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Seed-Crayon_5-044_2

Last-modified: 2008-06-30 (月) 18:22:51

きょうだい【その2】
 
 〜野原家〜
みさえ 「ただいまー」
シン  「あ、おかえりなさい、みさえさん。…あれ?アウル?」
アウル 「…お邪魔します」
みさえ 「アウル君、今日ウチでご飯食べてくことになったから。
     用意ができるまで一緒に遊んでてね…ってあらやだ。
     小さい子にするみたいな言い方になっちゃったわ」
シン  「(?なんかアウル元気ないな)いや、いいですよ。じゃ上行こうぜアウル」
アウル 「うん……」
 
 
みさえ 「さて、と。まずは…」
 
 ピ・ポ・パ・ポ・ピ・ピ………プルルルッ(電話のプッシュ音と呼び出し音)ガチャッ
 
みさえ 「あ、デュランダルさんのお宅ですか?野原です…はい、今日はこちらで…」
 
 ポ・ピ・プ・プ・ピ・ポ………プルルルッ(電話のry)ガチャッ
 
みさえ 「あ、マリューさんこんばんわ。みさえです。あのね…え?うそ、お隣の……
     …えーっ!そうだったの…うわぁ……そういえばあそこの長男…やぁねぇ…
     ………………………あ、そうだった。ちょっとお願いしたいことがあって。
     ……うん。…でね、アウル君が……えぇ。それで……ご主人の方からも……
     ………それじゃ、よろしくお願いします」
 
 電話をかけ終わったみさえが時計を見ると、すでに一時間以上経過していた……
 
みさえ 「げっ!どうしよ、このままじゃ夕食が夜中になっちゃうわ!」
ルナ  「それなら私が作っておきましたよ。
    みさえさんが電話に夢中になってたから、「あ、危ないなー」と思って」
みさえ 「ありがとう、ありがとうルナマリアちゃん〜!あなた絶対良いお嫁さんになるわ!」
 
 涙まで浮かべて感謝の言葉を並べるみさえを眺めながら、ルナマリアは思った。
 
ルナ  (お嫁さん、かぁ…野原さん家みたいな暖かい家庭、
     シンと私にも築けるかしら?でも長電話だけは見習わないようにしよ…)
 
          *          *          *
 
 〜時間は少し遡り、野原家の二階〜
アウル 「暇潰しにゲームってのはわかるけど…なんでファ○ナル○ァイト?
     普通連ザじゃねーのか、それ以前になんでスーパー○ァミコンなんだ?」
 
 みさえの前とはうって変わり、偉そうな態度で文句を言うアウル。
 
シン  「バカお前、このゲームの良さがなんでわかんないんだよ!」
しん  「そーだゾ!このゲームにはえっちなおねいさんがたくさん出て来るんだぞ!」
 
 二人は妙に熱意のこもった目でアウルを説得する。
 ちなみにしんのすけも言っているが、このゲームの女性敵キャラは、やたら露出度が高い。やられた時の声も妙にエロス。
 
アウル 「……まぁ、いーけどさ」
 
 その気迫に押されたのか納得したアウルを見て、シンが電源を入れる。
 
シン  「じゃ、俺ガイな」
アウル 「なっ!普通お客さんの僕に選ばせるだろ、先に!」
しん  「アウル兄ちゃんは市長のおっさんどうぞぉ〜」
アウル 「こら、勝手にコントローラーを…」
シン  「まぁまぁ。一回パイルドライバーの快感を覚えたら病み付きになるよ」
アウル 「だったらお前がハガー使えよ!ったく…なんてタチの悪いコンビだ」
シン  「ふふん。Wしんちゃんズをなめんなよ?」
しん  「オラたちはサイキョーのコンビだゾ!」
アウル 「タチ悪いって言葉のどこに、そんな威張れる要素があるんだよ!」
 
 そんな感じで騒いでいると、いつの間にかアウルの落ち込んだ気分も晴れていた。
 
アウル (ほんと、こいつら仲の良い兄弟って感じだよな。バカなとこも似てるし。
     ………きょうだい、か。僕とあいつらは、どうなんだろう…)
 
          *          *          *
 
アウル 「なぁ、シン…ちょっと聞いてもいいか?」
 
 二つ目のステージをクリアしたところで、アウルはコントローラーを置いた。
 
アウル 「お前さ、妹がいたらしいけど…」
シン  「ん」
 
 何か真剣な雰囲気を察したのか、シンは躊躇せず電源を切り、アウルの方に向き直る。
 
シン  「あぁ、いたよ。マユって名前の可愛い妹が」
アウル 「その子が生きてた時、どんな感じだった?喧嘩とかした?」
シン  「そうだな…」
 
 そう呟くとシンは俯いて黙り込んでしまった。
 アウルは続く言葉を待っていたのだが、ある可能性に気付き、慌てて声をかける。
 
アウル 「ゴメン!思い出したくないよな、悲しいこと。
     僕ってそういうとこの気配り、下手でさ…言いたくないなら無理しなくても」
シン  「いや、大丈夫だよ」
 
 焦って早口になっていたアウルの言葉を、シンは穏やかに遮る。
 
シン  「…"今は"もう大丈夫なんだ。ただ、思い出の数が多過ぎてさ。
     マユと喧嘩したことは少なかったから、思い出すのに時間がかかっただけ」
アウル 「そ、そう?ならいいんだけど」
シン  「あぁ…大丈夫。かすかべに来て、しんちゃんに会って…家族になったから。
     だから今は大丈夫。そりゃ、思い出せば悲しいし、一生そうかもしれないけど」
 
 シンはそう話しながら、シリアスな空気に緊張し、静かになっているしんのすけの頭をグシグシと撫でる。
 
 
シン  「それでも耐えられる」
 
 
アウル 「……」
しん  「シン兄ちゃん…」
シン  「悲しさより辛いのは寂しさだと思うよ。
     家族を失った時はごっちゃになって、その違いに気づけなかったけど…。
     今なら分かる。この家ほど騒がしくて、幸せな家族は無いから。
     寂しさなんて感じる暇ないし、悲しい思い出も笑って話せちゃうんだよな」
アウル 「…そっか」
シン  「って、アレ?俺なんか語っちゃってるよ。うわ、すっげー恥ずかしい」
しん  「大演説だったぞ、シン兄ちゃん。キャーカッコイイー!ワタシを抱いてぇ〜ん♪」
 
 ようやく重い空気から開放された反動か、しんのすけがタコのように唇を突き出してシンにじゃれつく。
 
シン  「ちょっ、しんちゃんってば…あ、ごめんなアウル。話が脱線した。マユと喧嘩した話だっけ?」
アウル 「いや、もういいんだ…僕、わかったから」
シン  「?そうなのか?ならいいけど」
アウル 「うん、そうだったんだ…」
Wしん 「「?」」
 
 シンの話を聞き終えたアウルは、なにか満ち足りた様子で微笑んだ。
 
 
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