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Seed-Crayon_3-384_3-5

Last-modified: 2008-06-19 (木) 19:13:51

ある愛の物語(キラ&ラクス編)・最終話
 
 ラクスが記憶を失ってからもう何ヶ月がたったであろうか…
 気が付くと…もう明日にはラクスが記憶を無くしてから1年になろうとしていた。
 着実に少しづつ断片的に…思い出すことは増えてきていたが、まだ完全とはいかなかった…
 そんな時、キラはラクスにあることを提案する。
 
ラクス「え、一緒に外に…ですか?」
キラ 「そう。君もずっとこの部屋と庭じゃ退屈だろうから…いや、嫌ならいいんだけど…」
ラクス「…いいですよ…いつ行きます?」
 
 ラクスは少し考えた様子だったが、笑顔で承諾した。
 
キラ 「ほんと!?よかった〜〜。じゃあラクスさん…明日の夜でどうです?」
ラクス「はい。それで…けどキラ先生、【さん】は余計ですよ」
キラ 「あ、ごめんつい…じゃあ明日の夜、迎えに来ますから」
ラクス「はい、楽しみに待ってます」
 
 以前のようにとはいかないが、昔のあの頃の二人が戻って来た様だった。
 
〜次の日〜
 
 その夜、二人は町に出かけ、少し雑談をしながら歩いていた…
 あの日、あの時間、場所を同じくして…
 
ラクス「見せたいもの…ですか?」
キラ 「そう…しかも【前の彼女】にも見せてないんだ」
ラクス「?…それをなぜ私に?」
キラ 「…いや、まぁ、なんでもいいじゃない?別に? ほら、朝にも気晴らしって言ったでしょ?
    なら、こうびっくりさせるものがいいかなと思って…」
ラクス「はぁ…」
 
 ラクスの不意打ちを付く質問にキラはあたふたしながら返すが、彼女もそこまで、深く考えてる様でもなかった。
 
ラクス「キラ…先生…1つ、質問してもいいですか?」
キラ 「何? 答えられることなら何でも」
 
 少し笑みを浮かべながら言うキラ
 
ラクス「どうして…【前の彼女】と別れちゃったんですか?」
キラ 「えっ…」
 
 信号待ちをしている時、その彼女の質問に思わず体が固まる。
 キラは心の中で『それは君のことだ!』と言いたくて仕方なかったが、そんなことを言えるわけもなく、少しうつむいて黙った…
 
ラクス「先生、前からその子の話するけど、いつも楽しい話ばかりで…
    何で別れたのか私…その、なんか…納得できなくて…」
キラ 「……」
ラクス「先生?…聞かないほうがよかったですか?」
 
 信号が青になり、横断歩道を渡りながらのラクスの言葉の刃が、キラの心をえぐるようだった…
 
キラ 「そ、それはね…」
ラクス「それは?」
 
 キラは決心した…
 その子は…彼女は…君なんだ…と言うことを。
 
キラ 「その子は…」
ラクス「危ない!!」
 
 その瞬間、キラの体は前のめりになり、自分の進んでいた方向へ押された…
 キラは横目でラクスの姿を必死に確認しようとする…
 それは…あの日の…あの事故と全く同じ状況であった。
 キラの中に蘇るその鮮明な映像…
 
 
(またか…また僕は…僕は!…そんなの嫌だ!!…僕は!!…僕は!!!!)
 
 
 キラは前のめりになりながら、自分の手をラクスの手へ伸ばし、抱きかかえて、自分の方へと引き込んだ…
 そして、その場に倒れこんだ…
 
ラクス(…あれ?…これ…前にも…)
 
 彼女の中にも不意によぎるこの映像…以前とは比べようもないほど、それは鮮明であった…
 
キラ 「大丈夫だった?ラクス?」
 
 キラは少し息を切らしながら、ラクスの安否を気遣う。
 
ラクス「は…はい…(やっぱり…どこかで…)」
キラ 「よかった…ほんとによかった…!!」
 
 キラはそういうと面前の前でラクスを強く抱きしめる…
 ラクスは少し戸惑った様子だったが、その時も彼女の脳裏にはこれと似た映像が…よぎっていた…
 
〜野原家〜
 
しん 「お〜〜いシン兄ちゃん、シン兄ちゃん!!」
シン 「どうしたの?また元気ないの?」
しん 「違うゾ! 幼虫さんが体を急に変えたんだぞ」
 
しんのすけはてんとう虫の幼虫の様子を見るのが日課だったらしく、その突然の変化に驚きを隠せなかった。
 
シン 「あ、ほんとだ…蛹になってる…また急だな…」
しん 「さなぎって何?」
シン 「う〜ん簡単に言うと、てんとう虫になる前の段階かな?」
しん 「ほ〜〜〜じゃあそろそろ、幼虫さんは大人になるの?」
シン 「そうそう」
しん 「ほっほい〜〜やった〜やった〜」
シン 「ずいぶんかかったけど、今度あのお姉さんに見せに行こうな」
しん 「うん! オラもそのつもりだったんだゾ」
シン 「そうか。じゃあ、たぶん明日の朝には孵化してると思うから、明日いこうか?」
しん 「ブ・ラジャ〜!!」
 
 しんのすけはすごくわくわくしたような様子で大きな声をあげた。
 
みさえ「しんのすけ〜、シンく〜ん、ご飯よ〜」
シン 「は〜い」
しん 「ほ〜い」
 
 二人は呼ばれると、その部屋を出て行った…
 蛹は何やら盛んに動いていた…
 
〜一方、二人は〜
 
キラ 「さっきはほんと焦ったよ…」
ラクス「でも先生、かっこよかったですよ」
キラ 「やめてよ、照れちゃうよ…」
ラクス「あらあら」
キラ 「それよりさ…あの…お願いなんだけど…」
ラクス「何ですか?」
キラ 「目、つぶっててもらえるかな?」
ラクス「あ、はい…じゃあ…」
 
 ラクスはよく状況がつかめなかったが、キラの言うとおり目をつぶり、キラは彼女の手をそっと握り、町中の公園と連れて行く。
 さすがに夜のせいか、人気は無かった。
 公園には大きな池があり、その離れ小島に一本大きな木が立っている。
 キラは池の岸辺に着くと、ラクスの手をそっと離した…
 
ラクス「まだ…ですか…?」
キラ 「あ、ごめん…あと少し待ってて…」
 
 ラクスはずっと目を瞑っているせいか、はやく状況が知りたくてキラを急かしたが、キラはそれを押し留める。
 
キラ 「…よし…もういいよラクス…目を開けて…」
ラクス「あ、はい……これは!!」
 
 恐る恐る目を開けたラクスの目の前に広がるのは、ボンヤリと…真夜中を緑に光る蛍たちが池の水面を無数に飛び交い、そこの大きな木はさながらクリスマスツリーのような光景だった…
 
ラクス「これって…」
キラ 「驚いた?僕もたまたま初めて見つけた時はびっくりしたよ。
    だから…その、大切な人に見せたくて…」
ラクス「大切な…人?」
キラ 「いや、何でもないんだ…」
 
 そういうとキラは少し切なそうな顔をしてその幻想的な光景を見ていた。
 ラクスはその横顔をそっと覗きこんでいた…
 
「もう少し待っててよ、プレゼントは逃げないから…」
 
 その瞬間、ラクスの頭に何かがよぎった…
 誰かの声…聞き覚えあり、何だか懐かしい声だった…
 
「…もう、そんなこといって…」
 
 それに返事を返す自分。どんどんその映像が鮮明になっていく…
 
「まぁまぁ…あせらない、あせらない」
 
 その映像の中の『彼』は、自分を軽くあしらって笑みを浮かべていた…
 
「…キラったら…」
 
 
 ――その一言…そのキラという名前が映像の中の自分が言った瞬間、彼女の中で全てがつながった――
 
………
……

 
キラ 「そろそろ行こうか…」
 
 キラはそう一言言うと、その場をあとにしようとした。
 ほんの少し、キラはラクスが何かを思い出してくれるのではと期待していたが、そんな素振りが無い彼女を見るのがつらかった…
 
ラクス「…キラ…」
キラ 「…へ?」
 
 そう彼女に言われるのは、どれだけ久しぶりだったか…
 あまりに急なことに、キラは状況が掴めなかった。
 
ラクス「…キラ…キラ!!」
 
 ラクスはそう二度彼の名前を呼ぶと駆け寄り、キョトンとしたキラに抱きついた…
 
キラ 「ラクス…まさか…」
ラクス「はい…今まで心配かけてごめんなさい…」
 
 キラはその言葉を聴いた途端、今まで心の中で押し殺していたモノが目から止め処なく流れ、彼女を強く抱きしめた。
 
キラ 「ラクス…ラクス…! よかった…ほんとよかった」
 
 キラがもう何も考えず、ラクスを抱きしめている時、ラクスはそっと優しくキラに言った…
 
ラクス「ただいまですわ…キラ…」
キラ 「…おかえり…ラクス…」
 
 二人の抱擁しあう姿は無数に飛び交う蛍の光で、薄っすらと漆黒の夜の中…ぼんやりと浮かんでいた…
 
………
……

 
〜朝の野原家〜
 
しん「あ、あ〜〜あ〜〜〜あ〜」
 
 しんのすけは、てんとう虫の様子が気になったのか、大きなあくびをしながら珍しく朝はやく起床していた。
 他のみんなはまだ熟睡していた…
 
しん「てんとうむしさん今どうしているかな?…あれ?」
 
 しんのすけは興味津々に虫かごの中を覗くが、異変に気づくと急いでシンを叩き起こした。
 
しん「シン兄ちゃん!、シン兄ちゃん起きるんだぞ〜」
シン「ん?えっ、何?どうしたの?」
しん「てんとうむしさんが!むしさんが!」
シン「えっ?てんとう虫が?…」
 
 カーテンの隙間から入ってくる朝の日差しに照らされる虫かご…
 そこには、朝の光で少し輝く蛍の抜け殻だけ残され、てんとう虫の姿はどこにもいなかった…
 
〜END〜
 
 
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