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SSA_400氏_第8話

Last-modified: 2008-03-03 (月) 23:40:20

CE71.1月26日――

 

 ローレンツ・クレーター基地。
 月面プトレマイオス基地攻略の橋頭堡として、かつてザフトによって建設された軍事基地である。
 結局、ザフトは月面における戦いに敗退しこの基地を放棄する際に主要施設を破壊していったのだが
 アズラエル財閥の全面的なバックアップを背景に再利用・再建計画は急ピッチで行われ
 現在、一部の人間にブルーコスモス勢力拡大のための拠点などと揶揄されながらも
 地球連合軍のモビルスーツ開発計画の一翼を担う施設として機能していた。

 
 

≪これより、XSP-102の稼動実験を行います≫
「了解、XSP-102――"ガンダムMk-"システム起動」

 

 アムロがモビルスーツを稼動状態に移行させるとモニターに次々と文字列が表示される。

 

 Welcome to M.O.S
 MOBILE SUIT OPERATION SYSTEM ///Version NV8-N099////

 

 Genelal
 Unilateral
 Neuro-Link
 Dispersive
 Autonomic
 Maneuver

 

 ――G.U.N.D.A.M.か。なんだか冗談みたいだよな。

 

 それが、アムロのOSのネーミングに対する率直な感想だった。
 さらには、OSのみならず"G計画"で製造されたモビルスーツの外観は皆、アムロの世界で『ガンダムタイプ』と呼ばれたモビルスーツ群と似通っているのだ。
 さすがにそのような所にまでアズラエルが手を回したとは思えないので、本当に偶然なのだろうとアムロは割り切ってはいるもののそれでも宿縁のようなものを感じさせるには充分だった。
 ガンダムという存在に自分はよほど縁があるのだろうと。

 
 
 

 GAT-XSP-102 ガンダムMk-供宗
 GAT-X-102 デュエルの設計案を元に製造された試作機だ。
 特殊機を表すSPナンバーが与えられたこの機体は元々デュエルMk-兇噺討个譴討い燭里、改修を経て外観がかなり変化してしまった事に加えパイロットであるアムロの意向もありガンダムMk-兇般松療佻燭変更されたという経緯があった。
 むろん、変わったのは外見だけあるはずもなくスペック的にも全く別の機体となったいって過言ではない。
 まず、フレームは稼動範囲及び柔軟性が向上させるべく大幅な改良が加えられ、さらにパイロットの生残性向上、戦闘データの確保を目的とした脱出機構を搭載し、緊急時にはコクピットユニットが機体から射出される様になっている。
 脱出機構の搭載はパナマ基地の量産型開発でもすでに採用が決定していた。
 この件については、アズラエルが各方面との折衝に随分と骨を折ったと定期連絡の際、愚痴をこぼしたものだ。
 装甲材にはPS装甲ではなくチタン合金と強化セラミックの複合材を採用。
 これは、電力消費・重量の軽減を優先したためである。
 装甲材に関しては、より軽量な"発砲金属"も一時検討されたのだが、こちらは強度が求める水準に満たないということで採用を見送られた。
 装甲を過度に軽視するという事はあまりにもナンセンスな発想であるというのがアムロの持論なのだ。
 この改修の結果、PS装甲の絶対的な防御力を失うことと引き換えにMk-兇老兩鑁塾呂髪親粟の拡大に成功している。
 なお、"新素材合金"、"全天周囲モニター"、"サイコミュ"の搭載は見送られている。
 今は手持ちのものと十全に検討がなされ確立された技術で足場を固める時なのだ。
 未完成かつ目新しい技術をむやみに導入する段階ではない。

 

≪全システム、起動を確認。移動を開始します≫

 

 起動したMk-兇話浪漆爾に作られたモビルスーツ用の実験施設にエレベーターで運ばれる。
 硬い岩盤をドーム状にくり抜いて作られたバトルフィールドの岩肌は特殊な装甲に覆われており、戦闘実験が行われても施設自体が破壊されるといった事態にならぬよう充分な強度を確保している。

 

≪実験は模擬戦形式、弾丸は硬化プラスチックペイント弾を使用。
 銃器は機銃、腕部内蔵ガトリング、頭部バルカンの使用を許可します。
 昨日実施された稼動部への磁性材料のコーティング処理で反応が敏感になっています。注意してください≫
「了解。接近時挙動のデータフィードバックはまだだな?」
≪蓄積されたデータ量から学習にはまだ少し時間が掛かると推測します≫
「分かった。接近時の駆動モード切り替えはマニュアルで対処する」
≪命中時に致命的損傷と判定されたユニットはシステム・ダウン。
 敵総数はジン3機とします。では、アムロ大尉。稼動実験カウント入ります≫

 
 
 

 カウントがゼロになると同時にアムロは白青のツートンカラーで構成された機体を急速移動させる。
 そのMk-兇瞭阿を確認するとイレブン・ソキウスは僚機との通信を開く。

 

「セブン、エイト、Mk-兇蝋渋なを利用するつもりだ」
「分かった。後背から強襲して阻止する」

 

 セブン・ソキウスとエイト・ソキウスの駆るジンが背後より接近し機銃を放つ。
 彼らのジンには機体各所に連合軍のマークが施されており連合に拿捕された機体である事を示している。
 連合軍は、モビルスーツの実験及びデータ収集に利用するために戦場で廃棄されたジンを回収し修理復元したものを多数保有しているのである。
 そのジンの火線をMk-兇詫祥気鮖って避けるが構造物への進路は遮られてしまう。
 3対1という有利な条件であるにも関わらずソキウス達に油断といったものは存在しない。
 そのようなものを抱ける相手ではない事はMk-兇完成に近付くにつれ1対1では勝てなくなった事から彼らは重々学んでいる。
 戦闘用コーディネイターであるソキウスには多くのコーディネイターにありがちなナチュラルへの優越感など存在しないのだ。
 それは彼らに現実を素直に容認するだけの柔軟性を与えている。

 

「正確だな、それだけに読みやすいが。――仕掛けるか!!」

 

 アムロは即断し思い切りよく機体を反転させると一気にソキウス達に向け突撃を敢行する。

 

「相変わらす躊躇が無いな・・・前より反応が鋭い、接近されるぞ!!」

 

 アムロの知識を基に研究・施行された改修によりアムロの操縦と親和性が高められたMk-兇狼‖粒読瑤貿曚気譴織弌璽縫△鮃みに利用し銃弾を掠らせもしないままセブン機に肉薄する。

 

「くっ!!」
「遅い!!FCS(火器管制)、ガトリング!!」

 

 急速後退しようとしたセブン機の胸部へと突き出したMk-兇力喇瑤ら露出した90mmガトリングガンが大量の弾丸を一気にばら撒いた。
 ペイント弾の群れがジンに一斉に殺到し装甲のカラーを塗り替えていく。

 
 
 

「セブン機、コクピット・ユニットに被弾。戦死判定。強制停止信号打ち込み」
「エイト機、機銃及び左腕部損傷判定」
「Mk-供挙動パターン224でエラー発生。反応が0.23秒遅れました。解析始めます」

 

 次々に耳に入ってくる報告に『主任』は若干の感慨を含んだ笑みを浮かべる。
 まだまだ課題は多いものの、コーディネイターのジンを圧倒するナチュラルのモビルスーツという条件をほぼクリアしたといっていいほどの成績が出ているのだ。
 だが、すぐに彼女は頭を振り精神を引き締める。

 

 ――危ない、危ない。コレはあくまでアムロ大尉だからと考えないと。

 

 アムロを基準にして考えるのは愚というものだ。 
 Mk-兇砲靴討睚造澆離淵船絅薀襪任倭犧邨呂敏感すぎて扱え切れない代物であるのは明白なのだから。

 

「コーティング処理、予想以上の数値がでているわね」
「ええ、追従性がかなり向上しています。といっても大尉の反応に完全にとはいっていませんが」
「今は、これくらいが限界でしょうね。後は実戦運用してからでないと・・・」

 

 本来、コーディネイターにしか扱いきれないと言われていたモビルスーツだが、実のところ今まではインターフェイスが操縦者に頼りきった粗悪品であったともとれるのだ。
 ローレンツ・クレーター基地ではマシン・インターフェイスの開発・改良に重点が置かれ補助AIのサポートによる細かい挙動のセミオート化、OSのアップデートによって、すでにヘリオポリスのG兵器とは比較にならぬほど制御系が洗練されている。

 

「主任、ヘリオポリスにはインターフェイスのデータ行ってないんですよねぇ?」
「ムルタさんからの厳命・・・止めておけって言っているの」
「もしかして、こんな時まで派閥がらみですか?」

 

 若い研究員が非難の声を上げるのも無理の無い事だった。
 ザフトは刻一刻と勢力を拡大している時にまで大人の理屈で足を引っ張り合うのは堪らないと。
 その青い感情を微笑ましく思いながらも『主任』はたおやかな笑みで流した。
 実のところ全周囲モニターなどはモルゲンレーテとの共同開発という線もアズラエルは途中まで考えていたのだがアムロの意見を判断材料に踏まえた上でプランを変更したことにより結果的に開発が遅れている。
 そういう意味では確かに足の引っ張り合いという側面は存在するのだろう。

 
 
 

≪エイト機、損傷度70%オーバー、戦闘続行不可と判断。強制停止信号打ち込み。駆動系ホールド≫
「ここまでだな。すまない、イレブン」
「いや、Mk-兇盪弔蠅涼討肋ないはずだ。ありがとう、後は任せてくれ」

 

 正攻法では敵わないと判断したイレブンとエイトはMk-兇鮠談廚気擦訐錣なに専念していた。
 そしてその目的は充分に果たされているとイレブンは確信していた。

 

「両腕ガトリングは使い果たしたはずだ。機銃も残り僅か・・・どうでる?」

 

 ふと、イレブンは己がアムロに勝ちたがっているのではないかと考えたがすぐにそれを思考の隅に押しやる。
 この実験において最大限に実力を発揮する事はアムロが求めている事であり自分はあくまでもナチュラルのために働いているのだと。

 

「どうかしている・・・来た!!」

 

 両腕部からガトリングを切り離したMk-兇加速をかけ猛烈な勢いで突進する。
 イレブンも機銃で応戦するが全てが紙一重でかわされる。
 弾道が完全に見切られているのだ。

 

「迅すぎて狙いが・・・!?」

 

 無謀としか思えぬ猪突をやってのけたMk-兇魯献鵑望彳佑垢訥樵阿傍‖里鮠緇困気賛寝爾妨かって機銃を放つ。
 頭頂部に被弾したイレブンのモニターに戦死判定を示すレッドアラートが表示された。
 これがペイント弾ではなくビームだったらコクピットまで焼き尽くされていたであろう事は明白だった。

 
 
 

「大尉、今回は随分無茶な戦い方をしましたね」
「3対1、そのうえ弾数限定だからね。それに彼らの訓練も兼ねているんだ」

 

 だからこそ、アムロはソキウスらに対し"セオリー"を崩す行動をとったのだ。
 いくら戦闘用に調整され訓練を重ねてきたとはいえ彼らには実戦経験が皆無であり予測を超えた行動に対して脆いのは致し方ない。

 

「すみません、僕らのために手間を・・・」

 

 ソキウス達がまだ幼さ残した顔を伏せた。
 ナチュラルのために役立つ事こそ自分達の存在意義であり全てであるはずなのに
 逆に手を煩わせているという事実は彼らにとっては問題なのだ。

 

「いや、それは違うよ。俺がやりたいからやっているんだ。気にやむ事はない」

 

 そう言ってアムロはイレブンの青みをおびた髪を軽く叩いた。
 ローレンツ・クレーター基地にはソキウス達に対し恐れや蔑みを抱く人間はいない。
 同じ基地の仲間として受け入れている。
 アムロは特に彼らを気をかけておりイレブン達にとってもアムロは良き上官であった。
 アムロはアズラエルとイレブン達の処遇について取引を交わしている。
 この戦争が終わった後も彼らの身の安全の保証を、そして彼らの将来に出来うる限りの選択肢を与えてやって欲しいと。
 戦う事だけを存在意義とされ使い捨てられていった者達――強化人間と同じ運命を辿らせたくは無かったのだ。
 たとえ、これが代償行為に過ぎないものだとしても。

 

「ありがとうございます」

 

 よく見ねば分からないくらいささやかにイレブン達は笑みを浮かべた。

 

 ――この子達も少しずつ感情が出せるように・・・本当に良かった。大尉はこの子達の父親も兼ねているのかもしれない。

 

 『主任』は艶の良い紺色の髪をすくいながら直感的にそう思った。
 アムロは自覚はしていないが"父性"と呼ばれるものをソキウス達に対し確かに向けているのだと。
 だが、本質的に家庭を意識する精神的なベースを失ってしまっている
 アムロがそれを自覚するには実際に彼に子供が生まれねば無理な話だろう。

 
 
 

 アムロ達がテーブルに出されたケーキをつついているとモニターにニュースが映る。
 エイプリルフール・クライシスの犠牲者・被害規模の特集だった。
 インフラ・ライフラインの崩壊、食料物資の窮乏。経済の深刻なダメージ。
 Nジャマー投下直後に起こった交通機関の大規模事故の多発、医療機関の重態患者にもたらされた悲劇。
 そして今もなおカウントを重ねる餓死者、凍死者と実に事細かに語られている。

 

『――これは正にコーディネイターの非人間性が明らかになったものと・・・』

 

 これが連合の発信する一種のプロパカンダであるのは一目瞭然だった。
 だが、これは被害規模に関しては"全く誇張されていない"内容なのだ。
 自然と誰もケーキを口に運ばなくなってしまった。

 

「酷い話よね・・・」
「ああ、そうだな・・・」

 

 ふと、『主任』はソキウス達を見やると無理に笑顔を作り、

 

「あなた達には関係の無い事よ。悪いのはみんな"宇宙の人モドキ"なんですから」

 

 この基地以外のソキウス達の運命は悲惨を極める。
 だが、それを止める術はアムロにも彼女にもそしてアズラエルにも持ち得ない。
 そのような事態の発端も増長したプラントのコーディネイターによるものだと彼女は信じている。
 ブルーコスモスであること以上の感情の澱みの存在をなんとなくではあるがアムロは感じ取っていた。
 だが、人には例えニュータイプだろうと安易に踏み込んではならない領域が存在するのだとアムロは知っていたので特に何も言わなかった。
 こういうのもニュータイプになりきれないオールドタイプ的な一面なのかも知れないが解かり合うという事は人の中に土足で入る事とはまた違うとアムロは思っている。
 それでは精神への陵辱にすぎず拒絶されるのが精々だと。

 
 

「アムロ大尉!!」

 

 全速で駆けてきたであろう基地の職員の息切れ交じりの声がアムロの思考に割り込んできた。
 彼はアムロ達の前まで来ると肩を落とし息を整えようとする。
 緊急時にまず彼がアムロへの連絡を優先した事がこの基地におけるアムロの立ち位置を示している。

 

「どうしたの?落ち着いて・・・はい」
「す・・・すみません」

 

 顔を寄せられ少し赤くなった顔で差し出された水を一気に飲み干す。

 

「緊急通信です!!ヘリオポリスが・・・ヘリオポリスがザフトの強襲を受けたと!!」
「な、それで、"G"は!?」

 

 『主任』は普段からは想像もつかぬほど切迫した表情で職員に問いただす。

 

「解りません・・・ヘリオポリスが完全に崩壊した事以外"G"も・・・特装艦アークエンジェルも詳細は不明です」
「やられたな・・・」

 

 ここで初めてアムロは口を開く。

 

「おそらくは"G"は何機か奪取されたと考えていい。だが、全ては渡っていない可能性もある」
「どうしてそう思うのですか?」
「コロニーが崩壊するほどまでに戦闘が拡大したんだ。全機奪われていたならそうはならない」

 

 たとえ極秘裏に連合のモビルスーツを製作していようがオーブは対外的には中立なのだ。
 全機奪取して主目的を達成しておきながらわざわざコロニーを潰す事などザフトには何のメリットも無い。
 もっとも、意趣返しなどいうどうしようもない発想にザフトが至ったのならば話は別だが。

 

「どちらにせよ、これは・・・」
「ああ、"契機"になるだろうな」

 

 "G兵器"の奪取はビーム兵装、PS装甲、各種技術の漏洩以上の意味を持つ。
 停滞していた戦局が再び動き始める事になるだろう。

 

「Mk-供⊇銃以内に仕上げるぞ!!すまないが不眠不休だ!!」

 

 CE71.1月25日に起こったヘリオポリス崩壊により歴史はその歩みを速めていくことになる。