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W-DESTINY_第11話2

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:56:49

ネオはカーペンタリア付近に建設中の基地指令に連絡を取り、援軍を要請していた。

「無理を言うな!ウィンダム30機を全て出せなど」
「正直に言えば30機でも足りないところだ。前回は10機とは言え、精鋭中の精鋭で敗れた」
「だが、基地の建設はどうなるのだ?」
「じゃあ、そこに基地を作ったからといってどうなる?言っておくがアスラン・ザラをこのままにしておけば、その基地が完成した頃には、すでに連合は大打撃を受けた後かもしれんぞ」
「それは……」
「そうなったら分かるだろ?そこは最早、前線基地では無く、敵中に孤立して補給も受けられない状態だ。
 何時でも潰せる基地の運命……悲惨だぞ?」

基地指令は、その状態を想像して震えた。補給無しでジワジワと潰される運命は遠慮したい。
だが、自分の任務は基地の建設である。勝手なマネは出来ない。
そこで、援軍の数を減らしてもらえる様に打診しようと口を開く。

「分かった。従おう……だが、こちらにも任務が…」
「了承していただいて良かった。では手筈通り、ガイアをそちらに送る。以上だ」
「いや!待ってく…」

ネオは強引に通信を終わらせると溜息をついた。隣に控えるスティングが苛立たしげに質問する。

「おい、あの基地指令分かってんのか?」
「少なくとも自分の身が危ない事は分かっただろうさ、それにウィンダム30機は借りれる」
「……だったら、ステラは俺が連れて行くよ。この期に及んで数を誤魔化したりはしないだろうが」
「頼む。お前が確認をしてくれれば安心だ」
「じゃあ、行ってくる」

ブリッジを出るスティングにネオは謝罪を込めて声を掛ける。今回の作戦ではスティングに足止めを依頼していた。プライドの高いスティングには酷な命令だが、他に人材が居ないのだ。

「すまないなスティング」
「何がだよ?」
「今回の作戦だ。お前は思いっ切り戦いたいだろうが、あの赤いのは、残念ながらお前より上だ」
「いいさ別に……一応は俺の事を買ってくれていると思ってる」
「それは間違いない、お前以外にアイツを足止め出来る者はいない。俺では5分ももたん」

スティングは黙って手を振るとブリッジを出て行った。

シンは敵襲の警報を受け、インパルスへ乗り込んだ。

「またかよ!今度は何機?」
『……34機、正確にはウィンダムが33にカオスが1機』
「は?」
「随分と大盤振る舞いね」
「だが、それ程の数が何処から?」
『分からないのよ……例の空母からはウィンダムが3機だけ……」

先の戦闘で戦った部隊を乗せていた空母を再び補足して、警戒しながら進んでいたが、思わぬ方向から現れたという事だった。

「カオスは大部隊の方にいるのか?」
『あ、ハイ!そうです』
「だったら、その辺に伏兵を置いていた可能性が高いな」
「手の込んだ事しやがる」
「今は目の前の敵に集中しよう。レイ、指示を」
「ハイ、補充されたのはアッシュ1機とバビが4機だ。よって今回はシンに最初から水中へ行ってもらう」
「了解と」
「我々はバビの援護を受けながら、空中の敵に当たる。ルナマリア、今回はスラッシュを装備だ」
「でも、ビームアックスは持たないのよね」
「ああ、グゥルに乗って振り回すなら止めんが?」
「遠慮しておく」

グゥルに乗っている以上、ブレイズより軽量のスラッシュの方が運動性が上がるのだ。
さらにハイドラが有るので近距離での火力も望める。

「よし出撃するぞ」
『はい、発進シークエンスを開始します』

メイリンの指示により、それぞれ発進し、シンは1人海へ潜った。

「アビスは……やっぱり来てるか」

シンは内心アビスが来ないことを祈っていた。戦うには面倒な相手だ。それより空の方が良い。
だが、期待も空しく見覚えのある影が急速に接近するのを捉えていた。

ゼクスはカオスの姿を見つけるとアムフォルタスを発射した。だが、当然の如くカオスはかわす。
おそらく次は向こうがカリドゥスを放つだろうと身構えるが、カオスは遠巻きに動くだけだった。

「奴らしく無い!何を狙ってる?」

ゼクスはカオスのパイロットは血気の盛んな人間をイメージしている。少なくとも前回の戦いでは、そう思わせる動きだったのだ。

「ねえレイ……変じゃない?」
「お前も、そう思うか?」
「うん、だってコイツ等……」
「ああ、弱すぎる」

1機、また1機と落としながらレイとルナマリアは不信に思った。前回はあれだけ苦戦したのに今回は呆気ないのだ。

「上質のパイロットが集まらなくて寄せ集めで攻めて来たとか?」
「そうだとして、お前が敵の指揮官なら、そんな連中を率いてミネルバを落とせると思うか?」
「無理……でも集まらないなら仕方なく」
「だからと言って無駄死にさせるのか?」
「うっ……何か作戦が?」
「あるだろうな。少なくとも敵の指揮官はアイツだ。無意味な戦闘はしないだろ」

レイの言葉に色違いのウィンダムを見る。前回同様にフォローをしているが、味方のレベルの低さに力を発揮出来ずにいた。

「まったく!…使えん連中だ」

ネオは味方機の弱さに呆れる思いだった。この戦時中に基地の建設の警備に回されるくらいだから期待はしていなかったが、予想以上の弱さだ。

「これでは、もたんな……アウル、まだか?」

ネオはアウルが作戦を上手く達成出来る事を祈った。インパルスさえ破壊できれば、こちらの勝機は見えてくるのだ。

シンは遠巻きに魚雷を放つアビスに苛立っていた。だから近付いてきた時は、このチャンスを逃すまいと焦って対艦刀を振るおうと接近した。

「逃げるなよ!…って!何!」

逃がさない様に接近したのに、予想外にアビスは逃げるどころかインパルスにしがみついてきた。

「さあ、一緒に来てもらうよ」

水中での推進力はアビスの方が遥かに高い。おまけに正面から抱きつくように捕まえられているので、インパルスはアビスの思うがままに、別の場所へと連れ去られていく。

「何だ!…コイツ何を狙って?」

シンは戸惑っていたが、やがて浅瀬に到着したのに気付いた。足が届く位置まで来たとき、地面を蹴ってアビスを振り払おうとしたが、アビスの方から手を離していた。

「コイツ馬鹿かよ!地上でインパルスと戦り合おうなんて」

水は腰の深さまでしか無い、これなら明らかにインパルスの方が有利だ。確かにアビスには強力なビーム兵器が多数内臓されているが、当たらなければ意味は無い。
シンは対艦刀のレーザー刃を展開させて身構えるが……

「ステラ、連れてきたよ」
「アイツは!」

……シンはインパルスを見下ろす黒いMSを目にしていた。

「……うん…やっつける!」
「ガイア!」

ガイアはインパルスに向かって跳躍するとMA形態になり、背部のビーム突撃砲を放ちながら突進してきた。

「うぇぇえい!!!」
「チクショォ!嵌められたか!」

シンはインパルスをジャンプさせ、水中から出ると、バズーカーを連射する。
しかし全て避けられてしまい、なおガイアは突進してくる。

「クソッ!…こんな事ならビームライフルも持っておけば良かった」

少しでも水中の抵抗を減らすため、ビームライフルを外していた事をシンは嘆くが後の祭りだった。
地上に着地すると足場を固め、対艦刀を構えガイアに備える。

「来るなら来やがれっ!」
「横がお留守だよっと」
「なっ!」

ガイアに目が行っている間に、何時の間にかアビスも地上に上がってインパルスの死角から攻撃を仕掛けてきた。

「チィッ!当たってたまるかよ!」

何とかアビスの砲撃を避けるが、バランスを崩したところをガイアが接近して背中のビームブレードで斬りかかってきた。

「次は…逃がさない!うぇぇい!」
「させるか!」

シンは咄嗟にバズーカーを投げつけて、バズーカー目掛けて胸部バルカンを放つ。
バズーカーはガイアの目の前で爆発し、ガイアを怯ませる事に成功した。
その隙にインパルスを立たせるとシンは息が乱れているのに気付き、呼吸を整える。息が乱れると思考も乱れる。この状況でそれは避けたかった。

「この場所はマズイ、どっか別の場所へ……よし!」

シンは森の中へと移動する。ガイアの動きを少しでも鈍らせるためだ。

「逃がさないよ。今日こそはね!」

逃げるインパルスに向け、アビスが胸部のカリドゥス、背部のバラエーナ改2連装ビーム砲、そして両肩のシールドを広げ、内側に並ぶ3連装ビーム砲を一斉に発射させる。
その攻撃をシンは何とか避けるが、ビームの通った後の惨状を見て恐怖する。だが、
止まっていては的になると叫びながら、その場を逃げ出した。

「森は大切にしろぉぉぉぉぉ!!!」

生きた心地がしないとは、この事だろうとシンは思う。ガイアとアビス、セカンドシリーズ中、最も地上戦に優れた機体と支援砲撃に特化した機体に同時に狙われているのだ。
パイロットの腕が自分より低ければ希望も持てるが、そんな物はとっくに消えている。

「…コイツ…逃げるな!」

ガイアが素早い動きで追って来る。1対1でも勝てる自信は無い。

「しつこいよぉ、早くやられちゃえよ」

アビスが砲撃を放ってくる。接近戦なら勝てるだろうが、撃ち合いで勝てる相手では無い。

「チクショォォォォ!何なんだよ!コイツ等ぁぁぁ!!!」

シンは、未だに生き延びてるのが不思議だと自分でも思う。生き延びるための算段として、チェストフライヤーを敵にぶつけて、コアスプレンダーで脱出する手を思いつくが、アビスの砲撃を掻い潜る自信は無い。
このままインパルスを放棄して、森に逃げ込めば生き延びれるだろうが、それは論外。

「そんな事したら、アビスがミネルバを落としちまう!」

だからこそ逃げるしかない、しかもアビスが諦めて下がったらアウトだ。ガイアと戦り合っている内に、ミネルバが沈むだろう。

「うう、レイ!ルナ!…この際、隊長でも我慢するから早く来てくれ!」

今、シンにとって一縷の望みは、誰かが援護に来てくれる事だった。
冷静な頭では、向うもそんな余裕は無いと言ってるが、あえて望みを捨てない。
もし諦めたら、その時点で自分は殺され、続いてアビスの手でミネルバは沈められるだろう。

「あれっ?……ここは?」

シンは森を抜けて、切り拓いた場所に出ると、人口の建物が目の前に在るのに驚きの声を漏らす。
それが建設中の連合の基地と気付いた時、目の前で信じられない光景が広がる。
インパルスに驚いた労働者…おそらく島の住人が逃げ出し、それを止めるため兵士が銃を放ったのだ。

「何やってんだ!アンタ等ぁぁぁぁ!!!」

シンの目の前で、逃げ出した労働者が死亡し、基地を囲むフェンスの外の島の住民…
おそらく労働者の家族等が悲鳴を上げる。

「こんな事を…―!」

シンが止めようとした時、森からガイアが現れる。さらにアビスが現れ、カリドゥスの砲口が光を浮かべる。
最初は避けようと思ったが、もし避けたら後ろの基地……基地はどうでもいいが、中の民間人に被害が出てしまう事に気付いた。

「クソッ!」

シールドを前に掲げる。他のビームなら兎も角、カリドゥスを防ぐのは危険だが、やるしかなかった。
そしてカリドゥスのビーム光がインパルスを襲う。

「っ〜〜〜〜!!!」

光が去った後、シンは自分が生きている事に安堵と驚きを覚える。そして急いでインパルスの状態を調べると、左腕はシールドと共に消え去り、衝撃で基地のフェンスを背にして尻餅を付いていた。
さらに胸部も大ダメージを負っている。
それでも、ここを逃げ出そうと、インパルスを立ち上がらせようとすると、目の前に黒いMSがビームサーベルを抜いて立ちはだかっていた。

「ガイア……」

シンは自分の死を覚悟した。ガイアはサーベルをインパルスを切り裂くために振り下ろす。

「………………え?」

サーベルの刃は目の前で止まっている。最初は、これが死の瞬間に起きる現象か何かと思っていたが、どうも違うらしい、ガイアは本気で攻撃を止めているのだ。

「何、やってんだよステラ!」

ガイアが攻撃を止めた事で、代わりに仕留めようとアビスが背部のビーム砲を放つが、今度はインパルスを庇うようにガイアが前に立ち塞がり、シールドでビームを防いでいた。
アウルはステラの行動に戸惑っていた。何故、敵を庇うのか?今回の作戦は2人で
インパルスを撃破する事なのに、そのインパルスを庇う理由が分からなかった。

「このバカ!何やってんだよ!?」
「この人…守った」
「は?…何言って…って、何だよコレ?」

アウルはガイアと倒れたインパルスの奥の光景を目にした。血に塗れて倒れる民間人と彼等に銃を向けた状態で、こちらを見ながら怯えている兵士。
さらにはフェンスの外で悲鳴を上げている島の住民。

「…アウルの攻撃…この人が守らなかったら…」
「僕が…クソッ!」

アウルは怒りに震える。民間人を撃つ兵士に、そして撃とうとした自分に……

「ステラ、帰るぞ!」
「…うん」

アウルは基地の兵士に怒りを覚えたが、アウル達エクステンデッドは自軍の兵士やナチュラルの民間人を殺したり出来ない様に処理されている。
民間人を殺すなという命令は抵抗が無かったが、自軍の兵士を殺すなとの命令には時々反発したくなる。
彼等の自分たちを見る恐れと侮蔑の視線、さらにステラに送る欲望に汚れた視線を見ると本気で殺したくなる事がある。幸い痛めつけるぐらいは許されているが、それでも収まらない事があった。
そして今回も自分の手で、銃を持った兵士を殺したかったが、殺すのは勿論、この状況では痛めつける事さえ不可能だった。
だから、一縷の望みを託して、外部マイクのスイッチを入れる。

『今回は見逃してやるよ。お前も…そしてミネルバも攻撃しない』
「え!?……何だよ?」

この後、インパルスがどの様な行動を取るかは分からない、だが何故か、アウルはインパルスが基地を攻撃して、民間人を助ける様な気がした。

「何度も戦ったからかな?」

外部マイクを切り、独り言を呟く、インパルスのパイロットとはアビスを強奪した時から何度か戦っている。その内インパルスのパイロットがどんな人間か分かる気がしていたのだ。

シンは呆然としながら、去って行くアビスを見守っていた。罠かとも思うが、それは無いと確信する自分がいる。
そもそも、何のための罠だと言うのか?もし、インパルスが万全なら自分を油断させてミネルバを攻撃するだろうが、この状態でそんな必要は無い、アビスが少し力を発揮すればインパルスは破壊されるのだ。

「だったら、何故?……」

そう呟いたとき、インパルスを守るように立ち塞がっていたガイアが、首を動かしインパルスを見る。

『…守ってくれた…ありがとう…』
「お、おんな!?」

続いて、外部マイクでガイアのパイロットが声を掛ける。MSのマイク越しだから年齢などは分からないが、それは間違いなく女性の声だった。

『…ばいばい』

最後にそれだけ言うと、ガイアも立ち去っていく。その後ろ姿を呆然と見ながら、シンは呆気に取られたように呟いた。

「守ってくれたのは、アンタの方だろ……」

そして、アビスとガイアのパイロットに思いを馳せる。彼等は何のために戦っているのだろうか?
すでに、彼等の気持ちは分かっている。自分と同じく、この基地の状態が許せないのだ。
何故、そんな人間が戦うのか?

「それが戦争なんだな」

インパルスを立ち上がらせながら呟く。戦争は良い人間も悪い人間も無い。彼等とは戦場以外で会えば親しくなれる気がしていた。多分、この事が無くても前から薄々気付いてた気がする。

「今は俺とアンタ等の望みは同じなんだよな」

そう言って、立ち上がらせたインパルスを基地に向ける。左腕は失くし、胸部が破損しているためバルカンも使えない。だが、右手に持った対艦刀が有れば建設中の基地など……

「俺が破壊してやるよ!」

スティングはセイバーの猛攻を辛うじてかわしていたが、終に背中を取られてしまった。

「これで終わりだ!」
「クッ!まだ!」

セイバーがビームライフルを撃つ直前に兵装ポッドを操作し、セイバーに向けてポッド自体を放つ。
そして、ビームライフルはポッドを撃ち、セイバーとカオスの間で爆発した。

「何ィ!?」
「間に合ったか!」

爆風を利用して距離を取ると、続けてライフルのビームが飛んでくる。スティングは慌てて全速を出すが片方の兵装ポッドを失っているので、バランスが悪く真っ直ぐ飛べなかった。だが、それが逆に幸いした。
ゼクスは先読みして撃ったがカオスが真っ直ぐ飛べない為、その脇を通り過ぎたのだ。

「何!?」
「今のは!?」
「スティング!」

ネオが慌ててスティングのフォローをする。だが現状は絶体絶命だ。レベルの低いウィンダムはすでに10機を切っている。その上、前回の生き残りの2名も落とされてしまっていた。

「限界か!?」
『ネオ、生きてる?』
「アウル!」

ネオは仮面の中で満面の笑みを浮かべる。アウルがやってくれたのかと思ったが、次の台詞に氷ついた。

『帰るよ』
「は?ちょっと待て!お前インパルスはどうした!?」
『見逃した』
「な!?…ステラは!?」
『いるよ。今一緒』
『ん、何?…ネオ…』

驚いて周りを見渡すと、海面を直立して進むガイアの姿が見えた。その下にはMA形態のアビスがいるのだろう。
事態が掴めないが、今やる事は分かった。

「全機撤退だ!スティング続け!」

撤退を始める連合軍を見ながらレイは追撃の指示を出した。前回はそんな余裕は無かったが、今回は撃てば必ず当たるような敵だから、エネルギーのロスは少ない。
ゼクスにも異論は無かった。むしろ賛成だ。何故なら…

「カオス!貴様は危険だ。ここで仕留めさせて貰う!」

ゼクスはカオスのパイロットに、今まで何度か経験した感覚、シンやレイ…そして元の世界にいたワーカー等と同じ感覚を感じていたのだ。
つまり、これから更に強くなっていく者の持つ匂いを、カオスのパイロットに感じていた。

「クッ!」
「スティング!」

ネオはスティングを守るべくセイバーにビームライフルを放つが、セイバーは回避しながらカオスに接近する。
カオスは兵装ポッドを1基失っているためスピードが出ない。アムフォルタスの様な大技なら避けらるだろうが、ゼクスもそれを予期して確実に仕留めるために距離を縮める。

「今度は先のような偶然は起きんぞ!」
「クソッォォォ!」

スティングが避けられない死を予感した時、そのピンチを見ている者がいた。

「ステラ、ゴメンよっ!」
「うぇぇ!?」

アウルは背中にガイアを乗せているのを無視して、アビスをMS形態にすると海面から上半身を出し、カリドゥスを放った。
ゼクスは予想外の方向からの長距離砲に怯み、同時にアビスの姿に驚愕する。

「クッ!アビスが健在だと!?……レイ、ルナマリア!ミネルバに戻れ!水中を警戒しろ!」

ゼクスは背中に嫌な汗が流れるのを感じた。アビスが健在でここにいる理由を考えると、シンの身に何か有ったと考えるのが妥当だった。
ゼクスはミネルバをレイとルナマリアに任せた。おそらく攻撃は無いと予想したからだ。セイバーをMA形態にしてシンを探索するため辺りを見渡すと、島の奥から煙が出ているのに気付いた。
そこへ機首を向け進むと、そこには信じられない光景が広がっていた。インパルスが基地を破壊しているのだ。

「何をしているのだ。あのバカはっ!」

スティングは自分が生きている事が信じられない気持だった。
最後の瞬間は、アウルが助けてくれなかったら確実に捉えられただろう。そのアウルがネオに怒られているのが通信機から聞こえる。

『このバカたれ!何でインパルスを見逃すんだよ!』
『だってさぁ……なあ、ステラ』
『うん、ダメ…』
『何がダメなんだよ!』
『うぇぇえ〜〜』

スティングは、その声を遠くで聞くような気持で今日の戦いを振り返る。最後のアウルに助けられた所は勿論、その前も絶体絶命のピンチに陥った。
とっさに兵装ポッドを切り離して難を逃れたが、確実に背中を取られたのだ。

『泣ぁかせた〜泣ぁかせた〜♪』
『いや、ちょっと待て!俺が悪いのか!?』
『ネオ…嫌い…』
『おい!』

それに、あの時は真っ直ぐ飛べなかったのが逆に幸いしたが、下手をすれば、そのまま死んでるところだった。そして同時に、ある考えが閃く。

「そう言えば……真っ直ぐ飛べなかったのは……」
『お前等が遊んでる間、こっちは大変だったんだぞ!』
『遊んでねぇよ』
『うん、がんばった』
『インパルスを落とさなきゃ一緒だろ!スティングなんかホントに危なかったんだぞ!』
『スティングのフォローはネオの仕事だろ』
『うん、スティング、危ないの、ネオのせい…』
『だから待て!お前等…おい!スティングからも言ってやれ!』
「ククッ…そうか、こうすればカオスはもっと強くなる!…待ってろよ赤いの!今度会う時は俺が勝つ!」
『………スティング…壊れた…』
『良い奴だったのになぁ……ネオが悪いんだぞ』
『俺か!俺の所為か!?』
『…ステラ…スティングの分も、がんばる』
「お前等、うるせえよ!ホントにバカな連中だな」
『ちょっと待て!俺もか!』

抗議の声を上げる3人を無視して笑いを噛み殺す。自分の考えが上手く行けば、もっと強くなれる。
それは、この大切な仲間を守れることに繋がるのだ。

シンはミネルバに帰還すると、ゼクスの詰問を受けていた。

「何故、勝手な行動をした?」
「……俺は間違ったことはしてませんよ!あそこの人たちだってあれで助かったんだ!」
「……なるほどな、貴様はミネルバよりも、その島の住民が大事だと言う事か?」
「なっ!そんな訳じゃ!……あの時は…」

シンはアビスとの会話を伝えた。それに対する自分の考察も添えて、バカでない限り、あの状況でアビスがミネルバを襲うとは思わないはずだ。

「それがどうした?」
「は?…聞こえないのかよ!俺はミネルバが襲われないと確信して…」
「だが100%では有るまい。その状況ならコアスプレンダーでミネルバに戻り、警戒するのが当然だ」
「そ、それは……」
「それにだ!貴様は勘違いをしていないか?軍人の仕事は自分に与えられた任務を果たす事だぞ。
 民間人を助ける事では無い!」
「だったら、一般の人が死んでるのを見逃せとでも言うのか!?」
「それが任務で無いならな」
「は?……アンタ、オカシイよ!」
「では聞くが、この後はどうするのだ?」
「この後?……そんなの島の住民を守るために兵を派遣して…」
「貴様に、そんな命令権があるのか!?」
「そ、それは……」
「まだ分からんのか?貴様がいくらその人たちを守りたくとも、貴様に出来るのは今回の様に基地を破壊するくらいだ。いや、それすらもザフトという軍隊に貸し与えられたMSがあってこそだ」
「う……」
「今回の件をザフトが無視すれば、どうなる?島の住民は再び連合の兵に強制労働をさせられるぞ。
 それだけでは無い、2度と逆らわない様に見せしめとして、今回逃げようとした者を処刑するかもしれん」
「そ、そんな無茶苦茶な!」
「その無茶をやってたから、貴様は暴れたのだろうが!」
「……それは…」
「それに後の事だけでは無い…そもそも貴様さえ、基地の前に行かなければ、最初に殺されたという民間人は死なずに済んだ!」
「―!かっ…はっ!…ああああああ!!!」
「―っ!シン!?」

ゼクスは知らぬとは言え、シンの禁忌に触れてしまった。シンは両膝を付き頭を抱えて震えだした。

「ああああ!!!…がっ!…」

シンの脳裏に2年前の悪夢が蘇る。戦火を避けるために避難するシンの家族は、MS同士の争いに巻き込まれて死んだのだった。
そして今回の出来事は、シンが憎む相手と同じ行動なのだと突きつけられたのだ。

「違う!…俺はアイツ等とは…そんなの!」
「シン!落ち着いて!」
「隊長!シンには俺から言っておきますから!」
「……なんなのだ?……貴様に何が?」

ゼクスは呆然としていた。シンは顔を蒼くして震えていて、ルナマリアが後ろから抱きしめている。

「だったら、どうすれば良かったんだよ?」
「俺に頼めば良いのさ」

震えながら、救いを求める様に尋ねるシンに別の方向から声が掛かった。そこには背後に護衛を従えたアスランの姿があった。
アスランはシンの元へ歩いてくると、肩に手を置き、優しく話しかけてくる。

「ここからは俺の戦いだ。お前達が俺の身を守ってくれたからな」
「……アスランさん?…」
「すでに向うの代表とは連絡を取ってある。後は直接会って、防衛の部隊の配置などを話してくる」
「……あ?」
「お前、俺が何のために、ここにいるのか忘れてないか?俺の目的は連合が圧政をしている場所を開放することだぞ。だから、今回みたいな所を見つけたら俺に言え、どうするかは俺が言うから」
「……は…い…」
「お前には頼りない所しか見せてないから、説得力が無いかも知れないけど、信じて待ってろ。
 上手くやってくるから……そしたら信用してくれ。ゼクス、護衛を頼む」
「了解です」

ゼクスはアスランに従った。シンの事が気になるが、今はそっとしておいた方が良いと判断する。

「……お願い…します…」

背後からシンが縋るように声を掛けてくる。ゼクスはまだ知らない、シンが極めて自分に近い心の闇を抱えている事を…