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Seed-Ace_579氏_第03話

Last-modified: 2013-12-25 (水) 22:33:30

『開戦・奇襲・初陣』

あれから三日が経った。
このまま、今までどおりの訓練が始まるのだと思っていたが万年大尉達に出撃命令が下った。
丁度、休憩時間だった俺は離陸して行く万年大尉たちをベンチに座り、カークの頭を撫でながら見送った。
カークの飼い主はアルヴィン・H・ダヴェンポート少尉、TACネームは『チョッパー』のパイロットだ。
チョッパーも万円大尉と共に出撃した。
因みにチョッパーはロック好きで階級が同じなのもあるがこの世界に来た一時期、ストリートミュージシャンをしていたハイネと気が合うらしく、よくおしゃべりをしているのを目撃している。
俺も何度か会って話したことがあるが楽しい男だ。
彼以外にもこの前のケイ・ナガセ少尉、TACネーム『エッジ』とあと一人…俺をシミュレーターで負かしたあのブレイズも一緒に出撃している。
彼らならこの前と同じく、生きて帰ってくる…何故か、俺はそう確信していた。
心配する事は無い…そう考えた俺は腰を上げると昼飯の準備の為に厨房に戻った。

出来上がった昼飯を並べた12時過ぎ頃、妙に基地が騒がしくなってきた。
また、何か起こったのだろうか? そう思った時、厨房にハイネが駆け込んできた。
「非常事態だ! ユークトバニアが宣戦布告してきた。サイレンは鳴らしてないが全軍に警戒警報が発令されている。警報が解除されるまでは戦闘待機だ」
「何だって!? ユークが宣戦布告だって…ユークの首相は融和主義者じゃなかったのかよ!?」
「俺の姉夫婦、ユークに住んでるんだぞ。どうすれば…」
厨房に居た兵士やバイトたちが開戦に不安そうな表情をし、落ち着きがないようにそわそわとしだした。
「落ち着け! いいか、我々の仕事は料理を作ることだ。銃を手にしてユーク人と撃ち合うのはまず、考えるな。
警戒警報が出されていると言う事は部署に就いたまま食事を取る必要があるということだ。
戦闘食として今日はとりあえず、サンドイッチを作る。
パン係は急いで食パンを焼け。他の係りは具の調理だ。かかれ!」
タムラ料理長が落ち着きをなくした皆を一喝し、戦闘食を作る指示を出す。
俺には運良く、食料の備蓄をチェックするハイネの手伝いを命じられた。
ハイネと共に防寒着を着込んで冷蔵庫に入ろうとした時、窓から再出撃して行くウォードック隊が見えた
彼らは3機だけで万年大尉のF−4Gの姿は無かった
冷蔵庫に入った俺達は食料のリストと備蓄を照合して行く。
「ハイネ、攻撃を受けたのは万年大尉じゃ…」
チェックを進めながら俺はハイネに聞いた。
「…バートレット大尉は撃墜された。俺の聞いた話では無人偵察機を撃墜しに行って国籍不明船…ユークの情報収集船って話だがそいつから発射されたSAMから部下を庇って撃墜されたそうだ」
「!? そんな…俺、この前、TACネーム無理やりつけられたのに…あの万年大尉が…」
「大丈夫、無事にベイルアウトしたそうだ。帰ってきたチョッパーたちがベイルアウトするのをちゃんと見ている」
「そう言えば、さっき出撃して行ったけど…」
「セントヒューレット軍港が攻撃を受けている。宣戦同時攻撃だ。
あそこはオーシア国防海軍第3艦隊の母港だがかなり厄介な事になっているらしく、第3艦隊の空母ケストレルの艦載機部隊だけじゃきついんでサンド島からも応援を出したそうなんだ」
「…また、戦争なんだな」
「ああ…」
それから二人とも口を噤み、チェック作業を続けた。

彼らは無事に帰ってきた。3機とも…
彼らの助けによって第3艦隊は少なからず被害は出したが軍港を脱出し、敵封鎖線を突破した。

だが、万年大尉…バートレット大尉はサンド島に戻らなかった。
ベイルアウトした大尉を救助に向かったヘリが到着した時、大尉の姿はどこにも無く、遠ざかる敵の情報収集船だけしか見えなかった。
それが俺が救助ヘリのパイロットから聞いた話だった。

「明日からの1番機? 心配してると年取るぜ。よ、ハイネ。夜食持ってきたのか」
「ああ、タムラ料理長ご自慢のサンド島サンドだ」
パイロット達に夜食のサンドイッチを配っていたハイネは最後の一つを友人であるチョッパーに渡そうとチョッパーの部屋を訪れたのだ。
ロックが流れる部屋ではこの部屋に同居する事になったジェネットがおり、丁度二人では会話しているところだった。
「うちは分遣隊だからな。本土から本隊の中佐殿が来て、俺達の上に乗っかる。それだけさ」
ソファーに腰を降ろしたチョッパーはそう言い、ラジカセから流れるパドル・オブ・マッドのBlurryを楽しそうに聴いている。
「ああ、これでこそ落ち着くぜ。この音色、今夜は良く眠れそうだ」
「ジェネット、耳栓はあるか? この男はロックを子守唄代わりにするから眠られなくなるぞ」
「どうりで二人部屋なのにチョッパーだけな訳だ」
ハイネの言葉にジェネットは苦笑しながら二人部屋なのに自分が来るまでチョッパー一人だったのか納得した。
「おい、ロックってのは最高のミュージックなんだぜ。ほら、この音色を良く聴いてみろよ…安らぐだろう?」
「確かにいい曲だが…普通、ロックは安らぎと言うよりは興奮じゃないのか? 何らな、俺が安らぐ歌を歌ってみようか?」
「ヴェステンフルス少尉、歌えるんですか?」
ハイネが歌えるという事にジェネットは少し驚いたようだ。
「ハイネでいいよ。士官学校に入る前にストリートミュージシャンをやっていたんだ」
「ハイネはさ、マジで歌うの上手いんだぜ。士官学校に入ったのが勿体無いぐらいにな」
「色々あってね…」
「…所で、隊長の15年前のハートブレイクの相手だけど…ユーク陸軍情報部の少佐だって?」
少し、気まずい空気が流れそうになり、ジェネットは話題を変えた。
「ああ、俺だって歴史の勉強はしたんだぜ。そんときゃ味方同士だったんだ。基地司令官の査問ってのも野暮なもんだったな」
そこからはチョッパーは声色をペロー大佐に真似て喋った。
「隊長の行動に、不審箇所はなかったか?」
そして、元に声色で愉快そうに言う。
「だと、不審があるのは野郎の頭の構造だぜ」
そこまで言った時、警報がなり始めた。空襲警報だ。
「おい、空襲警報だぜ。勘弁してくれよ…」
チョッパーがうんざりした声を漏らしながらソファーから腰を上げ、格納庫に向かおうとする。
「セントヒューレットの次は一番近いこの基地か…しまった! 格納庫にはシンが…」
格納庫にはシンが夜食を届けていたのを思い出し、ハイネもチョッパーの後を追う様に格納庫へと向かった。

戦闘自体には慣れていたはずだった。
元の世界で俺は最新鋭機を駆るエースであり、幾多の修羅場を潜り抜けた。
それなのに俺は動けなかった。

俺は夜食を届けたついでに整備隊の手伝いをしていた。そんな時に空襲警報が鳴った。
格納庫は慌しくなり、整備士たちが戦闘機のパイロンにミサイルを装備させて発進準備をする。
それと同時に敵の第一波が到達した。爆撃機が爆弾を落とし、戦闘機が外に駐機してあった予備機を機銃掃射していく。
格納庫にパイロットがパイロットたちが駆けつけた。ブレイズ、エッジ、チョッパーの三人だ。
彼らは素早く耐Gスーツを装着し、ヘルメットを被ると用意の整った機体に乗り込み、エンジンを起動させる。
丁度、敵の第一波が離れたらしく彼らのF−5Eは格納庫から出て滑走路へ向かう。
この間、外で爆弾が破裂した時から俺は格納庫の隅で動けなくなっていた。
俺は何度も実戦を経験した…それなのに怖かった。
自分の居た世界とは違う世界の戦い…始めて体感するそれに足が竦じまってたんだ。
俺はMSに乗ってなかったらこんなにも臆病になっちまうのか?

「おい、シン! こんな所で何をしているんだ!」
「ハ、ハイネ…」
ブレイズたちが離陸した後、ハイネに肩を掴まれて大声で怒鳴られ、俺はやっと動けるようになった。
「こんな所にいたら死ぬぞ! ついてこい、防空壕に行くぞ」
「分かった」
俺はハイネに連れられて防空壕へと向かう。防空壕へは隣の格納庫の中を通るのが早い。
俺達が隣の格納庫に入った時、そこには人が一人、居た。
何時もスクランブルエッグを食べ損ねていた一等空士だ。隊長の予備機のコックピットで何かやっている。
「一等空士、何をしているんだ!」
「少尉? 隊長の予備機ですけどこれで僕も離陸します」
ハイネに怒鳴られてコックピットから頭を出した一等空士は大声で答える。
その時の一等空士の顔は何時ものスクランブルエッグを食べ損ねた泣きそうな顔ではなく、真剣な…決意を固めた顔だった。
「無理だ! お前はまだ…」
「ハイネ、何を言っても無駄だ」
一等空士を止めようとするハイネを俺は制止した。
「シン…」
「あいつは決意したんだ。飛ぶことをな…止められないよ」
外では親父さんがC−1で離陸しようと滑走路に向かっている。
今ならブレイズたちが制空権を維持して離陸できるのだろう。
「一等空士、親父さんが離陸しようとしているから後に続いて離陸しろ」
「貴方はバイトの…ありがとうございます!」
礼を言った一等空士はキャノピーを閉め、エンジンを起動させ始めた。
「決意か…確かに、何かを決心した人間は強くなるというが…」
「俺も…マユとステラを探すって決意したんだ…」
ハイネを尻目に俺の目は一等空士の機体から同じ格納庫に格納されていたアグレッサーの2機に移っていた。
2機とも、イザと言う時は実戦で使えるように整備が施され、燃料や武装もさっきで装備されている。
「だから、俺はこんな所で死ぬつもりはない!」
「!? シン、何をするつもりだ!?」
俺はハイネに構わずに格納庫内のロッカーに走った。
辿り着き、ロッカーを開ければ俺の目論見どおり、そこには予備の耐Gスーツやヘルメットが格納されていた。
自分にサイズが合うものを選ぶとインパルスカラーのF−1に走り寄る。
「まさか…シン、お前も飛ぶつもりか?」
「ああ、そのまさかだよ」
俺は脚に耐Gスーツを装着し、F−1のコックピットに乗り込みながら答える。
「シン、お前はただのバイトだろうが! 幾らシミュレーターの成績がいいからって無茶だ!」
「無茶は承知の上だ。エンジン始動させるから離れろ」
「おい、クソ!」
ヘルメットを被ると止めようとするハイネに構わずにキャノピーを閉め、エンジンの始動手順をシミュレーターで覚えたとおりに操作していく。
エンジンが甲高い音を立て始め、ハイネは慌ててエアインテークに吸い込まれないように機体から離れた。

「クソ、シンのバカやろう!」
ハイネは無茶をするシンに毒づいた。幾ら、シミュレーターで経験があるからと言って無茶をしすぎだ。
一等空士に続いてエンジンを起動させたシンのF−1が出ようとするのをハイネは離れて見てた。
ただ、見ているしかないのか? ただ一人の『同郷』の男を死なせるしかないのか?
そう考えてたハイネの目にオレンジ色に塗られたMiG−21が映った。
「二人とも、死なせるわけには行かないな…」
そう呟いたハイネはロッカーから耐Gスーツとヘルメットを掴み、かつての愛機と同じオレンジ一色に塗装されたMiG−21に走った。

「おやじさんが上がる」
ナガセの声に爆撃機を落としたばかりのブレイズは滑走路を見る。
丁度、おやじさんの操縦するC−1が離陸した所だ。本土から離れたサンド島の生命線とも言うべき輸送機が空中退避してブレイズは少しは安心した。
だが、管制塔が新たな敵機の接近を知らせ、気を引き締める。
「ハンガーを見ろ。誰だ? 誰が引っ張り出したんだ?」
チョッパーの声に格納庫を見ればバートレット隊長の予備機のF−5Eとアグレッサーの2機が格納庫から出て、滑走路へ向かおうとしていた。
「グリムです。整備班を手伝ってハンガーにいました。離陸します」
「主計科のヴェステンフルス少尉だ。士官学校で基本は習っている。俺も離陸する」
「…厨房のバイトのシン・アスカだ。俺はこんな所で死にたくはないんだ!」
「なぁ…」
下の三機の報告に管制塔が絶句している。
「お前にゃ無理だ! 補習教育が済んでねえ。それにハイネ、お前主計科だろうが! 士官学校で習ったからって無茶だ!
 それとバイト! お前が幾らシミュレーターでいい成績出してるからっていい気になるんじゃないぞ! おい、他の予備搭乗員はどうした?」
「姿も見えません」「連中なら防空壕に逃げてるよ」
「もう間に合わない。気をつけて、三人とも。護ってあげる」
「やってみます!」
「ブービー、グリムたちが上がってくる。頼りないが…このまま見てるのか?」
チョッパーの問いにブレイズは今から離陸しようとする3人の事を思い出した。
グリムは整備班の手伝いをよくしており、シミュレーターの成績は平凡だが基本はしっかりしている。
ヴェステンフルス少尉は主計科だが士官学校で基本を習っていて基地でもたまにシミュレーターで練習している。
そして、バイトのアスカはシミュレーターで自分といい勝負をした腕前の持ち主だ。
「いいや、三人の離陸を援護する。グリムもヴェステンフルス少尉もバイトも今は貴重な戦力だ」
「了解、あいつらをフォローしてやろうぜ。敵機正面、いくぜ!」
ブレイズとチョッパーは真正面から敵機をそのままヘッドオンで射撃し、撃墜する。

上空ではまた、ブレイズたちが敵機を落とした。俺たちの離陸を援護してくれている。
俺のF−1はやっと滑走路の端までタキシングして今や前に居るハイネのMiGが離陸開始するのを待っていた。
何故、ハイネよりも先に格納庫を出た俺がハイネの後ろかと言うと途中で戦闘機の残骸やら爆撃のクレーターを迂回したからだ。
「こちら、グリム。これより離陸します。上から確認できますか?」
「ああ、確認できている。敵は俺達が押さえ込むから早く離陸しろ」
グリムの問いに上空の戦闘機が答えるのが無線で聞こえる。この声はブレイズだ。
「了解、少し安心しました。離陸開始、エンジン出力最大!」
グリムのF−5Eの滑走を始めた。間をおいてハイネのMiGも滑走を開始する。
俺もハイネに続いてスロットルを押し進め、アフターバーナーを点火。キャノピーの外の景色が後へ流れて行く。
離陸速度まで加速した所で操縦桿を引いて機首上げ。俺の機体は空中へと飛翔した。

「ハイネといい、グリムといい、バイトといい無茶しやがるぜ!」
チョッパーは敵戦闘機を撃ち落しながら離陸した三人に呆れた声で吐いた。
「上がりました!」「何とか離陸した」「ギア格納完了。俺も離陸できたぞ」
「グリムにハイネ、それにバイト! こっちへ来い。俺の後ろにつけ」
「了解です」との返事があり、三機がチョッパー機の後に付く。
「こちらグリム一等空士、コールサインは『アーチャー』。管制塔および全機に連絡。本機はこれよりウォードッグ隊に加わります」
「ハイネ・ヴェステンフルス少尉、コールサインは…『イグナイテッド』。アーチャーに続いてウォードック隊に加わる」
ハイネのコールサインを聞いたシンはかつて、元の世界でハイネの乗っていたグフイグナイテッドを思い出した。
無論、それに乗ってダーダネルス海峡でステラに撃墜され、ハイネは死んだのだがどうやら愛機に愛着があったようだ。
そう言えば、以前聞いた話でハイネがストリートミュージシャンをしていた時、オリジナルの曲に『イグナイテッド』って曲名をつけてたって聞いたっけ…
「おい、バイト。お前も報告しろよ」
そんな事を考えていた俺にチョッパーが声をかけてくる。俺のコールサインは…既に決まっている。
「シン・アスカ。コールサインは『レッドアイ』だ!」
「こちら管制塔、了解。ブレイズ、彼らを頼んだぞ」
俺たちからの報告に管制塔からの返事が来る。同時にレーダーに機影が映る。反応は味方機。
「こちらウォードッグ・リーダー。サンド島、燃料がない。着陸許可を求める」
本土から来る予定の本隊の中佐か。こんな時に着陸許可を求めるなんて正気なのか?
「無理です、フォード中佐! 空襲中なんだ」
「空中の味方機、本隊の着陸を援護せよ」
中佐殿が無茶な命令をする。俺はそれに思わず罵声の一つでも浴びせようかと思ったが口を開くよりも早く、チョッパーが一言言った。
「阿呆が!」
「ダヴェンポート少尉か?」
「そうであります」
中佐の声に素直に答えるチョッパー…後で大丈夫なのか?
「着陸後に譴責してや…」
中佐の怒った声が途切れる。同時に空中に火の玉が浮かび、中佐の機体の反応がレーダーから消失。
「火を噴いた! 中佐が落ちた」
チョッパーが叫ぶ。それに答えるかのように管制塔から連絡が来る。
「こちら管制塔。増援の爆撃機が接近中。急ぎ、撃墜せよ。 」

「聞いての通りだ。俺とエッジ、チョッパーで護衛戦闘機を押さえる。アーチャーとイグナイテッド、レッドアイは爆撃機を落とせ」
ブレイズが指示を出す。バートレット隊長が居ない今は彼が指揮を取っているのだ。
俺は指示に従って爆撃機を狙う。爆撃機は図書室の航空機年鑑で見たことのあるB−1B。
グリムとハイネも指示に従って爆撃機を攻撃しようとしている。俺は狙いを定めたB−1Bの後ろに回りこむ。
シミュレーターで何度もやった事を思い出しながら改めて確認する。マスターアームは既にオンになっている。
ミサイルのシーカーが爆撃機をロックオンし、トーン音が途切れる事無く聞こえる。
操縦桿の発射スイッチに指をかけ、タイミングを待ってミサイルを発射する。
F−1のパイロンから放たれた短距離ミサイルが白い煙の尾を引きながら爆撃機の右エンジンに突き刺さる。
爆発。右エンジンを失い、右翼が千切れた爆撃機は錐揉みに陥り、そのまま海面に墜落して搭載していた爆弾を誘爆させたらしく、巨大な水柱を上げる。
「レッドアイ、ブレイク!」
エッジの声に操縦桿を反射的に横に倒し、機体を横滑りさせる。
俺のF−1が今まで居た空間を機関砲弾が切り裂いていく。爆撃機の護衛のF−16Cだ。
後に張り付こうとするF−16に背筋に冷たいものを感じながら俺は引き離そうとする。
右に旋回するとフェイントをかけて左回りにバレルロール。
反応が遅れたF−16はオーバーシュートして俺の前に出る。
今度は俺がオーバーシュートしたF−16の後に付く。
必死に俺を引き離そうとするF−16の後方にぴったりと付いて行く。
F−16が焦っているのか、同じ機動を続けている。親父さんに俺が指摘されたのと同じミスだ。
奴の動く先を狙い、操縦桿の引き金を引く。
F−1のバルカン砲が吼え、20mm砲弾が幾つもF−16に突き刺さっていく。
穴だらけになったF−16はふらふらと飛ぶが直ぐに火を吹き、爆発する。
俺は直ぐに次の爆撃機を探した。元の世界で激戦を戦い抜いてきたお陰か、何とか落ち着いていられる。
「やった! 爆撃機を一機撃墜しました」
「こっちも一機やった! シン…レッドアイが爆撃機と戦闘機を一機ずつ撃墜。やるな」
無線から聞こえる声に辺りを見ればハイネとグリムも爆撃機を撃墜したらしい。
ブレイズたちも戦闘機を多数落としている。このままなら基地を守れる。
俺は新たな爆撃機を狙い、スロットルを全開にした。

グリムが最後の爆撃機を撃墜すると護衛戦闘機は撤退し、戦闘は終結した。
基地の建物は幾つか破壊されたが滑走路は無事で俺達は着陸する事はできた。
だが、戦闘は終わったものの俺には問題が発生した。
民間人のバイトなのに軍の戦闘機を勝手に操縦し、戦闘を行った俺の処遇に関することだ。
流石に不味い事になりかけたが司令官の副官をしているハミルトン大尉の提案で書類上では数日前に俺が軍に入隊したと言う処理を行った。
開戦から17時間…どうやら、本土の方もユークの奇襲攻撃によって被害が出ているらしく、分遣隊であるウォードック隊には補充は望めないかららしい。
その為、俺はオーシア国防空軍シン・アスカ二等空士として主計科から飛行隊に転属する事になったハイネと共にウォードック隊に配属される事になった。

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