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Seed-Crayon_5-660_4.5

Last-modified: 2008-06-29 (日) 22:45:53

さらば愛しき人よ!だゾ・番外編
 
 当時のシンが帰ってくるギリギリまでマユの看病をした後、連合の最後通告がオーブに突きつけられるまでの数日間。
 シンとしんのすけはオーブ観光としゃれこむことにした。
 2人はオーブの色々な所を見てまわり…今、とある場末の寿司屋でお昼を食べている。
 
 
しん  「おじさ〜ん!おら卵焼きとトロね!うん、シン兄ちゃんの言ってた通りだゾ」
シン  「だろ?オーブは島国だから海産物の水揚げ量が多くてさ、要するに魚が美味いんだ。
     あ、俺はうにと穴子お願いします」
しん  「でも大丈夫なの?おら達こんな所でお寿司なんか食べてて。シン兄ちゃん、オーブのお金持ってたっけ?」
シン  「そこら辺は心配ないさ。家から出る時、俺の部屋に寄って隠してあるヘソクリを全部頂戴してきたから」
しん  「……いいの?そんなドロボーみたいなコトして?」
シン  「いいも何も、元々俺の金なんだから問題ないって。
     どうせ避難するとき忘れて持ち出せなかったし、
     連合の攻撃でヘソクリが家ごと押し潰されちまったんだから。気付きやしないって」
 
ガラガラガラ…(寿司屋の引き戸が開く音)
 
親父  「へい、らっしゃい!」
キラ  「カガリ、こんな時に軍施設から離れてお昼を食べるってのはちょっと…」
カガリ 「何言ってんだ!あんな所でうじうじMSの整備なんかしてたら、ますます頭がハツカネズミになるだけだろ!
     それにお前の生還祝い(?)も兼ねているんだ!…なあにまかせておけ。ここの寿司は絶品だぞ?
     昔、私も良くお父様に連れて行ってもらってな……」
 
シン  「ぶーーーーー!(茶を吹きだした)な、なんでキラさんとアスハがここに…!」
しん  「おお〜!キラ兄ちゃん!カガリおねいさ〜ん!」
カガリ 「ん?何だ…あの子供は?」
キラ  「あれ?あの子…あっ思い出した!しんのすけ君にシンタローさん!」
シン  「(やべ!ここで顔を見られるワケには…サングラス、サングラス…あった!)
     や、やあキラさん。こんな所で会うなんて奇遇だね」
カガリ 「むっなんだこいつは?人前でサングラスなんか付けて。失礼なヤツだな」
シン  「(あんたがそれを言うのかよ…)ちょっと目が悪くてさ。気にしないでくれ」
キラ  「心配したんですよ?モルゲンレーテに問い合わせたら、
     野原シンタローっていう人は数日前から行方不明だって言ってましたから」
シン  (モルゲンレーテに野原シンタローって人間が本当に居たのか。偶然とはいえ都合がいいな)
カガリ 「ふ〜ん、キラの知り合いか。おい、お前」
シン  「……」
カガリ 「聞こえないのか?おい、そこのお前…」
シン  「俺はお前なんていう名前じゃない。シ…野原シンタローだ」
カガリ 「え?あ、ああ…すまない。悪気はないんだ…許せ」
シン  「…悪気がなかったら、何しても許されると思ってんのか?あんた…
     カガリ・ユラ・アスハさん」
カガリ 「っ?なんで私の名を知っているんだ…おま、いやシンタロー?」
 
 
シン  (俺はかつて公衆の面前でこのひとを罵倒した。今考えればなんて残酷で幼いことをしたんだろうと思う。
     だが…今あえてもう一度、この人の考えを聞いてみたい。
     果たして将来オーブを背負って立つ資格があるかどうかを)
 
 
シン  「キラさんがさっき『カガリ』って言っていたじゃないか。
     それに、いくら俺だってオーブ代表のご令嬢の顔くらい知っているさ。一応オーブ国民だしな」
カガリ 「その『ご令嬢』ってのはやめてくれ。お姫様って言うのもだ。
     私は好きじゃないんだ…そう呼ばれるのがな」
シン  「なんで?お姫様であることには変わりないだろう?」
カガリ 「自分だけ特別扱いされるのがイヤなんだ!
     私は、どんなヤツでもありのままの自分で付き合っていきたいだけだ。
     だから、自分だろうと、他人だろうと、立場とかで人を判断するのは良くない。そう思っているんだ」
キラ  「カガリ…」
しん  「ほうほう、これは1本取られましたなあ♪シン兄ちゃん?」
 
シン  「まあ…その考えは大変ご立派だとは思うけど。言ったことに実行がともなっていれば、な」
カガリ 「どういう意味だ?お前…」
シン  「カガリ様の噂はけっこう聞いているよ。ウズミ様に反発して、オーブを家出同然に飛び出して。
     確かその後はアフリカで現地のゲリラと一諸にバズーカかついで戦ってたんだっけ?」
カガリ 「お、お前!どこでそれを!」
シン  「オーブのジャーナリストは優秀なんだぜ?知らなかった?
     それから…そうそう、アークエンジェルに半ば無理矢理乗り込んで、
     オーブに帰って来たときに自分の素性を都合よく利用して入国したんだよな」
キラ  「シンタロー君、それは…」
シン  「キラさんはだまってて下さい。…カガリ様?言ってる事とやってる事が違いすぎませんか?
     あなたはいつか、この国を背負うお人でしょう?
     自分の信じた理念を初志貫徹できない指導者に国民が従うと思いますか?」
カガリ 「私は…私は!お父様がオーブの理念を捨てて連合のMS開発に協力したと、あの時は誤解してたんだ!
     でもお父様はオーブが連合に協力していた事を知らなかった!……だからオーブに戻ってきたんだ!
     それが……それがいけない事なのかよ!」
 
シン  (なるほど、そう来たか。でも…アスハは1つ、大きな勘違いをしている。
     政治家は『何をしようとしたか』で評価される職業じゃない。『何を成し遂げたか』で決まるんだ。
     ちょっとキツイが、次はそこを揺さぶってみるか……)
 
カガリ 「私への質問はそれで終わりか?こっちも腹が減っているんだ。食事にしたいんだがな」
シン  「質問は、まだある。俺にはその権利があるからな」
カガリ 「権利…?何の事だ?」
シン  「俺は、俺の家族は…あんたらアスハに殺された!俺の家族は数ヶ月前あそこに居たんだ…
     へリオポリスにな!」
カガリ 「っっ!」
キラ  「ヘリ…オ…ポリス……?」
しん  「シ、シン兄ちゃん?!」
 
シン  (もちろんへリオポリスで、という所はハッタリだが…
     それ以外はかつて俺がアスハに言ったセリフ、ほとんどそのまんまで行く!
     さて…今度はどう答える?カガリ・ユラ・アスハ)
 
シン  「俺の他にはしんちゃ…しんのすけの他に父さん、母さん、そして妹が一人いたんだ。
     モルゲンレーテに勤めている父さんがヘリオポリスに転勤になって…母さんと妹もついていったんだ。
     そして……ザフトが攻めてきた!」
キラ  「ザフト…僕が初めてストライクに乗った、あの日…?」
シン  「ヘリオポリスが崩壊して…俺の家族は3人共死んだ!
     あんたらアスハが殺したんだ!オーブのくだらない理念なんかを優先したあんたらがな!」
カガリ 「あ…ああ……」
シン  「俺はアスハの綺麗事なんかもう信じない!それでもあんたはウズミの言う事が正しいって言うのかよ!
     オーブの国民をこれからも守っていけるって言えるのかよ!」
カガリ 「わ…私は…私は……!」
キラ  「シンタロー君ごめん!すべては僕が悪いんだ…素人なのにストライクに乗って戦ってしまった僕が……!」
シン  「いや…キラさんも被害者でしょう?
     ザフトはヘリオポリスでMSが開発されているって知ったからこそ攻めてきた。
     その原因を作ったのは、やはり…ウズミ・ナラ・アスハ。
     そしてオーブ連合首長国そのものなんですよ」
 
  
カガリ 「私は…………じる」
 

シン  「え?」
カガリ 「私はそれでも…お父様と、このオーブという国の理念を信じる!」
キラ  「カ、カガリ?」
 
 その時、シンはカガリの瞳に獅子の輝きを見た気がした。まだ幼い、生まれたての獅子ではあるが……幾多の試練に打ち勝ち、成長すれば、何者にも負けない心の強さを持つ獅子の片鱗を……シンは見た。そんな気がした。
 
          *          *          *
 
カガリ 「確かにオーブの、お父様のやっている事が全て正しいとは限らないと思う。
     でもそれは一人でも多くの国民を救いたいと思って…
     その為に、お父様はあえて汚名を被ってでもやっているんだ。私もついこの間までそれが分からなかった。
     確かにシンタローの言う通り、オーブの言っていることは所詮理想論かもしれない。ムウってヤツもそう言っていた。
     でも…それでも成し遂げたいと思わないか?
     ナチュラルやコーディネィターの区別がない、みんながお互いを理解しあい、尊重しあうそんな国を…世界を」
キラ  「カガリ…(初めて見た。カガリが…こんな風に自分の意見を堂々と言うところなんて)」
しん  「おお〜、カガリおねいさんかっこいい〜〜!」
 
 
カガリ 「私は見たいんだ。そんな光景を……その為にオーブが礎になれるなら。
     そのために死んでいった者達、そして残された者達に、私は殺される覚悟すらしている。
     …シンタロー。家族を失った憎しみを晴らしたいんだったら今、ここで私を殺せ。でも…その代わりに」
シン  「その代わりに…?」
カガリ 「オーブを嫌いにだけはならないでくれ……頼む」
シン  「っっ!俺は…俺は長い間、その言葉が聞きたかったのかもしれない。
     大丈夫、俺もしんのすけも本当はアスハも…オーブも恨んじゃいないよ。
     ただ聞きたかっただけさ。カガリ様の決意を、ね」
カガリ 「シンタロー!………ありがとう」
しん  「(小声で)おらは元々恨んでなんかいないゾ…父ちゃんも母ちゃんも、ひまわりシロも生きてるし…」
キラ  「な、何かカガリが別人に見える。気のせいかな?」
カガリ 「な、なんだと!この!(キラの首をへッドロックで締めにかかった)」
キラ  「ぐえ〜〜やっぱり、いつものカガリだ〜〜!」
Wしん 「いいぞ!もっとやれ〜〜!」
 
 
 ―シンとカガリの出会いから数日後。
  連合軍の侵攻によってウズミ・ナラ・アスハはその使命をカガリ達に託してこの世を去る事になる。
  オーブの若き獅子として、カガリ・ユラ・アスハの試練はまさにこの時から始まる事になるのだ― 
 
 
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