ちすぎのときこそ気を付けろという、キョウスケと賭け事に興じているときの自身の教訓が何か警鐘を鳴らしているように感じられていた。
基本的にキョウスケをカモにしていることが多いタスクではあるが、キョウスケに土壇場でどんでん返しを起こされて結局はトントン程度になってしまうことが少なからずあったのである。
それを思い出したタスクは砲撃を継続しながらも、ジガンスクードをハガネ、ヒリュウ改のいる方へ下がらせ始める。

 
 
 

戦場に動きがあったのはそれから少ししてのことであった。転移反応を捉えたハガネの側面すぐ近くに、シャドウミラーによって奪取され、今は敵艦となったシロガネが姿を現したのである。
タスクの感が悪い方向にずばり的中してしまう結果となったのだが、ハガネの艦橋付近に狙いを定めていたシロガネの主砲からハガネを守ったのもタスクであった。
ジガンスクード・ドゥロはシロガネの前に立ちはだかると、両腕を広げて機体の周囲にG・テリトリーを展開させる。
そしてシロガネから放たれた連装衝撃砲は、ジガンスクードに真っ直ぐに向かっていったのだが、その手前でエネルギーの障壁に阻まれ、消え去ってしまう。
しかし、史実とかけ離れ始めた世界は戦士達をまた新たな運命へと誘おうとしていた。

 

一方、メキボスのグレイターキンとの一騎打ちを続けていたシン、そしてその周辺でオーバーレイブンズを率いてガルガウと交戦中であったユウキの目には、
予想外の出来事と彼らにとってはシロガネ以上に不吉な存在の登場が映っていた。

 

旗艦であるバンのライノセラスの後方から戦場に侵入してきていたアーチボルト・グリムズのライノセラスが、突如としてバンの艦に対して攻撃を開始し、
さらにアーチボルドの艦からシンも、ユウキもよく知るところである鶏冠を戴いた赤色の忌むべき機体
―CEの覇王の無限の正義を象徴するラクシズの主力機の一角たるインフィニットジャスティスが出撃してきたのである。
シロガネの出現とアーチボルドの反逆に浮き足立っていたノイエDCの軍勢を尻目に、インフィニットジャスティスを駆るアスランは
一直線にオーバーレイブンズのいる方向へ向かってジャスティスのブースターを全開にさせていた。
そして間もなくジャスティスの照準がオーバーレイブンズのランドグリーズを捉えると、その背部に連結されているファトゥムが切り離された。
ミネルバのボディをいとも容易く貫いた刃を先端に備えるファトゥムは、速度を上げるのと同時に、マシンセルの力によって巨大化を続けていく。
しかし、オーバーレイブンズの面々にとってジャスティスは味方機という登録がなされており、まさかファトゥムの照準が自分達に向いているとは思ってはいない。
付近にいた者の中でジャスティスとアスラン・ザラを信用できない相手だと認識していたのはシン、実際に命の奪い合いを繰り広げたことのあるユウキとカーラのみでありこのことがこの直後の惨劇を招く。

 

「いけっ!!」

 

アスランの指示に応えてファトゥムの大きさが通常のAMサイズにまで巨大化したところで、その巨大な刃が背後から一機目のランドグリーズを貫いた。

 

「!?」

 

シロガネ出現、アーチボルドの造反という連続した突然の出来事に、ノイエDCの精鋭部隊であるオーバーレイブンズのパイロット達もわずかに狼狽していたのだが、
CE世界では最強のパイロットの一角を担っていたアスラン・ザラがこのわずかなチャンスを見逃すはずはない。
大火力を以って隙間のない攻撃を実現するためにフォーメーションを組み、固まって行動をしていたランドグリーズ達はそんなアスランにとっては格好の的であった。

 

貫かれたランドグリーズが爆発へと姿を変えた直後に、2機のランドグリーズはファトゥムに新たに追加された、左右両端のビームの翼によって真っ二つにされてしまう。
反撃を試みようとした1機のランドグリーズが手にしたリニアライフルを向けるのだが、既にジャスティスが最も得意とする戦闘レンジである近接距離内にまでアスランの接近を許してしまっていた。
ジャスティスのビームサーベルがリニアライフルを中央から切裂き、続けてビームサーベル発生機が内蔵された左脚の先端がランドグリーズ頭部にあるコックピットを直撃する。
直撃を食らって主を失ったランドグリーズは、頭頂部から左右に両断され、力なく落下を始めた後に爆発へと姿を変えた。

 
 
 

その傍らで、散開を試みながら5機のランドグリーズが、少し遅れてインフィニットジャスティスを敵と判断し、
リニアライフル、ツイン・リニアカノン、マトリクス・ミサイルを巨大化して大きな的となったファトゥムに向けて放つ。
ほぼ全ての攻撃が格好のターゲットとなったファトゥムに命中すると、ファトゥムは爆煙に包まれて姿を消してしまう。
かつてのユウキとアスランの戦いやラクシズに関する情報が統制されず、広くノイエDC内に行き渡っていれば、これでカタがつくなどと思う者はいなかったであろう。
しかし、ファトゥムの攻撃能力、再生能力を知らされていなかったオーバーレイブンズのパイロット達はここで動きを鈍らせてしまっていた。
自己の修復を行いながらすぐに煙を突き抜けてきたファトゥムは、3機のランドグリーズを横一文字に切り裂き、それとほぼ同時に煙の中から飛び出してきたジャスティスは
2機のランドグリーズの懐に飛び込むと、左右の手に握ったビームサーベルでそれぞれのランドグリーズの頭部を貫いた。

 

わずかな短時間のうちに9機のランドグリーズ・レイブンがジャスティスによって撃破された一方で、シロガネの攻撃をなんとか凌いだ直後のハガネに新たな危機が迫ろうとしていた。
艦橋を狙った奇襲攻撃を阻まれてしまったシロガネはいったん距離を取るためにヴァイスセイバー、ソウルゲイン、スレードゲルミルなどの艦載機を出撃させながら後退を始めていた。
史実では奏功していたシャドウミラーの奇襲であったが、徐々に生じ始めていた変化によって失敗に終わってしまっている。
しかし、シンやラクシズらの転移により産声をあげ始めた変化は新たな出来事、異なる運命を生み出そうとしていた。
シロガネが後退を始めた直後、ハガネのブリッジではさらなる転移反応が捕捉されていた。だが、反応を捕捉しただけではどこに何が出てくるのかはわからない。
その直後、ハガネの直上に1隻の艦が姿を現した。それは、艦全体を戦艦とは到底思えないような桃色で塗りながらも、
その存在だけで戦場にいる者達に無言のプレッシャーを与えてきた、天空に聳えるCEの覇王の居城エターナル。
そして、その覇王の自由かつ最強の剣たるキラ・ヤマトの駆るラピエサージュが、エターナルとほぼ同時に、ジガンスクードがいるのとは逆側のハガネ側面に出現した。
さらにキラのラピエサージュは既にエターナルから射出されたG・ミーティアとのドッキングを済ませており、ハガネの各所へのロックオンを完了させている。

 

「エターナル!それにフリーダムッ…!聞こえるかハガネ、気を付けろ!そいつは…!」
「…」

 

届いたシンの声が最後まで伝わる前に、キラ・ヤマトが声もなく静かにトリガーを引いた。
それと同時にG・ミーティアの各部に搭載された夥しい数のビーム砲やミサイルが発射されてハガネに襲いかかる。
防御フィールドを展開させつつ、迎撃のための弾幕を張ったハガネではあったが、突然の出現と距離の近さ、攻撃の数の多さのせいで十分な防御をすることができなかった。
いくつものビームが船体を焼き、ミサイルが砕き、艦のいたるところで大小問わず多くの爆発が起こる。

 

「ハガネっ!大丈夫か!?応答しろ、ハガネっ!艦長っ!副長っ!!」
「シン!今日こそ俺達と来てもらうぞ!」
「いい加減に人の名前を気軽に呼ぶな、インスペクター!」
「錯乱しているのか!?俺だ、アスランだっ!」

 

アスランとメキボスの声を聞き間違えたシンのところにインフィニットジャスティスが迫ってきた。ヴァイサーガも強引にグレイターキンから距離を置き、五大剣を構えなおしてジャスティスに斬りかかる。

 
 
 

「どういうつもりだ、アスラン!なんでインスペクターなんかと!?」
「お前はそんなことを考える必要はない!とにかく俺達と来ればいい」
「アンタ達の頭がいくらおかしいからって…!ここまで…!」

 

インフィニットジャスティスはファトゥムを切り離して前面に押し出すと、その先端にある対艦用ブレードで五大剣を受け止め、ファトゥムの陰から回り込んできてビームサーベルを振るう。
しかしヴァイサーガは、ファトゥムの下側に潜り込んで攻撃を避けると同時に、無防備となったファトゥムの腹に五大剣を突き刺し、そのまま一気に剣を振り下ろした。
この斬撃はファトゥムを両断することはできなかったものの、そのボディを貫き大きな爆発を生む。
そして、ヴァイサーガは振り下ろしたついでに手元で剣を構えなおし、再び上方のインフィニットジャスティスに向けて剣を振り上げる。

 

「もう俺に前に姿を現すなぁぁぁっ!!!」

 

振り上げられた刃は、ジャスティスのサーベルがヴァイサーガに到達するより早く正義の両の手首を斬り捨てた。
ここまで容易にジャスティスに手傷を負わすことができたのは、シン自身の戦闘能力がCEにいた頃と比べて飛躍的に高まっているという理由もある。
しかし、ジャスティス自体がマシンセルによる飛躍的なパワーアップを遂げたということがあったとしても、元が全体的な技術としては新西暦世界に劣るCEの機体であり、
機体同士の相性がよくなければ、そのアドバンテージはあっという間に失われてしまう。
砲撃戦用の機体であるランドグリーズに接近戦を挑むのと、近接距離戦闘に特化されている特機であるヴァイサーガに戦いを挑むことは同義とは到底言い難い。

 

「ぐっ…またジャスティスが…!シンンンンンっ!!」

 

そう言ってアスランはジャスティスをひとまず下がらせてヴァイサーガとの距離を取る。すぐにマシンセルによる修理・再生が始まるが、両手の完全回復が即座にできるほどの力はさすがのマシンセルにもない。
そのため、アスランは自分の置かれた状況の速さを瞬時に把握すると、ジャスティスはエターナルのいる方向へ向かって後退を開始した。
ヴァイサーガは修復が終わる前に攻撃を仕掛けるべくジャスティスの後を追うが、そこに再びファトゥムが間に入ってくる。

 

「逃がすかあぁぁぁ!」

 

ヴァイサーガのツインアイが真紅に輝くと、鞘に収められた剣が高速で振り抜かれる。
これによって生まれた空気の流れは、まるで渦のような気流を生み出すと。正面からシンを遮ろうとしているファトゥムを捉えてその身動きを封じてしまった。
速度を増しつつインフィニットジャスティスを追うヴァイサーガは、自由を奪われたファトゥムめがけて一直線に向かっていくと、鞘の中で蓄えられたエネルギーを纏う五大剣を一気に振り抜いた。

 

「必殺…風・刃・閃ッ!」

 

横一文字に振り抜かれたヴァイサーガの斬撃がその名の如く風の刃となって煌く。
アルトアイゼンやヴァイスリッター、オーバーレイブンズのランドグリーズやかつてのラーズアングリフ、果てはレイのペルゼイン・リヒカイトすらも苦しめ続けた、
無限なる正義の絶対防御の象徴たるファトゥムは、この一撃によって上下に斬り裂かれてしまう。さらにヴァイサーガは剣を振り上げると、今度は縦一文字に刃を振り下ろしてファトゥムを4つに分断した。
断面付近で小さな爆発が連鎖的に発生し、力なく地上への落下を始めたファトゥムには目もくれずシンは、インフィニットジャスティスを睨みつけていた。
しかし、ヴァイサーガがジャスティスの追跡を再開するより先に、シンの耳に聞き覚えのある声が入ってくる。

 
 
 

「そこをどけっ!シン・アスカ!」

 

声の主をシンがきちんと認識するより早く、1つの影がヴァイサーガの脇を通り抜けていった。猛スピードでインフィニットジャスティスの後を追うのは、黒死の蝶ラーズアングリフ・レイブンに他ならない。
かつてアーチボルトやイーグレットの謀略によりマシンセルの力を検証するためにインフィニットジャスティスと戦って敗れただけでなく、その戦いにより多数の部下を失ったことをユウキは忘れてはいない。
そして、今回も対インスペクター用特殊部隊であるオーバーレイブンズの仲間がアスラン・ザラの手にかかったのである。
普段は常に冷静でいることを心がけるユウキではあったが、アスラン・ザラを許すことはできなかった。歯を喰いしばり、その瞳はじっとインフィニットジャスティスを捉えている。
しかし、ここで珍しく怒りによって冷静さを欠いてしまったことがユウキにも不幸をもたらしたのはすぐ後のことである。
どういう訳かメキボスのグレイターキンはいったん後方に下がって追撃をしかけてくる様子もないので、シンもユウキに続いてアスランの追撃を始めたのであるが、
いったんは地球軍側有利になりつつあった戦況は、シロガネとエターナルの登場によってだいぶ変わっていることに気付く。

 

マスタッシュマンことソウルゲインはアルトアイゼンと、スレードゲルミルはダイゼンガーと、ヴァイスリッターも見たことのない砲撃戦用の機体との交戦の真っ最中であった。
SRXも金色の大怪獣ことガルガウとの戦いをしている他、アウセンザイターやアンジュルグ等はシロガネやエターナルから出撃してきた別のラーズアングリフや大量の量産型アシュセイバーとの戦いを繰り広げている。
他方で、ハガネに大きな損傷を与えたキラ・ヤマトの、G・ミーティアと合体したラピエサージュはタスクのジガンスクード・ドゥロによってそれ以上の攻撃が阻まれ続けてしまっていた。
そのためキラ・ヤマトは攻め方の変更を考え始めていたのだが、そこにエターナルの方へと後退してきたアスランのインフィニットジャスティスから通信が入ってくる。

 

「キラ!すまない、ファトゥムがやられた。お前のG・ミーティアをこっちに回してくれ!」
「うん、わかった!ドッキングまではこっちでコントロールするけどいい!?」
「ああ、了解だ」

 

アスランの要請を受けG・ミーティアはハガネへの攻撃を中断し、G・テリトリーを展開しながら、後退してきたインフィニットジャスティスと合流すべく移動を開始する。
他方でシロガネやエターナルから現れた増援部隊からハガネやヒリュウ改の防衛するために、G・ミーティアを追撃する余裕は地球側にはなかった。
G・ミーティアのビームの弾幕を張り巡らせながらラピエサージュはアスランのインフィニットジャスティスと合流すると、G・ミーティアを切り離す。

 

ストライクフリーダムのドラグーンと同様に、空間認識能力を持たない者であっても扱うことができるG・ミーティアは、ドッキングしていなくても「それなりの」戦闘を行うことができる。
また、軽微な損傷であれば搭載しているマシンセルの働きによりすぐに回復することができる上に、試作型にも備わっていたG・テリトリーも健在なのである。
そしてインフィニットジャスティスはG・ミーティアとすぐにドッキングを完了すると、今度はアスランがG・ミーティアをハガネ、ヒリュウ改の方へ向けた。
ジャスティスを追ってユウキのラーズアングリフ・レイブンもハガネ、ヒリュウ改の方へと向かっていくのだが、このとき彼はドッキングを解除したラピエサージュをほとんど気に留めることはなかった。
ラピエサージュのパイロット、キラ・ヤマトについての情報をユウキはほとんど持っていなかったことを踏まえればそれは仕方なかったのかもしれないが、
アスラン・ザラへの怒りでいつもの冷静さを少なからず欠いていたために、ラピエサージュがどれだけの戦闘能力を秘めているかの考察を怠ったことは端的に言えば迂闊であった。

 

その頃、5機編隊でインスペクターの部隊と交戦を続けていてわずかに余裕のできたカーラは、いったんオーバーレイブンズの隊長を務めるユウキと合流すべく
その後を追っていたのであったが、その途中で運悪くキラ・ヤマトのラピエサージュと鉢合わせをしてしまった。

 
 
 

「何さ!たった1機であたし達全員と戦う気なの!?」

 

現在のラピエサージュは、SRXのブレードキックにより大破した機体を修復した際に、キラ・ヤマトの希望により接近戦用のカスタマイズを施されている。
具体的にはO・Oランチャーを排除すると同時に、特機との接近戦にも十分耐えうるようにパワー、装甲、各部間接部分を徹底的に強化し、接近戦用の武装を追加した。
現状のスペックとしては、スレードゲルミルやソウルゲインとの接近戦すら可能な程度にはなっており、全体的に一回り大きなものとなって、レモン曰くまるで別の機体、という状態である。
とはいえ、インスペクターの幹部機やスレードゲルミルのようなシャドウミラーの化け物じみた特機でもないのに、
単機でも高い戦闘能力を持つランドグリーズ・レイブンを5機も相手するというのは、いささか無謀なものとカーラは感じていた。

 

対するキラとしては、オーバーレイブンズの機体をここで相手にすべきかを考えていた。
カーラ達の機体は、ハガネやヒリュウ改の機体でこそないものの、敵軍の中でも大火力と高い機動力を兼ね備えた、覇王の軍勢にとって間違いなく厄介な存在である。
その評価が優先的に排除すべき存在であるという判断につながると、キラは静かに意識を集中させて種子が割れるようなイメージを浮かべながら、真っ直ぐにランドグリーズ・レイブンを見つめた。
覇王やそのしもべの1人であるマルキオがSEEDと呼ぶ、限られたコーディネーターしか使うことができない力。キラの他にアスラン、そしてシンもこの力を使うことはできる。
しかし、意識的に力を発動させて思うままに使いこなすことができるのはキラ・ヤマト(と覇王に作られてきた彼のクローン達)だけである。

 

そして、カーラはこのとき感じたことのない寒気を感じていた。
発動されたSEEDと言われるキラの力、そしてその背後にそびえ立つCEの覇王の尋常ならざる強靭な意志をカーラの念動力が感じ取ったのである。
少なくともここにいるオリジナルのスーパーコーディネーターキラ・ヤマトに念動力の類は備わっていない。しかし、彼の持つ戦闘能力と彼を背後から意のままに操る覇王のプレッシャーによってカーラが気圧されている一方で、そのために動きが鈍っていることをキラは察する。
ラピエサージュが腰部から脇差ほどの実体剣を取り出すと、その持ち手の部分が一気に延びる。手にした脇差はすぐに一本の槍へと姿を変えた。

 

この槍こそ、ラーズアングリフの強化改造計画のもう1つのプランで予定されていた主要武装たるゴッドランスである。
クエルボ・セロが提案した伸縮する槍というアイディアを、スレードゲルミルの斬艦刀からヒントを得て
レモン・ブロウニングとイーグレット・フェフが知恵を出し合ってマシンセルによる制御という形で実現したのである。
しかも、将来的にはもう1本の槍を製造して2本槍を装備させることでラピエサージュをさらに接近戦用に特化させることが計画されてすらいる。

 

「はああぁぁっ!」

 

キラがブーストペダルを一気に踏み込んで、ラピエサージュをランドグリーズ・レイブンの編隊へ切り込ませる。
これに対して迎撃のためにカーラ達はシールドを構えさせつつ機体を下げるのと同時に、ミサイルとリニアライフルをラピエサージュに向けて放った。
しかしキラは5機による火線のわずかな隙間を瞬時に見つけてラピエサージュを突っ込ませる。放たれる弾丸は1つたりとも命中することはなく、またラピエサージュの足を止めることも敵わない。
そしてラピエサージュはとうとうゴッドランスの間合いの内にランドグリーズの1機を捉えると、振り上げられた槍はリニアライフルを持つ腕を切り落とす。
これによって動きをランドグリーズが鈍らせると、すかさず両腕で携えた槍から片腕を離してその先端にあるマグナムビークでランドグリーズのコックピットを貫いた。

 

「まず1機…!」

 

さらにキラは続けて次のランドグリーズに狙いを定めると、再びラピエサージュを突っ込ませる。

 
 
 
 

「いっけぇぇぇっ!!」

 

しかし、今度はゴッドランスの間合いに相手を入れるより早く、ラピエサージュは背部からソリッド・ソードブレイカーを射出した。
砲台と直接攻撃が可能なブレードを備えた小型の飛行物体は、四方八方に拡散してランドグリーズに襲いかかる。カーラを始めとするオーバーレイブンズのパイロット達は、
ソードブレイカーをミサイルの類だと判断してランドグリーズに搭載されたジャマーを起動させるが、ソードブレイカーはパイロットの意を受けて動く。
そのため4機のランドグリーズは回避運動を取るのが遅れてしまい、機体の各部にソードブレイカーの直撃を受ける。
そこにゴッドランスを携えたラピエサージュが切り込んでくると、槍がその最も近くにいたランドグリーズのボディを貫いた。

 

「よくも…でもこの隙は見逃さないよっ!」

 

槍が突き刺さって瞬時に引き抜くことはできないと判断したカーラ達は、ゴッドランスを持ったラピエサージュに対して一斉にリニアライフルとミサイルを放つ。
だがピンチなはずのキラは慌てることはなかった。とっさにラピエサージュは突き刺さっているゴッドランスでランドグリーズを持ち上げ、そこに蹴りを打ち込んでゴッドランスを引き抜いた。
そして持ち上げられていたランドグリーズは、ようやくゴッドランスから逃れられたものの、そこは弾丸とラピエサージュの間であった。
直後にリニアライフルから放たれた弾丸が、ランドグリーズの機体を蜂の巣に変える。ラピエサージュの盾代わりにされた2機目の犠牲者が生まれる。

 

「そ、そんな…!」

 

信じがたい光景を目の当たりにしたカーラの口から驚きの言葉が漏れる。今現在、彼女は間違いなく生命の危機を感じていた。
それはかつてエアロゲイターの侵略によって弟を失ったときと同じような、相手との絶対的な力の差からくるものであった。
だがラピエサージュの攻撃はまだまだ終わってはいない。先ほど放たれたソリッド・ソードブレイカーは残された3機のランドグリーズを容赦なく襲い続けている。
カーラは、ランドグリーズの厚い装甲、そして飛行ユニットとともに新たに備わった大型シールドのおかげでなんとか致命傷を避けてはいたが、このままいけばジリ貧なのは確実であるとわかっていた。
ソードブレイカーによる攻撃のせいで大きな隙を作ったランドグリーズは新たなゴッドランスの餌食となってコックピットを貫かれ、
別のランドグリーズは、ソードブレイカーから放たれた光弾の直撃を肩部に受けると、その爆発は肩部に搭載されたミサイルの誘爆を招き、ランドグリーズ内部で始まった誘爆は間もなく機体全体を飲み込んだ。
そしてキラは、残り1機となったカーラにゴッドランスの切っ先を向ける。

 

いまだに続く、嬲るようなソードブレイカーの攻撃によってカーラのランドグリーズも大きな損傷を負っている上に、いつ搭載しているミサイルの誘爆に飲み込まれるかも知れない。
しかし、一人目の、オリジナルのキラ・ヤマトは覇王により生み出されてきた彼のクローンとは異なり、相手へのトドメを躊躇するようなことはしない。
向かってきたラピエサージュにシールドを向けるカーラであったが、それより早くソードブレイカーがランドグリーズに数発の光弾を見舞い、そのコックピットの近くでも爆発が起こった。

 
 
 

「きゃああぁっ…!」

 

思わず上がる悲鳴が上がった。そして、この悲鳴とともに生じたカーラの念の乱れを、
G・ミーティアとドッキングしたジャスティスとの戦いを始めていたユウキがようやく察知して、残されていた仲間の現状を把握する。

 

「しまった!?急いで下がれ、カーラ!聞こえないのか、カーラ!?」

 

自称とはいえパートナーの危機を知り、慌てるユウキであったが、どれだけ問い掛けても返事はない。
コックピットは失われていないことから、意識を失っているという可能性もあるが、敵を目の前にしていればそれは死とイコールといっても過言ではない。

 

「カーラ!!」

 

強く問い掛けるユウキであったが、動きを止めたカーラのランドグリーズにトドメをさすべくゴッドランスを携えたラピエサージュが猛スピードで迫る。
そして、ラピエサージュはランドグリーズ頭部のコックピットに向けてゴッドランスが繰り出した。一方、ユウキの心は絶望と後悔によって支配されようとしていた。
仲間を失ったことで冷静さを欠き、その仇だとしてアスラン・ザラにこだわった結果が今、モニター越しにではあるが、ユウキの前で生まれようとしていたのである。

 

「くっそおぉぉぉぉっ!!!」

 

ユウキの叫び声を背景に繰り出された槍の先端がランドグリーズのコックピットに迫る。
しかし、槍の先端はコックピットに到達する寸前で、横から繰り出された斬撃によって大きく弾かれてしまった。

 

「やっぱり僕たちの邪魔をするんだね?」
「そう簡単に…思い通りにいくと思うなあぁぁっ!!」

 

ラピエサージュの前に立ちはだかってゴッドランスを弾いた機体。大剣を手に、真紅のツインアイとマントを持った蒼い特機の正体は言うまでもない。
キラ・ヤマトやアスラン・ザラとの間に、CE世界からの数々の因縁を持つシン・アスカの駆るヴァイサーガである。

 

「アスランといい、アンタといい…インスペクターを倒さなくちゃならないってのに…!アンタ達は一体何なんだあぁぁぁ!!!!?」

 

つづく

 

相変わらず間があいてしまってすいません…やっと魔装機神が…

 
 

《つづく》

 
 

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