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Seed-Crayon_3-384_3-2

Last-modified: 2013-12-25 (水) 18:01:25

ある愛の物語(キラ&ラクス編)・第2話
 
 鳥のさえずりがいたるところで、点々と聞こえる朝。
 まだ冬のせいか、日は少し暗くところどころ窓のから光が入ってくる程度だった。
 
キラ 「ラクス・・・まだ寝てるか・・・」
 
 キラはそっと病室に入り、彼女の寝ている近くのベッドにこっそりと歩いていった。
 両手には色とりどりのコスモスの花の束と花瓶を抱えていた。
 
ラクス「…ん?」
キラ 「あ、ごめん。起こしちゃった?」
 
 ラクスはキラが何かをしていることに気づいたようで、ゆっくりと目を開ける。
 キラはそれを悪いと思ったのか軽く謝った。
  
キラ 「きれいでしょ?これ。さっき散歩してた時、ちょうど花屋あってさ…」
ラクス「……」
キラ 「しかもそこのおばさんが気前がよくて、君のこと話したらおまけしてくれてね…」
ラクス「……れ?」
 
 キラは自分の持ってきた花の話をしていたが、ラクスは何か茫然として何かを呟いていた…
 声が小さいせいか、良く聞き取れなった。
 
キラ 「まぁでも、そんなに怪我も大したこと無いから、おおげさだったかな?」
ラクス「……誰?」
キラ 「えっ?ラクス、今何て?」
ラクス「…あなたは、誰?」
 
 ラクスのあまりの突拍子も無い言葉にキラは少しキョトンとした。
 
キラ 「ラクス、何言ってるの? 冗談?」
ラクス「私はあなたなんて…あれ?…私って?…」
キラ 「…ラクス。悪い冗談でしょ?ね、ね!?」
 
 キラは少し取り乱した様子で、ラクスの肩を掴んで彼女に迫る。
 
ラクス 「ちょ、やめて! 嫌ァ!!」
アスラン「キラ! お前何やってんだよ!!」
 
 ラクスの悲鳴を聞きつけ、病室に駆け付けたアスランが、キラを背中から押さえつけ静止させる。
 ラクスはあれ?あれ?と言いながら、頭を抱えていた…
 
〜検査室〜
 
キラ  「記憶喪失って…アスラン…何で!?」
アスラン「キラ、落ち着け!」
キラ  「…だって、昨日の夜は普通に…」
アスラン「いいから落ち着け!!」
 
 ラクスが記憶喪失と言われ錯乱するキラを、アスランは彼の肩を掴み落ち着かせようとする。
 
アスラン「いいか?お前昨日、彼女が事故に遭ったって言ったよな?
     たぶんその時頭を強く打ったんだろ…そのショックで…」
キラ  「そんな…で、でもすぐ戻るんでしょ?」
アスラン「オレが脳外科の専門だからって、そんなのわかるかよ…
     すぐ戻るかもしれないし…ずっと戻らないことだって…」
キラ  「戻らないって? な…何でそんなこと言うんだよ!やめてよ!!」
 
 アスランの言ったことに我を失ったキラは、彼の白衣を掴んで後ろにある薬類の置いてある戸棚に叩き付ける。
 
アスラン「お前も少し落ち着け!二度と戻らないなんて言ってない!!
     戻る可能性だってある…けど時間がかかるかもしれないんだ…
     なら待つしかないじゃないか!!?」
キラ  「…何で…こんな…」
 
 キラは握り締めているアスランの白衣を力なく離し、その場に座り込んだ…
 
アスラン「お前が辛いのはわかる…けど、お前だって医者だろ?
     お前には他にも患者がいるんだ…しっかりしろよ…」
キラ  「ラクス…ぅ…ぅ…うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!
 
 アスランの言葉を聞き、キラはその場に四つんばいに倒れこみ、泣き崩れた…
 アスランも、彼にかけてやる言葉が無いようだった…
 


 
 ラクスの記憶が無くなってから数週間。キラはその日から彼女に会うことを拒んでいた…
 記憶が戻らないかもしれない…そんなことが彼の頭によぎり、彼女へどう接すればいいのかわからなかった。
 それに記憶を無くした彼女に対して、かなり強引なことまでしてしまった…
 そんな罪悪感が、彼の頭を走馬灯のように過ぎっていた…
 そんなある日彼はあるところへ立ち寄っていた…
 
 
〜喫茶店『砂漠の虎』〜
 
アンディ「よう、いらっしゃ…お〜キラじゃないか!久しぶりだな」
キラ  「お久しぶりです、バルトフェルドさん…」
アンディ「キラ…お前…何度言えばわかる。ここにいる時は、僕をアンディと呼べと言ったろ!?
     まったく、仕方ないヤツだ…」
キラ  「…ほんと…すいません」
アンディ「…?どうしたキラ…なんかお前、おかしくないか?」
 
 キラの素っ気無い挨拶に何かを察したか、アンディーは彼に尋ねる。
 
キラ  「…はい…実は聞いてもらいたいことがあって…」
アンディ「…その話、聞こうじゃないか」
 
………
……

 
キラ  「…僕、どうしたらいいのかわからなくて」
アンディ「……」
 
 キラがラクスのことを相談し終えると、彼は顔をふさぎ込んだ…
 アンディーはそんな彼の言葉を無言で聞き、おもむろに珈琲を作り始めた…いつもと変わらない素振りで作っていたが、どこか彼の顔は険しかった…
 
アンディ「キラ。これを飲め…」
キラ  「えっ?」
アンディ「いいから、早く!!」
 
 躊躇するキラに、アンディーは半ば無理やり飲むよう勧める。
 
キラ  「じゃ、じゃあ…(ごく)…に、苦い!!
     どうしたんですか?こんなの、バルト…いやアンディさんらしくないじゃないですか!」
アンディ「いや、お前があんまり寝ぼけたこと言ってるから、目覚まし代わりにと思ってな…」
キラ  「えっ?」
 
 アンディは驚くキラを他所に話を続けた…
 
アンディ「何が『記憶がないラクス嬢にどう接すればいいかわからない』だ?
     『彼女に変なことしたから、会いづらい』だ!
     寝ぼけたことを言うな! お前は彼女に思い出してもらいんじゃないのか? キラ、答えろ!!」
 
 普段とはあまりに違うアンディに戸惑いながら、キラはコクリと頷いた。
 
アンディ「なら何で会わない!何故話さない!お前が彼女を支えてやらないでどうする!!
     彼女は自分が誰かもわからない、知っている人も覚えていない…
     そんな彼女をお前は放っておけるのか!?」
キラ  「そ、そんなんじゃ!」
アンディ「なら迷うな。お前しか彼女を支えてやれるヤツはいないんだぞ、キラ!!」
キラ  「……」
アンディ「わかったなら、とっとと病院に戻って、彼女に会って来い…いいな?
     会わないでまた戻ってきたら、タダじゃおかないからな!」
キラ  「そう、そうだけど…そんな気持ちだけで一体何が出来るっていうんだ!!」
 
 キラはアンディにそう吐き捨てると、急に立ち上がり店をあとにした。
 …沈黙が店内を包む中、バイトのダコスタがアンディーに話しかける。
 
ダコスタ「店長。ちょっと言いすぎなんじゃないですか? 彼が苦しいのは確かですし…」
アンディ「…ダコスタ君…僕はあいつ以上に、辛い思いをしているやつを知っている…」
ダコスタ「え?それって…」
 
 アンディはそう言うと後の事をダコスタに任せ、店の奥へと入っていった…
 
 
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