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SRW-SEED_660氏_ディバインSEED DESTINY_第29話

Last-modified: 2009-12-26 (土) 14:10:51
 

ディバインSEED DESTINY
第二十九話 激戦果てなく

 
 

 ユニウスセブン落下事件後に地球連合のプラントへの武力侵攻をきっかけに、再びDCに対して地球連合が、各構成国から抽出した艦隊がDC領海に侵攻し、それを迎え撃つDCと戦端を開いて既に数時間。
 DC本隊から離れて、地球連合軍太平洋艦隊第三任務群へ奇襲をかけるべく高速艦三隻で帆を進めていたDC特殊任務部隊クライ・ウルブズが、待ち伏せを受けて開いた死闘の幕はまだまだ閉じる様子を見せてはいない。
 スペースノア級タマハガネに庇われるストーク級空中母艦カイゼルオーン、ジャピトスは被弾が重なって傍目にも明らかに船速を鈍らせ、船体を保護しているEフィールドの出力の低下も見られた。
 それぞれのストーク級から出撃したランドグリーズ・レイブンとエルアインスは、精鋭が乗っている事もあって、数で勝る地球連合の諸兵の猛攻を前にかろうじて戦況を維持している。
 それでも一機、また一機と撃墜されるたびに個々にかかる負担は増していて、絶望的な状況に追い込まれ慣れているクライ・ウルブズ以外のDC兵の中には、徐々に苦悶や諦めの色を浮かべている者も少なくない。
 そんな中で、やはり勇猛無双の活躍を見せているのは、MSパイロットとして最古参最精鋭クラスのメンバーがそろうクライ・ウルブズの、発足初期から籍を置いていた古参組である。
 あいも変わらずエムリオン・リターンズカスタムを愛機としているアウル・ニーダは、ぱっちりと大きな瞳に激烈な戦闘の炎を轟と燃やして一秒も休む暇の無い戦いの渦中にあった。
 機体のM1パーツの腕と、リオンパーツの腕に握らせた計四丁のオクスタンライフルの弾幕を展開して母艦へと向かわんとする敵機に向け、ハリネズミよろしく火砲の針を広げている。
 今回初めて戦線に投入されたDCの新航空戦力VF−19F、S、A型にも搭載されているハイ・マニューバ・マイクロ・ミサイル(HMMM)を装備し、ライフルと合わせて猛烈な火線を単機で描いてみせている。
 通常の戦闘機やDCのAM、MSに搭載されていた従来のミサイルに比べて、HMMMは小型ながら、新型の炸薬を詰め込んで威力を確保し、搭載された自律AIが敵機に向けて自ら機動を変えて襲い掛かる。
 またロックオンの仕方も従来の兵器群とは別種の方法を取っている。先年、テューディ・ラスム・アンドーの発案によって完成したプラーナ探知型を戦線に投入したのである。
 魔装機系の技術を有するDCならではの探知方式で、従来探知する生命反応の他にプラーナを探知するこのミサイルに対するジャマーは、現在存在しておらず、特に対艦使用に置いて効力を発揮する。
 なにしろプラーナ探知であるからして、艦の中でも生命反応の多い個所を狙って襲い来るのだから、直撃を受けた時の人的被害は必然的に大きなものとなる。文字通り必殺――必ず殺すミサイルなのだ。
 もちろん、撃ち落とされた場合や装甲に阻まれて致命傷を与えるに至らない場合などはそうとは限らないのは事実である。

 

「だあああ、もう、多いっつーの!!」

 

 ヘルメットのバイザーに直接投射される各種のデータを瞬時に判別し、四肢にその情報を通達して機体の操縦に反映させ、アウルは脳味噌が沸騰する錯覚に襲われるほど目まぐるしく動き続けていた。
 それでもアウルの働きに見合うだけ敵機が海へと叩き落とされていればまた救いもあったが、敵もさるもので新型MSやMAにベテランクラスのパイロットが揃いたやすくは空から落ちてはくれない。
 蒼く濡れる空に白線を描くHMMMが飢えた狼の群れの如く、同時に複数のイナクトやウィンダムに襲い掛かるが、あるものは対空機銃やビームライフルで迎撃し、あるいは友軍機が迫るミサイルを叩き落として窮地を救っている。
 砲戦機かと疑いたくなる火力の冴を見せるエムリオンRCを手強いと見た敵機の攻撃が集中するも、アウルは攻撃の手を休めぬままに機体を動かしてかろうじて直撃を避けて行く。
 単なるエムリオンの改修機であったらここまでの活躍を見せられなかっただろうが、再びアウルと巡り合ったこのエムリオンRCは、DCが太鼓判を捺す改修機――いわゆる魔改造機の類である。
 この魔改造の『魔』の一文字が肝要だ。
 これまでDCが開発した魔改造機――たとえば太陽炉にグラビコン・システムを組みこまれたエクシアと比べるとエムリオンRCの魔改造の度合いはさほどでもないが、性能の向上ぶりは洒落にならない。
 M1部分は実際にはM2とでも形容するのが正しい位に高性能化しており、その外見こそ大きく変わらぬが中身は全くの別物だ。
 リオンパーツにも最新のテスラ・ドライブや機動兵器技術を導入し、ガーリオンタイプに装備されていたブレイクフィールド、Eフィールドの発生装置、熱核タービンバーストエンジンが採用されている。
 エルアインスやアヘッド、VF−19にかわり再びDCの主力量産機の座に返り咲こうという開発者の野心が秘められているだけに、量産を視野に入れた機体ながら高性能の装備を低コストで保有しているのだ。
 まあ、アウルに回された機体は制式採用前の予算度外視スペシャル仕様機ではあるけれども。
 開発者の野心に相応しく実体・ビーム両方に高い防御性能を持ち、もともと空戦を主戦場としていたエムリオンとあって、その動きは軽快にして精妙、一度攻撃に転ずれば火の如き侵略の勢いを見せる。
 それでも『点』というよりもほぼ『面』を構成する敵部隊の巧妙な射線軸の牢の中へと徐々に追い込まれているエムリオンRCは、先程から被弾寸前の危うい回避行動を取らされていた。

 

「こんの、鬱陶しいんだよ、お前ら!!」

 

 そう叫ぶアウルの声音には少なからず焦りの響きが混じっていた。
 敵機のインターセプトを担っていたアウルであったが、シンのクロスボーンインパルスの思いもよらぬ苦戦に気づき、なんとか援護に行けぬかと苦心していたのである。
 シンが、これまでのシルエットの中でも総合的な戦闘能力では一、二のクロスボーンインパルスを操ってなお勝利を掴めぬとは、シンの実力をよく知るアウルには驚愕に値した。
 仔細に観察する余裕など欠片もないが、クロスボーンインパルスは右腕を失い、他にも機体の装甲表面に数発のビームが当たった跡が見える。
 左手のビームシールドでコックピットをカバーしながら、足裏のクローでスクリューウェッブを掴み、胸部の20mmCIWSと合わせて三対一の状況で互角に渡り合っている。
 DC側以外の、というかクライ・ウルブズ以外の人間からすれば主要武装を失った状態で、ハレルヤ・アレルヤ・セルゲイを一度に相手取っているシンの方こそが異常な存在と見えるに違いない。
 シンはムラマサブラスターを握る右腕をハレルヤのタオツーに斬り落とされた代償に、ハレルヤタオツーの右肩関節の隙間にヒートダガーを突き刺した。
 数千度に熱せられた刃は、間接の隙間からタオツーの骨格たるフレームにまで到達し、高熱による融解の特徴的な波紋を残し切断した。
 ハレルヤタオツーに止めを刺すべく引き抜いたヒートダガーをコックピットへと向けた時には、セルゲイのティエレン高機動B型の牽制の射撃が入ったが、神懸かった反応速度によってビームシールドで受け止めて見せた。
 ビームシールドを押し込む着弾の衝撃を活かして機体を捻り、クロスボーンインパルスは周囲を取り囲むセルゲイ、アレルヤを牽制する為にスクリューウェッブによる旋風を巻き起こした。
 スクリューウェッブを振り回す脚部の動作がそのまま三機のティエレンからの攻撃をかわす動作に連結し、攻撃と防御を同時に繰り出して右腕の欠損を補っているのだ。またビームシールドも防御のみに使われるだけではない。
 一部方向のみにビームを出力してサーベル代わりにし、またビームシールドをまるでブーメランか手裏剣のように飛ばして不意を突き、不意を突かれたアレルヤタオツーの右膝から下を切断して見せた。
パイロットであるシンに極限の疲労と緊張を強いし、クロスボーンインパルスもまた徐々に傷つきつつあったが、それでも彼らは着実に超兵二人と頂武の隊長にダメージを与えている。
 しかし、この三人を抑えても尚、シンの動きが束縛される事はクライ・ウルブズにとってマイナスの面がはるかに大きい。
 ティエレン部隊のトップ二人と指揮官機を抑えているのは十分な仕事といえたが、頂武はセルゲイの副官であるミン中尉が指揮を引き継ぎ、マリー、ソーマの二人が残っていて猛攻を繰り広げている。
 少数に対する多数の優位性の表れと言える。少数の部隊の場合には、一人が欠ければ生じる不具合を、数でカバーする事によって部隊の機能を維持する事が出来るのだ。
 DC側はエルアインス各機とグローリー・スターの面々が頂武の二十以上のティエレンを相手に奮戦しているが、この戦いの旗色も決して良いものではない。
 敵パイロットはいずれもトビー、デンゼルに準ずるか同等近いレベルの実力者であり、強化されたバルゴラや性能でティエレン、イナクト、フラッグを上回るエルアインスといえども苦戦は必定。
 さらにはトビーとデンゼルは新兵であるセツコのカバーにも気を割きながら戦わなければならないのだから、負担は一段と大きい。
 左方向から大きく弧を描いて迫ってきたイナクトの射撃によって、リオンパーツ左腕部を吹き飛ばされ、大きくバランスを崩す機内で、アウルは瞬間的に脳髄から一気に全身へと行き渡る激昂に意識を任せた。
 残る三つの腕に握るライフルの照準をこちらに当てて来たイナクトへと集中させて、三点集中の射線に捉われたイナクトを、かろうじて人型に見える屑鉄に変える。
 HMMMの残弾はざっと二十発、オクスタンの実弾はとっくにゼロ、となるとビームが主体になる。MSはともかくとしてMA相手に効果的な武器は残っていない。

 

「ブレイクフィールド使うにゃ、ジェネレーターの温度が高すぎるか!!」

 

 先ほどからのビームの連発とEフィールドの展開によって、すでに機体のジェネレーターの温度は高温になっている。機体のエネルギー残量はともかくとして、ブレイクフィールドの使用によってさらに熱を増す事態は避けたい。
 できれば艦に戻ってリオンパーツ、ライフルの交換に大部分を撃ち尽くしたミサイルの補充をしたい。ぜいたくを言えばシャワーを浴びて汗を流して、カラカラの喉も潤したい。
 だがそれは――

 

「全部、お前ら倒してからだぜ!!!」

 

 

 待ち伏せされ部隊を囲まれた状況で戦端を開いた事によって、戦闘は最初から不利であったが、それでも連合部隊に相応の被害を強要したのは、流石はDC最強の部隊といえた。
 攻める事に特化したクライ・ウルブズは守勢に回ると攻めの時ほどの戦闘能力を発揮できぬが、今回の戦闘に際して配備されたある一機のMSの存在が、この不得手な守勢の戦いをカバーしていた。
 グラハム・エーカー大尉率いる大西洋連邦空軍第8独立航空戦術飛行隊――通称オーバーフラッグスは、タマハガネら三隻を背後から攻める位置にあったが、ある一機のMSを前に進撃を止められていた。
 連合艦隊の中でもトップクラスのパイロットが揃うオーバーフラッグスを相手に、太陽より眩く輝く黄金の機体が、獅子奮迅の戦いぶりを見せている。
 ツインアイと額にV字のアンテナを備えた外見的特徴から、ガンダムタイプと思しきその機体は、竜の頭部を模した両肩の赤いアーマーとフライトウイング除けば機体のほぼすべてが黄金の輝きに包まれている。
 左手には中央に十字の意匠を凝らされた赤い竜頭の盾を持ち、右手にはレイピアに近い形状の実体剣ダブルソードを握っている。
 巨竜が大空へと羽ばたくかの様に赤い翼を広げ、オーバーフラッグ各機の隙間を縫うように飛翔し、眼の眩む輝きを宝石箱がひっくり返されたように散らして戦う様は思わず目を奪われる美しさであった。
 後にもっとも美しいMSと称賛されるDCの新型MSスペリオルドラゴンだ。
 アカツキに使用されていた特殊装甲ヤタノカガミを惜しみなく使用し、対ビーム兵器に対してはほとんど無敵に近い防御性能を誇る。
 件の装甲は着弾したビームを発射した相手に反射する特性故に、極めて高コストであった事が問題視され、スペリオルドラゴンへの実装には疑問の声が上がっていたが、それでもなお実装が決定した。
 すでに二年半前の大戦時にヤタノカガミの開発自体は終了していた事もあり、スペリオルドラゴンに装備されているヤタノカガミも相当の強化・改修が施された新型のヤタノカガミ装甲に変えられている。
 現在ヨーロッパで奮戦中のブローウェル・カスタムのビーム吸収機能を持たせると同時に、弱点であった実体弾に対する防御性能も向上が図られており、準特機並の堅牢さを誇る。
 実にM1、二十機分という高コストが問題視されたアカツキを、逆にとことん高性能化してコスト以上の戦闘能力を持たせればよし、と普通の感覚とは真逆の方向に開き直って開発されたのである。
 ここら辺の開発経緯が実にDCらしいエピソードであると言えよう。
 背の翼二枚と剣の鋭さを待ちながら長く伸びた尾それぞれにテスラ・ドライブを内蔵して、重装甲化した事で増した重量によって低下した運動性を補強している。
 ビーム吸収・反射能力を完全に発揮する為に搭載されたコンピューターも最高の演算能力を持つものが搭載されている。
 武装に関しても刃先が単分子の厚みしか持たず、グルンガスト弐式の計都・瞬獄剣に匹敵する切断能力を有するダブルソードに、ビームアローになるシールド、ヒートソードにもなるテイルスタビライザー。
 また着弾したビームのエネルギーを蓄え、ヤタノカガミ装甲のどこからでも発射できる特殊機能が追加されており、防御一辺倒の機体で終わってはいない。
 スティング・オークレーの駆るスペリオルドラゴンは、緒戦であえて無数のビームライフルの直撃を受けて、すでに七機近いMSのビームライフルとそれを握る腕を吹き飛ばした。
 その後もスペリオルドラゴンの特性を把握する前に攻撃を仕掛けた敵機に手痛い一撃を送り返し、ビームが効かないという特性に二の足を踏む敵に近接戦を挑んで撃墜する働きを見せている。
 現在機動兵器の主武装がビームに移行し、ミサイルやリニアガン、レールガンなどの実体弾系統の武装が少なくなったこともあり、ことスペリオルドラゴンは防御に関して言えば特機を含めて最高峰の性能を持っている。
 盾を左手の甲に装着して、両手にダブルソードを握って二刀流にしたスペリオルドラゴンは、三基のテスラ・ドライブの推力を最大限に引き出してオーバーフラッグの手足を斬り飛ばし、足を斬り飛ばし、戦闘能力を奪う。
 撃墜寸前の、救助すればまだ助かる状態の敵機を増やして味方の救出に敵戦力を割かせて少しでも相対する敵を減らす為の、小賢しいと言われれば否定できない戦法だ。
 しかしグラハムが直接に指揮を取り、ダリル・ダッジ、ハワード・メイスンらフラッグファイターの二人とコンビネーションで攻め始めると、この三機に集中する事を強制される。
 カタログスペックではDCインパルスを上回るほどの高性能機であるスペリオルドラゴンを持ってしても、フラッグファイター達の連携が生む戦闘能力は侮れないものだ。

 

「こいつら、トップガンの集まりかっ」

 

 ヘルメットの奥の顔を歪めて、スティングは全天周囲モニターに映し出され、周囲を目まぐるしく秩序だった連携行動で飛び回り、襲い来るオーバーフラッグ達を睨み殺さんばかりの視線で睨みつける。
 戦闘機形態とMS形態への変形機構を織り交ぜたグラハムらの小隊攻撃は、スティングの目をしても見事と唸らざるを得ない。DCの中でもあれほどの錬度を持った小隊がどれほどいることか。

 

「なろおぉ!」

 

 スペリオルドラゴンを中心に渦を描く様にして取り囲むオーバーフラッグめがけて、黄金の装甲のそこかしこから、これまで吸収し蓄えておいたビームを射出する。
 三機のオーバーフラッグに広範囲の攻撃範囲を持つ『ファン』。
 さらに左利き使用になっている指揮官機らしい最も腕の立つオーバーフラッグへは、ビームサーベルの刃をそのまま射出した形状を持つ『ムービサーベ』と、弾丸状のビームを放つ『ムービルフィラー』を連射する。
 銃器どころかそもそも砲口や銃口らしきものが一切ない『装甲それ自体から』射出される射撃兵装は、たとえ初見でなかろうとも対応する事は難しい。
 正面は勿論、両側面、背面、上下とスペリオルドラゴンの黄金装甲のどこからででも放たれる以上、たとえ背後を取ってもビームライフルの銃口を向けられているのと等しいのだから。
 グラハム機は、さすがは空戦の貴公子の二つ名は伊達ではなく、射出方向とタイミングが全く読めないムービサーベとムービルフィラーを、旋回時に掛かる高Gに耐えて回避して見せる。
 オーバーフラッグに装備されているディフェンスロッドは、敵機の銃口から弾道予測を行って防御するシステムを採用しており、このスペリオルドラゴンの『装甲表面からの射撃』に対しては無力だった。
 そのために防御不可の回避行動を取らざるを得ず、避けきれない射撃をディフェンスロッドで防ぐ選択肢は排除されてしまう。
 髪をオールバックにし、普段は薄い色の入ったサングラスを着用しているハワードと、浅黒い肌にドレッドヘアが特徴のダリルは、グラハムには一歩劣るものの優秀なフラッグファイターだ。
 彼らに向けて放たれたのが広範囲攻撃故に密度の薄いファンであった事もあって、翼や手足の先をかすめる事はあっても直撃を避けて、戦闘行動を取るのに支障が出るほどのダメージは防いでみせる。
 グラハムらが回避行動を取った隙を突いて、数秒ほどの時間を最大限に生かし、スティングは後方の艦へ向かうオーバーフラッグをはじめとしたMS部隊へ『メガバズ』や『ソーラ』を撃ちまくる。
 どちらもファン以上の広域攻撃範囲と威力を秘めるが、その分エネルギー消費が激しい。これまでに蓄えた敵機からのビームと、スペリオルドラゴンのプラズマ・ジェネレーターの生むエネルギーが大幅に食われる。
 それでもかまわずトリガーを引きっぱなしにした甲斐はあり、モニターの向こうに映る華奢なラインのオーバーフラッグ達は太陽が生じた様に眩い輝きに飲み込まれて爆散する。

 

「同胞が落とされたのは口惜しいが、その隙は見逃さん!!」
「……!?」

 

 大威力火器を連射した隙を見せるスペリオルドラゴンに、左方向からの衝撃が襲いかかった。
 炎へと変じてもおかしくない気合いを迸らせながら、ビームサーベルを構えたグラハムのオーバーフラッグの大上段からの片手一刀を、ダブルソードが受け止める。
 サーベル状に形成された粒子をダブルソードの単分子ブレードが切り裂き、半ばから先を消失させたコンマ一秒未満の刹那に、オーバーフラッグの右真空飛膝蹴りがスペリオルドラゴンの顎を強烈にかち上げる。
 一見すれば容易く手折れる花の様に華奢のフレームのオーバーフラッグに、かような格闘戦を行わせる大胆さ、卓越した操縦技術。スティングの脳裏にジニンと刹那から忠告を受けたフラッグファイターの名前が明滅する。

 

「グラハム・エーカー、だったか。だけどな、いちいち驚きゃしないぜ、こちとらエースが出張ってくるくらい、とっくに覚悟してんだよ!!」

 

 大きく上体を泳がされた勢いを利用し、スティングはスペリオルドラゴンに後方バック回転を敢行させると、腰の辺りに付け根があるヒートソード兼用のテイルスタビライザー『フレイムソード』を鞭の如くしならせる。
 赤く灼熱した竜の尾は、グラハムが駆るオーバーフラッグの右肘から先を鮮やかに斬り飛ばし、くるくると宙を舞った右腕は数秒を数えてから爆発する。

 

「く、これではプロフェッサー・エイフマンに面目が立たん」
「いい加減、沈みな、てめえら!!」

 

 ある世界の十二柱の神に名を連ねるスペリオルドラゴンを駆るスティングの心は、機体の壮麗さに相応しくなく、アウルと同じ焦燥に突き動かされていた。

 

 

 幾度目になるのか連合艦隊に向けてストーク級二隻とタマハガネ級の砲撃が、怒涛の勢いで降り注ぎ、艦隊前面に固定されていたMA群の展開する陽電子リフレクターの壁によって遮られる。
 合計六機のザムザザーが機体を傾かせて陽電子リフレクターを展開し、機体の動きを硬直させる。着弾の衝撃によってじりじりとザムザザーは後方に押し込まれるが、機体のスラスター推力を全開にして耐え忍ぶ。
 旗艦である機動空母エンタープライズ鏡い料以数キロメートルで、敵艦からの攻撃を防ぐ異形の機動兵器の姿を、連合の将兵たちは頼もしく見ているに違いない。
 その上空から緑に輝く波しぶきに似た軌跡を描きながら、MSとしてはやや大型のシルエットを持った機体と、巨大なサーフボードに乗った人型が見えない波に乗る様にしてザムザザーへと襲いかかる。
 イカロスユニットを装備し、より優れた空戦能力を手にしたガーリオン・カスタムは右手のオクスタンライフルを左手で抑え込んで照準のブレを抑え込みながら飛翔する。
 風を切り、サーフボードの中に内蔵された小型テスラ・ドライブが噴出する推進の光を粉雪の様にまき散らし、純白の巨人が動きを止めているザムザザーへと手に携えた銃口を向ける。
 ザムザザーのパイロット達が発せられる警告音に気づくも、敵艦隊からの砲撃を受け止めている今の状況では、動きようもない。リフレクターの展開を止めて迎撃を選べば、後方の艦隊に砲撃が降り注いでしまう。
 加えて、迫り来る敵は彼らに選択する時間を許さない高速で襲い掛かってきていた。
 サーフボードに乗ったそれは、不幸にも今回の熾烈な戦闘が初陣となったエウレカとレントン・サーストンの乗るLFO一号機・ニルヴァーシュであった。
 艦の砲撃をことごとく防ぐザムザザーを撃破すべく、運動性に富むニルヴァーシュとその動きに追従できるレオナ・ガーシュタインのイカロスユニット装備のガーリオン・カスタムが動いたのだ。
 固定の射撃兵装が無いニルヴァーシュはオクスタンサブマシンガン(OSMG)を手に、既存の兵器を凌駕する運動性を活かし、動きを止めたザムザザーへと容赦なく襲いかかる。
 レオナもまたEモードにセレクターを合わせて一射一射を正確にザムザザーに叩きこんで行く。
 味方の砲撃に挟まれかねない状況ながら、ニルヴァーシュのメインパイロットを務めるエウレカは白磁の面頬に、毛筋ほどの感情の色を浮かべる事もなく、センターマークに敵機を捉えて機械的にトリガーを引き絞る。
 アクセルがいまのエウレカを見たら、まるでエキドナかW17のようだと口にしたかもしれない。精巧な機械人形が機械仕掛けの兵器を操っている――いまのエウレカはまさにその表現こそが相応しい。
 となりのレントンが軽減されたとはいえ襲い来るGにうめき声を漏らしているのを無視して、エウレカはザムザザーの機体を舐めるようにニルヴァーシュをぎりぎりまで接近させる。
 ボードが海面に接触し、本当に波乗りをするほどの低空から、ザムザザーの柔らかい腹の部分へと向けて、OSMGの銃口から桜色の光の弾丸が毎分900発の連射速度で吐き出されて、次々と装甲へ吸い込まれてゆく。
 MSをはるかに上回る巨躯に相応しくザムザザーの装甲は重厚なものであったが、攻撃を想定していなかった機体の腹部に集中したビームの弾丸に、次々と装甲を破られて精密な内部危機にもダメージが重なる。
 真っ白な装甲に赤いラインの走るニルヴァーシュは、波しぶきを受けて機体を濡らしながら、三秒とかからずにザムザザーの背後を一舐めし、六機すべてのザムザザーの腹から爆炎と黒煙が噴き出す。
 流石に大型MA、小型機であるニルヴァーシュの攻撃だけでは撃墜にまでは至らなかったが、陽電子リフレクターの発生機器に不具合が生じる程度のダメージは十分に与えられた。
 それまで堅固に展開されていた光の盾がひとつ、またひとつと消え始めて、ニルヴァーシュの奇襲に合わせて放たれたDC艦隊の第二撃がつぎつぎとザムザザーの巨躯を飲み込んで行く。
 タマハガネの連装衝撃砲、副砲、ストーク級のボールド・ビームキャノンにプラーナ探知型を含めサイズ、探知形式種々様々なミサイル群がそれまでのうっ憤を晴らすべく、ザムザザーを跡形も残さずに爆砕する。
 急降下から急上昇へと転じたニルヴァーシュの中で、うぎぎぎぎ、と苦しい呻きを漏らしながら潰れた饅頭みたいな顔になっているレントンに、エウレカが機械的に告げる。
 次にどのような行動を取るか告げる事で、レントンに襲い来るGへの覚悟をさせる余裕を与えているのだろう。エウレカなりの配慮と見るべきか。

 

「レントン、艦隊に仕掛けるよ。対空砲火を抜けるから、舌を噛まないように気をつけて」
「……っ」

 

 うん、とも、はい、とも返事が出来ずレントンはなんとか頷いて見せた。LFOの変則的で複雑な機動に揺さぶられながら、弱音を吐く事を堪えている辺り、なかなか根性があると褒めるべきだろう。
 艦隊本隊の盾となっていたザムザザーの一斉撃破によって、連合艦隊に旗艦撃沈の危機が一挙に高まり、猛烈な攻勢をかけていたMS部隊のいくらかが艦の護衛に戻る動きを見せる。
 艦の護衛に残っていたウィンダムやイナクト、イージス艦をはじめとした護衛艦からの十字砲火の雨の中をくぐり、ニルヴァーシュは世界最高峰のプロサーファーでもかくやの機動で低空から艦隊へ攻撃を仕掛ける。
 機体背部に突き出たコックピットに設置されているクラスターミサイル三基を一斉に射出し、檻と鎖から解き放たれたミサイル群は標的たる生命の数が最も多い空母を中心に、自在に機動を変えながら飛翔する。
 ニュートロンジャマーのジャミング効果があるとはいえ、密集した艦艇が張り巡らす対空砲火は、さながら弾丸の壁となってミサイルを撃墜してゆく。ぱぱぱぱ、と音を立てて艦艇の上空にオレンジの火の玉が生まれる。
 オレンジの炎が空を照らすその下を、ニルヴァーシュが颯爽と走り抜け、腰裏にマウントしていた携行型のリニアミサイルランチャーを左手に握り、OSMGと合わせて連合の艦隊目掛けて発射する。
 白煙をたなびかせて発射された小型ミサイルは瞬く間に音速をこえ、次々と駆逐艦や巡洋艦の横腹に弾頭を叩きつけて行く。接近を許し、海面ぎりぎりの低空を飛翔するミサイル群への迎撃は間に合わない。
 一切停滞する事無く海面の上を飛翔するニルヴァーシュの中で、エウレカは砲塔やミサイルランチャーに引火し、内部から壮大な誘爆を引き起こす艦艇を一瞥して、再度攻撃を仕掛けるべくニルヴァーシュを旋回させた。
 変則的なニルヴァーシュの動き、レオナは多少苦労しつつもなんとか息を合わせるべく機体を忙しく動かしつづける。
 エウレカが艦隊への攻撃を行っている時は、前線から舞い戻って来たMSの相手をし、初陣とは思えない戦いぶりのニルヴァーシュをフォローする。
 エウレカの連合艦隊を映すその瞳は紫真珠をはめ込んだ様に美しいが、どこか冷たい。そのことにエウレカ本人だけでなく、となりで必死に補助に勤めようと嘔吐を堪えるレントンも気付かない。
 ただ、ニルヴァーシュに搭載されたAI1を元とした擬似人格AIだけが、じっと見つめていた。

 

 

 タマハガネの艦橋はひっきりなしに振動に襲われて揺らされていた。展開したEフィールドに衝突する砲撃や、船体の重装甲を穿つビーム、船内に生じた火災など、対処するべき事態は絶え間なく襲ってくる。
 ハイブリッドヒューマンとして生を受け、戦う事、支配する事にその生の大部分を捧げて来たエペソは、このような苦境にも能面じみた端麗な顔に焦りの色を浮かべる事は無かった。
 だが乾く間もなく舌を動かして指示を飛ばすなか、思考の隅で戦況を示す天秤が徐々に望ましくない方へと傾いている事を理解してもいた。
 友軍艦の護衛に回したタスクのジガンスクードは、連合のザムザザーの何倍もの活躍を見せて、よく守っていたが、度重なる被弾に両手に携えた分厚いシールドにも徐々に疲弊が重なっている。
 いまも、数機のイナクトが放ったミサイルを受けたシールドから、微細な破片が零れ落ちているではないか。
 反撃に放ったギガ・ワイドブラスターでジェットウィンダムとティエレンを一機ずつ撃墜して見せたのは大したものであったが、それも焼け石に水程度の効果しか上げない。
 DC屈指の勇将は、ニルヴァーシュとエウレカの開けた敵艦隊防御網の穴めがけて、残っているタマハガネの火器の集中砲火を命じる。
 連合の機動兵器の損害はすでに二割強に達し、全滅判定が下される三割喪失までそう時間はかからないだろう。
 だが連合側は文字通り全滅しても構わないと覚悟しているかの様な勢いで攻め立てて来ている。
 クライ・ウルブズのみならずDC全体を見渡しても最強のパイロットへと成長したシン・アスカとインパルスが拘束されている事、各隊員を拘束するほどの手練が複数投入された事が、いまの不利な状況を作り出している。
 また待ち伏せを受けたと理解した時に、ならば先手を取ると各艦に一斉射撃を命じた時に、確実に被弾コースを進んでいた砲撃を新型MAに防がれたのも手痛い誤算だった。
 緒戦の砲撃が通っていれば、いますこし敵の指揮系統にも乱れが生じ、その隙を突いて乱戦に持ち込んで、敵旗艦のいる艦隊中心部に特攻をしかける策も使えたが、こうもこちらの動きを拘束されてはそれも使えない。
 アームレストを握る左手に、我知らず万力を込めながら、エペソは次々とオペレーター達から告げられる聴覚情報と、ディスプレイに映される視覚情報をコーディネイターの顔が青くなる速度で処理してゆく。

 

「艦長、下方に敵大型MS、イナクト各一!! 接近されました」

 

 大型MSとは、今回の戦闘で初めて確認されたパプティマス・シロッコの駆るジ・O兇了である。
 鈍重極まりない外見でありながら、パイロットであるシロッコの卓越した技量、ニュータイプ能力によって要塞じみたその外見を裏切る動きを見せて、襲い来るエルアインスを返り討ちにしている。

 

「船体下部の対空機関砲、ミサイルランチャー全照準を敵大型MSに合わせ。同時に取り舵!」

 

 Eフィールドの展開よりも迫る敵の撃破を優先する選択肢を選んだのは、エペソらしい判断であった。スペースノア級の船体全体に巡らされた対空機関砲(ビームに換装されている)の雨が一気に降り注いだ。
 海面深くまで見通せる澄んだ海を荒し、蛇行しながらタマハガネの真下に潜り込んだジ・O玉楹櫃韻董▲好魁璽襪茲蹐靴降り注ぐ対空砲火を、シロッコは嘲りの笑みを口元に張り付けて見上げていた。
 並のパイロットであったらどこに躱す隙間があるのかと絶望する砲火の雨を縫う様にして回避し、シロッコは通常のMSの胴体ほどもある大型重機関銃と、ジ・O兇稜悗砲△訛亢ミサイルのトリガーを引く。
 パシュン、という音と共に空へと広がったミサイルは対空砲にいくつかを撃ち落とされながらも、4発ほどがタマハガネの連装衝撃砲二門に正確に命中して破壊する。
 全高三十メートルを優に超すMSとしては規格外の巨体に似合いの巨大な重機関銃は、DokDokDokと殴りつけられるような音と共に黄金の薬莢をばら撒きつつ、タマハガネの船体装甲に虫食い穴を穿つ。
 船体真下という迎撃の難しい位置を取られて苦境に追い込まれたタマハガネを救うべく、エルアインスとアルベロのビルトシュバインが動いた。
 エルアインスがツイン・ビームカノンとGレールガンをジ・O兇悗噺けるが、エルアインスを背に負ったジ・O兇呂△蕕じめそこに攻撃が来ると分かっていたかの様な反応で、エルアインスの砲撃を回避する。
 さらには機体を百八十度旋回させるや、機体胸部にある連装砲塔が火を噴いてエルアインスの胸部を吹き飛ばした。
 貴重な戦力がまた一つ減らされた事に、濃いひげに覆われた口元をかすかに歪めて、アルベロはビルトシュバインの右手に携えたグラビトン・ランチャーの引き金を絞る。
 MSに使用するにしては殺傷力過剰な重力の砲撃を、ふたたびジ・O兇呂修里泙浹‖里鬟好薀ぅ匹気擦堂麋鬚掘▲咼襯肇轡絅丱ぅ鵑瓩けて重機関銃の弾丸を見舞ってくる。
 Dokokokokoko、と独特の発射音にわずかに遅れてビルトシュバインの周囲の海面に水柱がいくつも立ちあがった。
 アルベロとて一年戦争、グリプス戦役、ネオ・ジオン抗争、さらに言えば恐竜帝国、ドクター・ヘルの機械獣軍団、ミケーネ帝国の侵略を経験した生え抜きの軍人である。
 特殊部隊を率いて地球圏に巻き起こった戦争の嵐をくぐり抜けたその経験から、オールドタイプとしてはトップレベルの戦闘能力を有している。
 こちらの世界に来てからもさんざん戦い抜いてきた男の戦闘能力は、ニュータイプを相手にしてもおさおさ引けを取るものではない。
 アルベロはジ・O兇瞭虻遒ら即座にこちらに向けられた照準を見抜き、回避行動へと移って着弾をゼロに抑え込む。
 超音速で放たれた200mmの大口径銃弾は、砕いた海水のしぶきをビルトシュバインに叩きつけるだけに終わる。
 アルベロは、重機関銃プラス胸部砲塔の弾幕を、サークルザンバーをシールド代わりにしつつランダムな回避運動と共にかいくぐって、恐怖の欠片もなくジ・O兇悗汎祐咾魎差圓垢襦
 アルベロはグリプス戦役でパイロットの能力と合わせて最強のMSのひとつに数えられるジ・Oのスペックを脳内の記憶野から引き出して、推測されるジ・O兇寮能を思い描く。
 ジ・Oは宙間戦闘を主眼に置いた高機動・高追従性を持った機体だ。武装もほとんど最低限のものを備えたシンプルな品ぞろえだった筈。
 開発者であるシロッコが強力なNTであった事から、Zガンダム同様にバイオセンサーを搭載していたというが、いま目の前のジ・Oに酷似した山の様な巨体の敵も同様であるか否か。
 複雑な関節によって脚部を構成していたことから重力下での走破性能は劣悪とされたジ・Oに、ホバー走行による高機動性を与えて重力下での運用に耐え得るように改修を施した機体と言った所が妥当だろうか。
 実際アルベロの読みはおおむね的を射ている。
 本来、ジ・O兇榔宙世紀0088年に、ネオ・ジオン総帥ハマーン・カーンの戦死後、地球に取り残されたネオ・ジオンの兵が使用したネオ・ジオン所属の機体である。
 ジ・O兇魯検Γ蓮櫚気粒発に関わっていた元ジオン技術陣が、重武装を施した要塞攻略用のMSとしてプランを練った事に誕生の端を発する。
 重装甲、重火力により単機で敵領内に侵攻し、ホバー走行によって迅速な作戦行動が可能なスーパーMSであり、アフリカ戦線などに投入され、その性能を遺憾なく発揮して当時地上最強のMSと畏怖されたほどの機体だ。
 なかにはフレデリック・ブラウンという一年戦争からのベテランが駆り、ガンダムMk−兇筍擇嚢柔された連邦の戦線を突破し、最後はZZを前に善戦するも破れるが、目覚ましい戦果を残した機体もある。
 OTであるアルベロには、ジ・O兇離僖ぅ蹈奪箸NTであるかOTであるか判別は着かぬが、空を抑えられたこの戦場での動きを見るに、トップクラスの凄腕が操っている事は確信していた。
 アウルのエムリオンRC同様、外見だけはそのままに内部は最新技術による大改修を施したビルトシュバインは、背のウィングバーニアから爆発の光芒に等しい輝きを放ち、ジ・O兇瞭上へと跳躍する。
 振り上げた重機関銃の照準が間に合わぬと瞬時に判断し、シロッコは別のトリガーを引いた。ビルトシュバインが振り下ろした翡翠に輝く円盤の刃を、ジ・O兇留腰アーマーに隠されていた隠し腕が受け止めた。

 

「やはりあったか!」

 

 ジ・Oにも装備されていた隠し腕はビームサーベルを備えていたが、ジ・O兇留し腕も同様で、重金属粒子を束ねたビームサーベルはサークルザンバーの円刃を、鋼鉄の堅牢さで受け止める。

 

「良い動きをするが、それでは私の首は取れんよ」

 

 サークルザンバーを受け止められると同時に、ビルトシュバインの右腕はジ・O兇虜玄蠅僕泙┨まれて、グラビトン・ランチャーは動きを封じこまれる。
 もっとも長銃身の武器だから、ここまで接近しては取りまわしづらいだけだ。アルベロは視界の下方でジ・O兇虜弦アーマーが動くのを認め、すぐさま即座にビルトシュバインの右足で蹴り、隠し腕が展開されるのを防ぐ。
 さらにアルベロは左隠し腕を蹴った反動を利用してビルトシュバインにジ・O兇竜霏里両紊把渓させる。その直後、ジ・O兇龍刺瑤力∩主砲がPow、と軽快な音を立てて砲弾を海面に叩き込む。
 ビルトシュバインの跳躍は、左隠し腕の展開と連動するかのように動いたジ・O兇龍刺砲の動きに気づいたアルベロが、反射レベルで機体に回避行動を取らせた結果であった。
 サークルザンバーと隠し腕の衝突から三秒と立たない間に、ここまでの連続攻撃を繰り出したシロッコも、その全てを防ぎきったアルベロも、並のパイロットなど歯牙にもかけないレベルにいる。
 通常の部隊なら化け物扱い、精鋭部隊でもエースの名をほしいままにしておかしくない半化け物なのだ。
 ジ・O兇虜枯咾縫咼襯肇轡絅丱ぅ鵑留ο咾鯆呂泙譴燭泙沺▲▲襯戰蹐魯機璽ルザンバーをジ・O兇亮鵑鮖造衄瑤个垢戮右頸部目掛けて叩きつける様にして振り下ろす。
 シロッコは人工的に強化された人間さえも上回る反応速度で自らの体を操縦し、体を通して機体を操縦する。
 ビルトシュバインの右腕を抑え込んでいたジ・O兇了悗離されて、ビルトシュバインが彼方へと放り飛ばされる形になる。
 ZAN、と海面をビルトシュバインの足が叩き、脚部のスラスターを噴かして体勢を整える所に、ジ・O兇箸亙未竜 ̄討襲いかかった。タマハガネに接近していたイナクトである。
 指揮官機らしく通常ブーメランのように左右に伸びる角に加えて、頭上へ向けて伸びる角型のアンテナを備えている。
 シロッコ同様にタマハガネの対空砲火を回避しきったようで、ライトグリーンに塗装された曲線で描かれる機体には、傷一つついてはいない。それだけでも非凡ならざるパイロットが搭乗している事は明らかである。
 イナクトを駆るのはユーラシア連邦にこの問題児ありと謳われた――

 

「撃墜スコアは頂きだぁあーーー!!!!」

 

 模擬戦不敗、二千回のスクランブルをこなしたエース、パトリック・コーラサワーその人である。
 人格はともかくとして腕前だけなら、上層部も文句なしにエースと認めるコーラサワーは、イナクトのビームライフルの銃口をビルトシュバインへ向ける。敵機の捕捉からロックオンに至るまでが恐ろしく速い。
 コーラサワーに応じる様にしてアルベロもまたグラビトン・ランチャーの照準を上空から迫りくるイナクトへ。
 二人の指のどちらが引き金を引くのが早いか、勝利の女神が悪戯っぽく微笑んだその時、彼方から射出されたビームが、イナクトの胸部を一撃で貫く。

 

「な、なんじゃそりゃあ〜〜〜〜〜〜!!??」

 

 咄嗟にビームの射出方向のカメラがとらえた映像を拡大したアルベロが目にしたのは、まだ小さな点としか見えない機影と、砕いたエメラルドを風に流した様に美しい緑色のGN粒子の輝きであった。

 
 

――つづく。

 
 

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