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W-DESTINY_第15話2

Last-modified: 2007-11-10 (土) 21:58:24

ネオはジブリールに連絡を取ると、戦闘の結果を伝え、後の指示を聞いていた。
ジブリールは、すぐにマハムール基地の防衛部隊を送る事を約束し、捕虜への待遇はスエズ基地の預かりとした。ジブリールが判断すると、彼の立場上、全員殺すしかないからだ。

「ところで盟主、あの娘が早速やってくれましたが」
「ああ驚いたよ。まさかスティングが互角に戦うとはな。成長したものだ」
「いえ……そうじゃなくて」

ネオは先程、自分が現実逃避した時と同じ発想をされたので、言葉に詰まってしまった。

「あまり気にせずとも、ケンカの件は相手が強ければ、そんな余裕はあるまい」
「それは……まあ」
「おそらく、次の戦いは今回の戦争の分岐点になる。ここで勝てれば良し、だが負けたときは……」
「挽回は難しいでしょうな……連合、ザフト共に」
「そうだ。だからこそスエズを万全な状態にしたい。そこでミネルバを落とせばアスラン・ザラを一緒に仕留める事が出来るからな……そこでだ。スティング達に休暇を与えよう」
「休暇ですか?……どこで?」
「ディオキアだ」

ネオは息を呑んだ。今ディオキアにはアスラン・ザラが向かっているのだから……

「まさか暗殺を?」
「暗殺?……なるほど、面白いかもしれんな」

ジブリールは暫く思案するが、溜息を付いて首を振る。

「無理だな。ディオキアは完全にザフトの支配下という訳では無い。だからこそ警戒も厳しかろう」
「では純粋に休暇を与えるつもりだったんですか?」
「そうだ。それにディオキアなら、アスランが動く時に分かりやすいからな」
「……そもそも、本当にスエズ攻略が早まるのでしょうか?それにアスラン・ザラが戦線に立つ保障はありませんが?この前のガルナハンでも彼は基地に残っていましたし」
「ネオ、今度のスエズ戦をガルナハン如きと同じにするな」
「それは……」
「先程も言ったが、今度のスエズ戦は双方の命運を賭けた戦いなのだ。軽く見るでない!」

ネオはジブリールの気迫に驚いていた。だが戦場に立つ者として曖昧な予測を信じるわけにもいかない。

「お言葉ですが盟主! 確かに盟主の言う通り、スエズ戦が重要だとは分かります。ですが、それも盟主の予測通りに、ザフトが来ればの話です」
「君は来ないとでも思うのかね?」
「絶対ではありません。現にマハムール基地を落としたからと言っても、スエズの補給線が復活した訳ではありません。このまま当初の予測通りに長期戦を挑む可能性だってあります」
「もし、そうなってくれれば好都合だ。今度はガルナハンを落とせば良いのだからな」

ネオは、その言葉を理解する。1度ザフトが開放した地域を再び取り戻せば、現在、各地で起こっている反乱の勢いは弱まるだろう。
ザフトと組み独立したところで、再び元に戻る可能性を知れば、迂闊なマネは出来ない。
更にはザフトの防衛力に対する信頼の低下にも繋がりかねない。

「なるほど……では、アスラン・ザラがミネルバに乗る保障は?」
「それは無いな……だが、高い可能性で奴は乗艦するだろう。すでに奴も気付いてるさ。自分がラクス・クラインにはなれないとな」
「どういう事です?」
「君は、何故アスラン・ザラがこれ程の支持を集めていると思う? まさか、本気でナチュラルとコーディネーターの共存を訴える平和の象徴だからと思っているのかね?」
「まさか……奴は、あのパトリックの息子です。いくら平和を叫んだところで……なるほど」
「気付いたか、そう!アスラン・ザラは確かに平和を目指しているだろう。だがな、いくら本人が平和を叫んだところで、それを聞く者は、何らかの形でエイプリールクライシスを始めとする戦争の被害者なのだ。
 そんな被害者達が何故アスランを平和の象徴と思える。ニュートロン・ジャマーを打ち込んだ時の議長はシーゲルと言っても、打ち込んだの国防委員長のパトリックの指示だと誰もが知っているのだ」

ネオは頷く、これが一般的なイメージなのだ。それほどパトリックの名はナチュラルにとって悪意の対象になっている。

「シーゲルが無実とは言いませんが、その後の平和路線を貫くシーゲルの対立とジェネシスの使用が決定的ですな。ナチュラルを苦しめたのは、みんなパトリックという事になっています」
「そうだ。そんな奴の息子が支持を得る理由は平和のためではない。奴に求められているのは力だ。
 独立し、エネルギーを得る。そのための力が欲しいからこそ、奴は支持されているのだ」

現にアスランは演説でも、その力をアピールしたからこそ成功したのだ。
いくら奇麗事を言ってもパトリックの息子の言葉は警戒を持たれてしまう。

「全てでは無いでしょうが、ガルナハンの暴動は、それが具現化したものですね」
「ああ、この世界は憎しみに溢れている。アスラン・ザラとは、そのための復讐する力なのだ」
「元ザフト最強のパイロット、そしてパトリックの息子……なるほどね、奴の手は血塗れですな」
「本人は否定したいだろうがな。だが否定するには困難だ。それこそ長い時間をかけなくては、イメージを変える事は不可能だ」
「だからこそ、勇敢な人物のイメージに頼るしか無い。それで今度は戦場に同行すると?」
「そうだ。内外の注目を浴びる戦いだからこそ、奴は戦場に出てこざるをえん……憐れではあるがな」
「……まったくですな」

もし、アスランが出てこなかったらアスランを現在支持している人々は幻滅しかねないのだ。
今支持している人々は、アスランを勇敢な戦士として、自分たちを解放してくれる英雄と思っている者が多い。
そして、時間が無い以上、アスランは今の支持を失わないためにも戦士のイメージを壊すわけにはいかないとジブリールとネオは判断した。

「それでは、お言葉に甘えて、スティング達には休暇を与えます。ところでマユはどうします?」
「好きにさせろ。まず一緒に行くとは言わんだろ」
「……この際ですから、同行させて他の3人と友好関係を築かせようかと思うのですが……」
「無駄だとは思うが任せる」
「はい、正直こっちの言う事を聞いてくれないんで困るんですよ。だから、やれる事をやっておこうかと思います」
「……すまなかったな」
「え?……いえ、お気になさらずとも……」

ネオはジブリールが気にしている事を知って、仮面の中で微笑んでいた。次の言葉を聞くまでは。

「そうでは無くてだ……実は君に大事な事を伝え忘れているのを思い出してな」
「は?」
「うむ、マユに言う事を聞かせる方法だ」

ネオは心の中で、そんなものがあるなら早く言えと絶叫した。

スティングはJPジョーンズに戻ると、整備士に新たな改良を持ちかけていた。

「だから兵装ポッドには武器はいらねえんだよ。ビーム砲もミサイルも外しちまって良いからさ」
「それで代わりに、バーニアの出力アップと予備のバッテリーですか……」
「頼む!今回は意外と早くバッテリー切れ起こしちまってよ」
「機体の所為にするなバカ!」

スティングが会話に割り込んできた人物、マユを見る。彼女はジッとカオスを見つめていた。
スティングは負けた理由を機体の責任にしていると言われてる気がした。自分ではそんなつもりは無いが、そう取られても仕方ない発言だったと反省する。スティングにとって、カオスは自らの分身とも言える存在になっているのだ。もし他人がカオスを悪く言ったら絶対に許せないだろう。

「……別に機体の所為にしたわけじゃ無ぇ。だが、改良出来るならした方が良いに決まってるだろ」
「そうだけどさ……それにしてもこの子、変な動きする。何なの?」
「変って……元々、ただのドラグーンシステムを強引に機動制御に使ったからな」
「それでか……凄いね。この子もアンタも」

スティングは驚いていた。まさかマユから褒められるとは思ってもいなかった。
だが、褒められるのは悪い気はしない。絶対に褒めそうに無い相手だと尚更だ。

「サンキュ、でも、お前も使えるんじゃねえか?対G耐性、高いんだろ?」
「え?……面白いかもしれないけど止めとく」
「何でだよ?」
「だって、この子……カッコ悪い」
「な!?」
「何かさ、その辺の玩具屋で50円で売ってそうな感じ」
「テメェは言ってはならねえ事を言った!」

スティングは、これまでに無い程の怒りを感じた。50円という響きは絶対に許せない。

「ホントの事だし……でも、凄いとは思うよ。カッコ悪いけど」
「何処がだ! どっから見てもカッコ良いじゃねぇか! 見ろよ、このシャープかつ凶悪なデザイン!」
「え〜〜〜?ダサいよ」
「お子様には見る目が無えんだよ!」
「こんなのをカッコ良いと思える大人にはなりたく無い」

スティングとマユが、不毛な口論をしているところにネオが現れ、ケンカを止める。

「お前等、またやってんのか!」
「コイツがカオスをバカにすんだよ!」
「は?ちょい待て、何かそれ親をバカにされた子供っぽくて笑える♪」
「うるせえ!」
「いいから止めろ!話があるから、全員でブリーフィングルームへ集合だ。まずはアウルとステラを連れて来い」
「ほら、行って来い、ツリ目」
「何で俺が!?」
「2人ともだ!アウルは何処にいるか分からんからスティングが心当たりを探せ、ステラは多分だが甲板で海を見てる。マユが行って来い」

スティングは了解するが、マユは嫌いなステラを呼びに行けと言われ、そっぽを向く。

「やだ」
「……言う事を聞かない気か?」
「そうだよバ〜カ」

ネオは仮面の中で微笑む。ついにこの時が来たのだ。もう以前のネオでは無い。生意気な小娘に言う事を聞かせる方法を知っているのだ。

「……分かった。マユは帰って良いぞ」
「え?」
「今後の戦闘はマユ抜きでやる」
「ちょっと! 何よそれ!?」
「言う事を聞かない奴はいらん!」
「な!……やだ!え〜と……分かった! ステラ連れてくる!」

走って甲板に向かうマユを見ながら会心の笑みを浮かべる。戦う事が生き甲斐のマユには、戦わせないと言えば、大抵の事は聞くとジブリールに聞いたのだ。
そして、走り去るマユを笑いながら見ていると、後ろから後頭部を殴られたので、その犯人に怒鳴る。

「スティング!何で殴るんだ!?」
「このバカ!あんな言う事を聞かせる方法が有るなら戦闘中に使えよ!」
「俺だって、さっき聞いたんだよ!」

ネオは、先程までの喜びが消え、この世の理不尽を呪いたい気分になっていた。

マユは甲板に出ると、ステラの姿を捜し出した。あの女を連れて行かないと、戦わせてもらえないのだ。

「お〜い、ステラ……ん?」

マユは甲板の端に、膝を抱えて座った状態で海を見ているステラを見つけた。
そしてステラの元へ向かい、後ろにしゃがみ込んで声を掛ける。

「おい、ネオが呼んでるから来い」
「ん?……うぇぇぇぇぇ!」
「なに!?」

ステラはネオという言葉に反応し振り返るが、マユと目が合うと悲鳴を上げながら、マユから離れ、その勢いで、盛大にこけていた。

「……いたい……」
「……パンツ見えてるよ」

マユは溜息を付きながら指摘する。マユから言わせれば軍服でミニスカートは変だと思うのだ。
もっとも、Tシャツとスパッツの上に、軍服の上着を、袖に腕を通さず肩に乗せてるだけのマユも変だと言えるが、この格好は、ノーマルスーツを着る時に素早く出来る利点がある。あくまで実用主義だ。

「ほら、行くよ」
「……うん」

ステラは黙ってマユに従う。ステラとしては、同性のマユと仲良くしたいと思っていた。だが、上手く話しかけたいのだが、言葉が見つからない。それどころか……

「なに見てんのよ?」
「うぇ!」

マユに睨まれるだけで体が竦んでしまうのだ。
もっともマユとしては、前に自分が痛めつけたトラウマが残っているのを知っているし、仲良くしたいとも思っていなかった。

ネオはブリーフィングルームに4人が集まると、休暇の事を伝える。

「訓練がある」「行かない」

スティングとマユが同時に拒絶する。

「そう言うな。たまには、のんびりしたらどうだ」
「のんびりするより、戦ってる方が好き」
「俺もカオスの強化を…」
「じゃあ、マユと2人で留守番するのかよ」

アウルの一言でスティングの顔が歪む。どうやらアウルは休暇が欲しいらしい。おそらくステラも同様だろう。すると残るのはスティングとマユの2人になってしまう。
それはスティングにとっても避けたい事態だった。

「……俺も行く」
「さすがスティングだ。マユ、お前も1人で留守番は寂しいだろ?」
「別に良いよ。煩いのが居なくて嬉しいし」
「良いじゃんネオ。コイツは残しとけば」
「いやダメだ!」

ネオが厳しい声で否定する。ネオとしては、ここで少しでも親しくなってもらった方が、今後の作戦がやりやすいと思っていた。
それに何よりも、マユが彼等と行かないとしたら、結局はネオが面倒を見なくてはならなくなる。
ネオは、少しの間だけで良いから、彼等と離れてのんびりしたいのだ。決してダメ上司では無い。
今までの苦労を思えば、これくらいは許されるだろうと、心の中で叫ぶ。

「そんなこと言っても、マユにどうしろと?この顔だよ。街中歩くと目立つよ」
「あ……」

ネオはマユの顔をジッと見る。その顔は傷だらけで、もし街を歩けば注目を浴びるだろう。

「何で直さねえんだ?直せる傷だろうが」
「面倒くさい」

スティングの疑問をマユは一蹴する。マユにとっては顔に傷があっても困る事は無い。何しろ普段は街中や人の多い所に行く気など無いからだ。

「少し待ってろ」
「え?」

ネオは、そう言うと走って部屋を飛び出す。取り残された4人が唖然としていると、出たときの勢いで戻ってきて、手に持ったものをマユに差し出す。

「俺の使っているヤツの予備だ」

それはネオがしている仮面と同じものだった。ネオは微笑を浮かべながら、マユの手に仮面を乗せる。

「コイツを被れば恥ずかしく無いだろ?」
「あ・の・な……余計に恥ずかしいわよ!」

マユは手に乗せられた仮面を全力で壁に叩きつける。

「コラァ! お前、俺の好意を!」
「嫌な好意を押し付けんな!この変態!」
「俺の何処が変態だ!」
「そんな仮面被って、変態に決まってる!」
「何だと!おい、お前等からも何か言ってやれ!」

ネオはスティング達に救援を求めるが、その期待は裏切られてしまう。

「悪いが、マユと同意見だ」
「前から思ってたけど、恥ずかしくない? それ?」
「ほら見ろ!みんな変だと思ってんのよ!……って、ステラ?」

マユはステラが、仮面を拾ってきたのを見て、不審そうな声を上げる。
ステラはしばらくの間、仮面を見つめるとマユに渡す。

「マユ……一緒に、いこ」
「……あん?」
「うっ……いやなの?」
「だ〜か〜ら〜…」
「 兎に角だ! 明日は4人でディオキアへと向かってもらう!」
「だからイヤだって!」
「拒否は認めん!全員強制参加だ!それが嫌なら次の戦いには参加させん!」
「ヒドイ!……いいよ。ずっと寝とくから……」

こうしてファントムペインのメンバーはディオキアへ向かう事になった。
出会いと、擦れ違い、そして暖かい思い出が作られる地へと……

まだ夜明けには程遠い時間、ヒイロ・ユイは、その部屋に入ると、異臭に眉をしかめる。
だが、ここで任務がある以上、黙って目標の場所へと向かった。
そして中には依頼人が待っており、ヒイロに声を掛ける。

「ああ、よく来たね。今日も頼むよ」
「分かった。下がってろ」

そう言うとヒイロは、依頼人の横にいる動物。牛の足元にしゃがみ込むと、乳絞りを始めた。

「随分と慣れてきたね。助かるよ」

依頼人の老婆が話しかけてくるが、ヒイロは黙って作業を続ける。
ヒイロは、何故こんな事をしているのか自問した。元はと言えば、単なる宿屋の手伝いだったのだ。
しかし宿屋の一階の酒場兼レストランで使う牛乳を、配送していた牧場の跡取が独立運動のレジスタンスに参加して、家に戻れなくなったため、こちらから取りに行く事になったのだ。
それが何時の間にか手伝いをやらされる羽目になっていた。ここだけでは無い。農家の収穫や時々だが漁の手伝いに出る事もあった。
この地域では、絶対的に男手が足りないのだ。おそらく、ここだけでは無いだろう。2年前は人類を真っ二つに分けた総力戦が行われていたし、今は独立運動が起こっている。戦える者、つまり働き手が多く失われていた。
そして、ヒイロが黙っていると、老婆…息子を2年前の戦争で失い、今度は孫が独立運動に参加して、1人でこの牧場を守っている人物が語りかける。

「そんな、しかめっ面をしてると牛が怖がるだろ?牛は生き物なんだから、その気持を察してやらないと乳の出が悪くなるよ」
「ああ……すまない。だが笑顔は苦手だ」
「無理に笑わなくても良いさ。ただ、牛の事を考えておやり」
「……わかった」

ヒイロは言われたとおり、牛の気持を考えながらやってみる。すると、乳の出が良くなった。

「うん。やっぱりアンタ良い子だよ」
「俺は……」
「ほら、また暗くなってる。その癖直しなよ。アンタが、どんな人生を送ってきたかはしらないけど、ここでは、誰も気にしないから……気楽におやり」
「……すまない」

ヒイロはその後、殺菌処理をして詰め替えを行うと、すぐに配達に向かった。
トラックを運転しながら、街並みを眺める。直接戦火に見舞われた訳では無いが、インフラの整備の悪さが目立ち、この平和そうな街にも確実に戦争の影響が出ている事を窺わせる。

「……これが俺のやってきた事か」

改めて自分のやっていた事を振り返る。これまでのヒイロ・ユイの人生は、戦乱の中心に存在し、この様に戦乱に巻き込まれている人間の生活を傍観する余裕は無かった。
牧場の老婆の事を思う。彼女の孫は、この街の未来を真剣に考えた結果、独立運動に参加したのだろう。
だが彼は、年老いた祖母の苦労を本気で分かっているとは思えない。実際に祖母を苦しめているのだ。
ヒイロは、老婆の孫を愚かだと思う。彼は自分と違い生きる場所があるのに、わざわざ戦場に行こうとしているのだ。

「この生活の、どこが不満なのだ」

ヒイロは、今の生活を気に入り始めていた。自分には似つかわしく無いと思っている。自分には、そんな資格は無いと分かっているというのに……そもそも、自分は今、罰を受けているのではないか。
そうして自分を責めながら、夜が明ける前に配達を終わらせて、最後に宿屋の分を持って帰還する。

「戻った」
「ごくろうさん」

宿屋の女主人は、礼を言うと、ヒイロが持ってきたばかりの牛乳を大きなコップに入れヒイロに渡す。
彼女はヒイロの扱いに随分と慣れてきていた。

「ほら、お飲み。アンタ頑丈なくせに身体が小さいんだから」
「多すぎる……ここの連中はみんなこうなのか?」

ヒイロは、この街の人間の体格が良い事に、疑問を持った。リリーナは小柄だったが、兄のゼクスは長身だった。もしかするとリリーナもこれから大きくなるかもしれない。

「この辺の人は、全体的に見て大きいだろうね……この気候だし昔っから、農作より酪農や狩猟が盛んだからね。だからアンタも、この辺の食い物食べたら、きっと大きくなれるよ」
「……そうか」

そう呟くと、牛乳を飲みだした。リリーナとは2度と会えないと思っていても、自分の方が小さいのは悔しいと思っていた。