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SRW-SEED_660氏_ディバインSEED DESTINY_第03話

Last-modified: 2010-09-08 (水) 12:43:02
 

ディバインSEED DESTINY
第03話『招かざる客人』

 
 

 トロヤステーションから飛び立つ三つの光を、ゼブリーズ・フルシュワ――通称ゼブは目敏く見つけ出した。緋色が二つ、銀色が一つ。星の海へと光の帆を広げて、人の夢を乗せて飛び立った船達だ。

 

「あーれがウェンドーロちゃんが言っていた恒星間航行船だな。あれだけのサイズでよくもまーあ、作ったーもんだ。けど残念、そーいつを壊すのが、お仕ー事っと」

 

 シビリアンアストレイと交戦していたガロイカの幾分かの目標を、飛び立った三つの光に設定し、嗾ける。

 

「さて、どーこまで抵抗すーるかね?」

 

 周辺に手回ししておいた足止め用の部隊や、情報工作は功を奏してDSSDの窮地に向かって来ている部隊が到着するのは事後だろう。もっとも、その中の一部隊だけ気になる連中がいるのが頭の痛い所だ。

 

「どーにもこいつーらが、こっちのロンド・ベルになりそーなんだよなー。やだねー、戦いたーくなーいねー」

 

 念入りに配置したはずの足止め用の部隊が、冗談みたいに蹴散らされている。拾った命で、また途方もない貧乏くじを引いてしまった様な気がするのも、ゼブの気のせいばかりではあるまい。
 ゲイオス=グルードではなく専用機であるオーグバリューであったなら、もっと肝を太くしていられるのだが。

 

   *   *   *

 

 加速状態から急旋回し、背後を取っていたガロイカのその背後へとベガリオンが踊りでた。ガロイカに搭載された高性能戦闘用人工知能を上回る技術は、プロジェクトTD専属パイロットの中でナンバー1の実力ならではだろう。
 110mmGGキャノン――グラビティー・ガイダンスの名の通りに重力誘導された砲弾が、連続して火を噴き瞬く間にガロイカを穴だらけの鉄屑に変える。
 右にも左にも上にも下にも前にも後ろにも、宇宙と言う無限の方向を持つ世界のあちらこちらから次々と現れるガロイカの機影が確認できてしまい、スレイ・プレスティは初の実戦に感じた確かな手ごたえを、あっという間に忘却した。

 

「ちっ、ちょこまかと動いて。シミュレーターの連合やザフトのMSよりもできるぞ、こいつら」

 

 本来、プロジェクトTDによって生み出された機体はすべて非戦闘用なのだが、昨今の事情から自己防衛の為にもと武装が施されている。GGキャノンとGドライバーとその発展系や、CTM(戦術統合ミサイル)シリーズが主な武装となる。
 ベガリオンに搭載されたCTM−09セイファートは対艦用ミサイルだから、CTM−07プロミネンスとCTM−05フレアディスがガロイカ相手には適当な選択肢だろう。
 ベガリオンに搭載された兵装は全て実体弾系の兵装ばかりだ。この状況下ではステーションに戻って補給するのは難しい。
 敵の数は数えただけでも二十や三十では下らないだろう。連合の駐留部隊や警備部隊も奮闘しているが、一対一どころか二対一でも怪しい戦いぶりだ。当てには出来まい。

 

「アイビス、落とされてはいないだろうな」

 

 まだアルテリオンの信号は途絶えてはいない。ついでにスウェン・カル・バヤンの乗ったカリオンもだ。アイビス・ダグラスの事は色々と確執こそあったものの、その実力と最後まで残った根性は認めてはいるつもりだ。
 とはいえ兄のように慕うフィリオ・プレスティが手がけたアルテリオンを預かっているのだから、無様な所を晒す事など断じて許すつもりはない。ついでにあの得体のしれない連合のパイロットもだ。
 今でこそシートをベガリオンに置いているが、あのカリオンとてそれなりの愛着を持っている機体なのだ。塗装の剥げが一か所でもあったら文句どころでは済まさない。
 スレイの心配と頭痛の種である二人は、スレイが思う以上に戦っていた。アルテリオンにはアイビスとコ・パイにツグミ・タカクラを乗せて、ドール・フィギュア(DF)とクルーズ・フィギュア(CF)への可変機構を生かしてガロイカを一機ずつ確実に落としていた。
 普段からフィリオの厚意でスレイとアイビスの訓練風景や成績を見ていたスウェンが、アイビスのサポートを行った方がいいと判断した事も功を奏していた。
 実機のカリオンに乗るのは初めてだったスウェンだが、前大戦という修羅場をくぐり抜けた経験は確かで、目の前の敵に集中してしまい別の敵に囲まれそうになるアイビスを的確にサポートしていた。
 星の海を行く為の船に乗り、かつて幼いころに見た夢の残滓が胸の奥で疼いたが、スウェンはすでにその感情を心の深い場所へと沈めて、戦闘へと意識を切り替えていた。
 初の実戦とあってぎこちない硬さを伴っていたアイビスだが、後部シートに座ったツグミからの激励もあって、アルテリオンという翼をうまく操っている。
 ツグミとて実戦の恐怖を感じ取るのは初めての事だ。恐怖に震えもするし、アイビスを励ましているのだって、そうしていれば自分が感じている恐怖を紛らわせることができると言う意味もあった。
 CTM−02スピキュールミサイルが、右上方から襲い来たガロイカを爆発させる。続けて正面に踊り込んできた別機が、特攻目的でアルテリオンの進路を塞いだ事をアイビスは咄嗟に理解する。

 

「私達の夢の邪魔はさせない!」

 

 DFからCFへと変形し、一気に加速してガロイカの傍らをすれ違い急速なGに耐えながらその後方へとターンする。槍のように突き出したアルテリオンの砲身から、Gアクセルドライバーの加速した砲弾が、ガロイカの装甲へと吸い込まれる。
 それとはまた別の爆発が、アルテリオンの上と下で発生した。一機のガロイカに集中している間に、別のガロイカに狙われていたようだ。集中力に関しては天与のものを持つが、多対一という状況の経験不足が、こう言う時に表に出てくる。
 アルテリオンの傍らに紅色の流星が並ぶ。かつては白銀に染めて自分も駆っていたカリオンだ。今はあの、スウェンと言う銀髪の青年が乗っている筈だ。

 

「いい腕をしている。さっきのは気にするな、初めての実戦では仕方ない」
「え、あ、ありがとう」

 

 意外なスウェンからの通信の内容に、アイビスは思わず礼を言ってしまった。この青年、褒めて育てるタイプらしい。スレイのベガリオンがクラスターミサイルでまとめて数機のガロイカを撃墜した影響で、若干の余裕が出来ているからだろう。

 

「このまま敵を掃討する。おれがフォローするから思った通りに動いてくれ」
「分かったよ」
「アイビス、スウェン中尉、南天から新たな敵影よ。気をつけて!」
「了解」

 

 カリオンは核分裂炉を搭載したかつての愛機ストライクノワールと比べても、いっそ爽快なまでの速力や運動性の差をスウェンに体感させていた。プロジェクトTDの成果は驚くべきものだろう。だが同時にそれが懸念でもあった。
 アルテリオンもベガリオンもカリオンも、オプションであるCTMシリーズを装備しただけでも優れた戦闘能力を発揮している。あの地球連合の軍部が、これだけのものを放ってはおかないだろう。
 地球連合が動くとなれば、ザフトも見過ごしはいないだろうしプロジェクトTDに多大な出資をしているDCとてその事情は同じだ。DSSDも、もはや中立を維持する事は出来ないだろう。

 

「それ以前にこの場を生き残ってからか……」

 

 スウェンには珍しく独り言を零した。
 間断なく襲い来るガロイカの群れを相手に、時折スレイも交えた三機のコンビネーションで応戦し、ある程度アイビスやスレイ達も実戦に慣れて余裕が出てきた所で、二人に通信を入れてミューディーやシャムス達の支援行動に動く許可を求めた。
 トロヤステーション駐留艦隊に回された装備はいかんせん二線級の代物ばかりだ。いくらシャムス達の技量が、今や連合最高レベルに名を連ねるほどになったとはいえこの敵の数と性能差では厳しいだろう。
 スウェンはアイビス達の了解の返事を受けてから、カリオンの機首を奮闘しているネルソン級一隻とドレイク級二隻で構成された連合艦隊へと向けた。
 艦隊の周囲でガロイカ相手に応戦しているダガーの数が少ない。一個中隊程が配備されていた筈だが、今はシャムス・コーザのバスターダガーとミューディー・ホルクロフトのデュエルダガーを加えて六機ほど。半数が撃墜されてしまったようだ。
 落とされてしまった同僚たちの顔と記憶が一瞬で脳裏をよぎった。付き合いは長いと言えるほどのものではなかったが、悪い連中ではなかった。ぎり、と自分が噛み締めた奥歯の音にスウェンは気付かなかった。
 シャムスのバスターダガーが巧みに構築した弾幕にためらいなく飛び込んでくるガロイカの群れが、二機三機と爆発して噴き上げた黒煙を割いて新たなガロイカがバスターダガーへと肉薄する。
 ハリネズミかウニの様に尖ったパーツで構築されたガロイカの正面にある二門の砲身が、確かにバスターダガーを捉えた。
 ガロイカのビームマシンガンなら、バスターダガーを穴だらけにするのはそう難しい事ではないだろう。シャムスは舌打ちし、バスターダガーに回避行動を取らせつつ肩の三連発のミサイルで撃墜を狙う。
 白煙の尾を引いたミサイルはガロイカの撃ち始めたビームの前に全弾撃ち落とされたが、その隙にシャムスは350mmガンランチャーの照準内にガロイカを納め、引き金を引いた。
 照準を定めるまでの速さは同様の処置を受けた御同輩の中でも抜きんでて速いという自負がある。はたせるかな、機体の中央に大穴をあけたガロイカがたちまち跡形もなく爆発する。
 残弾と残っている友軍機の確認をしようと息を突いた所に、接近してくるDSSD所属の機体にシャムスは気づいた。スウェンが、良く見学に行っていた機体だ。カリオンとアルテリオン、それにベガリオンも一緒に付いてきたようだ。

 

「シャムス、ミューディー、無事か?」
『スウェン、無事なのね!』
『おいおい、なんでお前がその機体に乗っているんだよ。畑違いだろ』
「説明は後でする。これから援護に入る。カリオンで敵を攪乱する。その隙を逃すな」
『分かったわ』
『オッケー。そっちの二機も味方だな?』
「ああ」

 

 言葉短く要点だけ告げて、スウェンはカリオンにT・ドットアレイで構築した光刃を形成させ、すれ違ったガロイカを真っ二つに切り裂いていた。四肢を持ち、重心移動などによって小回りの利くMSほどの機動性はないが、カリオンの速度は大きな武器になる。
 プロジェクトTDの成果物である以上、カリオンらは宇宙船に分類されるのだろうが、この技術は、連合内で再度注目を浴びている次世代MAや戦艦への応用が上手く行けば、プラントに対して大きな技術的アドバンテージになるだろう。
 とはいえそんな事は一兵士の考える事でもなければ意見出来る事でもない。三隻の艦船の方はいささか被弾しているようだが、まだ戦闘能力は維持している。やはりまとわりつく小うるさい蠅から片付けるべきだろう。
 指令を出している機体が無いか先程からチェックし、DSSDや艦隊にも問い合わせてはいるが該当する敵影は見受けられず、目下は襲い来る敵を撃退する事しかできない。
 カリオンの弾薬は残り半分ほど。戦闘慣れしているスウェンがなるべく節約を心がけてもこうなのだから、実戦に関しては初めてのアイビスやスレイの機体には残りの弾など望むべくもないだろう。

 

『スウェン中尉、アルテリオンの弾薬が底を尽きそうなんだ。一度補給に戻らないと』
『ベガリオンも同じだ。貴様はどうなんだ?』
「おれの方は残り56%と言った所だ。ステーションまで援護する。シャムス、ミューディー、少し離れるが、問題はあるか?」
『は、型落ちの量産機をあてがわれたからって、甞めんなよ? お前一人抜けたくらいでやられるほどやわじゃねえよ』
『むしろ、歯応えが足りないくらいよ。スウェンこそ、慣れない機体で困っているなら交替してあげてもいいのよ』
「そうか、なら任せるぞ」

 

 決して状況が良いわけではないが、そういうシャムスとミューディーの言葉を信じて、スウェンはカリオンの機首を巡らせる。ガロイカの方も、増援のペースが落ちて来ているから、一斉に掛かってこられない限りは何とかシャムス達だけでも対応しきれるだろう。
 そう頭で分かっていても不安の種は尽きないが、スウェンはカリオンでアイビス達を援護する事を殊に意識した。

 

   *   *   *

 

 トロヤステーションの指令所に戻ったフィリオはアイビスやスレイ達の活躍を見守りながら、矢継ぎ早に指示を出す局長達や保安部隊の隊長達、また地球連合で戦車隊の指揮を執っていたエドモンド・デュクロらと肩を並べていた。
 デュクロは前大戦でカイ・キタムラやオルガ・サブナックらと共にカオシュンなどの攻略戦で肩を並べた戦車戦闘のエキスパートだ。無事戦後を迎え、現在はDSSDに身を置いている。
 シビリアンアストレイや連合の部隊にチームTDの援護が加わり、状況は五分五分に近い所まで盛り返している。後は敵がどんな隠し札を持っているのか、持っていないのか。こちらの頼みの綱である周辺宙域からの救援はいつ到着するのかにかかっていた。
 そんな中、姿の見えないセレーネ・マクグリフにフィリオが気付いた。彼女なら最後の最後まで逃げださずに残っていそうなものだが、あるいは別の所にいるのか。そう訝しんだ時、とうのセレーネから連絡が入った。
 長く綺麗な濃緑色の長髪を宇宙服に納めた姿に、フィリオのみならず局長達やデュクロ達は彼女が今いる場所がどこかを理解した。
 閉鎖的な空間で見覚えのある場所がどこか、デュクロが驚きながら口にした。

 

「セレーネ、お前スターゲイザーのコックピットに居るのか!?」

 

 スターゲイザーとは、プロジェクトTDと並びDSSDで推進されていた無人機による外宇宙探査用のMSとその制御をおこなうAIユニットの事だ。
DCから供与されたAI1のデータをもとに飛躍的にAIユニットの開発は進み、現在は無人探査用の教育を行う過程にある。

 

 DCから供与されたAI1のデータをもとに飛躍的にAIユニットの開発は進み、現在は無人探査用の教育を行う過程にある。
 AIユニットの収まる個所にオプションとして複座式の有人コックピットが換装できる。肝仁のAIユニットはまだあと五千時間ほどはMSの方のスターゲイザーに、パイロットが搭乗してAIスターゲイザーに学習を行わせる必要がある。
 セレーネは、今そのAIユニットを引き抜いてコックピットを搭載したスターゲイザーに搭乗しているのだ。

 

『AIユニットは搬出しておいたから丁重に扱ってね。DCからの技術提供で大幅に学習が進んだけど、未完成なのだから』
「それも大事だが、出撃するつもりか!? スターゲイザーは探査用MSだぞ。それにいくらお前がコーディネイターだからってMSの操縦は」
『それなら大丈夫よ。ソルがいるもの』
『はは、ごめんね。エド』
「なっ」

 

 申し訳なさそうに画面に顔をのぞかせたのは、短く切った金髪の少年だった。年の頃はまだ十代半ばを一つ二つ過ぎた程度だろう。デュクロの甥にあたるソル・リューネ・ランジュだ。セレーネ同様にコーディネイターでスターゲイザーの正パイロットも務めている。
 ソルがスターゲイザーのパイロットを務め、セレーネがオペレーターとして座っているようだ。軍事用ではないためにスターゲイザーには特殊な技術による装備を施し、それらを活かし切れば軍の機体とも戦える可能性は、確かにある。
 セレーネは一度言い出したら聞かない厄介な性質の持ち主だ。すでにこちらの許可を待たずに管制官達を説き伏せてスターゲイザーの出撃準備を整え終えているのだろう。今から手を回した所で止められまい。
 こちらからできるのはすでに出撃している部隊に、スターゲイザーの事を伝える位だろう。カリオンを地球連合の兵士に貸し出したフィリオと言い、スターゲイザーで出撃しようとしているセレーネと言い、独断で動く人間が多い。
 結局のところ止める事が出来ないという結論はすでに出ていて、だからこそ今のタイミングでセレーネも連絡してきたのだ。局長とデュクロが揃って頭を掻き毟るのを横目に、フィリオは苦笑してセレーネに話しかけた。

 

「セレーネ、ちょっといいかい」
『なに、フィリオ。貴方の事だから止めたりしないでしょう』

 

 まあね、とフィリオは小さく笑った。この二人、DSSDの予算を二分するプロジェクトの筆頭同士という立場ながら、公私共に良き同僚、友人と言う関係にある。
 そう言った関係ならいがみ合うのが普通だろうがそうなっていないのは、やはりフィリオの人徳の賜物だろうし、各勢力から供出された資金や多種の技術と相まって、DSSDが資金的にも技術的にも余裕があった事も大きいだろう。

 

「今からベガリオンとアルテリオンが補給に戻る。一緒に戻ってきたカリオンがいるから、スターゲイザーの出撃の援護をしてくれる。出撃後はカリオンと一緒に敵の撃退をお願いできるかい」
『分かったわ。シビリアンアストレイ用のビームガンを使うわよ。プラズマジェネレーターで動いているスターゲイザーなら、よっぽどの事が無い限りはエネルギー切れもないしね』
「もうすぐ救援の部隊も到着するから、あまり無理をしてはいけないよ。シリーズ77も、スターゲイザーもまだ、夢の階段へ足を伸ばしたばかりなのだから」
『その通りよ。私達は星の海へ飛び立ちたいんじゃない。飛び立つの。その為にDSSDとスターゲイザー、プロジェクトTDは存在しているのだから』

 

 頼んだよ、と告げるフィリオに別れを告げてセレーナは指揮所との通信を切った。
 もともとスターゲイザーにはNJCと核分裂炉の搭載が検討されていたが、核分裂炉以上の出力を持つプラズマジェネレーターのお陰で機体のエネルギーには計画当初の期待値よりも大幅に余裕ができている。

 

『それじゃあ、スターゲイザーを発進させます。いくよ、セレーネ』
『スターゲイザー発進します』

 

   *   *   *

 

 ベガリオンとアルテリオンの援護をしながら、ガロイカとのドッグファイトを演じていたスウェンに管制官からスターゲイザー発進の知らせが届いた。
 すでにスレイとアイビスは補給に入っているから、スターゲイザーの発進口付近の敵をこちらに引きつければいいだろう。

 

「残弾は30%を切ったか。ソニックカッターをメインに使うしかないな」

 

 プロジェクトTDと並び、DSSDで推進されている計画としてスウェンも興味を持っていたから、戦火乱れ舞う戦場に躍り出た白銀の機体が何と呼ばれているかすぐに分かった。

 

「スターゲイザー……。人が乗っているのか」

 

 黄金に輝くラインが走る純白の装甲のボディにガンダムタイプと一部の人間が呼ぶ、デュアルアイとブレードアンテナを持った頭部だ。特徴的なのは背に負ったリング状のパーツだろう。あれが、スターゲイザーが星の海を旅する為の帆の役割を果たす。

 

『カリオン、聞こえるかしら? こちらスターゲイザーのセレーネ・マクグリフ』
「聞こえている。スウェン・カル・バヤンだ」
『これから敵を迎え撃ちます。そちらの状況は?』
「機体に損傷はない。ただ、アルテリオンとベガリオンが戻ったら補給に入らせてもらいたい。それまでは保たせる」
『了解したわ。ソル、エネルギー切れを気にしなくていいからって、無駄弾は撃たないでね』
『手厳しいね』

 

 通信の向こうで、セレーネと同席しているソルの苦笑の声がかすかに聞こえた。あまり接点はないが、スウェンもセレーネの事なら知っている。
 地球連合の駐留艦隊所属の人間と言う事で、DSSDの人間からは目の敵にされてはいたが、フィリオ同様に宇宙を目指す存在であるスターゲイザーの開発計画の主要人物と言う事で、少なからずスウェンの興味を引いていたからだ。
 スターゲイザーに向けていた視線を動かし、接近してきたガロイカへと向ける。スターゲイザーの手にしているシビリアンアストレイ用のビームガンは低出力だから、一撃ではガロイカを撃墜できない。
 運動性や機動性はともかく、火力をスターゲイザーに求めるのは酷だろう。あまり長引く前に救援が来てくれる事を切に願った方がよさそうだ。
 スウェンのカリオンが先行し、横一列に並んだ四機のガロイカの左右の両端にGドライバーの狙いを着ける。右端の機体はかわしたが、左端の機体は回避が間に合わずに直撃を受け、横を飛んでいた味方を巻き込みながら爆発する。
 味方の撃墜をまるで意に破壊さず、ガロイカが同時にカリオンめがけてビームマシンガンを乱射してくる。まるで生物の様に滑らかな動きでその弾幕をかわしつつ、発生させたソニックカッターで、衝突寸前まで肉薄したガロイカを横一文字に切り裂く。
 機体を旋回させて残る一機を片付けようとした時、スターゲイザーが放ったビームが次々と着弾して、三発目で装甲を貫いた。戦闘のプロではないだろうが、そこそこにできた射撃だ。

 

「マクグリフ博士、ソル、このまま周囲の敵を迎え撃つ」
『了解』

 

 スウェンに答えたのはソルだ。三発当ててようやく撃墜できたガロイカ相手に、ビームガン以外の火器が欲しいと、痛切にソルは思った。
 実を言えばビームガン以外にもスターゲイザーには武器となり得るものはある。とはいえいささかエネルギーの消耗が激しいのが欠点だ。プラズマジェネレーターとはいえ多用すればどのような機能低下をもたらすか分からない。
 生き残っている連合の部隊とシビリアンアストレイの部隊も、破壊されたステーションの残骸を盾にしながら、こちら側へと集結しはじめて残った戦力の集合を図っている。

 

   *   *   *

 

 一方。ガロイカが結構な数が落とされて、ゼブはあららと意外な苦戦に小さく驚いていた。ここに配備された部隊は旧式のものばかりという話だったし、人員も軍部の主流から外れた左遷組だから大したことはないと踏んだのだが、これは予想を外れた。
 確かに機体は旧式なのだが、数人すこぶる腕の立つパイロットが混じっていたし出撃してきたシリーズ77の機体が高い戦闘能力を発揮している。
 面倒なことだが自分が出張るしかないだろう。幸か不幸か目的としていたシリーズ77とスターゲイザーが出撃している。鹵獲する手間はかかるが、やるしかあるまい。

 

「や〜れやれ」
「っ、スターゲイザー、回避しろ」
「なんだ、指揮官機?」

 

 人型に近いシルエットの新しい敵影からの砲撃を、スウェンからの警告で気付いてスターゲイザーが回避する。言うまでもないが、ゼブの駆るゲイオス=グルードだ。両肩に装備したダブルキャノンの砲撃だが、初撃は外すつもりだったのだろう。
 手に持ったデュアルレーザーソードの切っ先をスターゲイザーに向けている。ゲイオス=グルードがまるで挑発しているかのようだ。
 先ほどのガロイカの性能から考えても、この指揮官機らしい機体がどれほどの性能を持っているか判断が難しいと、スウェンは判断した。もっとも強敵である事は間違いあるまい。
 ベガリオンとアルテリオンの補給が間もなく終わるだろうが、カリオンの方がGGキャノンとGドライバーがわずかにしか残っていない。あの指揮官機相手に補給に戻る余裕があるかどうか。
 スウェンが判断に迷う間に、スターゲイザーがビームガンで牽制しながら仕掛けた。慎重なソルがセレーネに押し切られたと言った所か。ゲイオス=グルードは狙いの甘いビームガンを簡単にかわし、ランチャーミサイルで反撃を放つ。
 ゲイオス=グルードの装甲ならビームガン程度なら十発や二十発当たった所で大したことはない。とはいえ、運動性や機動性ならカリオンやスターゲイザーはゲイオス=グルードを上回る。
 ちょこまか動かれると面倒だから一撃で戦闘不能が翼を折るべきだ。ランチャーミサイルの間隙を縫う様にしてくぐりぬけたスターゲイザーに狙いを定め、ドライバーキャノンを直撃を避けた狙いで撃った。
 砲口から高出力のドライバーキャノンが放たれるよりも早く、スウェンが撃ったGドライバーの超高加速弾頭がゲイオス=グルードに着弾する。ゼブは揺らいだ機体のバランスを取り直し、続けざまに撃たれたGGキャノンをかわした。
 スウェンはカリオンに残っていたマルチトレースミサイルとホーミングミサイルを全弾吐きだして、ゲイオス=グルードをぐるりと囲い込む。
 機体の向きを前方に据えたまま後方にスラスターを噴射して退きながら、ゲイオス=グルードがランチャーミサイルと、ダブルキャノンで追いすがるカリオンのミサイル群を撃ち落とす。
 その隙を突いて、その背後に背に負ったリングを輝かせるスターゲイザーの姿があった。背に負ったリングに発生させた特殊な膜で高速で吹き荒れる太陽風を、特殊なシステムで変換して推力をソーラーセイルだ。
 同時にスターゲイザーが幾重にも光の輪をその機体に纏い始めている。

 

「ヴォーワチュール・リュミーエール(VL)の副産物ってー奴ねえ。探査用MSが、そんな厄介なーもん装備ーしてどーすんだーか」

 

 自機の背後に回り込むスターゲイザーの動きを見逃さず気付いていたゼブは振り向きざまにダブルキャノンをスターゲイザーへと見舞った。最悪、機体の残骸からでもデータは取れる。破壊も辞せずと判断を変えたのだ。
 機体の腰部を貫く二条のビームは、展開したVLによって阻まれた。淡やかなVLの光がスターゲイザーの純白の装甲の表面で輝き、ビームの直撃を阻んだのだ。
 ダブルキャノンを弾いたスターゲイザーはそのまま、光輪を放ちながら高速でゲイオス=グルードへと向かってくる。放たれる光の輪は凄まじい切断力を発揮して、浮遊していたガロイカやダガー、ステーションの残骸を真っ二つに切り裂いてゆく。 
 ゲイオス=グルードを輪切りにせんと迫る光の輪を、ゼブはほとんどをかわし、かわし切れぬいくつかはデュアルレーザーソードでことごとく受けて見せた。

 

「あの機体のパイロット、相当やるわね」
「でも、あの機体が指揮官機の筈だ。あいつさえ」
「わーるいねえ。こっちも手ー加減できーないんだわ」

 

 VL発動の副産物である光の輪を一撃も受けずにかわし、受けるのはゲイオス=グルードの性能もさることながら、ゼブの力量があってこそだろう。
 スターゲイザーと激しく交差するゲイオス=グルードの隙を突いて、スウェンがソニックカッターでまさしく彗星の如く突きかかるが、それさえもVLの光輪と同時に捌いて見せた。
 スウェンとセレーネ達をゼブが引き受けた事で、残っていたDSSDの警備部隊や連合の艦隊は決め手を欠いて襲い来るガロイカの前に押され始めている。なんとかミューディーとシャムスが奮闘しているが、限界が訪れるのはそう遠い話ではないのは明らかだった。
 スウェンが冷静に状況を分析し、こちらの分が悪いと判断した時だった。補給を終えたベガリオンとアルテリオンが勢いよく宇宙へと飛び出し、ゼブの援護に回ってきたガロイカをミサイルの連射でまとめて撃墜するのと、救援の部隊が間に合ったのは。
 VLの光の輪をデュアルレーザーソードで受けていたゼブはタイムリミットに間に合わなかった事に気づき、大きく天を仰いだ。愛きょうのある垂れ目の顔に、心底参ったと言う色が浮かぶ。

 

「いーちばん来てほしくなーい連中が来たよ。まいったねえ、こりゃ」

 

 ガロイカの群れを蹴散らしながら、急速で接近してくるのはDC特殊任務部隊クライ・ウルブズに間違いなかった。かつてスウェンやシャムス、ミューディーがω特務艦隊として幾度となく死闘を繰り広げ、ヤキン・ドゥーエ攻防戦では最終的に共闘した相手だった。
 敵として何度と戦った事があるだけに、その実力を骨身にしみて理解しているスウェン達にしてみれば、敵対勢力ではあるものの救援に来てくれた相手と考えれば奇妙な安堵を覚えた。
 ここに来るまで二十機近いガロイカを蜘蛛の子を散らすよう叩き潰してきたクライ・ウルブズは、すでに全艦載機が出撃して敵の掃討を行っている。
 ティエリアのガンダムヴァーチェ、ロックオン・ストラトスのアヘッドスナイパーカスタム、刹那・F・セイエイのサキガケ、アウル・ニーダとステラ・ルーシェのエルアインス、スティング・オークレーのアカツキ、デンゼル・ハマー、トビー・ワトソン、セツコ・オハラのバルゴラに、アルベロ・エストのビルトシュバイン。
 そして、シン・アスカの飛鳥インパルスだ。前大戦時に多用していた艦載モジュール・ムゲンシンボを装備したタマハガネが、衝撃砲や各所に搭載したレーザー砲塔、対空ミサイルを雨あられの如く撃ちながら、戦場のど真ん中を力づくで突破してきている。
 新兵もいるが、残りの半数は前大戦を生き抜いた歴戦の猛者ぞろいとあって、連合駐留艦隊やDSSDの警備部隊とは一線を画す動きを見せている。その新兵とて本当にそうと言えるのはセツコだけだから、実質エースのみと言っていい部隊構成だ。
 これはやはり相手が悪いかと、ゼブは判断して作戦の放棄と撤退を決断した。残ったガロイカとゲイオス=グルードで相手をするには、いささか厳しい敵戦力と言える。それでもまだ、相手に特機がいないだけ救いはあるが、慎重を期する事にした。
 ガロイカとて生産コストと性能が高いレベルでつり合ったかなり優秀な兵器なのだが、クライ・ウルブズの連中を相手にするには、不安な戦力だ。

 

「かぁ〜、おまけにαとβまで戻ってきちゃったーねー。こりゃ逃ーげーるが勝ちだな」

 

 ダブルキャノンとドライバーキャノンを連射してスターゲイザーとの距離を取り、残っていたガロイカにクライ・ウルブズの足止めを命じる。近海でのザフトや連合艦隊の足止めはうまく機能し、後三十分はこちらに来ないというのに頭抜けた突破力だ。
 ゼブが死に、こちら側の世界に来る事になった最大の理由であるあのロンド・ベルの、こちら版があのDCの連中になりそうだ。

 

「早いうちに芽を摘ーんでおくに限るんだーけど、今はしゃーない、しゃーない」

 

 撤退する動きを見せたゲイオス=グルードに気づいたのは、三機で小隊を組んでレイ・ピストルで弾幕を張っていたグローリー・スターのセツコだった。
 アメノミハシラでシンと刹那の模擬戦を見学している最中に鳴り響いた警報は、DSSDからの救難信号をキャッチした為に鳴らされたものだったのだ。
 それから最大戦速でトロヤステーションを目指し、妨害するアンノウンを薙ぎ払いながら辿り着いたと言うわけだ。

 

「チーフ、中尉、敵が退いていきます」
「おれ達が到着して形勢不利と見たか」

 

 デンゼルは、初の実戦となるセツコをカバーしながら戦ってい自分達の位置とバルゴラの足では撤退の動きを見せ始めたゲイオス=グルードには追いつけそうにないと、素早く判断を下した。
 アルテリオンやベガリオン、スターゲイザーが逃がしてなるものかと、斃された味方の仇を討つべく猛追するが、絶妙なタイミングで残っていたガロイカが進路を阻んでいた。引き際と引き方をよく心得た指揮官であると分かる。

 

「追いつけそうなのは、シンのインパルスくらいか」

 

 トビーがそう言った時には既に、シンはゲイオス=グルードめがけて機体を動かしていた。アルベロから取り逃がすなと指示を受けたのと自分で判断を下したのは同時だった。
 シンの飛鳥インパルスの足を止めるべく動くガロイカが、長距離からの精密な狙撃で撃ち抜かれる。
 ロックオン用に調整されたアヘッドからの狙撃によるものだ。特別に誂られたGNオクスタンスナイパーライフルから、GN粒子を圧縮した高密度弾頭が一発一殺の無慈悲さでガロイカを撃ち落とす。

 

「ハロ、回避は任せるぞ」
『マカセトケ、マカセトケ』
「ロックオン・ストラトス、狙い撃つぜ」

 

 マティアスからロックオンの要望を可能な限り叶えて欲しいと言う要請があったため、DCで調整されたアヘッドSCのコックピットには、かつてロックオンが搭乗していたガンダムデュナメス同様のシステムが搭載されている。
 狙撃時には、実際のライフルのスコープに似たモジュールが使用され狙撃を得意とするロックオンが生身で撃つのと同じ感覚で引き金を引く事が出来る。
 さらにもう一つ、先程ロックオンに受け答えしていた丸いオレンジ色のAIロボットだ。人間の目の様なREDを二つ備え、妙に愛嬌がある。とあるコーディネイターの少年が婚約者に贈ったペットロボットをサイズアップしたもの、ハロという。
 ただ愛嬌があって簡単な会話機能を持った程度のペットロボではない。ロックオンが回避を任せると言ったように、回避・防御に専念すればロックオンが機体を操縦するのと同程度の能力を発揮する。
 ロックオンがDCに要求したのはかつての相棒の再現だった。見事DCがロックオンの要求通りにハロを完成させて見せた。別世界で市販されていたハロのデータがあったことも幸いだった。
 ロックオンの右手前の位置に収まったハロに回避行動を任せ狙撃に専念したロックオンは、次々と高精度の狙撃で一機ずつガロイカの数を減らして見せる。

 

「あーらあ、こーれはやばーいかなー」

 

 本当にそう思っているのか怪しい調子でゼブは呟く。後方を映すカメラには猛追するインパルスの姿が映っていた。なんというか勢いのよさそうな機体だ。パイロットはさぞ血の気が有り余っている事だろう。
 インパルスの機影だけではない。彼方から巨大な光の奔流がゲイオス=グルードめがけて迸ってくる。直撃すれば、ただでは済むまい。尋常ではない高エネルギーの塊だ。

 

「おわっと!? かー、やってくれるぜ」
「外したか。デュミナスのデータに無い機体……排除させてもらう」

 

 圧縮粒子を開放した最大出力のGNバズーカの砲撃を回避したゲイオス=グルードに、隠さぬ敵意を向けてティエリアは穏便ならざる宣言を告げていた。
 実の所、ゲイオス=グルードをはじめとした所謂『ゲスト』『インスペクター』と呼ばれる勢力の機体のほとんどのデータは、DCには存在する。
 それをティエリアが知らないのは、デュミナスのハッキング能力を持ってしても突破できない魔術を織り交ぜた、世界で唯一の科学・魔術混合のセキュリティのお陰だ。
 シュウ・シラカワやテューディ・ラスム・アンドーらの協力があって構築したオカルト混じりの技術は、DCに様々な面でアドバンテージを与えていた。
 ゼブがヴァーチェの砲撃を回避して崩した機体のバランスを立て直した時、驚くべき事に目前にインパルスの姿があった。時間にしてわずか一瞬の間に見せた動きに、ゼブが思わず目を見開く。
 刹那との模擬戦で機体の装甲越しに相手の呼吸・意識・気配の揺らぎを見抜き感じ取る感覚が、戻りつつあった。ゼブの意識のいわば『死角』を突き飛鳥インパルスの最大加速で突っ込んでいた。
 左腰の鞘より抜き放つ獅子王の太刀。星の光を刀身に映して煌めかせ、血が凍るほどに冷たく妖しいまでに美しく。ゼブの背筋が凍えた。心臓を死人の様に冷たい何かに握り締められる感覚が体の内側に広がる。

 

「ちいっ!?」

 

 シンの呼気と共に鯉口を切った獅子王の太刀が加速する。言葉にならぬ気合いの叫びと共に、白銀の太刀は抜き放たれた。

 

「――っ!!!」

 

 シンは前大戦で負った傷が癒えてから初めてと言っていい会心の刃応えに、内心で小さく喝采を挙げる。振るった獅子王の刃は、とっさにゼブが打ち合せたデュアルレーザーソードを真っ二つに切り裂いていた。

 

「ぜあああっ!!」

 

 振り抜いた刃を返し切っ先が小さな弧を描く。シシオウブレードの柄尻でゲイオス=グルードの左肩のダブルキャノンの砲身との接合部を正確に強打し破損させ、右肘を支点に腕を懐へ引く動作でシシオウブレードを滑らせる。
 刃のみならず柄尻や鍔を使った打撃を組みこむのは、剣術なら大抵の流派でも見られるものだ。滑らせた刃が打撃の衝撃に揺らぐゲイオス=グルードの頭部を、丁度カメラの位置で横に真っ二つに切り裂く。
 ゲイオス=グルードの重装甲をものともしない太刀筋の鋭さは、シンの体の奥にまで沁み込んだ剣士としての性が蘇りつつある事を意味している。一瞬でサブカメラに切り替わった事がどういう事を意味しているか悟り、ゼブは悪い冗談の様だと思った。
 真ゲッターのゲッタートマホークや、ダイターン3のダイターンザンバーなどはともかく、たかがMSサイズの機体に斬られるとは、これは流石に予想だにしなかった。
 即座にゲイオス=グルードの機体を動かして距離を取りつつ、生きている火器をインパルスに照準し一斉に放つ。
 斬撃の後にできる一瞬の隙。かつてならそれを補う直感が働いたが、その働きがコンマ百分の一秒遅れた。飛鳥シルエットの左主翼の先端をドライバーキャノンがかすめ、わずかに変化した機体バランスを立て直す一瞬に、続けざまに砲火が集中する。
 数秒生まれた隙に開いた距離を埋められぬと悟り、シンは苛立ちを噛み殺す。のけぞるような姿勢のインパルスの姿勢を立て直す間に、敵の指揮官機は構わず背を見せて逃げに入っている。
 その背を狙ってロックオンとティエリア、それにデンゼルが各々の機体に搭載された遠距離攻撃用の武装のトリガーを引き続けるが、背中に目でもある様に――カメラはあるが――見事にかわして見せている。
 機体性能もそうだが、パイロットも高い技量の持ち主である事はその事実だけでも分かる。シン達の新しい仲間であるロックオンとティエリアの腕前は確かなものなのだから。

 

「敵ながら潔いと言うかなんというか……」

 

 呆れた様な感心した様なシンの呟きは、静寂を取り戻した宇宙に吸い込まれて消えた。

 
 

 《つづく》