Top > SSA_400氏_第11話
HTML convert time to 0.006 sec.


SSA_400氏_第11話

Last-modified: 2008-07-03 (木) 18:56:03

 第八艦隊の将兵は皆、旗艦メネラオスを沈められた時、絶望を噛み締めたであろう。
 だが、彼等の命運は完全に潰えたわけではなかったのだ。

 

「ええ、左翼はお任せします。後の諸々の問題は私が引き受けますのでご心配なく。それでは。
 やれやれ、敵が鈍化したおかげで何とかなっているが・・・アムロ・レイか」

 

 彼等にとって最大の幸運はアムロが同じ戦場に存在していた事であろう。
 ハルバートンの死に伴い指揮権をなし崩し的に引き継いだ者が極限の状況の中でアムロ達が乾坤一擲の打撃を加えた事によりザフトの圧力が弱まった僅かな好機を見逃さず指揮系統をどうにか再構築させ壊乱寸前であった各隊の緊急編成を行う事に成功しつつあったのだ。
 もっとも、これは『白き流星』の奮闘を声高に叫び萎えかけていた将兵の士気を鼓舞出来た事に加え大多数の味方を失った事が逆に艦隊の収斂を容易にしたという側面もあるのだが。

 

「Nジャマー影響下での戦場の主役はやはりモビルスーツとなるという事か。
 ったく・・・これ程の戦力だっていうのなら、なんで初めから彼等を出さなかったんだ?」

 

 軍帽を引っ掛ける様に被っていた男――
 今や第八艦隊の新たな旗艦となったネルソン級宇宙戦艦アッリアノスの艦長はそう毒づいた。
 もっとも、彼自身その問いの回答に大方の察しはついていたのであるが。

 

 ――我々は派閥抗争を。いや、もしかすると司令官の私的な感情を戦場に持ち込まれたのではないか?
 ハルバートン提督も本来そういうのを忌避していたはずなのだが・・・晩節を汚したな。

 

 連合上層部の身勝手によって錬度の低い兵をあてがわれたのは確かである。
 そういう意味ではこの惨状をハルバートンだけの責とするのは酷というものであろう。
 だが、アムロ率いるモビルスーツ部隊、空戦隊を効果的に運用していればこれ程の出血を強いられずに済んだのではないかという思いが
 彼に亡き司令官に対し悼む気持ち以上の怒りを自覚させていた。

 

「人は変わる。良かれ悪かれ・・・か。無駄に兵を死なせて、本末転倒も甚だしいな」
「艦長・・・今は」
「ああ、そうだな。すまない」

 

 副長に咎められた彼は半ば誤魔化すようにピュア・ティーの入ったパックを一息に飲み干す。
 それは普段飲むよりもずっと美味く感じられた。

 

「折角、アムロ大尉達が敵を抑えてくれているんだ。
 我々はそれに対し最大限の努力で応えなくてはならない。撤退は必ず完遂させないとな」

 

 アークエンジェルを護るため、先の戦局のためなどという空々しい台詞の時とは違う。
 アムロは言葉ではなく行動によって立ち向かうために、抗うために必要な勇気を与えているのだ。
 運命が違えば殲滅されていたであろう第八艦隊の将兵達にとって
 この戦いは破滅へ向かう戦いではなく生を勝ち取るための戦いとなっていった。

 
 

「セブン、合わせろ・・・上だ!!」
「そこッ!!」

 

 Mk-兇離掘璽襯匹ら伸びるミサイルを辛うじて避けたジンをセブンのバズーカが貫く。
 ミサイルを回避させた先にバズーカ弾を置いたという形だ。
 間髪いれずアムロはスラスターを全開にして別の敵に接近する。

 

「く、来るな、来るなーーーー!!」

 

 半狂乱に陥ったジンのパイロットは機銃を乱射するが狙いも定かではないものにアムロを捉える事など出来るはずも無く銃弾は空しく虚空に消えゆく。

 

「そんな攻撃ではっ!!」

 

 Mk-兇暴海蠅鰺瓩咾擦蕕譴織献鵑録瓩飛ばされた勢いのままに別の機に激突する。

 

「馬鹿野郎!!離れ――」
「遅いっ!!」

 

 Mk-兇賄┐虜乱などお構い無しにバズーカを向けジンは二機もろとも貫かれ火球に消える。

 

「くそ、何なんだ奴は・・・」
「アレに乗ってるのは本当にナチュラルなのかよ!?」
「悪魔めっ・・・!!」

 

 ナチュラルは所詮は数頼みという彼等の常識は今、完全に崩れ去ろうとしていた。
 今までは大軍を貫き蹂躙するのはモビルスーツを有するザフトの専売特許だったのだ。
 それを新型のモビルスーツを含んでいるとはいえナチュラルがコーディネイターを相手にやってのけている。
 今会戦の勝利が目前だった事もあり、その心理的打撃は当然で且つ深刻であった。

 

「大尉、すごいな・・・」

 

 その光景を捉えたイレブンは思わず感嘆の声を上げる。
 アムロが高い戦闘能力を有する事は充分に承知しているつもりだったが所詮は訓練レベルのモノを見ていただけに過ぎなかったのだと思い知らされる。
 敵の行動の先を読み効果的な対応をし場合によっては誘導しコントロールすら行う。
 当然の事のように思えるが言うは易し、行うは難しだ。
 ニュータイプとしての能力とパイロットとしての経験の結実がアムロの戦闘の本質なのだ。

 
 
 

「艦隊の撤退も・・・これならいけるか、んっ!?」

 

 レーダーよりも早く、アムロは接近する敵の気配を感知する。
 赤いモビルスーツ、アスランの駆るイージスである。
 アスランの鋭い敵意がアムロに接近を知らせたのかもしれなかった。

 

「アレか!!これ以上、好き勝手にはっ!!」

 

 アスランの怒りの声と共にイージスは変形しスキュラを放つ。
 アムロは回避行動を取りながらも、そのあからさまな動きに違和感を感じ取る。

 

 ――牽制か?それにしても気配が・・・そこか!!
「シールド・ランチャー!!」

 

 戦場を覆う様々な思念のノイズから別の気配を探り当てアムロはシールドを虚空に向けてミサイルを発射する。

 

「なっ、気付かれた!?ぐっ!!」

 

 ミラージュコロイドを展開し奇襲を仕掛けんとしたニコルは間一髪のところでフェイズシフトを展開させミサイルの衝撃を耐え凌ぐ。

 

「ニコル!?チィ!!」

 

 奇襲を看破されたアスランはMk-兇縫咫璽燹Ε薀ぅ侫襪力⊆佑鮓舞う。
 それを最小限の動きで避けながらバズーカを捨てるとアムロは味方に指示を送る。

 

「セブン、エイト、イレブンは黒い奴を!!相手はPS装甲だ、抑えるだけいい!!
 空戦隊はソキウスの援護と他のジンを頼む!!」
≪了解!!エイトはバックアップ、イレブン行くぞ!!≫
≪了解!!チャーリーは坊や達に付いてやれ!!≫

 

 PS装甲に対して有効なビーム兵器を持つのはMk-兇里澆任△襦
 通電する事によって物理攻撃に対し絶対的な硬度を得る事ができる装甲材。
 アムロ自身はMk-兇忘陵僂靴覆ったものの敵に回すと中々に厄介な代物だった。

 
 

「このォ!!」

 

 アスランはイージスにビームを連射させるがMk-兇脇颪覆回避する。
 ナチュラルだからどうとかいう侮りはアスランには微塵も無い。
 戦闘者としての勘がアスランに警告している。並みの相手ではないと。

 

「狙いは正確だが・・・そこだ!!」

 

 逆にMk-兇離咫璽爐隆つかは回避しきれずアスランはシールドでなんとか防いでいた。が、

 

「アラートだと!?シールドが限界!!」

 

 余りにもあっけなく悲鳴を上げるシールドにアスランは声を荒げる。
 Mk-兇搬召"G"に使われている大容量パワーパックは同じものだがPS装甲ではないMk-兇老兩鑁塾呂粒搬腓世韻任呂覆、その余剰エネルギーを他のビーム兵器に多く配分する事で威力を高めている。

 

 ――撃ち合いじゃあ駄目か!?・・・それなら!!

 

「ウオオオオォォォォ!!」

 

 アスランは咆哮と同時に決死の覚悟でイージスを加速させ一気に間合いを詰める。
 アムロの放ったビーム攻撃がシールドを砕き、散ったビームの粒子が機体に与える衝撃もお構い無しにだ。
 "G"に酷似したMk-兇了僂アスランの戦意を高めていたのだ。

 

「貴様等がこんな物を造るから!!」
「グッ・・・コイツは!?」

 

 イージスの攻撃に対しアムロもサーベルを引き抜く。
 コロイド粒子によって刀剣状に形成されたビーム刃が衝突するたびにビームの粒子と爆光が周囲に飛び散る。

 

「そこだッ!!」

 

 先に競り合いを制したのはアスランだった。
 アスランは蹴りと同時にイージスの爪先から短いビーム刃を発生させる。
 完璧なタイミングで繰り出された攻撃だがアムロはギリギリでシールドが引き裂かれるに止める。
 アムロでなければ確実に胴体部を直撃されていたであろう。

 

「チィ!!」
「アレを避けるのか!?クソッ!!」

 

 ヘリオポリスでのキラとの邂逅以来、動揺し精彩を欠いていたが元来アスランは直感に長けそれを活かせる反応も充分持ち合わせている。
 そして、その才能はモビルスーツの格闘戦においては最大限に発揮される。
 間違いなくアスランは天稟の持ち主なのだ。

 
 
 
 

「このまま一気に!!」

 

 半分に欠けたシールドを投げ捨てながら後退するMk-兇紡个靴鴇阿眷撃をかけんとするイージスに向かってアムロはダミー・バルーンを指先から放出させる。

 

「目晦まし!?小細工を――うわっ!!」

 

 構わずに突進した瞬間、イージスの横手から強い衝撃が襲い一気に吹き飛ばされる。
 先程、Mk-兇投げ捨てたはずのバズーカが火を放ったのだ。
 遠隔操作を用いたアムロのトラップである。
 イージスがPS装甲でなければこれで決着を見ていたであろう。

 

「卑怯な・・・ハッ!!」

 

 その隙を突いてアムロはビーム・サーベルの直撃をかけイージスの右足を切断する。

 

「しまった!!」

 

 さらに振り下ろされるサーベルの刃をアスランはギリギリで受け止めるが、

 

「サーベルのパワーが負けている!?クソォ・・・」

 

 押し切られる寸前で機体をひねり何とか回避するがすぐさま次の剣撃が加えられる。
 先程とは違いアスランは完全に防戦一方だ。一度逃した流れをアムロ相手に引き戻すのは至難といっていい。
 相手の攻勢を殺し主導権を得るという駆け引きにおいてアムロとアスランではあまりに経験の差がありすぎるのだ。
 さらに経験の差は技術のみならず精神にも大きく現れる。
 初撃の勢いを殺された動揺によってアスランの積極性が奪われたため幾度かのフェイントを交えた攻撃もMk-兇冒瓦道かれる。

 

 ――さっきとは勢いがまるで・・・俺は本当に攻めていたのか?誘い込まれただけでは?
 クソッ、何を考えてる、俺は!!

 

 攻めていたと思えば容易くトラップに誘導され、何時の間にか劣勢の際にあるという事実が徐々にアスランの精神に疑心暗鬼を生み出していく。

 

「クソッ、クソッ!!」

 

 今のアスランには自分の呼吸音すら酷く耳障りに感じられた。
 今、サーベルで切り結んでいるのも戦っているのではなくアムロの脚本の中での行動であり、ただ、最後にコクピットごと貫かれるための段取りを踏んでいるに過ぎないのではないかという荒唐無稽な考えすら浮かぶほどにアスランの冷静さは切り崩されていく。

 
 
 

 一方、ニコルもアスランの劣勢に気付き援護したかったがソキウス相手にそのような余裕は全く存在しなかった。

 

「アスラン!?このままじゃあ・・・」
「行かせないっ!!」

 

 ニコルは回避運動を行いソキウスからの攻撃をなんとか避けていたが、いかんせん包囲の輪に全く隙を見せない事に焦りを覚えていた。

 

「どかないというのならっ!!」
「これは・・・焦ったかっ!!」

 

 それでも何とかこじ開けようとニコルはイレブンに向かってレーザー・ライフルを撃ちながら強攻するがイレブンは射線上から機体を外し逆に反撃に転じる。

 

「PS装甲といっても!!」

 

 イレブンはアーマーシュナイダーで右腕の間接部を狙う。
 右腕に取り付けられた攻盾システム"トリケロス"に火器を集中させているブリッツは右腕をやられれば死に体も同然となる。

 

「させないっ!!」

 

 だが、ブリッツの弱点はニコルも把握している。
 装甲面でアーマーシュナイダーの斬撃を防ぎビーム・サーベルで斬りつける。
 しかし、イレブンが即座に機体を急速後退させビーム刃を避けると同時にエイトとメビウス隊のミサイルとリニアガンがブリッツに向かって放たれニコルは追撃できないまま回避を余儀なくされる。

 

「クッ・・・不味い!!」

 

 最早、アスランの援護どころではない。
 幾度か攻撃をまともに受けた影響でブリッツのエネルギーが心許無くなってきているのだ。
 ここでフェイズシフトダウンを引き起こせば確実にやられるであろう。

 

「セブン、このまま一気に攻めれば押し切れるかもしれないが・・・」
≪いや、ここは包囲を崩さない事を第一にしよう≫
「了解だ」

 

 一気に攻めてフェイズシフトダウンに追い込む事も考えたが
 技量と判断ではニコルが初陣の自分達ソキウスに比べ若干勝ると判断し当初の予定通りの行動をセブンは選択した。
 これは若干慎重に過ぎるきらいはあったが、この姿勢は重厚さにも繋がりニコルに付け入る隙を与えなかった。

 
 
 

「グッ・・・!!」

 

 Mk-兇蝋垢帽鏡を強めイージスの肩の装甲を切り飛ばす。
 ここまで耐え凌げたのはアスランの健闘ではあったが確実に限界は近付いていた。

 

「くそ・・・ひとまず距離を・・・」

 

 イージス頭部に装備されている75mm対空自動バルカン砲"イーゲルシュテルン"でMk-兇鮓制しながらアスランは距離を取ろうと後退する。
 本人にしてみれば態勢を立て直そうと思っての事なのだろうが実際にはアムロのプレッシャーに負け気持ちが弱い方向に働いての行動に他ならない。

 

「逃がすかよっ!!」

 

 アムロはバルカンを回避し一気にたたみかけんとスラスターを全開にする。
 イージスはビーム・ライフルを抜き斉射するが的が大きくなっていくにも関わらず今まで同様にビーム光は空しく宙に消えるのみだ。
 さらにイージスの下からサーベルでビーム・ライフルごと手首を切り上げる。

 

「こんな・・・、ウ・・ウワァァァ!!」

 

 抑えていた恐怖がついに噴出しアスランは叫び声を上げながらイージスに残った左腕からサーベルを展開しようとしたが、直後、装甲が色彩を失い灰色に変色する。
 エネルギーが尽きたのだ。これでビーム兵器は使用不能となった。

 

「そんな、フェイズシフトが!!――殺られる!?」
「もらったな!!」

 

 アムロはビーム・サーベルを突き立てんとMk-兇帽修┐鮗茲蕕擦襦が、

 

『やらせんよっ!!』

 

 自分に向けられた強い敵意を察知し、アムロはイージスに構わず機体を即座に後退させる。
 同時にMk-兇肇ぁ璽献垢隆屬乏笋蟾むようにビームの奔流が過ぎ去っていく。

 
 
 

「言葉が奔った!?これは――エイト、避けろ!!」

 

 さらにブリッツを囲んでいたエイト機をビームが襲うが間一髪でエイトは回避する。
 しかし、その際、包囲に空隙が生じニコルはそこに機体を滑り込ませて突破を成功させた。

 

「増援か!?だが、このプレッシャー・・・まさか!?」

 

 アムロはビーム・ライフルを構え出力をフルパワーに調節する。

 

「間違いない・・・ニュータイプか!!」

 

 アムロの意思と共に宇宙を切り裂くようなビームが放たれる。

 
 

 クルーゼはレーダーのレンジ外からシグーに特火重粒子砲を撃たせ部下の窮地を救った。

 

「プレッシャーの来る方向に撃ってみたが・・・ギリギリだったようだな」

 

 アスランの生命の危機を察知してクルーゼは狙撃を敢行したのだ。
 多分に賭けの要素を含んだものだったがクルーゼはアスランとニコルを救う事に成功した。
 自分の中の新しい感覚を信じて行動する。並大抵の者に出来うる事ではない。

 

 ――あの時の感覚だ・・・やはりこれは――!?

 

 クルーゼが悪寒を感じて機体を動かし迫り来るビーム光を避ける。

 

「なるほど・・・私に出来るという事は当然そちらも同様という事か!!」

 

 新星の折に戦ったパイロット――アムロは自分と同じ才能を有しており自分のこの感覚はアムロによって呼び覚まされたものだとクルーゼは確信した。

 

「散開だ!!ラコーニは敵に当たれ。ポルトーはアスラン、ニコルの後退を援護しろ!!」

 

 急速に編隊を接近させクルーゼはついにMk-兇竜 ̄討髻宗愁▲爛蹐鯊える。

 

「では、その実力・・・見せてもらおうか、アムロ・レイ!!」